企業の組織再編は珍しいことではありません。合併により社名が変わったり、他社に吸収されて会社自体が消滅したり、あるいは一部門だけが分社化されたりすることがあります。こうした組織再編が起きたとき、外国人従業員は所属機関に関する届出をしなければならないのでしょうか。本記事では、出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」の内容に基づき、合併・吸収・分割の各パターンごとに届出の要否を整理します。
所属機関に関する届出の基本ルール(おさらい)
所属機関に関する届出は、中長期在留者のうち一定の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」「研究」「介護」「興行」「技能」「特定技能」など、また「教授」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「教育」「企業内転勤」「技能実習」「留学」「研修」)をもって在留する方が対象です。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q4によれば、届出事由の発生日から14日以内に提出する必要があります。転職や出向、二重就労の場合の届出の考え方については、別記事「外国人従業員の転職・出向・二重就労と所属機関届出の関係」で詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。
会社が合併し、新しい名称になった場合
出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q20では、「現在活動を行っている機関が他の会社と合併し、新しい名称の会社になりました。届出は必要ですか」という質問が取り上げられています。この回答では、所属機関の消滅および新たな活動機関への移籍の届出が必要であるとされています。
つまり、合併によって元の会社が消滅し、新しい名称の会社が誕生した場合には、単なる名称変更として扱われるのではなく、「元の会社が消滅した」という届出と、「新しい会社に移籍した」という届出の両方を行う必要があるということです。同じ場所で同じ業務を続けていたとしても、法人格が変わった以上、所属機関そのものが変わったものとして扱われる点に注意が必要です。
会社が他社に吸収され、消滅した場合
出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q21では、「現在活動を行っている機関が他の会社に吸収され、消滅しました。届出は必要ですか」という質問が取り上げられています。この回答も同様に、所属機関の消滅および新たな活動機関への移籍の届出が必要であるとされています。
吸収合併により自社が消滅し、存続会社(吸収した側の会社)に従業員が引き継がれるケースは実務上よくあります。この場合も、合併の場合と同じく、消滅した会社からの届出と、新しい所属先(存続会社)への移籍の届出の両方が必要になります。
会社の一部門が分割され、新しい会社になった場合
会社分割の場面では、より細かい判断が必要になります。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q22では、「所属している会社の部署のみが分割され、新しい会社になりました。届出は必要ですか」という質問が取り上げられています。
この回答によれば、中長期在留者の所属が新しい会社に異動する場合は、活動機関からの離脱の届出が必要です。一方で、中長期在留者の所属が変わらない場合は、届出は不要とされています。つまり、分割によって当該外国人従業員自身の所属先が変わるかどうかがポイントであり、自分自身の所属先に変更がなければ、会社分割という出来事そのものは届出の対象にはなりません。
会社の一部門が消滅し、他社へ吸収・事業譲渡された場合
事業譲渡のケースについても、同様の考え方が示されています。出入国在留管理庁「所属機関等に関する届出・所属機関による届出Q&A」Q23では、「所属している会社の部署のみが消滅して、別の会社へ吸収又は事業譲渡されました。届出は必要ですか」という質問が取り上げられています。
この回答によれば、中長期在留者の所属が別の会社に異動する場合は、活動機関からの離脱および移籍の届出が必要です。一方で、中長期在留者の所属が変わらない場合は、届出は不要とされています。Q22の会社分割のケースと同じ整理がなされていることがわかります。
ケースごとの届出要否まとめ
組織再編のパターンごとに届出の要否を整理すると、次のようになります。
| 組織再編のパターン | 届出の要否 |
|---|---|
| 会社が合併し、新しい名称の会社になった | 必要(消滅の届出+新たな機関への移籍の届出) |
| 会社が他社に吸収され、消滅した | 必要(消滅の届出+新たな機関への移籍の届出) |
| 会社の一部門が分割され、新しい会社になり、本人の所属が異動する | 必要(活動機関からの離脱の届出) |
| 会社の一部門が分割されたが、本人の所属は変わらない | 不要 |
| 会社の一部門が消滅し、他社へ吸収・事業譲渡され、本人の所属が異動する | 必要(活動機関からの離脱及び移籍の届出) |
| 会社の一部門が事業譲渡されたが、本人の所属は変わらない | 不要 |
人事担当者・総務担当者が押さえておきたいポイント
組織再編の際は、以下の点を確認・整理しておくとよいでしょう。
- 再編後の会社の法人格が、元の会社と同一かどうかを確認する(合併・吸収の場合は原則として法人格が変わる)
- 中長期在留者である外国人従業員それぞれについて、再編後の所属先がどこになるのかを個別に確認する
- 届出が必要な場合は、再編の効力発生日(事由発生日)から14日以内に届出を行うようスケジュールを組む
- 詳細な手続方法については、出入国在留管理庁が公開している資料(各Q&Aに掲載されているPDF)を参照する
組織再編は人事・総務にとって多忙な時期に重なりやすく、外国人従業員の在留手続への対応が後回しになりがちです。あらかじめ再編スケジュールと届出期限を突き合わせておくことで、うっかり届出漏れが発生するリスクを減らすことができます。
よくある質問
Q. 社名変更だけで、法人格は変わらない場合はどうなりますか。
Q&Aでは合併・吸収・分割・事業譲渡のケースが取り上げられていますが、単なる社名変更(法人格の同一性を保ったままの名称変更のみ)については、所属機関の名称変更として届出が必要になるケースが想定されます。個別の事情によって扱いが異なる可能性があるため、詳細は専門家にご確認ください。
Q. 届出を怠った場合、どうなりますか。
所属機関に関する届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合には罰則が規定されています。また、在留諸申請で不利になる場合もあるため、忘れずに届出を行うことが重要です。
まとめ
会社の合併・吸収・分割・事業譲渡といった組織再編が行われた場合、外国人従業員本人の所属先が実質的に変わるかどうかによって、所属機関に関する届出の要否が決まります。合併や吸収の場合は原則として届出が必要ですが、分割や事業譲渡の場合は、本人の所属が異動するかどうかで判断が分かれます。組織再編を予定している企業は、事前に対象となる外国人従業員を洗い出し、届出漏れがないよう準備しておくことをおすすめします。個別の判断に迷う場合は、行政書士等の専門家にご相談ください。
