こんにちは、行政書士の三澤です!
「倉庫を建てたい」「駐車場にしたい」と施主から相談されたものの、現地を見に行ったらどう見ても畑……
「これ、農地じゃないか?」と不安になったことはありませんか?

この記事では、

  • 施主から農地に建てたいと言われて戸惑っている建設業者様
  • 計画中の工事予定地が“農地かも?”と気になっている方
  • 農地法のことがよく分からず、設計を進めていいか迷っている方

といった、愛知県内で建設業を営む方に向けて、農地法に関する基本的な知識と、リスクを回避するための考え方を、行政手続きのプロとしてわかりやすくお伝えします。

目次

🔍 この記事を読むことで、こんな疑問が解決します

  • 農地法の3条・4条・5条の違いって何?
  • このケース、許可が必要なの?届出でOK?
  • 市街化区域って書いてあるけど、本当に大丈夫?
  • 行政書士に任せたらどこまでやってくれるの?

実は、農地法の知識は建設業者にとって“専門外”ではありません。
現場の初動段階で正しく判断できるかどうかが、工期の遅れや施主とのトラブルを防ぐカギになるからです。

今回は、現場視点と実務経験を踏まえて、

  • 最低限押さえるべき農地法の全体像
  • 許可が必要なケース・不要なケースの見極め方
  • 行政とのやり取りの注意点や書類のイメージ
  • 行政書士に任せるとどう違うのか?

などを、順を追って丁寧にご紹介します。

「うちのケースは大丈夫だろうか?」「まず何を確認すればいいの?」
そんなときの道しるべとなるよう、わかりやすさを大切にしながらお伝えします。

それでは、さっそく見ていきましょう!

第1章|なぜ「農地」は普通の土地と違うのか?

食料供給・災害防止など国が守る理由

建設現場で「農地は他の土地と違う」と言われても、ピンと来ない方も多いかもしれません。
ですが農地は、日本の法律の中で特別に保護されている土地です。その背景には、単に作物を育てるためだけではない、国として守るべき理由があります。

❖ なぜ農地は守られているのか?

農地法第1条には、以下のような目的が記されています。

「耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、国民に対する食料の安定供給の確保に資する」

つまり、農地は「国民の食」を支える基盤。
一度住宅や工場にしてしまえば元には戻らないため、無秩序な開発を防ぎ、計画的に農地を利用することが国の方針とされています。

また、農地が果たしているのは食料生産だけではありません。

農地が持つ多面的な機能具体的な内容
洪水・土砂崩れの防止地下への浸透・土壌の保水力
生物多様性の保全野生動植物の生息環境
景観・文化の継承田園景観や棚田文化など
地域コミュニティの維持農村での人のつながり、地域行事

これらを総称して「農業・農村の多面的機能」と呼び、特に昨今は持続可能な社会への関心の高まりも相まって、農地の重要性はむしろ増しています。

見た目が更地でも農地の可能性がある

「畑や田んぼに見えないから大丈夫」と思っていませんか?
実は、見た目が更地でも“登記上は農地”という土地は少なくありません。

❖ 現況と登記地目は一致しないことがある

建設業者が下見で訪れた土地が、すでに草が刈られ、整地されている場合でも、次のような落とし穴があります:

  • 昔は畑だったが、今は使われていない → 地目は「畑」のまま
  • 隣の住宅と見た目が変わらない → 実は農振区域内の農地
  • 施主が「登記を変えておく予定」と言っていた → まだ変更されていない

農地かどうかを判断するには、見た目だけでなく「地目」と「法的な区域指定(青地かどうか)」を確認する必要があります。

❖ まずは「地目確認」からスタート

農地法が適用されるかどうかの第一歩は、以下のような基本チェックです:

確認ポイント内容
登記簿上の地目「田」「畑」なら農地法の対象
農業振興地域指定青地(農用地区域)であれば、農振除外が必要
都市計画区域区分市街化区域 or 調整区域かで許可の要否が変わる

このような法的チェックを行わずに設計・工事に進むと、大きなトラブルになる可能性があります。

建設に使うには「農地でない」ことを証明する必要がある

農地と判断された土地を建設に使うには、「農地でない」状態にする手続きが必要です。
これが、いわゆる「農地転用許可」や「農振除外」などの制度です。

❖ 建設に使うためのステップ(概要)

農地を建設目的に使うには、通常、以下のいずれかのルートを通る必要があります:

状況必要な手続き
市街化区域内の農地農業委員会への【届出】で足りる場合あり
市街化調整区域の農地【農地転用許可(4条・5条)】が必要
青地(農用地区域)内の農地まず【農振除外】→その後【転用許可】

特に愛知県などの地方都市では、市街化調整区域や農用地区域が多く、転用許可を得るまでに数ヶ月〜半年以上かかることも珍しくありません。

❖ 「許可が必要かどうか」判断するだけでも専門的

農地法の条文(3条・4条・5条)は、対象行為によって分かれており、専門的な知識が求められます。

「農地法 3条 4条 5条の違いがよく分からない…」
「市街化区域って書いてあるけど、実際はどうなの?」
といった声も非常に多く聞かれます。

まずは農地かどうかを見極めることが第一歩

建設業者が施主の相談に対応する際、
「この土地が農地かどうか」
「許可が必要か不要か」
を正しく見極めることは、プロジェクト全体のスムーズな進行に直結します。

こんな時は、まずご相談ください

  • 「施主の土地が農地かもしれないが、どう調べれば?」
  • 「造成や建築ができるか、判断がつかない」
  • 「農振除外とか聞いたことあるけど、何から始めるべき?」

📞 そんな時は、建設業と農地手続きに強い行政書士
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第2章|施主の要望が農地法のどれに該当するか?(3条・4条・5条の違い)

施主が所有する土地に建てたい → 4条の可能性

建設業者が施主から「自分の畑に倉庫を建てたい」「空いている田んぼを駐車場にしたい」と相談を受けた場合、その土地の所有者が施主本人であるならば、該当するのは農地法第4条の許可である可能性が高いです。

❖ 農地法第4条とは?

