こんにちは、行政書士の三澤です!

「道路使用許可と道路占用許可、どっちを先に出せばいいの?」
「そもそもこの2つの違いがよくわからない…」
そんな疑問やお悩みを感じていませんか?

この記事では、
・建設工事で道路上に足場や仮囲いを設置する予定の方
・役所や警察への申請に慣れておらず、何から手を付けてよいか分からない方
・ミスや遅れのないスムーズな手続きで、工事日程を守りたい方
といった建設業の皆さまに向けて、

「道路使用許可と道路占用許可、どちらを先に申請すべきか?」というテーマを、初めての方でもわかりやすいよう実務の視点で丁寧に解説していきます。

この記事を読むことで、
・道路使用許可と道路占用許可の違いと役割が明確にわかる
・自分の工事にはどちらの許可が必要か判断できる
・申請の順番を間違えずに、効率的に手続きが進められる
といった知識が得られます。

「うちでも許可が必要?」「どちらの窓口から申請すればいいの?」と迷われている方の道しるべとなるよう、重要なポイントを絞ってご紹介していきます。

それでは、さっそく見ていきましょう!

1. 道路使用許可と道路占用許可の違いとは?

道路使用許可と道路占用許可は、名前が似ていて混同されがちですが、まったく異なる制度です。それぞれ目的や根拠となる法律、申請先などが異なり、現場での判断を誤ると手続きのやり直しや工期の遅延につながる恐れがあります。

■ 根拠法の違い

  • 道路使用許可:道路交通法 第77条
  • 道路占用許可:道路法 第32条

それぞれ、交通の安全確保と道路の構造・管理という、まったく別の観点から設けられた許可制度です。

■ 目的の違い

  • 道路使用許可は「交通の妨害や危険を防ぐこと」が目的です。道路上での工事や作業が歩行者や車両の通行に影響を与える場合、必要になります。
  • 道路占用許可は「道路空間の健全な管理と公的利用の保護」が目的です。電柱や足場など、一定期間道路の空間を“占有”する場合に必要です。

■ 管轄(許可権者)の違い

  • 道路使用許可:行為地を管轄する警察署長
  • 道路占用許可:道路の種類に応じて、国(国道事務所)、都道府県(建設事務所)、市町村(市役所・区役所など)

■ 「行為」か「状態」かという着眼点

  • 道路使用許可は「交通に影響を与える行為」に着目します(例:作業・イベント・設置作業など)
  • 道路占用許可は「継続的に占用する状態」に着目します(例:足場や電柱の設置・維持など)

この違いを理解しておくことで、「どちらの許可が必要か」の判断が明確になります。

■ 比較表:道路使用許可と道路占用許可

項目道路使用許可(道路交通法)道路占用許可(道路法)
根拠法道路交通法 第77条道路法 第32条
主な目的交通の安全・円滑化道路の管理・公的利用の保護
管轄機関警察署長道路管理者(国・県・市など)
着目点一時的な行為継続的な状態
対象例工事、作業、イベント等電柱、足場、看板等
許可の期間必要最小限(例:足場は1ヶ月)比較的長期(例:5年以内)
費用手数料(例:愛知県2,500円)占用料(規模や期間による)

2. 両方必要になるのはどんなとき?

道路使用許可と道路占用許可はそれぞれ独立した制度ですが、現場では「両方必要になるケース」が少なくありません。

■ 占用=空間を使う

たとえば、以下のようなものは道路占用に該当します:

  • 電柱や電線
  • 足場や仮囲い
  • 看板や日よけなどの突出物

これらは、道路という公共空間の一部を、継続的に独占的に使う行為にあたります。

■ 使用=作業する

一方、これらの工作物を「設置・撤去・保守点検」するときには、道路上で作業が発生し、その作業が交通に影響を与える場合には、道路使用許可が必要になります。

つまり、

  • 占用は“状態”に対する許可
  • 使用は“行為”に対する許可 という整理ができます。

■ 原則:占用が必要なときは、使用許可も必要

現実の工事や設置作業では、「工作物を占用する」という“状態”を生み出すために、必ず“行為”が伴います。たとえば足場の組み立て・撤去、電柱の交換工事などです。

したがって、実務上は「道路占用許可が必要なケースでは、原則として道路使用許可も必要」と考えておくのが安全です。

※逆に、祭礼やマラソンなどの一時的なイベントで道路を使用するだけの場合は、占用ではなく使用許可のみで足ります。

3. 実務上の申請順序:どっちを先に出す?

