使用済みの家電製品等を有償で買い取り、リサイクル・売却等を行う事業は、廃棄物処理業の許可を持たない事業者でも営むことができますが、一部の品目については鉛や水銀などの有害物質を含むことから、無許可の事業者による不適正な保管・処理が社会問題となってきました。これを受けて設けられたのが「有害使用済機器」の届出制度です(廃棄物処理法第17条の2)。
この制度は平成29年の廃棄物処理法改正で創設され、平成30年4月1日から施行されました。国の通知では、いわゆる「雑品スクラップ」を想定して届出の対象となる機器が定められたと説明されています(「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)」(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号。以下「施行通知」)第五、第八1、「行政処分の指針について(通知)」(平成30年3月30日環循規発第18033028号。以下「行政処分指針」)第1の4(3))。
「有害使用済機器」の定義
法律上、有害使用済機器とは、「使用を終了し、収集された機器(廃棄物を除く。)のうち、その一部が原材料として相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管又は処分が行われた場合に人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるもの」とされています(廃棄物処理法第17条の2第1項)。国の通知は、定義中の用語を次のように解説しています(施行通知第五1(1))。
- 「使用を終了し」:機器が全体として機能せず、本来意図されている用途として使用できない状態。部品等の一部が使用可能でも、機器全体として機能していなければ使用を終了していると解してよい。ただし、一部が機能しない場合でも、修理が予定されていれば「使用を終了」しているとはいえない
- 「収集された」:機器が行為として収集されたこと。有害使用済機器になる前の機器の所有者等が自ら排出者となる場合は「収集された」ことにはならない
つまり、中古品として再使用(リユース)するために修理を前提に買い取るものは対象外で、「壊れた家電をスクラップとして集めて保管・解体する」ような事業が典型的な対象になります。
有害使用済機器に該当する品目
廃棄物処理法施行令では、有害物質を含む使用済機器として、次の32品目を定めています(廃棄物処理法施行令第16条の2)。いずれも一般消費者が通常生活の用に供する機器及びこれと同様の構造を有するものに限られ、附属品を含みます。
- ユニット形エアコンディショナー(ウィンド形、または室内ユニットが壁掛け形・床置き形のセパレート形)
- 電気冷蔵庫及び電気冷凍庫
- 電気洗濯機及び衣類乾燥機
- テレビジョン受信機(プラズマ式・液晶式(電池式・建築物組込み型を除く)、ブラウン管式)
- 電動ミシン
- 電気グラインダー、電気ドリルその他の電動工具
- 電子式卓上計算機その他の事務用電気機械器具
- ヘルスメーターその他の計量用・測定用の電気機械器具
- 電動式吸入器その他の医療用電気機械器具
- フィルムカメラ
- 磁気ディスク装置、光ディスク装置その他の記憶用電気機械器具
- ジャー炊飯器、電子レンジその他の台所用電気機械器具
- 扇風機、電気除湿機その他の空調用電気機械器具
- 電気アイロン、電気掃除機その他の衣料用・衛生用の電気機械器具
- 電気こたつ、電気ストーブその他の保温用電気機械器具
- ヘアドライヤー、電気かみそりその他の理容用電気機械器具
- 電気マッサージ器
- ランニングマシンその他の運動用電気機械器具
- 電気芝刈機その他の園芸用電気機械器具
- 蛍光灯器具その他の電気照明器具
- 電話機、ファクシミリ装置その他の有線通信機械器具
- 携帯電話端末、PHS端末その他の無線通信機械器具
- ラジオ受信機及びテレビジョン受信機(4に掲げるものを除く)
- デジタルカメラ、ビデオカメラ、DVDレコーダーその他の映像用電気機械器具
- デジタルオーディオプレーヤー、ステレオセットその他の電気音響機械器具
- パーソナルコンピュータ
- プリンターその他の印刷用電気機械器具
- ディスプレイその他の表示用電気機械器具
- 電子書籍端末
- 電子時計及び電気時計
- 電子楽器及び電気楽器
- ゲーム機その他の電子玩具及び電動式玩具
家庭用の大型家電から、携帯電話・パソコン・ゲーム機などの小型の電気・電子機器まで幅広く含まれています。これらの品目の保管または処分(再生を含む)を業として行おうとする者は、廃棄物処理業の許可がなくても、あらかじめ都道府県知事等への「届出」が必要とされています(廃棄物処理法第17条の2第1項)。
届出が不要とされる者
次のいずれかに該当する者は、適正な保管を行うことができる者として届出が不要です(施行規則第13条の2)。
- 対象機器が廃棄物となったものの処理について、廃棄物処理業の許可、再生利用認定、広域認定、家電リサイクル法・小型家電リサイクル法の認定等を受けていて、その許可等に係る事業場で保管する場合
- 市町村、都道府県、国
- 保管の用に供する事業場(2以上ある場合は各事業場)の敷地面積が100平方メートルを超えないものを設置する場合
- 本来の業務(保管・処分・再生以外の事業)に付随して、一時的に保管のみを行う場合
