「住民税の支払いが厳しいので市役所に相談したいけれど、相談したことで入管に通報され、永住資格に悪影響が出るのではないか」——永住許可制度の適正化により公租公課(税金や社会保険料などの公的負担金)の不払いが取消事由となったことを受けて、このような不安を抱く方が増えています。
しかし、結論から言うと、単に支払いのための相談に行っただけで通報されることは想定されていません。本記事では、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」の内容をもとに、市区町村への相談と通報制度の関係について正確に解説します。
改正入管法で新設された通報制度とは
改正後の入管法第62条の2では、国または地方公共団体の職員が、その職務を遂行するにあたって在留資格取消事由に該当すると思料する外国人を知ったときは、その旨を通報することができるとされています。
ここで重要なのは、「通報することができる」とされている点です。出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」は、この通報はあくまで任意のものであり、義務ではないことを明確にしています。つまり、公務員が特定の外国人について取消事由に該当すると思ったからといって、必ず通報しなければならないというルールにはなっていません。
ガイドラインによって通報の判断基準を明確化
とはいえ、「通報するかどうかは職員の裁量次第」というだけでは、現場での判断にばらつきが生じ、外国人の側も不安を抱えたままになってしまいます。そこで、出入国在留管理庁は、国や地方公共団体の職員が通報するか否かを判断する際に参考となるよう、在留資格を取り消すことが想定される事例などについてガイドラインを作成し、公表する予定であるとしています。
このガイドラインにより、どのようなケースが通報の対象として想定されているのか、逆にどのようなケースは通報の対象として想定されていないのかが、より明確になることが期待されます。
支払いのための相談に行っただけで通報されることは想定されていない
そして、多くの方が最も気になっているであろう点について、出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」は明確な答えを示しています。それは、単に公租公課を支払うために関係機関に相談に行ったような場合に、通報を受けることは想定していないということです。
これは非常に重要なポイントです。すでに解説してきた通り、永住許可の取消事由となる「故意に公租公課の支払をしないこと」は、支払義務があることを認識していながら、あえて支払をしないことを指し、支払う意思や努力をしている方はそもそもこの取消事由の対象になりません。市区町村の窓口へ相談に行くという行動は、むしろ「支払う意思がある」ことを示す行動であり、それによって不利益な扱いを受けることは想定されていないのです。
支払いに困ったときはためらわず相談を
税金や社会保険料の支払いに困ったとき、「相談したら通報されるかもしれない」という不安から相談自体をためらってしまうと、かえって状況が悪化してしまう可能性があります。支払えない事情を抱えたまま滞納を続けてしまうと、督促などへの対応状況も含めて、結果的に在留状況の評価に影響しかねません。
出入国在留管理庁「永住許可制度の適正化Q&A」は、公租公課の支払いについてお困りの場合は関係行政機関に相談すること、そして、ご自身の在留資格について心配な点がある場合には、FRESC(外国人在留支援センター)の窓口にも相談できることを案内しています。
FRESCは、在留手続や生活上のさまざまな相談にワンストップで対応する目的で設けられた外国人在留支援のための拠点です。税金の支払いに関する不安だけでなく、在留資格全般についての心配事がある場合にも、まずはこうした公的な相談窓口を活用することが有効です。
まとめ
市区町村へ住民税などの支払いについて相談に行くこと自体は、通報の対象として想定されていません。むしろ、支払う意思を持って行動していることの表れであり、永住許可の取消事由である「故意の不払い」とは性質が異なります。
支払いに困ったときこそ、一人で抱え込まず、市区町村の窓口やFRESCなどの相談機関に早めに相談することが、結果的にご自身の在留状況を良好に保つことにつながります。手続や対応の進め方について不安がある場合は、行政書士などの専門家にあわせて相談することもご検討ください。