道路使用許可と道路占用許可の両方が必要な場合、どちらを先に申請すればよいのか?

実はこの順序に「明確な法的決まり」はありませんが、実務では「占用許可を先に申請する」ことが原則として広く行われています。その理由を、以下で詳しく見ていきましょう。

■ 原則:占用許可を先に申請

結論から言えば、手続きの順番は「占用許可 → 使用許可」の順が基本です。

■ 理由①:処理に時間がかかるのは占用許可

道路占用許可は、提出書類も多く、占用内容によって審査が複雑になるため、標準処理期間も長めに設定されています。たとえば名古屋市や愛知県の例では、占用許可の審査に15~16日程度かかるのが一般的です。

一方、道路使用許可の標準処理期間は概ね7日以内。そのため、占用許可の申請を先に出しておくことで、全体の工程に余裕を持たせることができます。

■ 理由②:占用の仮受付印で警察側の審査が円滑に

実務では、占用許可の申請時に「仮受付印」や「内諾書」を取得しておき、それを道路使用許可の申請時に添付するケースがよくあります。これは、「道路管理者から一定の確認を得ている」ことを警察側に示す役割を果たします。

このような段取りを踏むことで、警察署側の審査も円滑に進みやすくなり、結果的に全体のスムーズな許可取得につながるのです。

■ 占用許可の中に「警察協議」が含まれる場合も

さらに、自治体によっては、道路管理者が占用許可を審査する過程で、自動的に管轄警察署に協議(照会)を行うフローを採用している場合もあります。これは、占用の内容が交通に与える影響について、警察の意見を事前に確認するための手続きです。

このように、占用許可のプロセスの中に警察との連携が含まれている地域では、占用許可を先に進めることで、使用許可も同時に進展しやすくなります。

4. 一括提出制度とは?その注意点

道路使用許可と道路占用許可は、通常それぞれの申請先(警察署と道路管理者)に個別に提出しますが、申請者の利便性を考慮して、「一括提出制度」という仕組みが用意されています。

■ 警察または道路管理者、どちらか一方にまとめて提出可能

この制度を使うと、

  • 警察署の窓口、または
  • 道路管理者(市役所や建設事務所など)の窓口

いずれかどちらか一方に、使用許可と占用許可の両方の申請書類をまとめて提出することができます。

例えば、建設業者が足場を設置する場合、

  • 占用許可申請書(道路管理者用)
  • 使用許可申請書(警察署用) の両方を市役所の道路課でまとめて提出できるというイメージです。

■ 便利だが、審査はそれぞれ独立

一括提出制度は「書類の提出窓口が一本化されるだけ」であり、審査そのものは警察と道路管理者がそれぞれ別個に行います

つまり、

  • 占用許可は道路管理者が審査
  • 使用許可は警察署が審査 という構造は変わりません。

■ 不備対応は各窓口ごとに必要

このため、申請書類に不備や不足があった場合、

  • 警察署の方で不備があれば、警察署へ連絡・修正対応
  • 道路管理者の方で不備があれば、役所や事務所で対応 というように、それぞれの担当機関と個別にやり取りする必要があります。

「一括提出=一括審査・一括対応」ではないという点には注意が必要です。

申請者にとっては手間が軽減される一方で、書類の整合性や提出タイミングには十分な配慮が求められます。

5. 許可の組み合わせ早見表(工事種別ごと)

道路使用許可と道路占用許可は、工事の種類によって必要な組み合わせが異なります。

以下に、建設業者がよく直面する代表的な工事例を挙げ、それぞれに必要となる許可と根拠法を整理しました。 「自分の案件はどれに当たるのか?」を一目で判断できるように構成しています。

