こんにちは、行政書士の三澤です!

「道路の使用に許可がいるって聞いたけど、うちの現場も対象なのかな?」「急な工事で足場を出す予定だけど、申請は必要?」
そんな疑問やお悩みを感じていませんか?

この記事では、
・工事現場で歩道や車道に足場や仮囲いを設置する方
・道路上で資材搬入やクレーン作業を予定している方
・道路使用や占用に関して、初めて申請手続きを行う方
といった、建設業に携わる方を対象に、

「道路使用許可とは何か?」について、現場実務に即した視点でわかりやすく解説していきます。

この記事を読むことで、

  • 自社の現場が道路使用許可の対象となるのか判断できる
  • 必要な申請や注意点が具体的にわかる
  • 工期遅延や無許可によるリスクを未然に防ぐ手段が見える
    といった実務的な理解が深まります。

「許可を取るべきか、判断がつかない」「申請書の準備が難しそう」と感じている方にとって、
本記事が道路使用許可の正しい取得とスムーズな工事運営への第一歩となれば幸いです。

それでは、さっそく見ていきましょう!

目次

第1章|道路使用許可とは?

制度の概要と役割

私たちが日常的に利用している「道路」は、自由に使えるもののように感じますが、実は「公共の財産」であり、無秩序な利用を防ぐためのルールが存在します。特に建設現場においては、足場や仮囲い、資材搬入車両などが道路にはみ出す場面も多く、「道路を使用する行為」に該当する可能性があります。

こうした場合に必要になるのが「道路使用許可」です。これは、道路交通法に基づき、通常の通行目的以外で道路を使用する場合に、警察署長の許可を受けなければならないという制度です。

この制度の目的は明確で、交通の安全と円滑を守ることにあります。道路は人と車が安全に通行するためのインフラです。そこに工事や工作物が無許可で設置されれば、事故や混乱の原因になりかねません。道路使用許可は、そうした事態を防ぐための「交通管理上のチェック機能」といえるでしょう。

法律上の根拠と行政機関の役割

道路使用許可の根拠法は、道路交通法第77条です。この条文では、次のような行為を行う際に、所轄警察署長の許可を必要とすると定めています:

  1. 道路での工事や作業(第1号)
  2. 道路への工作物(足場・看板など)の設置(第2号)
  3. 道路上での露店や屋台の出店(第3号)
  4. その他、一般交通に著しい影響を及ぼす行為(第4号)

建設業者が関わるケースでは、第1号と第2号が中心ですが、大型資材の搬入などで一時的に交通に影響を与える場合、第4号に該当する可能性もあります。

ここで注意すべきなのが、「道路使用許可」とよく混同される「道路占用許可」の存在です。道路占用許可は道路法第32条に基づく制度で、道路そのものを一定期間にわたって継続的に使用(占用)する行為について、道路管理者(国・都道府県・市町村など)の許可が必要になります。

つまり、

  • 道路使用許可:交通への影響を審査する → 担当は警察署長
  • 道路占用許可:道路そのものを使うことを審査 → 担当は道路管理者

この違いを理解しておくことは、手続きを正確かつ迅速に進めるうえで極めて重要です。

建設業者がよく関係する典型的な使用例

では、実際にどんな場面で道路使用許可が必要になるのでしょうか?以下のようなケースが典型です:

  • 足場や仮囲いの設置:敷地境界を越えて歩道にはみ出すような場合
  • 移動式クレーンの設置:車道や歩道上にアウトリガーを張り出して作業する場合
  • 資材や廃材の一時的な仮置き:特に道路上や歩道上に置く場合
  • 交通整理・誘導員の配置:道路上で片側交互通行などを行う場合

これらは、現場では「当たり前」に行われている作業かもしれませんが、交通に影響を及ぼす行為である以上、許可を得ずに実施すると違法となる可能性があります。

とくに近年では、地域住民の通報や第三者からの監視も厳しくなっているため、「いつもやってるから大丈夫」という判断はリスクが高くなっているのが実情です。

第2章|どんなときに道路使用許可が必要?

