産業廃棄物を排出事業場内で一時的に保管する場合や、処理業者が事業場で保管する場合には、廃棄物処理法上の「保管基準」を守らなければなりません。基準を満たさない保管は、近隣トラブルや行政指導の原因にもなり得るため、現場管理の観点からも重要なポイントです。

排出事業者は、「その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(産業廃棄物保管基準)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない」とされています(廃棄物処理法第12条第2項)。具体的な基準は、廃棄物処理法施行規則第8条に定められています。特別管理産業廃棄物についても、別途「特別管理産業廃棄物保管基準」が定められています(同法第12条の2第2項、施行規則第8条の13)。

処理業者が積替えや処分のために保管する場合は、産業廃棄物処理基準(施行令第6条)の中で、基本的に同じ内容の保管ルールが適用されます。

保管場所の囲いと掲示板

保管基準では、産業廃棄物の保管場所には、廃棄物の飛散・流出等を防止するための囲いを設けることが求められています。保管する産業廃棄物の荷重が直接囲いにかかる構造である場合には、その荷重に対して構造耐力上安全なものでなければなりません(施行規則第8条第1号イ)。

また、保管場所には、見やすい箇所に掲示板を設置することが義務付けられています。掲示板の要件は次のとおりです(施行規則第8条第1号ロ)。

  • 大きさ:縦・横それぞれ60センチメートル以上
  • 表示事項:
  • 産業廃棄物の保管の場所である旨
  • 保管する産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨を含む)
  • 保管の場所の管理者の氏名または名称及び連絡先
  • 屋外で容器を用いずに保管する場合は、積み上げられる高さのうち最高のもの

掲示板の大きさ・記載事項の具体的なレイアウトについては、自治体が作成例を公表していることもあります(愛知県では処理業に係る掲示板の作成例を公表しています(愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」Q25))。実務上はそうした作成例を参考にしながら、必要事項に漏れがないよう掲示板を用意するとよいでしょう。

処理業者の掲示板には「保管上限」も表示する

処理業者が積替えのために保管する場所の掲示板には、上記に加えて、その保管の場所で保管できる産業廃棄物の数量(積替えのための保管上限)を表示しなければなりません(施行規則第7条の3)。処分業者が処分・再生のために保管する場所の掲示板も同様に、「処分等のための保管上限」を表示する必要があります(施行規則第7条の5)。

積み上げ高さの制限

屋外で容器を用いずに産業廃棄物を保管する場合には、廃棄物の高さについても基準が設けられており、保管場所の囲いの高さや勾配などをもとに、積み上げることができる高さの上限を計算する必要があります(施行規則第8条第2号ロ)。高さの上限を超えて保管すると、崩落等の事故につながるおそれがあるだけでなく、法令違反として指導の対象にもなります。

条文上の計算方法は、囲いに廃棄物の荷重が直接かかるかどうかで異なります。

① 囲いに荷重が直接かからない場合

保管場所の任意の点ごとに、地盤面から、「囲いの下端を通り、水平面に対して上方に50%の勾配を有する面」までの高さが上限です(施行規則第8条第2号ロ(1))。50%の勾配とは、水平方向に2メートル進むごとに1メートル上がる傾きのことです。つまり、囲いの際(きわ)では高さ0で、囲いから内側に離れるほど高く積める、という「すり鉢を逆さにした」ようなイメージになります。例えば囲いから内側に4メートルの地点であれば、上限は2メートルです。

② 囲いに荷重が直接かかる構造の部分がある場合

荷重に耐えられる囲い(直接負荷部分)がある場合は、次のように計算します(施行規則第8条第2号ロ(2))。

  • まず、直接負荷部分の囲いの上端から下方に50センチメートルの線を「基準線」とします(囲いの高さが50センチメートル未満の場合は、その下端)
  • 基準線から内側へ水平距離2メートル以内の部分は、基準線の高さまで積み上げることができます
  • 基準線から2メートルを超える部分は、「基準線から内側へ2メートルの線を通り、上方に50%の勾配を有する面」までの高さが上限です

例えば、廃棄物の荷重に耐える高さ3メートルのコンクリート擁壁で囲った場合、基準線は地盤面から2.5メートルとなり、擁壁から2メートル以内は2.5メートルまで、そこから内側は2メートル進むごとに1メートルずつ高く積めることになります。いずれの場合も、囲いの一部に直接負荷部分でない部分がある場合は、①の計算による高さと比べて低い方が上限になります。

計算した高さのうち最高のものは、掲示板に表示するとともに、処理業の許可申請書や事業場外保管の届出書にも記載する事項になっています(施行規則第9条の2第1項第5号ホ、第8条の2の4第1項第2号ホ)。

なお、処分業の施設で選別作業を行う場合の積み上げ高さについても、別途の技術的な目安が示されていることがあります。たとえば、フラットコンベア型の選別施設では、ベルト幅が90cm未満であれば側角20度まで、90cm以上であれば10度までとする運用例があり(愛知県「手続きQ&A」Q29)、選別作業の安全性や効率性の観点から、保管・処理両方の場面で高さ・角度の管理が重要視されていることがうかがえます。

飛散・流出・地下浸透・悪臭の防止

高さ制限のほか、次の措置も求められています(施行規則第8条第2号・第3号)。

  • 保管に伴い汚水が生ずるおそれがある場合は、公共の水域・地下水の汚染を防止するために必要な排水溝その他の設備を設け、底面を不浸透性の材料で覆う
  • その他、飛散・流出・地下浸透・悪臭の発散を防止するために必要な措置を講ずる
  • 保管の場所には、ねずみが生息し、蚊・はえその他の害虫が発生しないようにする