農地法第4条は、「自分が所有している農地を、農地以外の用途に変える行為(転用)」を対象としています。

つまり、土地の所有者が農地を保持したまま、それを:

  • 倉庫や作業場を建てる
  • 駐車場として舗装する
  • 工事資材の仮置場に使う

といった「農業以外の目的で使おうとする場合」には、この4条に該当する転用許可が必要になります。

❖ 判断のポイント:所有者=転用実行者

チェックポイント回答判断の方向性
土地の所有者は誰か?施主本人✅ 4条の可能性大
使用目的は何か?農業以外(建築・駐車場等)✅ 転用に該当
誰が使うのか?所有者本人 or 自社利用✅ 4条対象

このように、「権利の移転がない」ケースでは、第4条の適用が基本となります。

❖ 市街化区域であっても届出は必要な場合がある

よくある誤解の一つが、

「この土地は市街化区域だから自由に転用できるでしょ?」

というものです。確かに、市街化区域内の農地であれば届出で済む場合もありますが、それは農地法第5条の例外的取り扱いです。

4条に該当するケースでも、市街化調整区域や農業振興地域(青地)にある場合は、厳格な許可が必要となり、下記のような段階を踏むことになります:

  1. 農振除外申請(該当する場合)
  2. 立地基準・一般基準の審査
  3. 農業委員会の意見聴取
  4. 知事または市町村長の許可

愛知県では市町村によって対応の温度差もあり、現場での対応に慣れていないと時間がかかるケースも少なくありません。

❖ 現場でありがちな4条該当ケース

施主の要望該当する可能性のある農地法条文備考
自宅横の畑に車庫を建てたい第4条所有地の自己転用
所有する田んぼを月極駐車場にしたい第4条舗装・賃貸目的であっても自分名義なら4条
空き地にプレハブを置いて事務所にしたい第4条一時利用であっても恒常的な施設なら転用扱い

❖ 転用許可を取らずに工事を進めると…

許可を取らずに農地を転用してしまった場合、農地法違反として下記のような措置が取られることがあります:

  • 原状回復命令(農地に戻せ)
  • 違反行為の公表、信用低下
  • 最悪の場合、建物撤去命令や罰則も

「施主に言われたからやった」「知らなかった」では済まされず、建設業者側の責任が問われることもあります。

❖ 結論:所有者が施主であれば、まずは4条を確認

建設業者としては、施主が土地の所有者かどうかを必ず確認し、その上で4条か5条かを見極めることが、初動の大きなポイントとなります。

その判断には、農地法の専門知識だけでなく、自治体ごとの運用差や農振除外の要否など、実務的な視点が欠かせません。

別の土地を買って建てたい → 5条の可能性

建設業者が施主から次のような相談を受けることはありませんか?

「新しい農地を買って、そこに倉庫を建てたい」
「空き地が出たから買って、駐車場に使いたいと思ってるんだけど…」

このように、施主が自分のものではない農地を購入し、その土地を農業以外の目的で使いたいという場合には、農地法第5条の許可が必要になる可能性が高くなります。

❖ 農地法第5条とは?

農地法第5条は、以下のような行為を対象とする法律です。

農地を農地以外に転用する目的で、所有権や賃借権などの権利を新たに取得・設定する行為

つまり、「農地のままではなく、農地以外として使うことを前提に他人から取得する」という点がポイントです。

❖ 5条に該当する主なケース

行為内容該当例備考
農地を買って建物を建てたい資材倉庫・工場・事務所など所有権の移転+転用=5条
農地を借りて駐車場や資材置場に使いたい地主からの賃借+舗装工事賃借権設定+転用=5条
農地を買って宅地造成したい宅地分譲の開発事業など転用目的の売買=5条

「土地を取得する」+「農業以外で使う」という二段構えの行為がある場合、必ず第5条を疑うべきです。

❖ 市街化区域でも油断は禁物

「その土地は市街化区域だから手続きはいらないよね?」と誤解されることも多いですが、これは一部正解であり、一部間違いです。

  • 市街化区域内の農地 → 農業委員会への届出で足りる場合がある(例外的取り扱い)
  • 市街化調整区域の農地 → 原則として許可が必要
  • 青地(農用地区域) → まず農振除外→次に転用許可

愛知県の市街化区域であっても、自治体によっては「建物の種類や規模、周辺環境に応じて審査基準が異なる」というケースもあり、確認は必須です。

❖ 許可が下りない典型的なパターン

5条の許可を得るには、以下のような「立地基準」や「一般基準」が審査されます。

よくある不許可要因内容
周囲に農地が多く、開発の影響が大きい農地集団の分断になるため
農業上の支障が予想される用水・排水・農道などへの影響
本人の経歴や事業目的が不明瞭利用実態の信用性の問題

こうしたリスクを避けるためにも、申請前の調査と計画整理が極めて重要です。

❖ 建設業者が注意すべきポイント

建設業者としては、施主から「土地を買ったので設計を進めて」と言われた際には、その土地が農地でないかを必ず確認し、5条の手続きが必要かを見極める必要があります。

  • 地目の確認(登記簿上が「田」「畑」)
  • 都市計画区域の確認(市街化区域 or 調整区域)
  • 青地かどうかのチェック(農振除外の要否)

こうした事前確認を怠ると、「設計は進んだのに着工できない」「契約解除」といった事態にもつながりかねません。

農地として貸すだけ → 3条の可能性

建設業の現場ではあまり頻繁に登場しないかもしれませんが、施主から次のような要望を受けたケースもゼロではありません。

「使ってない畑があるから、農家の人に貸してもいいかな?」
「農地を買っておいて、当面は誰かに貸すつもりなんだけど、手続きって必要?」

このように、「農地をそのまま農地として使うが、所有者が変わる or 他人に貸す」というケースは、農地法第3条の適用範囲になります。

❖ 農地法第3条とは?