4つの類型と建設現場での具体例

道路使用許可が必要となる行為は、大きく4つの類型に分類されます(道路交通法第77条第1項)。 建設業者が関係する主な類型は以下のとおりです:

工事・作業(第1号)

道路そのものを対象とする工事・作業のほか、工事に付随する作業も含まれます。例として、舗装補修、上下水道・ガス・通信ケーブルの埋設工事、マンホール点検など。

建設業でよくあるケースとしては、道路沿いの現場で資材の積み下ろしをする作業も、状況によってはこれに該当します。

足場・仮囲い等の設置(第2号)

道路上に設置する工作物全般が対象です。

  • 足場(朝顔付き)
  • 仮囲い(道路にはみ出す場合)
  • 工事用看板、バリケード、フェンス
  • 仮設建築物(現場事務所・休憩所など)

これらは一時的であっても、交通に支障を与える可能性があれば許可が必要です。

クレーン作業、資材置場、警備員配置等(第4号)

大型重機や特殊車両の通行・作業、資材の一時置き場などが、交通に著しい影響を与える場合に該当します。

  • トラッククレーン等の使用
  • コンクリートミキサー車の停車
  • 資材の搬入・搬出に伴う長時間の占有
  • 警備員による片側交互通行の誘導

これらは交通の円滑さに直結するため、無許可では実施できません。

不要なケースとその“落とし穴”

すべての道路関連行為が許可を要するわけではありませんが、油断がトラブルの元になります。

敷地内作業でも油断は禁物

「完全に敷地内だから大丈夫」と思っていても、

  • 作業時の車両の待機が道路をふさいでしまう
  • クレーンのブームや資材が一時的に道路上にはみ出す といった事態があれば、許可が必要になることがあります。

「短時間だから大丈夫」は危険な思い込み

5分程度の荷下ろし作業などでも、場所(交通量の多さ)や時間帯によっては「交通の妨げ」と判断されることがあります。

現場の実情に応じた個別判断が必要となるため、少しでも迷ったら警察署に事前相談することが賢明です。

第3章|許可を取らなかったらどうなる?

無許可使用の罰則と事業リスク

道路使用許可を取らずに工事や作業を行った場合、法令上の罰則だけでなく、事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。以下では、想定されるリスクについて解説します。

法定罰則(罰金・懲役)

道路交通法第119条第1項に基づき、無許可で道路使用を行った場合には、

  • 3月以下の懲役
  • 5万円以下の罰金 が科される可能性があります。

また、許可は得たものの「使用時間を守らなかった」「交通誘導員を配置しなかった」など、許可条件に違反した場合も同様の罰則の対象となります。

工事中断、信用失墜、将来の許可取得への影響

法定罰則よりも重大なのが、事業への実務的ダメージです。

  • 工事の即時中断命令:警察からの指導により現場作業がストップし、工期遅延や追加コストが発生します。
  • 元請業者・発注者との信頼関係が崩れる:コンプライアンス違反は業者としての信用を著しく損ね、再受注のチャンスを失う原因にもなります。
  • 将来の許可審査に影響:過去に違反歴があると、次回以降の申請審査で厳しくチェックされる可能性が高まります。

これらの影響は、特に公共工事や元請との長期的取引を前提とする企業にとって、致命的な打撃となり得ます。

事故発生時の民事責任も

無許可使用中に第三者が事故に巻き込まれた場合、罰金などの刑事責任だけでなく、損害賠償責任(民事責任)も問われます。

  • 歩行者の転倒事故
  • 車両の接触・衝突事故
  • 通行妨害による二次的トラブル

万一の事故が起きた際、無許可であった事実は過失を問われる大きな要素となり、賠償金額が高額になるリスクがあります。

第4章|許可の有効期間と更新の注意点

いつまで使える?