石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物の保管

特定の品目については、追加の措置が必要です(施行規則第8条第4号・第5号)。

  • 石綿含有産業廃棄物:他の物と混合するおそれのないよう仕切りを設ける等の措置を講じ、覆いを設ける・梱包する等の飛散防止措置を講ずる
  • 水銀使用製品産業廃棄物:他の物と混合するおそれのないよう仕切りを設ける等の措置を講ずる

保管期間・数量にも注意

保管基準では、高さや掲示板だけでなく、周囲に囲いを設けること、悪臭や害虫の発生を防止することなども求められます。処理業者の場合は、保管する産業廃棄物の数量についても、処理施設の処理能力等に応じた上限が定められている点に注意が必要です。

保管の場面数量の上限根拠
収集運搬業者の積替えのための保管その保管場所の1日当たりの平均的な搬出量×7日分施行令6条1項1号ホ
処分業者の処分・再生のための保管処理施設の1日当たりの処理能力×14日分施行令6条1項2号ロ(3)
建設系の分別された木くず・コンクリート片を再生する施設処理能力×28日分施行規則7条の8第1項4号
建設系の分別されたアスファルト・コンクリート片を再生する施設処理能力×70日分同上
優良産業廃棄物処分業者の廃プラスチック類の処理施設処理能力×28日分施行規則7条の8第1項3号

処分業者は、数量だけでなく期間についても、適正な処分・再生を行うためにやむを得ないと認められる期間を超えて保管してはならないとされています(施行令第6条第1項第2号ロ(2)、施行規則第7条の6)。

保管場所の所在地・面積・保管計画に変更が生じた場合には、変更届出書の提出が必要になるのが一般的な運用であり(愛知県「手続きQ&A」Q20)、保管場所を拡張・移転する際には事前に手続きを確認しておく必要があります。処理業者の場合、積替え・保管の場所の所在地、面積、保管する産業廃棄物の種類、保管上限、積み上げ高さの最高のものは、変更届出の対象事項とされています(施行規則第10条の10第1項第5号・第6号)。

事業場の外で保管する場合の届出

建設工事に伴い生ずる産業廃棄物を、その事業場(工事現場)の外において、面積300平方メートル以上の場所で自ら保管しようとする排出事業者は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません(廃棄物処理法第12条第3項、施行規則第8条の2、第8条の2の2)。届出の要点は次のとおりです。

  • 届出事項:保管場所の所在地、面積、保管する産業廃棄物の種類、保管上限、屋外で容器を用いずに保管する場合はその旨と最高の高さ、保管の開始年月日(施行規則第8条の2の4第1項)
  • 添付書類:保管の場所を使用する権原を証する書類、保管の場所の平面図と付近の見取図(同条第2項)
  • 変更時:届け出た事項を変更しようとするときも、あらかじめ届出が必要(廃棄物処理法第12条第3項後段、施行規則第8条の2の5)
  • 廃止時:保管をやめた日から30日以内に届出(施行規則第8条の2の6)
  • 非常災害時:応急措置として保管した場合は、保管した日から14日以内に事後届出(廃棄物処理法第12条第4項、施行規則第8条の2の3・第8条の2の7)

処理業の許可を受けた施設や処理施設での保管、二以上の事業者による処理の特例の認定に係る保管などは、届出の対象外です(施行規則第8条の2の2)。事前届出をしなかった場合は6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります(廃棄物処理法第29条第1号)。

建設現場の下請負人も保管基準を守る義務がある

建設工事では原則として元請業者が排出事業者となりますが、下請負人が行う保管については、下請負人もまた事業者とみなして保管基準と改善命令の規定が適用されます(廃棄物処理法第21条の3第2項)。現場の廃材置場の管理は、元請・下請の双方の責任です。

保管基準違反の行政処分

保管基準に適合しない保管が行われた場合は、都道府県知事による改善命令の対象になります(廃棄物処理法第19条の3)。さらに、生活環境の保全上の支障が生じ、または生ずるおそれがあるときは、措置命令の対象にもなります(同法第19条の5)。国の行政処分の指針では、「保管」と称する廃棄物の野積みについて、それが保管か処分かにかかわらず、生活環境の保全上支障が生じるおそれがあれば措置命令の対象となるとされています(「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号)第9の4(1)①)。改善命令違反は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象です(廃棄物処理法第26条第2号)。

まとめ

産業廃棄物の保管基準は、囲い・掲示板・積み上げ高さなど、現場で日常的に意識すべき項目が中心です。ポイントを整理すると次のとおりです。

  • 囲いを設け、荷重がかかる囲いは構造耐力上安全なものにする
  • 60cm×60cm以上の掲示板に、保管場所である旨・種類・管理者・最高の高さ(処理業者は保管上限も)を表示する
  • 屋外で容器を使わない場合、高さは囲いの下端から50%勾配(荷重を受ける囲いは上端50cm下の基準線から)で計算する
  • 汚水が出る場合は排水溝と不浸透性の底面、石綿含有・水銀使用製品は仕切り(石綿は覆い・梱包も)
  • 処理業者の保管量は、積替えは搬出量の7日分、処分は処理能力の14日分が原則
  • 建設廃棄物を現場外の300m²以上の場所で保管する場合は事前届出

基準を満たしているかを定期的にチェックし、近隣トラブルや行政指導を未然に防ぎましょう。保管場所の変更を予定している場合は、事前に届出の要否も確認しておくと安心です。


出典:

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条、第12条の2、第19条の3、第19条の5、第21条の3、第26条、第29条)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第6条)
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第7条の3、第7条の5、第7条の6、第7条の8、第8条、第8条の2〜第8条の2の7、第8条の13、第9条の2、第10条の10)
  • 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)
  • 愛知県「廃棄物関係の許可及び自動車リサイクル法 手続きQ&A」