産業廃棄物は本来、排出した事業者自身に処理責任があり、他人の廃棄物を無許可で処理することは認められません。しかし、資本関係等で密接なつながりを持つグループ企業間であれば、一定の要件のもとで複数の事業者の産業廃棄物を一体的に処理できる特例が設けられています(廃棄物処理法第12条の7)。
この特例は、平成29年の廃棄物処理法改正で創設され、平成30年4月1日から施行されています(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)」(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号。以下「施行通知」)第二、第八1)。
制度の趣旨
グループ経営を行う企業では、グループ内の複数の事業者から出る産業廃棄物を、グループ内の一の事業者がまとめて処理施設で処理した方が、環境負荷の低減や処理の効率化につながるケースがあります。「二以上の事業者による産業廃棄物の処理に係る特例」は、こうしたグループ一体的な処理を、都道府県知事等の認定を受けることで可能にする制度です。
認定を受けると、認定を受けた事業者(認定事業者)のうち一の事業者の事業活動に伴って生ずる産業廃棄物について、認定事業者のうち他の事業者も排出事業者とみなされます。これにより、認定に係る産業廃棄物の収集・運搬・処分を、産業廃棄物処理業の許可を要しない「自ら処理」として扱うことができます(廃棄物処理法第12条の7第4項、施行通知第二3(1))。
この特例は、あくまで排出事業者責任の原則の例外として位置づけられているため、認定を受けずにグループ内の他社の廃棄物を処理すると、無許可処理として法令違反になるおそれがある点に注意が必要です。
認定の対象にならないケース
次のような場合は、認定の対象になりません(施行通知第二1、「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)」(令和2年3月30日環循規発第2003301号。以下「許可事務通知」)第6の10)。
- 保管のみを行う場合など、収集・運搬・処分のいずれも行わない場合
- 親法人と「孫法人」(子法人が支配関係を有する法人)の関係(議決権保有割合の要件を満たさないため)
- 申請者が中間処理業者のみで、対象が中間処理産業廃棄物である場合
認定を受けるための主な要件
この特例の認定を受けるには、対象となる事業者間に一定の資本関係(親会社・子会社の関係等)があることに加え、実際に処理を行う事業者が施設・能力・欠格要件等の基準を満たすことなど、廃棄物処理法および同法施行規則に定める要件を満たす必要があります。認定は、要件に適合すれば必ず認定しなければならないものと解されており、都道府県知事に裁量はないとされています(許可事務通知第6の2)。
要件①:一体的な経営の基準(施行規則第8条の38の2)
グループ内のいずれか一の事業者(親法人)が、他の全ての事業者(子法人)について、次のいずれかに該当する必要があります。
- 子法人の発行済株式の総数(出資口数・出資価額の総額)を保有していること(100%子会社)
- 次のいずれにも該当すること
- 子法人の発行済株式等の3分の2以上(議決権のない株式を除く)を保有していること
- 親法人の役員または職員を、子法人の業務を執行する役員として派遣していること
- 子法人とかつて同一の事業者であって、一体的に廃棄物を適正に処理していたこと
2のルートの場合、国の通知は、派遣されている業務執行役員が親法人の役員・職員であったことや、親法人と子法人がかつて同一の法人として一体的に廃棄物処理を行っていた実績を、登記事項証明書や当時の処理計画・契約書・帳簿等の書類で確認するとしています(許可事務通知第6の3(2))。
要件②:収集・運搬・処分を行う事業者の基準(施行規則第8条の38の3)
実際に処理を行う事業者(処理実施者)は、次の基準をすべて満たす必要があります。
- 処理に関する計画で、収集・運搬・処分を行うこととされた者であること
- 親法人が統括して管理する体制の下で処理を行う者であること(統括管理者が親法人でない場合は認定されない(許可事務通知第6の4(2)))
- 認定外の産業廃棄物も処理する場合は、区分して処理するために必要な措置を講ずることができること
- 認定外の者に委託する場合は、他の認定事業者と共同して委託契約を締結し、マニフェストを交付する者であること
- 処理を的確に行うに足りる知識・技能、的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すること
- 欠格要件(廃棄物処理法第14条第5項第2号イからニまで及びヘ)に該当しないこと、不利益処分を受けてから5年を経過しない者でないこと
