こんにちは、行政書士の三澤です!

「積替え保管って聞いたことはあるけれど、うちにも関係あるのかな?」 「現場で発生する廃棄物、毎回そのまま処分場まで直行していて、なんとなく非効率に感じる…」 そんなふうに思ったことはありませんか?

実は今、建設業者の方から「積替え保管を取り入れて効率化したい」という相談が増えてきています。

積替え保管とは、収集した産業廃棄物を一時的に自社の保管施設に集めておき、ある程度まとまった量になった段階で改めて処分場へ搬出する仕組みです。 これにより、運搬回数の削減・人件費や燃料費の抑制・環境負荷の低減など、さまざまなメリットが期待できます。

ただし、この積替え保管は、勝手に始めていいわけではありません。 既に産業廃棄物収集運搬業(積替え保管なし)の許可を持っている方でも、 新たに「積替え保管あり」の変更許可申請が必要であり、しかも審査は新規申請と同等レベルの厳格さが求められます。

「もともと許可を持ってるから、ちょっと設備を足せばいいでしょ?」と軽く考えてしまうと、 後で大きなトラブルや指導を受けるリスクがあります。

この記事では、
・運搬効率を上げたいと考えている建設業者の方
・積替え保管に興味があるけど、制度や手続きがよくわからない方
・どのタイミングで、どんな準備が必要なのか知りたい方
といった方向けに、 「積替え保管あり」の許可追加手続きについて、初めての方でもわかりやすく、実務ベースで解説していきます。

この記事を読むことで、
・積替え保管の基本的な仕組みと導入メリット
・申請手続きの流れと必要書類
・注意点や審査でよくあるつまずきポイント などがスッキリ理解できます。

「うちでも許可を取れるの?」「まず何から始めればいいの?」と迷われている方の道しるべになれば幸いです。

それでは、さっそく見ていきましょう!

目次

第1章:積替え保管とは?建設業者にとってのメリットと注意点

■ 積替え保管の定義と、直行運搬との違い

積替え保管とは、収集した産業廃棄物を一時的に施設で保管し、別の車両に積み替えて改めて処分場等へ運ぶ行為を指します。 処分場に直接運ぶ「直行型」の運搬とは異なり、いわば“中継拠点”を活用する運搬方式です。

直行運搬では、たとえ車両に空きがあっても、1件ごとに処分場へ行くことになりますが、 積替え保管を使えば、少量の廃棄物を一旦まとめておいて、効率的に大型車でまとめて運べるようになります。

■ 運搬コストや環境負荷を抑えられるメリット

積替え保管の最大のメリットは、運搬の効率化です。

  • 小口の現場を複数集約してまとめて運搬できる
  • 運搬回数が減ることで、人件費・燃料費を削減
  • 車両稼働の効率が上がる
  • CO2排出量も減少し、環境配慮の面でも優位性がある

といった利点があり、特に複数の工事現場を持つ建設業者にとっては、実務上の大きなメリットになります。

また、廃棄物の積替えを通して、種類ごとの選別や再資源化への対応もしやすくなるケースもあります(※処理行為を行う場合は別途許可が必要です)。

■ 無許可で行うと「無許可営業」に該当するリスク

注意が必要なのは、この積替え保管は許可制であるということです。

たとえ現在「積替え保管なし」の産業廃棄物収集運搬業の許可を有していても、 積替え保管施設を設けて運用するには「変更許可申請」が必要になります。

もし、こうした変更手続きを行わずに積替え保管を実施すれば、 法的には「無許可営業」や「無許可での事業範囲変更」として扱われ、 最悪の場合は5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金といった厳しい罰則が科されるおそれがあります。