工事種別道路使用許可の要否(根拠法)道路占用許可の要否(根拠法)主な留意点・関連手続き
電柱の設置・建替要(道交法77条1項1号)要(道路法32条)占用先行が原則。作業に伴う交通整理が必要。
仮囲いの設置要(道交法77条1項1号)要(道路法32条)道路境界からの出幅制限あり(例:1m以内)
足場の設置要(道交法77条1項1号)要(道路法32条、道路上空等)上空のはみ出しでも要占用。愛知県では1ヶ月が目安。
看板・日よけの設置要(道交法77条1項2号)または1号要(道路法32条、道路上空)高さ・出幅の基準あり。継続使用には更新手続きも必要。
舗装工事要(道交法77条1項1号)原則不要(舗装は占用対象外)資材置場や仮設施設を設ける場合は占用許可が必要。
車両乗入れ口設置要(道交法77条1項1号)要(道路法32条)または承認工事(24条)道路構造変更時は別途「承認工事」が必要な場合あり。

このように、「工作物を道路上に置く」「長期間占用する」「交通を妨げる行為をする」といった状況があれば、基本的に何らかの許可が必要になります。

なお、工事によっては両許可に加えて、道路工事施行承認(道路法第24条)や、他の関連法令の手続きが必要になるケースもあります。事前相談によって、許可の種類と手順を正確に把握することが重要です。

6. 愛知県・名古屋市での具体的運用

道路使用許可・道路占用許可の申請は、地域によって具体的な申請先や提出書類、処理期間などが異なります。ここでは、建設業者の方にとって関わりの多い愛知県および名古屋市の実務運用について、わかりやすく整理します。

■ 申請先一覧

許可の種類管轄機関申請先の具体例
道路使用許可警察署(交通課)名古屋市内の各警察署、愛知県内の各地域警察署
道路占用許可道路管理者(道路の種類により異なる)県道:愛知県建設事務所、市道:名古屋市土木事務所等

※道路の種類(国道・県道・市道)によって管理者が異なるため、まずは「どの道路か」を特定することが重要です。名古屋市では「道路認定図」などの公開ツールが利用できます。

■ 処理期間の目安と注意点

許可の種類標準処理期間の目安注意点
道路使用許可約7日(行政庁の休日除く)急ぎの場合も事前相談なしでは受理されないことあり
道路占用許可約15~16日(書類不備除く)警察協議や補正指示でさらに日数がかかる場合あり

どちらの許可も「標準処理期間」はあくまで目安であり、書類不備・補正対応・事前協議などによって前後します。とくに占用許可は審査項目が多いため、早めの申請が必須です。

■ 様式・手数料・事前相談などの実務情報

  • 様式
    • 使用許可申請書は県警HPからダウンロード可能。電子申請(警察行政手続サイト)も一部対応。
    • 占用許可は愛知県・名古屋市ともに用途ごとの専用様式あり(例:足場用、看板用、日よけ用など)。
  • 手数料
    • 使用許可:愛知県は1申請あたり2,500円(令和6年から4号許可も原則有料化)
    • 占用許可:占用料として、面積・種類・期間に応じて算定(申請手数料は無料の場合が多い)
  • 事前相談の重要性
    • 名古屋市では土木事務所への事前相談が強く推奨されています。担当者不在のこともあるため、事前に電話連絡して訪問日程を調整するのがベストです。
    • 愛知県建設事務所でも、事前相談によって必要書類や想定期間の確認が可能です。

地域ごとの実務を正確に把握することが、スムーズな許可取得と工事スケジュールの維持につながります。特に名古屋市や愛知県内では、申請様式・処理期間・窓口運用に細かな差異があるため、都度、最新の情報を確認することが大切です。

まとめ

道路使用許可と道路占用許可は、制度上は別物ですが、実務上はセットで必要となるケースが非常に多い手続きです。

特に、足場の設置や電柱の工事といった、道路空間を使用・占用する工事では、双方の許可が必須になることがほとんど。

  • 申請の順番を誤ると、許可が下りず工事が遅れるリスクもあります。
  • まずは「何をしたいのか」「どれくらいの期間使うのか」を明確に整理することが出発点です。

そして、複雑な案件ほど、行政書士のような専門家の助力が確実。 許可の要否判断から、適切な書類作成、提出、問い合わせ対応までを一括してサポートすることで、トラブルやロスを防ぎ、安心して本業に集中できる環境を整えます。


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