- 処理施設の基準に適合する施設を有すること(産業廃棄物処理施設については設置許可を受けたものであること)
処理業の許可を持つ事業者が処理実施者となる場合、国の通知は、認定に係る産業廃棄物とそれ以外の産業廃棄物を区分する具体策として、処理施設の使用日を分けることなど、不適正処理を防止するための実効性のある取組を事業計画に記載することを求めています(許可事務通知第6の4(3))。
申請手続と添付書類
認定の申請は、グループの事業者が共同して、様式第5号の2による申請書を、産業廃棄物の積卸し及び処分を行おうとする区域を管轄する都道府県知事に提出して行います(施行規則第8条の38の4)。区域が2以上の都道府県にまたがる場合は、それぞれの都道府県知事に申請し、全ての都道府県知事から認定を受ける必要があります(施行通知第二2(1))。国の通知では、全ての都道府県知事から認定を受けた日以降に事業を開始するよう徹底させることが求められています(許可事務通知第6の6)。
申請書には、議決権保有割合、統括管理者・処理実施者の名称、施設、役員派遣の状況、対象となる産業廃棄物の種類・処理の範囲・区域などを記載し、主に次の書類を添付します(施行規則第8条の38の5)。
- 事業計画(処理の内容、最終処分までの一連の処理の行程、施設、対象事業場、年間の処理量、統括管理体制、認定外の廃棄物との区分措置、外部委託時の委託契約・マニフェストに関する事項など)
- 定款または寄附行為、登記事項証明書
- 子法人の株主名簿
- 処理実施者の技術的能力の説明書類、資金計画、直前3年の財務書類、欠格要件に該当しない旨の誓約書、役員等の住民票の写し等
- 派遣役員の氏名・住所と派遣を示す書類
- 施設の構造図等、施設の所有権(使用権原)を証する書類
外部委託時の対応として、国の通知は、認定事業者全員が契約主体となる委託契約書のひな形、マニフェストの事業者欄に認定事業者全員または認定事業者である旨を明記すること、電子マニフェストを使う場合は認定事業者として新たに共同アカウントを取得することなどを事業計画に記載するよう求めています(許可事務通知第6の4(4))。
認定後も変わらない排出事業者としての責任
この特例による認定を受けた場合でも、廃棄物を排出した各事業者が排出事業者としての責任を免れるわけではありません。むしろ、認定に係る産業廃棄物の処理を認定事業者以外の者に委託する場合には、実際に排出した事業者だけでなく認定事業者全員が排出事業者とみなされるため、認定事業者全員で委託基準の遵守やマニフェストの交付等を行う必要があります。必要な手続をとらない者がいた場合には、罰則等の対象となり得ます(施行通知第二3(1))。
認定後に求められる主な義務は次のとおりです。
- 帳簿:認定に係る収集・運搬・処分の状況を帳簿に記載し保存する(施行令第6条の4第3号、施行規則第8条の5第1項第3号、施行通知第二10)
- 年次報告:共同して、毎年6月30日までに、前年4月1日〜3月31日の1年間の処理量等を様式第5号の7で報告する(施行規則第8条の38の11)
- 車両表示・認定証の備付け:運搬車の車体両側面に、運搬車である旨、名称、認定番号(複数の都道府県から認定を受けた場合は全ての認定番号)を表示し、認定証の写しを備え付ける(施行規則第7条の2の2第1項第4号、施行通知第二9)
- 場外保管の届出は不要:認定に係る産業廃棄物の保管については、事業場外保管の届出を要しない(施行規則第8条の2の2第3号、施行通知第二13)
なお、認定番号は8桁の英数字で、左から3桁が都道府県市番号、4桁目がこの認定であることを示す「S」、5〜8桁目が都道府県市で自由に使える番号とされています(「産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033022号)別添2(2))。
変更・廃止の手続
認定の範囲を超えて処理を行った場合や、認定を受けた資本関係に変動があった場合には、改めて手続きが必要になることもあるため、グループ内の組織再編(合併、株式譲渡等)があった際には、認定内容への影響も確認しておくことが望ましいでしょう。手続は次のように区分されています。
| 手続 | 主な場面 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 変更の認定 | 議決権保有割合が要件を満たさなくなる変更、施設・派遣役員の変更(要件に影響するもの)、対象廃棄物の種類・範囲・区域の変更など | 変更前に申請 | 法12条の7第7項、規則8条の38の6・8条の38の7 |
| 軽微変更の届出 | 上記以外の変更 | 変更の日から10日以内(登記事項証明書を添付する場合は30日以内) | 法12条の7第9項、規則8条の38の8 |
