こんにちは、行政書士の三澤です!
「建設業許可を取りたいけど、“常勤性”って何?」「経営業務の管理責任者や専任技術者って、毎日出勤していないとダメなの?」 そんな疑問やお悩みを感じていませんか?
この記事では、 ・建設業許可の取得を検討している中小規模の建設業者の方 ・「常勤性」の要件について調べているが、制度が複雑で不安な方 ・愛知県での許可取得にあたり、具体的にどんな準備をすればよいか知りたい方 といった、建設業者様向けに「常勤性とは何か」について、初めての方でもわかりやすいよう実務の視点で丁寧に解説していきます。
この記事を読むことで、 ・常勤性の定義と法的な背景がわかる ・愛知県での具体的な運用ルールや審査のポイントがつかめる ・許可申請の際に必要となる証明書類や注意点を事前に把握できる といった実務上の大切なポイントを理解することができます。
「うちでも取得できるの?」「まず何をすればいいの?」と迷われている方の道しるべとなるよう、ポイントを絞ってご紹介します。
それでは、さっそく見ていきましょう!
そもそも「常勤性」とは?〜制度の基本を解説〜
建設業許可における「常勤性」とは、経営業務の管理責任者(いわゆる“経管”)や専任技術者(“専技”)が、許可を受けようとする営業所において、日常的に業務に専念していることを意味します。
単に会社の役員名簿に名前が載っている、あるいは形式的に雇用されているというだけでは不十分で、「実際に毎日勤務している実態」がなければ常勤とは認められません。
法的根拠と位置づけ
この常勤性の要件は、建設業法に明確に定められています。
- 経営業務の管理責任者 → 建設業法 第7条第1号
- 専任技術者 → 同 第7条第2号および第15条第2号
これらの条文では、「営業所ごとに」常勤の経管・専技を配置することが求められており、建設業者が適正かつ継続的に業務を行うための最低限の体制が整っているかを審査する基準となっています。
「常勤」とは具体的にどんな状態?
常勤と認められるためには、次のような条件を満たす必要があります:
- 勤務場所:許可を受けようとする営業所に日常的に出勤していること
- 勤務時間:その営業所の通常の就業時間において、常態的に業務に従事していること(例:平日9:00〜17:00)
- 専属性:他の法人の役員・従業員や他の営業所の専任技術者を兼ねていないこと
つまり、「毎日しっかり出勤して、その会社の業務に専念していること」が重要です。
なぜ“実質的な勤務”が必要なのか
建設業では、契約や見積もり、工程管理、技術的判断といった専門性の高い業務が日々行われます。これらに責任を持つ経管や専技が常に現場と連携し、営業所に常駐していることで、
- 工事の品質確保
- 労働災害の防止
- 適切な契約・発注体制の整備
といった「建設業の適正な運営」が実現されます。
そのため、形式的な在籍や名義貸しのような形では、建設業法の趣旨を満たさないとされ、許可が下りないケースもあります。
次章では、こうした“常勤性”の考え方が愛知県ではどのように具体的に運用されているのかを見ていきましょう。
愛知県ではどう見られる?〜地域特有の運用ポイント〜
「常勤性」は全国共通の要件ですが、実際の審査の際には、各都道府県で多少の運用の違いがあります。愛知県では、特に“客観的な証明資料”を重視する運用がされており、他県よりもやや厳格な傾向にあります。
愛知県が重視するポイント
- 社会保険の加入状況 愛知県では、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入が、常勤性の重要な証拠とされています。特に法人の役員や従業員であれば、原則として社会保険に加入していることが求められ、それを証明する書類(被保険者証、年金記録など)が審査時に必須となります。
- 住民票と営業所の距離(通勤の現実性) 通勤が実際に可能な距離かどうかも審査されます。たとえば、住民票上の住所が営業所から極端に遠く、日常的な出勤が現実的でない場合には、常勤性が疑われる可能性があります。愛知県では、公共交通機関での所要時間や通勤ルートなどを確認されるケースもあります。
- 専属性の確認 他社の役員や従業員を兼ねていないか、他の営業所の専技でないかなど、「その営業所での業務に専念しているか」が厳しくチェックされます。
なぜここまで厳しいのか?
