こんにちは、行政書士の三澤です!
「建設業許可の“財産的基礎”って何だろう?」「そろそろ許可申請を考えたいけど、自己資金が足りないかも…」
そんな疑問やお悩みを感じていませんか?
この記事では、
・建設業許可の取得を検討している中小企業・個人事業主の方
・資本金や預金が少なく、要件を満たせるか不安な方
・公共工事への参入や、元請との取引拡大を目指している方
といった建設業者様向けに、「財産的基礎とは何か?どうクリアするか?」というテーマを、初めての方でもわかりやすいよう実務の視点で丁寧に解説していきます。
この記事を読むことで、財産的基礎の3つのクリア方法(純資産・資金調達・営業実績)の違いや、自社がどのルートで許可取得を目指せるのかが具体的にわかるようになります。
「自己資金がなくても申請できるの?」「融資予定でも大丈夫?」と迷われている方の道しるべとなるよう、ポイントを絞ってご紹介します。
それでは、さっそく見ていきましょう!
1. はじめに
「そろそろ建設業許可を取って、仕事の幅を広げたい」
そんな風に考えている事業者の方にとって、最初のハードルとなるのが「許可要件」です。
建設業許可を取得するためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。その中でも、意外と見落とされがちなのが 「財産的基礎」 という要件です。
「え、財産ってことはお金が必要なの?」「自己資金がないと無理なの?」と、不安になる方も多いのではないでしょうか。
でも大丈夫。実はこの財産的基礎、いくつかの選択肢が用意されていて、現金がない場合でも許可が取れるルートがあります。
本記事では、愛知県で一般建設業許可を目指す方に向けて、「財産的基礎」とは何か?どうすればこの要件を満たせるのか?をわかりやすく・実務目線で解説していきます。
具体的には、以下のような内容を網羅しています。
- 「財産的基礎」って何?
- 要件を満たすための3つの方法とは?
- 自分はどの方法で許可が取れそう?
- よくある勘違いや失敗例
- 財産が足りない場合の対処法
この記事を読み終える頃には、「自社がどの方法で財産的基礎をクリアできるか」がわかるようになります。
不安なく建設業許可の申請に臨めるよう、ぜひ最後までご覧ください。
2. 財産的基礎とは?ざっくり理解する
「財産的基礎」と聞くと、なんだか難しく感じてしまうかもしれませんが、簡単に言えば「この会社(または個人)は、ちゃんと仕事を完了させられる経済的な体力があるか?」という視点で見られるものです。
建設工事というのは、材料の仕入れや人件費など、工事を完了するまでに多額のコストがかかる業種です。そのため、許可を出す側としては「この業者、本当に最後まで責任を持ってやり遂げられるのか?」という点を見極める必要があります。
そこでチェックされるのが「財産的基礎」。
- 万が一のトラブルがあっても対応できる余力があるか?
- 工事の途中で資金が尽きて頓挫しないか?
こうしたリスクを避けるために、一定以上の資金力や信用力が求められているのです。
これは愛知県だけでなく、全国共通のルールです。建設業という「社会インフラを支える大事な仕事」を任せる以上、一定の信頼性と継続性が求められるのは当然のことともいえるでしょう。
次の章では、この財産的基礎を「どうやってクリアするか?」という具体的な3つの方法について解説していきます。
3. 要件はこの3つのどれかを満たせばOK!
一般建設業の許可を取得するには、財産的基礎の要件として次の3つのうちいずれかを満たせばOKです。
- 【方法①】純資産500万円以上
- 【方法②】500万円以上の資金調達能力
- 【方法③】過去5年間の継続営業実績
この中で、もっともオーソドックスでわかりやすいのが「純資産500万円以上」です。ここではまず、この【方法①】について詳しく見ていきましょう。
3-1. 【方法①】純資産500万円以上
法人と個人事業主でどう違う?
「純資産」という言葉は一見難しそうですが、ざっくり言えば「資産から負債を引いた残り」のこと。つまり、借金を差し引いても手元に残っている自分の財産です。
ただし、この純資産の判断方法は法人と個人事業主で異なるため注意が必要です。
- 法人(株式会社・合同会社など):貸借対照表の「純資産の部」の合計が500万円以上であること。
- 個人事業主:独自の計算式で純資産を算出します。
どうやって計算する?