| 廃止の届出 | 収集・運搬・処分の全部または一部の廃止 | 廃止の日から10日以内(全部廃止の場合は認定証を添付) | 施行令6条の7の2、規則8条の38の10 |
国の通知では、子法人の追加、子法人の会社分割、議決権保有割合が100%から3分の2以上に変わる場合などは、統括管理体制の変更として変更の認定が必要とされ、親法人や処理実施者を認定対象から外そうとする場合は、全部廃止の届出の後、改めて新規の認定申請が必要とされています(許可事務通知第6の7(2))。
一社の違反がグループ全体に及ぶ
認定事業者のうちいずれか一の事業者に欠格要件の該当等があった場合には、他の事業者もまた産業廃棄物処理業者等とみなして欠格要件の判断の対象とされます(廃棄物処理法第12条の7第6項)。例えば、認定事業者の中に欠格要件に該当した者がいて、処理業の許可が取り消され、認定も取り消された場合には、他の認定事業者にも不利益処分の影響が及びます(施行通知第二3(3))。
また、報告徴収や措置命令についても認定事業者全員を一の事業者とみなして適用されるため、認定事業者全員が対象となり、報告徴収を拒否する者がいれば罰則の対象となり得ます(廃棄物処理法第12条の7第5項、施行通知第二3(2)、「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号)第6の2(5)、第10の2(1))。都道府県知事は、認定事業者が基準に適合しなくなったときや、変更の認定・届出の規定に違反したときは、認定を取り消すことができます(廃棄物処理法第12条の7第10項)。グループ全体でコンプライアンス体制を整えることが、特例を維持する前提になります。
グループ企業の排出事業者にとってのメリット
この特例の認定を受けたグループでは、個々の事業者がそれぞれ外部の処理業者と委託契約を結ばなくても、認定を受けた範囲内でグループ内処理が可能になります。処理コストの最適化や、グループ全体での廃棄物管理の一元化につながる点が特徴です。特に、グループ内に自社処理施設を持つ企業がある場合には、外部委託に伴うコストや委託先選定の手間を削減できる可能性があります。
一方で、認定を受けても、処理に使う施設が産業廃棄物処理施設に該当する場合は、別途その施設の設置許可が必要です(許可事務通知第6の5(2)、施行規則第8条の38の3第9号ロ(2))。認定の手数料についても、地方公共団体の手数料の標準に関する政令で標準が定められています(施行通知第二14)。
まとめ
二以上の事業者による処理の特例は、資本関係のあるグループ企業向けの制度で、一定の要件を満たせば認定を受けることができます。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 対象は、100%子会社、または3分の2以上保有+役員派遣+かつて同一法人だった子会社(孫会社は対象外)
- 認定を受けると、グループ内の処理を処理業の許可なしの「自ら処理」として扱える
- 申請は積卸し・処分を行う区域の都道府県知事ごとに行い、全ての認定を受けてから事業を開始する
- 外部委託時は認定事業者全員が排出事業者となり、共同で委託契約・マニフェストを行う
- 毎年6月30日までの報告、車両への認定番号表示、帳簿の備付けなどの義務がある
- 一社の欠格要件該当や違反の影響がグループ全体に及ぶ
認定後も排出事業者としての基本的な責任は変わらない点を踏まえつつ、グループ内での廃棄物処理の効率化を検討している場合は、認定要件を満たせるかどうかを確認してみましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条の7)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条の4、第6条の7の2)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の2の2、第8条の2の2、第8条の5、第8条の38の2〜第8条の38の11)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)
- 産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて(通知)(令和2年3月30日環循規発第2003301号)
- 産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033022号)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