国の通知は、ここでいう「許可等」には金属またはプラスチックを主として含む廃棄物の処理に係る許可等も含むと解して差し支えないとし、同じ事業者でも保管等の状況次第で届出の要否が異なり得るとしています(施行通知第五1(2))。
届出の手続
| 手続 | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 届出 | 保管・処分・再生の事業を開始する日の10日前まで | 施行規則13条の3 |
| 変更の届出 | 変更の日の10日前まで | 施行規則13条の4 |
| 廃止の届出 | 廃止の日から10日以内 | 施行令16条の4、施行規則13条の11 |
届出書には、事業の範囲、事務所・事業場の所在地と敷地面積、保管場所の所在地・面積、保管する品目・保管量・保管の高さ、処分・再生を行う場合の事業場の所在地と品目、施設を設置する場合の施設の種類・数量・処理能力などを記載し、事業計画の概要、事業場の平面図・付近の見取図、施設の構造図等、使用権原を証する書類、処分・再生に伴って生じた廃棄物の処理方法または再生品の利用方法を記載した書類、住民票の写しまたは定款・登記事項証明書などを添付します(施行規則第13条の3)。
保管等に関する義務
有害使用済機器の保管等を行う事業者として届出を行った者は、廃棄物処理法施行令・施行規則に定める保管・処分の基準を遵守しなければなりません(廃棄物処理法第17条の2第2項、施行令第16条の3)。廃棄物ではないとはいえ、有害物質を含む可能性がある物であることから、産業廃棄物の保管基準に準じた管理が求められている点が特徴です。
保管の基準
主な保管基準は次のとおりです(施行令第16条の3第1号、施行規則第13条の5〜第13条の8)。
- 囲い:保管の場所の周囲に囲いを設ける。荷重が直接かかる構造の場合は構造耐力上安全であること
- 掲示板:縦・横60センチメートル以上で、保管の場所である旨(処分・再生も行う場合はその旨も)、保管する品目、管理者の氏名・名称と連絡先、屋外で容器を用いずに保管する場合は最高の高さを表示する
- 高さ制限:屋外で容器を用いずに保管する場合は、囲いの下端から50%勾配の面までの高さ等で計算し、かつ最大5メートルまで(産業廃棄物の保管基準にはない「5メートル」の上限がある)
- 汚水対策:汚水が生ずるおそれがある場合は、底面を不浸透性の材料で覆い、油分離装置とこれに接続する排水溝等を設ける
- 騒音・振動:生活環境の保全上支障が生じないよう必要な措置を講ずる
- 火災防止:他の物と区分して保管し、電池・潤滑油等の火災・延焼のおそれがあるものは技術的に可能な範囲で回収・処理する。一の保管の単位の面積は200平方メートル以下、隣接する保管の単位の間隔は2メートル以上(仕切りがある場合を除く)
- 衛生:ねずみ・害虫が発生しないようにする
保管場所の掲示板には、保管の場所である旨や、保管する品目、管理者の連絡先などを記載することが求められる点は、産業廃棄物の保管基準と共通しています。
処分・再生の基準
処分・再生を行う場合も、汚水対策(不浸透性の底面・油分離装置等)、騒音・振動対策、火災防止(他の物との区分、電池等の回収)が求められ、エアコン・冷蔵庫・洗濯機・テレビの4品目については環境大臣が定める方法により行う必要があります。また、有害使用済機器は、焼却、熱分解、埋立処分、海洋投入処分を行ってはなりません(施行令第16条の3第2号・第3号、施行規則第13条の9・第13条の10)。
帳簿の備付け
届出を行った事業者は、事業場ごとに帳簿を備え、保管については受入年月日、受入先ごとの受入量と品目、搬出年月日・搬出先ごとの搬出量と品目を、処分・再生については処分・再生年月日、方法ごとの量、持出先ごとの持出量などを記載しなければなりません。帳簿は毎月末までに前月分の記載を終え、1年ごとに閉鎖し、閉鎖後5年間保存します(施行規則第13条の12、施行通知第五4)。
廃棄物として引き取る場合との違い
同じテレビやエアコンであっても、有償・無償で「買い取る」形で引き取る場合は有害使用済機器の届出制度の対象となる一方、依頼者から処分料金を受け取って「廃棄物として」引き取る場合は、通常の一般廃棄物・産業廃棄物としての処理業許可が必要になります。事業の実態(対価の授受の方向性、廃棄物として処理するのか有価物として買い取るのかという位置づけ)によって、適用される規制の枠組みが異なる点は、事業者にとって特に誤解しやすいポイントです。
廃棄物かどうかは「総合判断」
廃棄物に当たるかどうかは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断されます(行政処分指針第1の4(2)①)。行政処分指針は、取引価値の有無の判断にあたっては、名目を問わず処理料金に相当する金品の受領がないこと、譲渡価格が運送費等の諸経費を勘案しても双方にとって営利活動として合理的な額であることなどを確認するとしています(同エ)。また、有償譲渡契約があることをもって直ちに有価物と判断せず、各種の判断要素により総合的に判断するとしています(同)。
名目上は「買い取り」としていても、実態として不用品の処分料金を徴収しているようなケースでは、無許可での廃棄物処理とみなされるリスクがあるため注意が必要です。行政処分指針は、廃棄物該当性を判断した結果、廃棄物に当たらないとされた対象機器の保管・処分については、有害使用済機器への該当性を適切に判断するよう求めています(行政処分指針第1の4(3))。