道路使用許可には「期限」があり、無期限の許可は存在しません。警察署は、申請内容や工事期間、交通への影響度などを考慮し、必要最小限の期間で許可を出すのが基本的な運用です。

典型的な許可期間の目安

  • 数日の工事:1日〜1週間程度
  • 中規模な仮囲いや足場設置:1〜3ヶ月
  • 長期にわたる使用:最長で6ヶ月〜1年程度(地域差あり)

現場の内容や工事の進捗に応じて、都度申請が必要になるため、現実的には「延長しながら使い続ける」ことが前提となります。

実質「延長」ではなく「再申請」が必要な理由

道路使用許可においては、許可期間の延長という概念はほとんど存在しません。許可期間が終了する場合は、新たに申請を出し直す=再申請が必要です。

その背景には、

  • 時間の経過とともに交通状況が変化する可能性
  • 許可の条件が現時点で妥当かどうか再確認する必要 といった、行政側の合理的な判断があります。

そのため、許可期間が切れる前に余裕をもって次の申請を行うことが、工期遅延を避けるためにも重要です。

警察署による判断のばらつきに注意

実務上、許可期間の判断や再申請の簡略化措置などについては、地域や警察署によって運用の差があるのが実情です。

  • 「同一条件での再申請なら手続き簡略化」する署もあれば、
  • 「初回と同様の書類提出を求める」署もあります。

そのため、

  • 最初の申請時から警察署との連絡を密にする
  • 許可終了の1〜2週間前には再申請の方針を固める といった段取りが、現場の混乱を避けるポイントになります。

第5章|申請手続きの流れと実務のコツ

スムーズに進めるための段取りと準備

道路使用許可の申請は、以下のような基本的な流れで進みます:

  1. 事前相談(推奨): 複雑な案件や長期間にわたる使用を予定している場合は、書類作成前に所轄警察署の交通課に相談することで、手戻りを防ぐことができます。
  2. 申請書の作成: 所定様式に沿って必要事項を記入し、添付図面や必要書類を準備します。
  3. 申請書類の提出: 管轄警察署の窓口に提出します。複数の警察署が関わる場合は要確認です。
  4. 警察による審査・現地確認: 提出内容をもとに、安全対策や交通影響を確認。必要に応じて現地調査も行われます。
  5. 許可証の交付と手数料納付: 許可が下りたら、手数料を支払い、許可証を受け取ります。

標準的な処理期間は1週間〜2週間程度ですが、工事の内容や混雑状況により変動します。余裕を持った申請スケジュールが必要です。


必要書類と図面のポイント

申請に必要な書類は以下の通りです:

  • 道路使用許可申請書(2通)
  • 位置図・見取図:現場の所在地を示すもの(住宅地図など)
  • 現場平面図・配置図:作業エリア、設置物、安全施設の配置などを明記
  • 交通整理・安全対策図:交通誘導員の位置や誘導方法、標識・バリケードの設置場所などを詳細に記載
  • その他必要書類:工程表、説明資料、占用許可の写しなど、ケースによって異なる

特に重要なのが「交通整理・安全対策図」です。警察はこれをもとに、申請者が交通安全への配慮をどれだけ具体的に計画しているかを審査します。

  • 寸法や縮尺、凡例を明記
  • 歩行者・車両の通行ルートが明確か
  • 適切な保安資材の使用が図示されているか

図面の質=許可取得のスピードと確実性につながります。


よくある不備・トラブルとその予防法

申請時によく見られる不備や、審査の遅延原因には次のようなものがあります:

  • 申請書の記載漏れ(氏名、期間、場所の誤記など)
  • 添付図面が不鮮明、情報不足、現地と相違がある
  • 交通整理図に凡例や誘導方法の記載がない
  • 申請先の警察署を間違えている
  • 工事開始直前に申請し、審査期間が足りなくなる

これらを防ぐためには:

  • 事前相談で警察に確認
  • 様式や添付図の見本を参考に作成
  • 時間に余裕を持って申請準備を開始

現場を止めないためにも、丁寧な準備と段取りが重要です。

第6章|占用許可との違いと併用の注意点

よくある混同のパターン

「道路使用許可」と「道路占用許可」は、似たような場面で必要になることが多いため、建設現場ではしばしば混同されがちです。しかし、それぞれの制度は目的も申請先も異なります。