農地法第3条は、以下のような行為を対象としています。

農地のままの状態で、所有権・賃借権などを他人に移転または設定する行為

つまり、農地としての利用目的に変更がなくても、所有権の移転(売買)や賃借(貸す)をするだけで許可が必要になります。

❖ 3条に該当する主なパターン

行為内容該当例備考
農地を農家に売る自家用農地の売却売買契約前に許可取得が原則
農地を農家に貸す一時的に農業利用を委ねる賃借契約前に許可取得が原則
名義変更による所有者交代相続以外(贈与・譲渡)同様に許可対象

3条は「農地のまま=農地利用の継続」が前提なので、転用の意思がない=手続き不要ではない点に注意が必要です。

❖ 建設業者が関与する可能性のある事例

建設現場の実務とはやや離れるものの、次のようなケースで知識として押さえておくと安心です。

  • 土地活用に向け、しばらく農地として貸しておきたいという施主の要望
  • 農地を転用予定だが、それまでの間、農家に貸しておきたいという運用的判断
  • 農業法人と関係するプロジェクトで農地の貸借が発生するケース

このような背景があると、建設業者としても農地法3条の知識を持っておくことで、施主からの信頼度が上がる可能性があります。

❖ 許可を得ずに貸した場合のリスク

農地法の無許可行為には、意外と強い制裁があります。
仮に3条の対象であるにもかかわらず無許可で契約を進めた場合、

  • 契約そのものが「無効」とされる
  • 地方自治体により指導・是正を求められる
  • 転用手続きの際に“過去の違反履歴”として不利益扱いされることも

といった問題が発生します。

「転用しないなら問題ない」と思い込まず、地目が農地である限り「契約前に要確認」が基本です。

❖ 市街化区域内でも3条許可は必要か?

市街化区域においても、農地である限り「農地法3条の許可」は必要です。
これは市街化調整区域との違いではなく、「地目が農地」であることが判断基準です。

✅ 市街化区域 × 農地 → 3条許可要
✅ 市街化区域 × 宅地 → 不要(農地法外)

この点は「市街化区域=自由に使える」という誤解が起こりやすいポイントなので、注意が必要です。

わかりやすい比較図で「どの条文か」が一目でわかる

ここまでの解説で、農地法の3条・4条・5条がそれぞれ「どういう行為」に該当するのかをご理解いただけたかと思います。

しかし実際の現場では、「これってどの条文に該当するんだっけ?」と混乱しがちです。
そこで、建設業者の皆さまが施主からの相談に対応する際に瞬時に判断できるように、以下にわかりやすい比較表を用意しました。

❖ 農地法の条文ごとの違い|基本比較表

条文行為の内容対象となる主なケース許可が必要な理由
第3条農地を農地として貸す・売る農地を農家に貸す/売る所有者が変わっても「農業の担い手」であることが条件
第4条所有する農地を自分で転用する自分の畑に倉庫を建てる転用行為には必ず許可が必要
第5条農地を買って転用する(所有権+用途変更)農地を買って工場・事務所・駐車場に使う転用目的で他人に権利を移すには許可が必要

❖ 現場で起きやすい誤認例(要注意!)

誤認例実際の条文解説
「市街化区域だから転用できる」要届出(例外)または許可青地等では不可、用途・区域により対応変化
「使わない畑だから売っていい」第3条農地のままでも売るだけで許可が必要
「駐車場にするだけだから許可不要」第4条または第5条舗装等を伴えば転用扱いになる可能性あり

迷ったら、まずは“農地かどうか”を確認しよう

  • 農地法の3条・4条・5条の違いは「何を、誰が、どう使うか」で判断します。
  • 地目が「田・畑」であれば、市街化区域であっても油断せずに確認が必要です。
  • 判断を誤ると、申請遅延・契約の無効・工期トラブルにつながる可能性があります。

👇 こんな時は、まずはご相談ください!

  • 「施主から土地の相談を受けたが、農地かどうか判断できない」
  • 「転用なのか、3条に該当するのか、見分けがつかない」
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第3章:建設業者がよく直面するケース別ガイド(施主相談対応編)

【ケース1】「自宅の畑に倉庫を建てたい」

❖ よくある相談例

建設業者が施主から受ける相談として非常に多いのがこのケースです。

「今、家の裏に畑があるんだけど、そこに倉庫を建てたいと思ってて」
「自分の土地だし、農業やってないから使ってもいいよね?」

このようなケースでまず確認すべきは、「その土地の地目が農地(田・畑)」かどうかです。
所有者が施主本人であり、なおかつ農地である場合、これは農地法第4条の適用対象となります。

❖ どんな行為が第4条に該当するのか?

行為条文補足
自分が所有する農地を自分で農業以外の目的に使う農地法第4条所有権移転なしでも「転用」行為には許可が必要

たとえ他人に貸したり売ったりしなくても、「農地以外の用途(建築・資材置場・駐車場等)に使う」だけで転用にあたり、許可を受けなければなりません。

❖ 誤解されやすいポイント

誤解実際は…
自分の土地なんだから自由に使えるでしょ?農地なら自由に使えません。農地法により厳格に制限されています。
もう10年以上使ってないし草地みたいなもの登記上「畑・田」であれば(農地として再度使えるのであれば)、それは農地と判断されます。
市街化区域だから大丈夫でしょ?市街化区域であっても、農地なら原則「届出」が必要。調整区域なら「許可」が必要です。

❖ 許可が必要か判断するためのチェックポイント

項目確認方法判断の目安
地目登記簿「田」「畑」なら農地法対象
所有者登記簿 or 実際の名義施主本人であれば第4条の可能性大
区域区分都市計画図 or 市役所窓口市街化区域 or 調整区域で手続きが変わる
農振指定農業委員会 or 都市整備課等青地なら農振除外から必要になる場合あり

❖ 愛知県における実務の特徴(例:知多半島エリア)

  • 市街化調整区域が多く、原則として第4条許可が必要な地域が多い
  • 農振除外の申請が年1~2回の地域もあり、時期を逃すと1年工事が遅れることも
  • 市町村によって運用や相談体制が異なるため、早期に実務経験のある専門家に相談するのが安全

❖ 許可を取らずに建てた場合のリスク

農地法に違反して無許可で倉庫などを建てた場合、

  • 行政からの是正指導や原状回復命令
  • 許可が出ずに登記や融資が進まない
  • 今後の転用や売却に支障が出る

など、長期的に見ても不利益が非常に大きくなるため、慎重な対応が求められます。

❖ 実務対応の流れ(愛知県の場合)