法人の場合はシンプルで、直近の決算書に記載されている「純資産合計」を見るだけ。設立して間もない法人で決算を迎えていない場合は、「開始貸借対照表」や「資本金額」で判断することも可能です。
一方、個人事業主の場合は少し複雑です。以下のような式で純資産額を計算します:
(期首資本金 + 事業主借勘定 + 事業主利益)- 事業主貸勘定 +(引当金や準備金など)
事業主借・事業主貸という科目が関係してくるため、帳簿がしっかりしていないと正確な計算が難しいこともあります。
何を証明書類として出すの?
- 法人の場合:直近の決算書類(貸借対照表)、または設立時の貸借対照表。
- 設立したばかりであれば、資本金500万円以上の登記事項証明書も有効。
- 個人事業主の場合:確定申告書の控え(貸借対照表付き)。
- 貸借対照表で純資産が確認できない場合は、銀行の預金残高証明書などを追加で提出するケースも。
この【方法①】は、すでにある程度の資本がある事業者にとってはもっとも手堅い方法です。書類の準備も比較的スムーズに進むため、まずはここから検討してみるのがおすすめです。
次のセクションでは、資本が足りない方向けの【方法②】「資金調達能力」についてご紹介します。
3-2. 【方法②】資金調達能力500万円以上
「資本金や純資産が足りないけど、口座にはお金がある」「融資が受けられる予定がある」 そんな場合でも大丈夫。この【方法②】では、“いざという時に500万円以上の資金を調達できる”ことが証明できればOKです。
証明方法は主に3つ
- 預金残高証明書
申請者名義の金融機関の口座に、500万円以上の残高があることを証明する書類。銀行や信用金庫で発行してもらいます。 - 融資証明書(融資可能証明書)
銀行などの金融機関が、「この人には500万円以上の融資枠を設定できる」と証明してくれる書類です。融資の実行前でもOK。 - 不動産担保(+評価証明)
500万円以上の価値がある不動産を担保にして、金融機関から融資を受ける能力があることを示すケースです。
注意すべきポイント
- 証明書の有効期限に注意
いずれの証明書も、原則「証明日から1ヶ月以内(あるいは直前2週間以内)」に申請を出す必要があります。有効期限を過ぎると無効になるため、申請のタイミングと証明書の発行日をしっかり調整しましょう。 - 預金残高の合算はOK、でも日付は統一を!
複数の口座の残高を合算して500万円以上にすることも可能です。ただし、その場合はすべての証明書が同じ日付(基準日)である必要があります。 - 通帳コピーでは不可
よくある誤解ですが、通帳の写しだけでは証明になりません。必ず「銀行発行の正式な証明書」が必要です。 - 一時的な借り入れでの調整は慎重に
短期的に資金をかき集めて口座残高を見せることも形式上は可能ですが、審査官は“資金の出どころ”や“事業実態”も見ています。あまりに不自然な動きがあると、審査にマイナスの印象を与えることもあるため要注意です。
この【方法②】は、資本金が少ない創業初期の会社や、個人事業主の方でも使いやすい選択肢です。預金や借入の状況に応じて、柔軟に活用を検討してみてください。
次回は、【方法③】「過去5年間の継続営業実績」について解説していきます。
3-3. 【方法③】過去5年間の継続営業実績(主に更新時)
3つ目の方法は、「過去5年間にわたって建設業の許可を持ち、継続して営業してきた実績がある」ことを証明するというものです。
これは、原則として“更新申請時”にしか使えない方法であり、新規で建設業許可を取得しようとする場合には使えません。
どんな場合に使える?
