育成就労制度では、外国人の日本語能力を計画的に育成するための「日本語講習」の仕組みが用意されています。受入れ企業としては、どのような講習を、どこで、誰が費用を負担して実施するのかを正確に把握しておく必要があります。
この記事では、出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」の記述に基づき、日本語講習の内容、オンライン受講の可否、そして費用負担の主体について整理します。
入国後講習:A1相当100時間以上
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」によると、育成就労制度の入国後講習においては、日本語教育機関認定法に基づき認定を受けた「認定日本語教育機関」の「就労」課程のA1相当の講習を100時間以上受講することが定められています。
この講習は、外国人がA1相当の日本語能力の試験にすでに合格している場合は受講不要とされています。また、講習の一部を本国(送出国)において行うことも可能とされており、来日前の準備期間を活用した学習も想定されています。
3年間で提供すべきA2目標講習:100時間以上
日本語能力の計画的な育成のため、育成就労実施者は、育成就労の期間である3年間のうちに、認定日本語教育機関の「就労」課程のA2相当の講習を100時間以上受講する機会を提供する義務があります。
この講習についても、A2相当の日本語能力の試験に事前に合格している者については、改めて受講させる必要はないとされています。つまり、A1・A2いずれの講習も「すでに試験に合格している人には不要」という考え方が一貫しています。
なお、施行後当分の間は、登録日本語教員による一定の要件を満たした授業を受けることで、認定日本語教育機関の「就労」課程の講習を受講したものとみなすこととされています。認定日本語教育機関の数がまだ十分でない移行期には、この代替措置が実務上重要になりそうです。
A2目標講習の受講時間は労働時間になるのか
企業にとって気になるのが、A2目標講習を受講する時間の取扱いです。同Q&Aでは、育成就労実施者は、育成就労外国人の日本語能力に係る育成就労の目標を達成するために、認定日本語教育機関等による日本語講習を履修できるよう必要な措置を講じなければならないとされていますが、当該講習を受講している時間を労働時間として扱うことを義務付けるものではないと明記されています。
つまり、受講機会を提供することは義務ですが、その受講時間を必ず労働時間(=賃金の支払対象)として扱わなければならないわけではない、という整理になっています。実務上は、就業時間内に受講させるのか、就業時間外に受講機会を設けるのかによって、労務管理上の取扱いが変わってくる可能性があるため、企業ごとに運用を検討する必要があるでしょう。
オンライン受講は可能か
日本語講習の履修に際しては、オンラインによる受講も可能とされています。ただし、「双方向で同時にコミュニケーションを取れるものであること」など、一定の要件を満たす必要があるとされています。単なる動画視聴のような一方向的な学習形式では、オンライン受講の要件を満たさない可能性がある点に注意が必要です。
費用は誰が負担するのか
もっとも実務上気になるのが費用負担でしょう。同Q&Aでは、「日本語講習の費用は誰が負担しますか」という質問に対し、明確に次のように回答しています。
育成就労実施者又は監理支援機関において、費用の負担を含め日本語能力向上のために必要な措置を取っていただくこととなります。
つまり、日本語講習にかかる費用は、外国人本人の自己負担ではなく、育成就労実施者(受入れ企業)または監理支援機関が負担する仕組みになっています。単独型育成就労の場合は受入れ機関が、監理型育成就労の場合は監理支援機関が中心となって費用負担を含めた対応を行うことになると考えられます。
これは、日本語能力の育成が「育成就労」という制度の核心的な目的の一つであることを踏まえ、外国人に経済的負担を強いることなく、着実に日本語能力を身につけられる環境を整えるための仕組みと言えるでしょう。
企業が準備すべきこと
日本語講習の費用を企業側が負担することになるため、受入れコストの試算にあたっては、給与や社会保険料だけでなく、入国後講習(A1相当100時間以上)およびA2目標講習(100時間以上)の費用も見込んでおく必要があります。また、認定日本語教育機関や登録日本語教員による講習をどのように確保するか、就業時間との兼ね合いも含めて、早めに検討しておくことが望ましいでしょう。
まとめ
育成就労制度の日本語講習は、入国後講習(A1相当100時間以上)と、3年間で提供するA2目標講習(100時間以上)の2段階で構成されており、いずれも既に試験に合格している場合は受講不要です。オンライン受講も一定要件のもとで可能とされています。そして、これらの講習にかかる費用は、育成就労実施者または監理支援機関が負担することとされており、外国人本人の負担とはなりません。
日本語講習の実施体制や費用負担についてご不明な点がある企業様は、外国人材の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。