  1. 地目と区域区分の確認(登記・都市計画)
  2. 青地であれば農振除外の要否判断
  3. 第4条許可申請書の作成・添付書類の収集
  4. 農業委員会および県(知事)への申請
  5. 現地調査・審査
  6. 許可が下りた後に建築・造成の着手
    ※全体で2~6ヶ月程度を要することが多い

このように、「ただ倉庫を建てたい」というだけでも、農地であるかどうかで大きく流れが変わることになります。

【ケース2】「会社で農地を買って事務所を建てたい」

❖ よくある相談例

建設業者が企業から受ける相談として典型的なのが、次のようなケースです。

「近くにちょうどいい農地が売りに出ていて、そこに自社の事務所を建てたいと思ってるんだけど、手続きってどうなる?」
「会社名義で農地を購入して、敷地内に資材置場とプレハブ事務所を建てたいんだけど、農地でもできるよね?」

このようなケースでは、農地法第5条の適用を検討する必要があります。

❖ 第5条が適用される条件とは?

農地法第5条は、以下のような2つの要素が同時にある場合に該当します。

  1. 権利移転・設定がある(売買・賃貸など)
  2. 農地を農地以外の用途に転用する目的がある

このため、「農地を購入して建物を建てる」「借りて舗装して使う」といった行為は、どちらも第5条に基づく転用許可が必要です。

❖ 判断ポイントの早見表

確認項目内容該当すれば第5条の可能性大
地目「田」または「畑」✅ 要農地法判断
利用目的倉庫・事務所・駐車場・造成など✅ 農業以外=転用
取得方法他人からの購入 or 賃借✅ 権利移転あり

❖ 誤解されやすいポイント

誤解実際はこうです
「買えば自分の土地だから自由に使える」→ いいえ、農地であれば買っただけでは建物を建てられません
「市街化区域だから農地法は関係ない」→ 条件次第では届出で足りることもありますが、無条件ではありません
「もう使われていない農地だから農地じゃない」地目が農地であれば現況に関係なく農地扱いです

❖ 愛知県内での実務上の注意点

  • 農振除外が必要かどうかの確認が最重要
     → 青地(農用地区域)に指定されている場合、まずは農業振興地域からの除外申請が必要です。
  • 市街化区域であっても要注意
     → 届出で済むこともありますが、区域指定や用途、過去の転用実績などにより、自治体の判断は異なります。
  • 許可までにかかる期間を施主に共有する
     → 農振除外 → 5条許可 → 建築確認と段階を踏む必要があり、数ヶ月単位での計画調整が必要です。

❖ 無許可で進めた場合のリスク

建設を急ぎすぎて、農地法の手続きを飛ばしてしまうと…

  • 原状回復命令(建物を撤去して畑に戻す)
  • 罰則(行政指導、将来的な手続きの不利)
  • 建築確認や登記が進まない

といった重大なトラブルに発展するリスクがあります。

❖ 対応の流れ(愛知県の標準的ケース)

  1. 対象地の地目確認(登記簿)
  2. 都市計画区域・農振指定の確認
  3. 農地法第5条許可申請 → 農業委員会・知事
  4. 許可後に売買契約・造成・建築へ移行

このように、建設工程の初期段階から農地かどうかのチェックを行い、必要であれば行政書士に手続きを依頼することが、スムーズな事業運営に直結します。

【ケース3】「月極駐車場にしたいと言われたが、農地だった」

❖ よくある相談内容

「空き地を月極駐車場にしたいと施主に言われたけど、現地を見に行ったらどう見ても畑だった……」
「簡単に砂利を敷いて使うだけだから、許可はいらないですよね?」

こうした相談は、建設業者が現地調査を行う段階で初めて“農地だった”と発覚する典型的なケースです。
このような場合、たとえ舗装工事を行わなくても、農地法上の「転用行為」としての扱いが必要になる可能性があります。

❖ 駐車場利用でも農地法の対象になる理由

農地法では、農地を農地以外の用途に使うこと自体が「転用」にあたるとされます。
つまり、舗装をしようがしまいが、「車をとめる目的で農地を使う」時点で転用行為と見なされるのです。

誤認されやすいポイント実際の解釈
砂利を敷いただけだから「工事」ではない工事の有無ではなく、「用途の変更」がポイント
収穫もしてない放置地だから農地じゃない登記上「田・畑」であれば農地として扱われる
一時的に使うだけだから許可はいらない一時利用であっても、転用目的であれば許可が必要

❖ このケースは農地法の何条に該当する?

所有関係対象条文解説
施主が自分で所有している農地を駐車場に使いたい農地法第4条所有農地の自己転用のため
施主が他人の農地を購入して駐車場にしたい農地法第5条転用目的の所有権移転を伴う

❖ 愛知県での具体的なリスク

愛知県では、特に都市近郊の調整区域や農振地区(青地)でこのケースが多く発生しています。
たとえば、知多市や常滑市の市街化調整区域内にある農地を、駐車場や資材置場に使いたいと相談されることもあります。

  • 農振除外申請が必要な場合 → 年に数回しか受付されず、タイミングを逃すと半年~1年単位で遅延
  • 市街化区域でも、農地転用届出の不備による差し戻しが頻発
  • 駐車場転用での申請は、「恒久的な利用目的」であることが問われるケースもあり

❖ 申請の流れ(典型例:農地→月極駐車場)

  1. 地目と区域区分の確認(法務局・市役所)
  2. 農地法第4条または第5条の許可申請
  3. 現地確認 → 審査 → 許可(1~2ヶ月)
  4. 許可取得後に整地・砂利敷・区画整備へ

合計で3ヶ月~半年以上かかることもあります。事前のスケジュール共有が極めて重要です。

❖ 建設業者がとるべき対応とは?