このため、積替え保管の導入にあたっては、しっかりと手続きを踏み、 計画段階から行政との協議を行うことが極めて重要です。

次章では、具体的にどのような手続きが必要かを見ていきます。

第2章:積替え保管を追加したいときの手続き概要

■ 「変更届」ではなく「変更許可申請」になる理由

積替え保管を新たに始める場合は、単なる届け出では済みません。 なぜなら、「積替え保管を行うこと自体が、事業の範囲を根本的に拡張する行為」だからです。

法的にもこれは「事業の範囲の変更」に該当し、変更届出ではなく変更許可申請が必要となります。 この点を誤解して「住所変更や車両の追加と同じ感覚で届け出ればいい」と認識している方もいますが、 手続きの性質がまったく異なります。

変更届:形式的な変更(役員交代、車両追加など)→ 原則10日以内の提出 変更許可申請:事業内容そのものの変更(積替え保管追加など)→ 審査・許可が必要

このように、許可なく積替え保管を行うと無許可営業となり、重い罰則対象となるため、必ず事前に許可を得る必要があります。

■ なぜ新規申請並みに審査が厳しいのか?

変更とはいえ、積替え保管の追加は実質的に新規申請と同等と見なされるケースが多く、 必要な書類や審査内容もそれに準じて厳格です。

理由は以下の通りです:

  • 積替え保管施設は「環境リスク(悪臭・飛散・騒音等)」を生み出す可能性があるため、慎重な審査が必要
  • 保管施設の構造基準(囲いや床面、排水設備等)、管理体制、運搬ルートなど多面的なチェックが求められる
  • 周辺住民との合意形成が必要になる地域もある(説明会・協定書の提出など)

そのため、変更許可申請には次のような書類一式が必要になります:

  • 事業計画書(取扱量、保管量、運搬ルート、管理者体制など)
  • 積替え保管施設の構造図、写真、設置位置図
  • 土地使用権限を証明する書類(登記簿・賃貸契約書など)
  • 収支計画書・直近の財務諸表など、経理的基礎を証明する資料

このように、施設をゼロから評価される前提で書類を揃える必要があります。

■ 地域・施設によっては半年以上かかることも

申請から許可取得までにかかる期間は、自治体や申請内容によって異なりますが、 積替え保管ありの場合は、通常の「積替え保管なし」に比べて時間がかかります。

具体的には:

  • 審査項目が増える(施設図面や現地調査の対象が多い)
  • 自治体によっては事前協議や住民説明会が義務付けられている
  • 書類の補正や再提出が求められるケースも多い

その結果、準備〜申請〜審査〜許可までに6ヶ月〜1年以上かかることもあるのが実情です。

「思い立ったらすぐに積替え保管を導入」というわけにはいかないため、 計画段階で早めに専門家に相談し、スケジュールを逆算して準備を始めることが大切です。

次章では、こうした手続きの流れをより具体的に見ていきます。

第3章:申請の流れと必要書類

■ 手続きの概要フロー

積替え保管ありの許可を追加するには、以下のような流れで手続きを進めます:

  1. 事前相談(自治体との打ち合わせ)
  2. 書類の収集・作成(設計図や事業計画等)
  3. 申請書提出(窓口または郵送)
  4. 形式審査・内容審査(書類のチェック)
  5. 現地確認(施設の立ち入り調査)
  6. 許可書の交付・事業開始

これらのステップのうち、最も重要なのが「事前相談」です。

■ 事前相談の重要性

積替え保管施設の追加にあたっては、申請書をいきなり提出するのではなく、 事前に自治体の担当課と綿密に相談を行うことが重要です。

なぜなら、地域によっては:

  • 積替え保管施設の設置にあたり、住民説明会事前周知が義務となっている
  • 施設設計や土地利用に関して、事前チェックを受けておかないと審査がストップする

など、自治体ごとの独自ルールや運用があるからです。

愛知県の一部市町村では、相談が義務づけられているケースもあるため、 「相談せずに出したら受け付けてもらえなかった」ということのないよう注意が必要です。

■ 必要書類と添付資料の一覧

申請に必要な書類は非常に多岐にわたります。代表的なものは次の通りです:

  • 変更許可申請書
  • 事業計画書(運搬ルート、保管量、取扱量、運行体制など)
  • 施設設計図(平面図・立面図・断面図など)
  • 位置図、公図、土地登記簿または使用権限書類(賃貸借契約書など)
  • 施設写真(完成予想図または既設施設の現況)
  • 周辺環境図、排水経路図、避難経路図など
  • 誓約書、役員の住民票、登記事項証明書
  • 収支計画書、貸借対照表・損益計算書などの経理資料

申請者の状況(法人か個人か、施設の新設か既設か等)によって追加書類が求められることもあります。

■ 許可取得までの期間と費用の目安

申請から許可までにかかる期間はおおよそ6ヶ月〜1年程度が目安です。

  • 事前相談〜書類準備に1〜2ヶ月
  • 審査期間に3〜6ヶ月
  • 現地確認や補正対応を含めると、合計で半年〜1年

また、申請にかかる費用も無視できません。

  • 行政への申請手数料:約10万円前後(地域により異なる)
  • 設計図や測量、図面作成に関わる実費:10〜30万円程度
  • 行政書士等への申請書類作成依頼費用:20〜40万円程度(内容により変動)

これらのコストを踏まえて、導入の可否を慎重に検討することが大切です。

次章では、地域ごとに異なる具体的な取り扱いの違いを見ていきます。

第4章:地域によって違う?愛知・岐阜・三重・静岡の違い

積替え保管を含む産業廃棄物収集運搬業の許可は、基本的に各自治体が管轄しています。 そのため、都道府県や政令市によって手続きの内容や審査基準が異なるのが実情です。 ここでは、東海地方(愛知・岐阜・三重・静岡)の違いを中心に解説します。

■ 許可権者の違い

積替え保管の変更許可申請を行う際、どこに申請するかは地域によって異なります。

  • 愛知県では、原則として「県知事」が許可権者。ただし名古屋市などの政令指定都市では市長が権限を持つ
  • 岐阜県・三重県・静岡県も、原則は「県知事」が許可権者ですが、一部地域では市が窓口となるケースもあり。

このため、申請先がどこになるか、事前に管轄の確認が不可欠です。

■ 岐阜・三重では住民説明会が義務になることも

岐阜県・三重県では、特に「積替え保管施設を新設する場合」、 周辺住民への説明会開催が義務付けられていることがあります。

説明会の開催にあたっては:

  • 周辺地図で関係住民を特定し、案内文書を配布
  • 実際の説明会で施設概要や環境配慮策を説明
  • 議事録・参加者名簿・質疑応答記録などを添付資料として提出

といった対応が必要になり、準備に時間と労力がかかります。 このプロセスを怠ると、審査が中断される可能性があるため、早い段階で対応を検討すべきです。

■ 静岡県の独自基準:原則1箇所ルール・保管量制限など

静岡県では、積替え保管に関して独自の運用基準が厳しい傾向があります。

  • 原則として1業者につき1箇所しか積替え保管施設を持てない(例外には正当な理由が必要)
  • 保管量の上限や、保管可能日数(7日以内)についても厳格に運用されている
  • 地域によっては周辺環境の特性上、設置が認められにくい場合もある

そのため、静岡県で積替え保管を導入したい場合は、 「立地選定の段階から慎重に検討する必要がある」と言えるでしょう。


このように、地域ごとに審査や対応内容が異なるため、 各自治体の最新の運用ルールを正確に把握することが成功のカギです。 申請をスムーズに進めるためにも、管轄の特徴を理解し、事前相談の段階から行政との連携を大切にしましょう。

次章では、積替え保管の申請で実際に起きやすいミスや指摘事例について紹介します。

第5章:よくある不備と行政指導の事例

積替え保管を追加する申請では、提出書類が多く、施設や運営体制に関する説明も複雑になるため、不備が発生しやすいのが実情です。

ここでは、行政からよく指摘される不備や実際の事例を紹介します。

■ 不備が多い書類ベスト5

  1. 図面の不備(縮尺不明・寸法記載漏れ・平面図のみなど)
  2. 土地の使用権限に関する証明書類の不足(登記簿謄本・契約書の不備)
  3. 事業計画書の記載漏れ(保管量、積替え頻度、運搬ルートの記載なし)
  4. 経理的基礎の証明資料の不備(直近の財務諸表未提出、赤字決算への対応不足)
  5. 周辺環境図・排水経路図などの環境配慮資料の不備または未添付

