はじめに
育成就労制度を検討する企業からよく寄せられる質問のひとつが、「外国人に求められる日本語能力はどの程度なのか」というものです。技能実習制度でも日本語能力は重要な要素でしたが、育成就労制度では「日本語教育参照枠」という国際的な基準に基づいたレベル設定がされています。
この記事では、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」の記述に基づき、育成就労外国人に求められる日本語能力のレベルと、入国前後の取扱いについて解説します。
育成就労制度で求められる日本語レベルの全体像
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」によると、育成就労の目標として、日本語能力については基本的に、3年間を通じて日本語教育参照枠A2相当の日本語能力を修得し、試験に合格することが求められます。
さらに、目標達成に向けた中間的な評価として、育成就労の開始から1年以内に、日本語教育参照枠A1相当の日本語能力を修得し、試験を受けることも求められています。
つまり、3年間のプロセスの中で
- 1年目:A1相当の日本語能力を確認する試験を受ける
- 3年目(最終):A2相当の日本語能力の試験に合格する
という2段階の日本語能力の確認が行われるイメージです。これら1年目の試験・3年目の試験の具体的な内容は、業務区分ごとに分野別運用方針で定められています。また、日本語能力については分野の特性に応じてより高い水準の目標が設定されることもあるとされているため、受け入れる分野によって求められるレベルが異なる可能性がある点にも注意が必要です。
入国時に日本語能力の要件はあるのか
「日本語がまったくできないと入国できないのでは」と心配される企業もあるかもしれませんが、同Q&Aでは、入国時に求められる技能や日本語能力に係る要件は「ありません」と明記されています。
ただし、就労開始前までに求められる要件として、次のいずれかを満たすことが求められます。
- 日本語能力A1相当以上の試験に合格すること
- これに相当する認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講すること
つまり、入国時点では日本語が話せなくても、就労を開始するまでの間に、試験合格か講習受講のいずれかによってA1相当の能力を身につければよいという仕組みになっています。
なお、当分の間は、認定日本語教育機関による講習だけでなく、日本語教育機関認定法に基づき登録を受けた登録日本語教員による講習も、一定の要件のもとでA1相当講習として認められることとされています。
A1相当の試験に合格していない場合はどうなるか
同Q&Aのなかでは「A1相当の日本語能力の試験に合格しないと入国できないのか」という質問に対して、明確に「入国できないということはありません」と回答されています。試験に合格していない場合は、入国後講習等において、認定日本語教育機関等によるA1相当以上の講習を受講することで要件を満たすことができます。
既にA1相当に合格している場合の取扱い
外国人が入国前に既にA1相当の日本語能力試験に合格している場合、入国後講習で改めて日本語の科目を受講する必要はあるのでしょうか。
同Q&Aによれば、認定日本語教育機関等による日本語に係る講習の「受講義務」自体は、必要な日本語能力を有していることが試験その他の評価方法により証明されている場合には課されないとされています。ただし、その場合であっても、入国後講習において日本語の科目自体は受講する必要があり、この講習は必ずしも認定日本語教育機関等によるものである必要はないとされています。つまり「試験に合格していれば入国後講習の日本語科目が完全に免除される」というわけではない点には注意が必要です。
まとめ
育成就労制度では、3年間を通じて日本語教育参照枠A2相当の日本語能力の修得・試験合格が目標とされ、1年目の中間評価としてA1相当の試験受験が求められます。入国時点での日本語能力要件はありませんが、就労開始前までにA1相当試験の合格またはA1相当講習100時間以上の受講が必要です。分野によってはより高い水準が求められる場合もあるため、受入れを予定している産業分野の要件を事前に確認しておくことが大切です。
日本語講習の受講義務や費用負担の詳細については、別記事「日本語講習の受講義務と費用負担は誰がするのか」もあわせてご覧ください。育成就労外国人の受入れに関するご相談は、外国人材の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にお問い合わせください。