  • まずは「登記地目」と「現況」を照合する
  • 所有者が誰かを確認し、第4条 or 第5条の判断をする
  • 必要であれば、農業委員会や行政書士に早期相談を促す

特に「ちょっと駐車場として使いたいだけ」という軽いトーンの依頼ほど、裏に大きなリスクが隠れていることが多いため注意が必要です。

【ケース4】「造成前提の売買だけど農地かどうか分からない」

❖ よくある相談内容

「建売用地として良さそうな土地が出たので施主から見てきてと言われた。でも法務局で登記簿を取ってみたら“畑”だったんです」
「既に売買契約の話が進んでるんだけど、造成前提なら農地法関係ないですよね?」

このように、施主が土地の購入と造成(=開発行為)をセットで検討しているケースで、土地が農地かどうかの判断が曖昧なまま話が進んでいる――
そんな場面に、建設業者として巻き込まれることがあります。

❖ 造成前提でも「農地なら農地法」は適用される

これは非常に重要なポイントですが、「造成目的での取得」であっても、対象地が農地である限り農地法の制限は免れません。

状況判定基準結論
畑を買って整地して造成地目が「畑」→ 農地法第5条に該当する可能性大
売買契約前に造成図面あり開発意図ありでも地目優先→ 許可前の売買は違反リスクあり

❖ このケースがハマるのは「農地法第5条」

造成前提の売買とは、「農地を農地以外として使うことを前提に他人へ所有権を移す行為」です。
これはまさに農地法第5条の許可対象になります。

✅ 所有者が変わる
✅ 転用(造成)が目的
→ この2点で5条該当

❖ 「地目が農地かどうか」確認せずに進めるリスク

リスク実際に起こりうる結果
農地法の許可を得ずに契約・決済売買契約が無効、または行政指導
転用許可が下りない工事ができず、施主とのトラブルに発展
青地(農用地区域)だった農振除外が必要

❖ 愛知県内の実務事情(例:知多半島エリア)

  • 市街化調整区域や農振区域が多く、農地法と都市計画法の両方に抵触するリスクが高い
  • 地元農業委員会の確認なく動くと、行政から是正指導が入る例もあり
  • 農振除外受付は年数回のみ → スケジュール調整が極めて重要

❖ 判断ミスを防ぐためのチェックポイント

チェック項目内容
登記簿の地目「田」「畑」なら即アウトの可能性あり
農振地図の確認青地ならまず除外申請が必要
区域区分(市街化調整区域など)転用許可が降りにくい場合あり
売買契約の締結タイミング許可取得前に契約するとリスク高

「農地かどうか」は売買前に必ず確認を!

造成や開発計画が進んでいても、農地法は“登記上農地”であれば無条件に適用されます。
建設業者が施主から相談を受けた段階で、地目・区域・農振の確認を行い、農地法第5条の対象かどうかを見極めることが、トラブル回避の第一歩です。

👇 こんな時は、まずご相談ください!

  • 「施主から売買相談を受けたが、農地かどうか不安」
  • 「契約や開発の前に確認すべきポイントを押さえておきたい」
  • 「青地・調整区域などが絡んで複雑そうなので相談したい」

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第4章:手続きを飛ばすとどうなる?知らないと怖い農地法の罠

許可なしに建設すると「原状回復命令」=建物撤去

❖ 「バレなければ大丈夫」は通用しません

農地に建物を建てる、駐車場にする、資材置場にする──
たとえ小規模でも、それが農地転用の許可を受けずに行われたものであれば、農地法違反となります。

このとき行政から出される最も重い措置が、「原状回復命令」です。

❖ 原状回復命令とは?

農地法第51条に基づき、次のような処分が行われる可能性があります。

不正に農地を転用した者に対し、知事等が元の農地状態に戻すこと(原状回復)を命じる措置。

これにより、たとえ建築物が完成していたとしても、それを撤去し、耕作可能な状態に戻すことが求められるのです。

❖ 実際に起きた原状回復命令の例(概要)

事例内容結果
農地に無許可でプレハブ事務所を設置農地法第5条の手続きなしプレハブ撤去+耕作土の復元命令
自社資材置場として整地・砂利敷き農振除外も未申請原状回復命令+行政指導の対象に
月極駐車場として転用転用許可手続き未済アスファルト撤去の行政命令

このように、「小規模だから」「短期間だから」と軽視すると、大きな損失につながります。

❖ 原状回復にかかる費用・影響は?

原状回復といっても簡単な話ではありません。現実には次のような負担が生じます:

  • 建物の解体・撤去工事費用(100万円以上になる例も)
  • 整地、地盤復旧、耕作可能状態への再整備
  • 許可が下りるまでの工期ストップや事業中断
  • 行政からの違反履歴としての記録(以後の許可審査に影響)

❖ 誤って着工してしまったらどうなる?

事後に慌てて申請すれば大丈夫……ではありません。
農地法では、許可前の行為は「遡及して許可される」ことが基本的にありません。

つまり、「既にやってしまったこと」には厳格な是正措置が取られます。
そして、信義則の問題から、建設業者も施主から損害賠償請求を受ける可能性すらあります。

❖ 「原状回復リスク」を回避するためにできること

建設業者としては、以下の基本を徹底するだけでリスクを大幅に減らすことができます。

チェックリスト内容
地目の確認登記簿謄本で「田」「畑」か確認
区域の確認市街化区域か調整区域かを市役所で確認
農振除外の要否青地であれば除外申請が先行するか確認
条文の選定第3条・4条・5条のどれに該当するか把握
専門家との連携行政書士に早期相談し、リスク評価を依頼

こうした初動の判断ミスが、数百万円の損失や信用問題に発展することもあります。

売買契約自体が「無効」になる可能性も

❖ 「契約したから大丈夫」ではない農地法の落とし穴

土地の売買契約と聞くと、多くの方はこう考えるでしょう。

「契約書を交わして、手付金も払ったんだから、もう安心でしょ?」

ところが、対象地が農地だった場合には話がまったく異なります。
農地法に基づく手続きを飛ばして契約してしまうと、その売買契約自体が「無効」と判断される可能性があるのです。

❖ 法的根拠:「許可前の契約は無効」明記あり

農地法第5条第2項には、次のように明確に規定されています。

「許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」

つまり、農地のままの土地を、転用目的で売買(所有権移転)する場合には、
農地法の許可が下りていない限り、その売買契約は法的に成立しないとされているのです。

❖ 無効とされるとどうなるか?