これは単に形式的な基準ではなく、愛知県が“許可の信頼性”を担保するために、申請内容と実態が伴っているかを重視しているからです。
書類上だけの「名ばかり経管」「名義貸しの専技」が横行すれば、建設業界全体の信頼性に関わります。そのため、愛知県では実態重視・証拠重視の審査を通じて、法令遵守と健全な業界運営を守ろうとしているのです。
次章では、愛知県で常勤性を証明するために、どのような書類を用意すればよいかを詳しく見ていきましょう。
「常勤性」をどうやって証明する?〜必要書類と実務のヒント〜
常勤性を証明するには、立場ごとに異なる書類が求められます。ここでは、法人役員・従業員・個人事業主といったパターン別に必要な書類と、迷いやすいポイントを整理してご紹介します。
● 法人役員の場合
- 健康保険被保険者証(写し)
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 住民票(原本)
- (未加入の場合)住民税特別徴収税額通知書、確定申告書(写し)など
※社会保険未加入の場合は、役員報酬の支払い実態を証明できる資料が複数必要です。
● 法人の従業員の場合
- 健康保険被保険者証(写し)
- 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
- 雇用保険被保険者資格取得通知書(写し)
- 住民票(原本)
※社会保険と雇用保険への加入が基本的な証明になります。
● 個人事業主本人の場合
- 所得税確定申告書(第一表・第二表)の写し
- 所得税納税証明書(その1・その2)
- 国民健康保険証(写し)
- 住民票(原本)
※個人事業に専従していることが証明できる書類が必要です。
● 書類で迷いやすいポイントとその対処法
- 「会社名の記載がない保険証」:会社名の記載がない場合は、加入証明書や年金事務所の回答票など、補足資料の提出が必要です。
- 「国民健康保険加入者」:法人に所属していながら国民健康保険の場合、常勤性の証明としては弱いため、補足書類や状況説明が必要となります。
- 「役員報酬がない」:常勤役員であれば報酬を受けているのが通常です。報酬がない場合は、なぜ無報酬なのか説明資料を求められることがあります。
● 社会保険未加入時の注意点
社会保険に未加入の場合、申請自体が否認されるわけではありませんが、常勤性を証明するハードルが高くなります。以下のような対応が必要になるケースもあります:
- 他の補足資料を複数提出して、実際の勤務実態を説明する
- 所得の出どころを明確にする(確定申告書や給与支払い明細など)
- 出勤簿や業務日誌などを提出する場合も
つまり、社会保険に加入していればそれだけで強い証明力になりますが、未加入の場合は「なぜ加入していないのか」「それでも常勤していることがどうわかるか」を徹底して示す必要があります。
次章では、常勤性が問題となりやすいケースや、誤解されやすいポイントを整理して解説していきます。
注意!常勤性が疑われるケース・よくある誤解
常勤性の証明は形式だけではなく、実際の勤務実態を示す必要があります。しかし、実務の現場では誤解が生じやすく、意図せず要件を満たさないまま申請してしまうケースも少なくありません。ここでは、常勤性が疑われる典型的なパターンと、実際にトラブルになりやすい誤解についてご紹介します。
● よくある落とし穴
- 他社役員との兼務 「名前だけの役員だから大丈夫」と思われがちですが、実際には他法人の取締役を兼任しているだけでも、常勤性が疑われることがあります。特に代表取締役を兼務している場合は、ほぼ確実に常勤性が否定されると考えてください。
- 営業所から極端に遠い住居 住民票上の住所が営業所から通勤不可能な距離にある場合(例:県外や片道2時間以上かかる場合など)は、「本当に日々出勤できているのか?」と疑われる原因になります。説明できる合理的理由(単身赴任先である、など)がない場合は、常勤性が認められない可能性が高まります。
- 国民健康保険しか加入していない 法人の役員や従業員でありながら国民健康保険に加入している場合、「実際にその会社に常勤しているのか」という疑問が生じます。社会保険未加入の理由と、勤務実態を示す補足資料の提出が必要となります。
- 名義貸し(実態のない登録) 実際には勤務していない人物を経管や専技として申請してしまう“名義貸し”は、重大な違反行為です。発覚すれば、許可の取消しや罰則の対象となることもあります。見せかけの勤務実態を装っても、審査時に整合性が取れなければ不許可になるリスクがあります。
● 実務でのトラブル・不許可事例
- 社会保険未加入の役員が経管として申請し、「名義貸しでは?」と疑われた結果、補足書類を求められても対応できずに不許可となったケース。
- 専技の住民票が遠方で、通勤ルートや出勤記録を提出できずに常勤性が否定されたケース。
- 他社の代表取締役を兼ねたまま申請し、「実質的にそちらが本業」と見なされ、不許可になった事例もあります。
このようなケースは、ちょっとした誤解や「このくらい大丈夫だろう」という油断から起きることが多いのが現実です。
● 誤解を防ぐためには
常勤性の要件は、一見すると抽象的ですが、審査官は「日々その会社の営業所に出勤して、その業務に専念している状態」を客観的資料で確認できるかどうかを見ています。
不明点や心配な点がある場合は、事前に行政書士など専門家に相談し、適切な証明資料を整えてから申請を行うことが、トラブル回避の近道です。
次章では、近年増えている在宅勤務や兼務といった「特殊なケース」における常勤性の扱いについて解説していきます。
在宅勤務・出向・兼務など「特殊なケース」はどう判断される?