これらの不備は、単に形式ミスにとどまらず、再提出や審査の遅延、許可の保留要因となるため、事前チェックが重要です。

■ 実際にあった行政の指摘事例

  • 保管量の過大申請:実態に見合わない保管量を申請した結果、「運営能力に対する不整合」として審査保留。
  • 図面と現地の不一致:提出された設計図と実際の施設構造が異なり、是正指導・図面修正のやり直し。
  • 土地の権限不明確:賃貸契約期間が短すぎて「継続的使用が確保されていない」と判断された。
  • 排水設備の不備:床面に排水勾配がない、排水処理装置の記載漏れで不適合認定。

これらはすべて、事前相談や専門家チェックがあれば回避可能だったミスです。

■ 不備があるとどうなる?

  • 書類の補正指示(修正・再提出)が入り、審査が中断または延期
  • 現地確認まで進めず、手続きが長期化
  • 悪質な場合には、不許可処分や再申請を求められることも
  • 許可後に虚偽や不備が発覚した場合は、許可取消・営業停止処分の可能性も

そのため、積替え保管の申請にあたっては、制度・実務に通じた専門家による事前確認行政との密な相談が成功の鍵を握ります。

次章では、許可取得後の運営で特に気をつけるべきポイントを解説します。

第6章:許可後の運営で気をつけるポイント

積替え保管の許可を取得した後も、適正な運営管理が求められます。 ここでは、実務上とくに重要な3つのポイントを解説します。

■ 保管量管理

申請時に定めた最大保管量(㎥)を超えて保管することも禁止されています。 そのため、搬入・搬出のスケジュールを正確に管理し、 日ごとの受入量・搬出量を記録・把握しておく体制が必要です。

帳簿やデジタルツールを活用した在庫管理システムを導入しておくと、 行政指導や監査にもスムーズに対応できます。

■ 表示義務や帳簿の保存、マニフェストの正しい使い方

許可後の運営では、以下のような義務が課されます:

  • 施設への許可票・標識の掲示(許可番号・事業者名・保管量等の明示)
  • 帳簿(管理記録)の整備・保存(搬入日・搬出日・数量・品目など)
  • 電子マニフェストまたは紙マニフェストの正確な運用

特にマニフェストについては、収集運搬と処分の連携を記録する重要な書類です。 記載漏れ・紛失・記録不一致があると、改善命令や指導対象となる可能性があります。

運用開始後も、担当者が制度や運用ルールを理解し、継続的に教育・確認していくことが大切です。

■ 行政立入検査への備え

積替え保管施設は、環境リスクや周辺への影響が大きいため、 自治体による立入検査(実地調査)が行われることがあります。

検査の主なチェックポイントは:

  • 保管量や保管日数が基準内に収まっているか
  • マニフェストや帳簿の記録が正確か
  • 表示義務を果たしているか
  • 施設の構造が許可通りになっているか

こうした検査は予告なく行われることもあるため、 日頃から適正な運営を徹底しておくことが最良のリスク管理です。

まとめ:積替え保管は”戦略的な一手”、ただし慎重に

積替え保管は、適切に導入できれば運搬効率やコスト面で大きな効果をもたらす、 まさに”戦略的な一手”です。

しかし、申請手続きは新規許可並みに厳しく、準備には時間も手間もかかります。 許可取得後も日々の運営管理が求められ、継続的な体制整備が不可欠です。

「便利そうだからやってみよう」という気軽な判断では、 不許可や運営停止といったリスクも抱えることになります。

だからこそ、積替え保管を検討する際は、 制度や実務に詳しい専門家に早めに相談し、段階的に準備を進めることが成功のカギです。

積替え保管を「強み」に変えていきたい建設業者の皆さま、 ご検討段階からでもお気軽にご相談ください。


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