- 現在、一般建設業許可を持っていて、今回が「更新申請」である場合
- 許可を失効せず、連続して営業してきた5年間の実績がある場合
このようなケースでは、「長期間安定して建設業を営んできた実績」そのものが、一定の財産的基礎(=経済的信頼性)を裏付けるものと判断されるため、純資産や資金調達の証明が不要になります。
注意点
- 許可が一度でも切れているとNG(たとえば更新を忘れて失効してしまった場合など)
- 更新ではなく「再取得」扱いになるときはこの方法は使えません
つまり、「一度許可を取ったことがあるけど失効してしまい、改めて新規で申請する」といった場合には、この方法③は適用されないということです。
この方法③は、すでに許可を持っていて、引き続き営業を続けていく方にとっては非常にありがたいルールです。ただし、更新時にうっかり期限を過ぎてしまうと適用できなくなってしまうので、スケジュール管理にはくれぐれも注意しましょう。
次章では、これら3つの方法をふまえて「自社がどの方法で財産的基礎をクリアできそうか」を判断するヒントをご紹介していきます。
4. ケース別|自分はどの方法でクリアできそう?
ここまで3つの方法をご紹介してきましたが、「じゃあ自分はどれを使えばいいの?」というのが気になるところですよね。
ここでは、よくある状況別に、どの方法で要件をクリアできそうかを整理してみました。
法人を設立したばかり
- おすすめ:方法①「純資産500万円以上」
- 設立間もない法人の場合は、決算書がないため、「開始貸借対照表」や「登記事項証明書(資本金500万円以上の場合)」で証明する形になります。
- 最初から資本金をしっかり準備しておくと、このルートでスムーズに許可取得が可能です。
資産はないけど、預金はある
- おすすめ:方法②「資金調達能力(預金残高証明書)」
- 会計上の純資産は足りなくても、500万円以上の預金残高があればクリアできます。
- 申請直前に証明書を取得する必要があるため、発行タイミングには注意しましょう。
融資の予定がある(金融機関と相談中)
- おすすめ:方法②「資金調達能力(融資証明書)」
- すぐに預金はないけれど、金融機関から「500万円以上の融資が可能」との証明がもらえればOK。
- 実行前でも大丈夫ですが、「融資残高証明」ではなく「融資可能額の証明」が必要です。
個人事業で何年も続けてきた
- おすすめ:方法①「純資産500万円以上」
- 個人事業主の場合は、独自の計算式に基づく純資産額で判断されます。
- 計算がやや複雑なので、帳簿をしっかり整えておくことが大切です。
- 税理士や行政書士に相談しながら進めると安心です。
このように、自社の状況や今ある資産、経営実績によって、どのルートがもっとも適しているかは変わってきます。無理に一つの方法にこだわらず、自分に合った方法を選ぶことが、スムーズな許可取得への近道です。
次章では、申請時にありがちな勘違いや、実際にあった不備の事例を紹介していきます。
5. よくある勘違い・ミス事例
建設業許可の申請では、書類の不備や制度の誤解によって「審査でストップがかかる」ケースが少なくありません。ここでは、財産的基礎に関するよくあるミスや勘違いをまとめました。
証明書の有効期限切れ
- 最も多いミスが「預金残高証明書」や「融資証明書」の有効期限切れです。
- 「証明日から1ヶ月以内(あるいは直前2週間以内)」に申請書を提出しないと、証明書として認めてもらえないケースが多いようです。
- 「忙しくて提出が遅れた」「証明書を先に取って安心していた」など、うっかりミスが命取りに。取得日と申請日をセットでスケジューリングしましょう。
間違った計算方法(特に個人事業主)
- 個人事業主の方が「期首資本金だけでOKだと思っていた」など、純資産の正しい計算方法を知らないケースも多く見られます。
- 「事業主借」「事業主貸」「利益」などをきちんと帳簿から拾い出さないと正しい数値にならないため、計算に自信がない場合は専門家のサポートを活用しましょう。
「融資残高証明」ではダメ!