時代の変化とともに、働き方も多様化していますが、建設業許可における「常勤性」の判断基準は今なお“原則出勤”が前提となっています。ここでは、在宅勤務・出向・兼務といった少し特殊なケースにおいて、どのように判断されるかを見ていきましょう。
● 愛知県では「原則として出勤」が前提
愛知県をはじめ多くの都道府県では、経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)が申請する営業所に日々出勤していることが、常勤性の基本的な要件とされています。したがって、物理的に営業所に通勤している実態があるかどうかが、重要な判断材料となります。
● 在宅勤務(テレワーク)は原則NG。ただし例外も…?
新型コロナウイルスの影響などにより、在宅勤務が普及していますが、建設業許可の常勤性においては「営業所での勤務」が基本とされています。特に専任技術者の場合は、
- 契約・見積・工事の技術的判断などに即応できる
- 発注者や現場とのやり取りが滞りなく行える
といった理由から、営業所に常駐していることが求められるのです。
【例外的な対応策】 完全な在宅勤務では認められないのが原則ですが、以下のような場合には、例外的に認められる可能性もゼロではありません。
- Webカメラや業務ツールで常時営業所と連携している
- 定期的に営業所へ出社している実態がある
- 書類・記録等で勤務状況を具体的に証明できる
ただし、これらは非常に限定的なケースであり、行政庁への事前相談が不可欠です。
● 出向者を専技・経管とする場合
出向者を経管や専技に充てること自体は可能ですが、出向先(=申請会社)での常勤性が認められなければなりません。
【求められるポイント】
- 出向契約書や辞令など、正式な出向関係を示す書類
- 出向先で社会保険に加入していること(出向元のままでは不可)
- 出向先での勤務実態があることを示す資料(出勤簿や業務記録など)
これらをもって、「形式的な出向ではなく、実際に出向先の営業所で日常業務に従事している」ということを証明する必要があります。
● 他社との兼務
最も注意が必要なのが、他社との兼務です。
- 他の建設業者や法人の役員を兼ねている
- 他の営業所の専任技術者や管理建築士と兼任している
こういったケースでは、常勤性が認められないことが多いです。特に「代表取締役を兼ねている」「主たる勤務先が他にある」と判断される場合は、申請会社での業務に専念できていないとみなされます。
【例外的に認められる可能性があるケース】
- 他社は建設業と無関係で、非常勤の取締役など形式的な役職のみ
- 曜日や時間帯での明確な勤務区分があり、主たる勤務先が申請会社であると証明できる
これらのケースでも、審査は非常に慎重に行われるため、事前に詳細な相談と書類の準備が必要です。
次章では、これまでの内容を踏まえて、常勤性に関するまとめと専門家への相談の重要性についてお伝えします。
まとめ:常勤性の要件は「証明力」がカギ
ここまで見てきたように、建設業許可における「常勤性」は、単に役職や雇用契約があるという形式的な条件だけでは不十分です。実際の勤務実態があり、それを客観的な資料で説明できることが必要不可欠です。
● 書類が揃っていても「中身」が重要
たとえば、健康保険証や年金記録などの書類が一通り揃っていても、それらの内容に矛盾があったり、現実的に出勤が困難な住所であったりすると、常勤性が認められないこともあります。審査では、書類の整合性・通勤の現実性・勤務時間の確保・他社兼務の有無といった点がトータルで見られます。
つまり、「見た目の体裁」ではなく「実質的な勤務状況と証明力」が、審査通過のカギとなるのです。
● 少しでも不安があるなら、早めの相談を
常勤性に関する要件は、専門用語も多く、判断が難しい部分も多々あります。「この書類で大丈夫かな?」「在宅勤務でも認められるか?」といった不安が少しでもある場合は、申請前に建設業許可に詳しい行政書士などの専門家に相談されることを強くおすすめします。
事前に適切な準備と説明を行うことで、書類の手戻りや不許可リスクを避け、スムーズな許可取得につながります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が、建設業許可の取得を目指す皆様の一助となれば幸いです。
「うちのケースでも常勤性が認められるのか?」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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