状況実際に起きうる事態
契約はあるが許可がない→ 契約そのものが無効、登記不可
代金の一部を支払い済み→ 支払金返還+トラブル化(損害賠償に発展)
建築予定だった→ 工期遅延・施主や元請との信頼喪失

❖ 愛知県で実際にあった相談事例(イメージ)

建売用地として農地を購入したA社。造成前に施主から「地目“畑”ですけど大丈夫ですか?」と聞かれたが、仲介業者から「どうせすぐ転用申請するので問題ない」と言われてそのまま売買。

ところが後日、転用許可が下りないことが判明。契約は無効扱いとなり、解体・整地済みだった敷地を農地に戻す羽目に。損失額は700万円を超えた。

このような“無自覚の違反”は、施主・建設業者・仲介業者すべてが巻き込まれる最悪のパターンに発展します。

❖ 「契約前に農地かどうか確認」が鉄則

契約締結前に次のチェックを徹底しましょう。

チェックポイント推奨確認方法
地目登記簿謄本で「田・畑」か確認
区域区分市街化区域/調整区域の区別を確認
農用地区域(青地)指定市役所または農業委員会で確認
転用許可が下りるか行政書士など専門家に事前相談

❖ 許可前の「予約契約」や「停止条件付き契約」は可能?

一定の条件下では、「転用許可が下りたら効力を生じる」という停止条件付き契約を交わすことで、形式上のリスクを抑える方法もあります。
ただし、この場合も必ず行政書士や司法書士など専門家に確認を取りましょう。

❖ まとめ:契約書よりも先に確認すべきは“農地か否か”

契約書の整備や印紙、登記費用の準備以前に、
まずはその土地が「農地かどうか」を確実にチェックしてください。

  • 農地法の許可が下りていない売買契約は、法的に効力を持ちません
  • 契約の前段階から農地法を意識して動くことが、全体の安全性を守る鍵です

元請・下請関係でも責任を問われるリスク

❖ 「知らなかった」では済まされない時代に

農地法違反は、行為者本人(施主や土地所有者)だけの問題ではありません。
建設業者として、たとえ下請けの立場であっても、違反の一翼を担ったと見なされれば、行政指導や損害賠償の対象になり得るのです。

❖ 実際のリスク構造はこうなる

関係者法的責任 or 実務上の影響
施主(発注者)農地法違反の主たる責任者として行政処分対象
元請業者設計・施工管理の立場から、違法性を認識していたかが問われる
下請業者現場着工の実行主体として、巻き込まれ型責任のリスク
宅建業者無許可売買の媒介等があれば処分対象に

特に、農地であることを知りつつ着工した場合、元請・下請いずれも共犯的な関与が問われる可能性があります。

❖ 建設業法・民法・行政法が絡む複合リスク

建設業法上も、元請は「現場の法令順守体制の整備責任」が求められます。
さらに民法上、施主や地主との契約関係において、

  • 「瑕疵担保責任」
  • 「信義則違反」
  • 「不法行為責任」

といった問題が発生することもあります。

たとえ書類上の責任がなくても、「現場を止められた」「行政対応で迷惑をかけた」というだけで、信用毀損や追加費用請求などのリスクが連鎖的に発生します。

❖ ありがちな誤解と現実

誤解実際は…
下請けだから責任は施主と元請にある→ 行政からは施工責任の有無で判断されるケースも
工事内容が軽微だから問題ない→ 転用の意図が明確なら工事規模にかかわらず違反対象に
設計担当だから関係ない→ 設計図に基づいて農地転用行為が行われれば、知情の有無が問われ得る

❖ 愛知県の行政対応傾向(実務経験より)

  • 市町村によっては、工事実施業者への事情聴取や報告書提出を求めるケースあり
  • 違反情報が業界内で共有され、元請の信頼失墜や入札資格への影響に発展する例も

❖ 防ぐためにできること

実務対策内容
地目の確認を初期段階で徹底調査表の作成やCADに地目ラベルを明記する等も有効
元請・下請で情報共有体制を構築契約前ミーティングで農地確認・行政書士への相談も含める
施主に説明責任を果たす「この土地は農地なので手続きが必要」と明言することで、後の責任転嫁を予防

現場の誰もが「知らなかった」では通用しない

  • 農地法違反に関する責任は、施主だけではなく、現場に関与する元請・下請・設計者すべてに波及する可能性があります
  • 工事の初動段階で「農地かどうか」の確認を怠ることが、重大なリスクを招きます
  • だからこそ、“今のうちに相談”が最も安全で効率的な一手となります

👇 こんな時は、まずご相談ください!

  • 「下請けだが、着工する土地が農地か不安」
  • 「元請から図面が回ってきたが、区域や地目が不明瞭」
  • 「施主との関係を壊さず、丁寧に法的整理を進めたい」

📞 愛知県で建設業に特化した農地法対応を行う行政書士が、
現場ごとのリスク分析から申請書類の作成、行政調整まで一貫対応いたします。

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第5章:建設会社として施主にどう対応すべきか?

まず最初に「その土地、農地かどうか」を確認する

❖ すべての判断は“農地かどうか”から始まる

施主から土地に関する相談を受けたとき、
建設会社として一番最初にすべきことは、「その土地が農地かどうかの確認」です。

  • 自宅の隣に倉庫を建てたい
  • 資材置場や駐車場に使いたい
  • 空き地を購入して事務所を建てたい

これらの要望に応えるには、まず「農地か否か」の確認がなければ、法的なアドバイスもスケジュールの見通しも一切立てられません。

❖ 農地かどうかを判断する主なポイント

チェック項目内容確認方法
登記簿の地目「田」または「畑」なら農地法務局やオンライン登記情報提供サービス
現況との違い雑草地や放置地でも地目優先登記記載が重視される
青地(農用地区域)か農振法による指定区域市役所(都市計画課・農業委員会など)で確認
市街化区域 or 調整区域都市計画区域の区分によって手続きが異なる都市計画図の閲覧・窓口で確認可能

❖ なぜ“見た目”で判断してはいけないのか?