届出を怠った場合のリスク
有害使用済機器の保管等を業として行いながら届出を行っていない場合や虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象になります(廃棄物処理法第30条第6号)。保管・処分の基準に違反した場合は改善命令の対象となり、改善命令違反は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科の対象です(同法第17条の2第3項、第19条の3、第26条第2号)。生活環境の保全上の支障が生じるおそれがある場合には措置命令の対象にもなり、措置命令違反は5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科の対象です(同法第19条の5、第25条第1項第5号)。報告徴収・立入検査の規定も準用されます(同法第17条の2第3項)。
使用済家電等の買取り・リサイクル事業を行っている、またはこれから行おうとしている事業者は、自社の取り扱う品目が対象に含まれていないかを確認し、必要な届出を行うことが重要です。
【2026年法改正】届出制から許可制へ移行予定
令和8年6月19日公布の法律第43号により、廃棄物処理法が改正され、有害使用済機器の届出制度(第17条の2)に代わって、「要適正保管使用済金属・プラスチック物品保管業」「要適正再生使用済金属・プラスチック物品再生業」の許可制度(改正後の第4章の2)が設けられることになりました(改正反映後の廃棄物処理法第2条第7項〜第9項、第24条の7以下)。主な内容は次のとおりです。
- 対象物:「使用済金属・プラスチック物品」(使用を終了し、収集された物品で、全部または一部が金属またはプラスチックから成るもの(廃棄物等を除く))のうち、適正でない保管が行われると人の健康・生活環境に被害を生ずるおそれがあるため、廃棄物の適正な保管と同等の保管を要するもの(改正後第2条第7項・第8項)
- 許可制:譲渡のための保管を業として行おうとする者は、都道府県知事の許可が必要。ただし、事業場の敷地面積が政令で定める面積以下の者などは除かれる(改正後第24条の7第1項)。再生及び保管を業として行う場合も同様(同第24条の15第1項)
- 更新制:許可は5年を下らない政令で定める期間ごとに更新が必要(同第24条の7第2項)
- 欠格要件:産業廃棄物処理業とほぼ同様の欠格要件が設けられる(同第24条の7第5項第2号)
- 既存の処理業者の特例:産業廃棄物収集運搬業者・処分業者等は、その許可に係る保管と同等の保管について、新たな許可なく行うことができる(同第24条の12、第24条の19)
- 名義貸しの禁止、帳簿の備付け、事業停止・許可取消しの規定も設けられる(同第24条の7第8項、第24条の9〜第24条の11)
施行日は、原則として公布の日から2年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされており、施行日前でも許可の申請をすることができ、施行日前に許可を受けた者は施行日に許可を受けたものとみなす準備行為の規定が置かれています(令和8年6月19日法律第43号附則第1条・第2条)。現在届出で事業を行っている事業者は、施行日や政令で定める面積要件等の公表を注視し、許可取得の準備を進める必要があります。
まとめ
有害使用済機器の届出制度は、廃棄物処理業の許可を持たない買取り事業者にも一定の管理義務を課す仕組みです。ポイントを整理すると次のとおりです。
- 対象は、エアコン・冷蔵庫・洗濯機・テレビから携帯電話・パソコン・ゲーム機まで政令で定める32品目で、使用を終了し収集されたもの(修理予定のものは対象外)
- 敷地面積100m²以下の事業場のみの場合や、廃棄物処理業の許可等に係る事業場での保管などは届出不要
- 事業開始の10日前までに届出。保管は火災防止(保管単位200m²以下・間隔2m以上)と高さ5m以下などの基準を守り、帳簿を5年間保存
- 「買取り」名目でも処理料金を受け取っていれば廃棄物処理業の許可が必要になり得る
- 2026年の法改正で許可制へ移行予定。施行日前から申請可能
「買い取り」と「廃棄物としての引き取り」の違いを正しく理解したうえで、対象品目を取り扱う事業者は、届出の要否を確認し、保管基準を遵守した事業運営を行いましょう。
出典:
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第17条の2、第19条の3、第19条の5、第25条、第26条、第30条)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(令和8年6月19日法律第43号による改正反映版)(第2条、第24条の7〜第24条の19)、同法律附則
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(第16条の2〜第16条の4)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(第13条の2〜第13条の12)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の施行について(通知)(平成30年3月30日環循適発第18033010号・環循規発第18033010号)
- 行政処分の指針について(通知)(平成30年3月30日環循規発第18033028号)