  • 道路使用許可:交通の安全と円滑を守ることを目的とし、警察署長が許可権限を持ちます(道路交通法)。
  • 道路占用許可:道路という空間の継続的な利用に関する許可で、道路管理者(国・県・市町村など)が管轄します(道路法)。

特に注意したいのが、「足場や仮囲いを道路上にはみ出して設置するケース」です。これは次のように判断されます:

  • 足場や仮囲いを設置する工事 ⇒ 作業に伴う交通への影響がある → 道路使用許可が必要
  • 構造物が道路空間を継続的に占有 ⇒ 道路自体を使っている → 道路占用許可も必要

つまり、両方の許可が必要になる代表的なケースです。

このような場面では、「片方の許可を取れば十分」と誤解してしまうと、重大な手続き漏れにつながりかねません。


併用時の手続き順序と調整のポイント

「道路使用許可」と「道路占用許可」の両方が必要な場合、以下のような手続きの注意点があります。

実務上の手続き順序

法律上、どちらを先に取らなければならないという明確な規定はありませんが、実務上は次のような運用が一般的です:

  • 占用許可を先に取得し、その写しを使用許可の添付資料とする
  • または、「占用許可申請中である」ことを示す資料を提出し、併せて警察へ説明する

現場ごとの事情や所轄機関の方針により、対応が変わることもあるため、事前に道路管理者・警察の両方へ相談することが必須です。

関係機関との連携が成功の鍵

  • 占用許可の取得には時間がかかることが多く、道路使用許可の審査期間とも調整が必要です。
  • 一部の自治体では、両許可の申請窓口を一本化する取り組みも進められていますが、全国的に統一されているわけではありません。

したがって、

  • スケジュール管理と許可取得の優先順位整理
  • 関係機関と早期に連絡を取り合う体制づくり が、工事の遅延や申請ミスを防ぐうえで非常に重要です。

第7章|地域による運用の違いと注意点

愛知県 vs 他地域で違う?

道路使用許可は道路交通法に基づく制度であり、全国共通のルールが定められていますが、実際の運用は都道府県ごとに差異があります。

  • 申請書の様式が異なる:一部地域では独自の記入欄や添付書類が必要になることがあります。
  • 手数料が異なる:愛知県では●●円、東京都では△△円など、条例で定められた金額に差があります。
  • 審査基準や重点ポイントが異なる
    • 愛知県では主に「交通の円滑性・車両動線の確保」を重視
    • 東京都など都市部では「歩行者の安全確保」や「景観への配慮」も重視される傾向

また、

  • 標準処理期間の設定
  • 図面の縮尺や凡例の指定方法 なども地域によって異なるため、「他県で問題なかった資料が、今回は差し戻された」というケースも発生しています。

事前の確認がトラブル回避のカギ

こうした地域差による申請トラブルを防ぐために最も有効なのは、

  • 所轄警察署に直接確認を取ること
  • できれば電話や窓口で具体的な事例を提示して相談すること

ウェブサイトに掲載されている情報も有用ですが、最新の運用情報や個別判断は担当窓口でないと把握できないことも多いのが現実です。

特に初めての地域や複雑な案件を扱う場合は、

  • 事前に申請様式や添付図面の見本を取り寄せる
  • 不明点をリストアップしてから相談に行く といった丁寧な準備が、申請のスムーズな通過と現場の円滑な進行につながります。

まとめ

本記事では、建設業の現場で必要となることが多い「道路使用許可」について、その概要から申請手続き、注意点まで実務に即して解説してきました。

道路使用許可は、「道路を使用する=公共のインフラを一時的にお借りする」という視点から、交通の安全・円滑を守るための大切な制度です。

現場での「いつもの作業」でも、実は許可が必要だったというケースは少なくありません。無許可使用は、たとえ悪意がなかったとしても、工事の中断・信用の失墜・事故時の重大責任といった大きなリスクを招きます。

だからこそ、

  • 許可が必要か迷うときは、必ず事前に相談を
  • 必要書類や図面は丁寧に・正確に作成を
  • 占用許可との違いや地域ごとの運用にも注意を

これらを意識するだけでも、現場の混乱を大きく防ぐことができます。


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