「更地みたいに見えるから、農地ではないですよね?」
「もう何年も耕作してないので大丈夫では?」

こうした誤解は非常に多く見受けられますが、農地法の適用は“現況”ではなく“登記簿の地目”が基本判断基準です。

つまり、耕作していなくても、木が生えていても、雑草が生い茂っていても、
登記簿に「田」「畑」とあれば、農地法の対象になると考えるべきです。

❖ 建設業者が現地確認と並行してできる対応

実務対応内容
登記簿謄本の取得初期段階で必ず取っておくべき基本資料
地目の変遷を確認以前の転用・変更履歴から今後の方針が立てやすい
農地台帳の閲覧農業委員会での過去の履歴確認も可能
施主への確認事項の共有所有者か否か、転用目的か否かで条文が変わる旨を丁寧に説明

❖ 「農地だったらどうなるのか?」も併せて説明を

土地が農地であった場合、必要な手続きが以下のように分岐します。

条文概要対象
第3条農地のまま貸す・売る相手が農業従事者で農地として利用する場合
第4条所有者が自分の農地を転用自分名義の農地に建築・造成する場合
第5条他人の農地を転用目的で取得購入・賃借+転用の場合(事務所・倉庫など)

また、青地に該当すれば「農振除外申請」が先に必要になるため、半年~1年スパンでのスケジュール管理が必要になる可能性も視野に入れるべきです。

調査→農業委員会→除外申請→農地法許可の全体像

❖ 「農地かも」と思ったら、全体の流れをイメージしておくことが重要

建設業者が施主から「この土地に建てたい」と相談を受けた際、
その土地が農地である可能性があるなら、早い段階で“農地転用手続きの全体像”を把握しておくことが非常に重要です。

なぜなら、農地法関連の手続きは、
「調査して → 書類を出して終わり」ではなく、
段階的に“複数の制度をまたぎながら進行”するものだからです。

❖ 農地転用の基本フロー(建設業者視点)

以下に、建設業者が施主対応を行う上で押さえるべき手続きの全体像を示します。

【ステップ1】現地調査・登記簿確認(地目・区域区分)
 ↓
【ステップ2】農業委員会でヒアリング(農地該当性・農振指定の有無)
 ↓
【ステップ3】農用地区域(青地)の場合 → 農振除外申請(年数回のみ受付)
 ↓
【ステップ4】農地法第4条または第5条の許可申請(転用目的の届け出または許可)
 ↓
【ステップ5】許可後に売買・造成・建築などの本格始動

❖ 青地(農用地区域)であれば「農振除外」から始まる

チェック項目内容判断基準
農振除外が必要か?青地(農用地区域)かどうか農業委員会/都市整備課で確認
除外申請時期年に1〜2回程度しか受付されない自治体も多い早期確認が必須
除外理由公共性・合理性が必要事務所・倉庫でもOKな場合あり

農振除外が必要な場合は、除外決定通知が出ない限り、農地法の申請すら出せません。

❖ 農地法の許可申請は第4条か第5条かで手続きが異なる

所有形態行為該当条文
自分の農地を転用建築・造成など第4条
他人の農地を購入して転用所有権移転+転用目的第5条

申請時には、位置図・配置図・土地利用計画・境界確認・用途証明など、工事以外の資料も多数求められます。

❖ 手続き全体でどのくらい時間がかかるのか?

手続き段階目安期間注意点
農振除外申請2〜4ヶ月(受付時期により変動)年1~2回の受付が主流
農地法許可申請1〜2ヶ月(農業委員会審査含む)現地調査や補正指導がある場合も
全体所要期間最短でも3〜6ヶ月調査〜許可取得までトータル管理が必要

❖ 建設会社が対応すべき初期ポイントまとめ

初期対応項目やるべきこと
地目・区域確認登記簿+都市計画図の確認
青地の有無農業委員会/都市整備課でヒアリング
所有関係施主が所有者かどうか、売買予定かどうか
利用目的駐車場・倉庫・事務所など、転用か否かの判断材料に
行政書士への連携調査段階から依頼すれば、計画倒れ・手戻りの防止になる

調査から農振除外、そして農地法許可に至るまで、1つでも手続きを飛ばすと、全体の流れが止まってしまうのが農地関連の怖さです。

だからこそ、建設業者としては「相談されたらまず調査」「判断に迷ったら専門家へ連携」というスタンスが、結果的にプロジェクトをスムーズに進める最短ルートとなります。

自分たちでできる部分/専門家に任せるべき部分

設計前に農地チェックをするだけで、工期遅延を防げる

❖ 「どこまで自社でやるか/どこから任せるか」を線引きできていますか?

施主から「この土地に建てたい」と相談を受けた建設会社として、
最初に求められるのは、法令上の制限を“把握する”ところまでです。
逆にいえば、調査結果を踏まえた手続きそのものは、専門家に任せる方がスムーズというのが現実です。

❖ 自分たちでできること(建設業者側)

項目内容
登記簿の取得地目(田・畑)の確認。Web登記サービスでも可能。
都市計画図の確認市街化区域・調整区域の別を市役所で確認。
土地の現況調査雑草地でも地目が農地なら対象。写真で記録も推奨。
ヒアリング施主が所有者か、買主か/目的は転用かを把握する。
初動のリスク説明「農地の可能性があります。行政への確認が必要です」と伝える。

❖ 専門家(行政書士)に任せるべきこと

項目内容
農地法第3条・4条・5条の条文判断書類の整備と照らし合わせて正確に判断。
農振除外が必要かの判定青地判定や要否の相談窓口との交渉含む。
必要な書類の作成申請書、用途証明、配置図、地積図、申述書など。
農業委員会・県への折衝補正対応・現地確認・聴聞対策等を含む。
手続き全体の工程管理工期遅延にならないよう、逆算して段取りを組む。

❖ 設計前に“農地チェック”をしていれば防げること

農地チェックが設計後・契約後・着工直前に行われた場合、次のような事態が頻発します。

タイミング想定されるリスク
設計後「青地」発覚 → 農振除外からスタートで半年遅延
契約後売買契約が農地法未許可で“無効”扱いに
着工直前行政指導 → 原状回復命令リスク(建物撤去)