- 「銀行に融資があるから大丈夫」と思って、融資“残高”の証明書を提出してしまうケースがあります。
- しかし、求められているのは「これから500万円以上の融資が可能です」という融資“可能額”の証明書(融資証明書)」です。
- 銀行に依頼する際も「融資の見込み額を証明してほしい」としっかり伝えましょう。
書類の不備・不整合
- 提出書類の一部抜けや、内容の食い違いがあると、審査で止まってしまいます。
- 例:貸借対照表の金額と確定申告書の数字が合っていない、証明書類に署名や捺印が漏れているなど。
申請をスムーズに通すためには、「細かいけれど大事なポイント」をしっかり押さえておくことが重要です。次章では、現時点で要件を満たしていない場合にどう対応すればいいのか?について解説していきます。
6. 財産的基礎が足りない場合の対処法
「要件を見てみたけど、今のままでは500万円の純資産もないし、預金も足りない…」 そんなときでも、あきらめる必要はありません。以下のような現実的な対策があります。
増資や資本金の追加
- 法人の場合:会社の資本金を増やすことで、純資産額を増加させることができます。増資手続きには登記変更などが必要になりますが、最も確実な対策のひとつです。
- 個人事業主の場合:自己資金を事業に追加投入することで、「期首資本金」や「利益」の金額を増やし、純資産額を増やすことができます。
金融機関への相談(融資 or 残高調整)
- 預金残高が不足している場合でも、一時的に借入を受けて口座残高を500万円以上にするという方法もあります。
- ただし、この方法は審査官に不自然な印象を与えることもあるため、資金の出どころや使途を明確にしておくことが重要です。
- または、金融機関に「融資証明書の発行」を依頼し、資金調達能力を証明することもできます。
タイミングを見て申請をずらす
- 近いうちにまとまった入金が予定されていたり、決算が改善される見込みがある場合には、少しだけ申請時期を後ろ倒しにするという判断も有効です。
- 特に新規法人などで資本増強中の場合は、余裕を持ったスケジューリングが重要です。
7. 特定建設業との違いに注意
ここまで解説してきたのは「一般建設業許可」の財産的基礎の要件ですが、もう一つ、特定建設業許可というものがあります。
この特定建設業では、下請けに出す工事が高額になるため、発注者に対してより強い責任を負う立場になります。したがって、求められる財務基準も格段に厳しくなります。
特定建設業で求められる財務基準(一例)
- 純資産額:4,000万円以上(一般建設業の8倍)
- 資本金:2,000万円以上
- 負債の割合(負債比率):資本の80%以下(赤字が多すぎるとNG)
- 流動比率:75%以上(短期的な支払い能力が重視されます)
しかも、特定建設業では「資金調達能力」や「営業年数」では代替できないという厳しさがあります。つまり、純資産が足りないからといって、預金残高証明書でカバーすることはできません。
一般許可との混同に注意!
申請者の中には、「500万円あれば大丈夫だと思っていた」と、特定建設業でも同じ基準だと誤解してしまうケースがあります。
- 一般建設業:柔軟な選択肢あり(純資産 or 預金 or 営業年数)
- 特定建設業:原則、厳格な数値要件が必要(純資産・資本金・比率)
このように、許可の種類によって財産的基礎の考え方が大きく異なるため、「どちらの許可を申請するのか?」を事前にしっかり確認しておくことが重要です。
次章では、記事の内容をふり返りながら、実際の行動につなげるポイントをまとめていきます。
8. まとめ|まずは自社の状況を確認しよう
ここまで、建設業許可における「財産的基礎」について詳しく見てきました。
- 純資産が500万円以上あるなら → 【方法①】
- 現金がある・融資予定があるなら → 【方法②】
- 許可を継続して5年以上営業してきたなら → 【方法③】
というように、いずれかのルートでクリアできれば、財産的基礎の要件は満たせます。
まずは、自社の現状を冷静に確認してみましょう。
- 決算書や申告書をチェック
- 銀行の預金残高や融資状況を確認
- 書類の準備状況やスケジュールも検討
そのうえで、「どの方法での申請が現実的か?」を判断することが大切です。
とはいえ、財務の計算や書類の整備に不安がある方も多いはず。そんなときは、建設業許可のプロである行政書士に相談するのが一番の近道です。
建設業許可の取得で、こんなお悩みはありませんか?
・「財産的基礎」の500万円って、どこを見られるの?
・自己資金が足りないけど、他の方法で申請できるの?
・金融機関から証明書を取るってどうやればいいの?
そんなときは、建設系産業廃棄物業界出身の行政書士が対応する
三澤行政書士事務所にぜひご相談ください。
当事務所は、愛知県を中心に、中小企業・個人事業主の建設業者様を対象として、
建設業許可の新規申請・更新・変更届から、CCUSや経審など関連制度まで幅広くサポートしています。
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