これらはすべて、「もう少し早くチェックしておけば避けられた」ものばかりです。

❖ “農地チェック”は早ければ早いほど、建設会社の信頼になる

「この土地で相談があったら、農地の可能性をまず潰しておきましょう」
この一言を最初に添えられる建設会社は、施主にとって「安心して任せられる存在」となります。

  • 計画の早期段階から専門家と連携できる体制がある
  • 法務・行政対応に明るい(または適切に依頼できる)
  • トラブルを未然に防ぐ判断力がある

こうした印象は、価格競争では得られない「信頼による選ばれ方」につながっていきます。

プロジェクト成功のカギは“初期調査と連携”

  • 地目・区域の確認やヒアリングは建設会社でも対応可能
  • 一方で、農振除外や農地法許可は専門性が高く、専門家への依頼が最も効率的
  • 設計に入る前に「農地かどうか」を調べるだけで、後の全体計画に大きな差が出ます

👇 こんな時は、まずご相談ください!

  • 「施主から土地の相談を受けたけど、農地の可能性がある」
  • 「計画が固まる前に、リスクを把握しておきたい」
  • 「自社でやるべきこと/行政書士に任せることの線引きをしたい」

📞 建設業に強い行政書士が、調査から転用手続きまで一括対応いたします。
愛知県全域対応・農業委員会との折衝もお任せください。

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第6章:行政書士に依頼するメリットとサポート内容

農地調査・許可申請を一括対応

「農振除外」の要否判断や、申請の段取りまで全て管理
書類作成から現地立会い、農業委員会対応までまるごとサポート
工事を止めない、建設業者のための“縁の下の専門家”

❖ 「結局、全部やってもらえるの?」という疑問に答えます

建設会社として施主から相談を受けた際、農地に関する調査・申請を自社で抱え込もうとすると、

  • どの条文が該当するのか?
  • 青地だった場合、除外申請はどう進めるのか?
  • 書類の書き方や添付資料は?
  • 農業委員会にはどのタイミングで説明すればいいのか?

と、不慣れな業務に手を取られ、本来の設計・施工業務が圧迫されがちです。

そんな時こそ、行政書士の出番です。
農地手続きを専門とする行政書士であれば、調査から許可取得、行政対応までを一括でサポートすることが可能です。

❖ サポート1|現地調査・地目確認・区域指定の判定

業務内容建設業者の負担を軽減できる点
登記簿・公図・都市計画図の確認自社で法務局や役所に出向かずに済む
青地(農用地区域)該当の有無を調査農振除外の可否を早期に把握できる
条文の正確な選定(3条・4条・5条)手戻りのない申請ルートを確保できる

❖ サポート2|農振除外から農地法申請までの段取りを一括管理

ステップ行政書士の役割
農振除外が必要な場合の判断各市町村の運用を熟知して対応可能
除外申請のタイミング管理年数回しかない受付時期を逃さない
転用許可申請(第4条・第5条)様式・添付図面・立地基準の整理など

❖ サポート3|書類作成から現地立会い・農業委員会対応まで一貫して代行

対応内容実務上のメリット
各種申請書・申述書・説明図面の作成工務店側は「設計と施工」に集中できる
農業委員会や役所との事前協議補正リスクを抑え、申請をスムーズに通す
現地立会い対応(行政側とともに現地調査)工事関係者が日程調整で時間を割かずに済む

❖ “建設業の裏方”として、行政書士が担う3つの価値

  1. 「知らなかった」では済まされないリスクを未然に防ぐ
  2. 工期に直結する行政手続きを遅滞なく進める
  3. 施主対応の安心感を高め、元請・下請の信頼維持にも貢献

現場の調整と並行して、確実に“転用できる状態”を整えておくことが、建設プロジェクト成功のカギです。

まとめ

建設相談の裏に「農地法」という落とし穴が潜んでいる

一見するとただの空き地。
しかし、登記簿に「田」や「畑」と記されている限り、それは“農地”であり、農地法の適用対象です。

  • 「市街化区域だから大丈夫でしょ?」
  • 「耕作していないから農地じゃないよね?」
  • 「建ててもどうせ後で手続きすればいいよね?」

こうした“なんとなくの判断”が、後に工事の中断・契約無効・建物の撤去命令といった深刻な事態に直結してしまいます。

法的リスクを防ぎ、施主の信頼も得るには「調査と相談」が鍵

今回ご紹介したとおり、農地転用に関する手続きは

  • 農地法(3条・4条・5条)の条文判断
  • 青地(農用地区域)の確認と除外申請
  • 都市計画区域区分との整合性確認
  • 農業委員会や知事(県)の許可申請

といった、複数の制度をまたいだ判断と調整が不可欠です。

そして何より重要なのは、
「施主から相談があった段階」でこれらに気づけるかどうか。

この早期対応こそが、リスクを防ぎ、信頼を得るための最大のポイントです。

プロジェクトを円滑に進めるためにも、行政書士の活用を検討すべき

農地法に詳しい行政書士に依頼することで、以下のようなメリットがあります:

  • 地目調査から区域区分・農振指定の確認まで初動から任せられる
  • 書類作成や農業委員会との折衝をすべて代行
  • 農振除外や都市計画との調整も含めて工期を見越した段取りが可能
  • 建設会社は本業(設計・施工)に専念できる

行政手続きの“抜け”や“遅れ”による損失を回避し、施主からの信頼・プロジェクトの成功につなげるための、実務的パートナーとして行政書士を活用すべきです。

農地に関する手続きで、こんなお悩みはありませんか?

  • 施主から「この土地に建てたい」と言われたけど、農地かどうか判断できない…
  • 設計を進めたいけど、農振除外や転用許可が必要か分からない…
  • 市街化区域だから大丈夫と思っていたら、手続きが必要だと言われた…
  • 元請や施主から法的対応を求められ、責任範囲が曖昧で不安…

そんなときは、三澤行政書士事務所が、裏方として全面サポートいたします。

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