海外の支店や子会社の社員を日本国内の事業所に転勤させたい場合、「企業内転勤」の在留資格が候補になります。この在留資格の取得にあたっては、単に「海外のグループ会社の社員である」というだけでは足りず、法令で定められた具体的な要件を満たす必要があります。
この記事では、「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(平成2年法務省令第16号)に定められた、企業内転勤の在留資格に係る上陸許可基準の内容を解説します。
企業内転勤の在留資格に係る基準
同省令の表では、「法別表第一の二の表の企業内転勤の項の下欄に掲げる活動」に対応する基準として、申請人が次のいずれにも該当していることが求められると定められています。
一 申請に係る転勤の直前に外国にある本店、支店その他の事業所において法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる業務に従事している場合で、その期間(企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、当該期間を合算した期間)が継続して一年以上あること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
つまり、要件は大きく分けて2つです。
要件1:転勤直前に「技術・人文知識・国際業務」相当の業務に1年以上従事していたこと
企業内転勤の在留資格を取得するためには、日本への転勤の直前に、外国にある本店・支店その他の事業所において、日本の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当するような業務(自然科学・人文科学の分野の技術・知識を要する業務や、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を要する業務など)に従事していたことが必要です。
そして、その従事期間が継続して1年以上あることが求められます。単に海外グループ会社に籍を置いていたというだけでは足りず、実際に技術・人文知識・国際業務に相当する業務に、継続して1年以上携わっていたという実績が必要になるということです。
過去に日本で企業内転勤として働いていた期間も合算できる
この省令が興味深いのは、期間の計算方法に関する規定です。条文では「企業内転勤の在留資格をもって外国に当該事業所のある公私の機関の本邦にある事業所において業務に従事していた期間がある場合には、当該期間を合算した期間」とされています。
つまり、以前に企業内転勤の在留資格で日本の事業所において勤務していた期間がある場合、その期間を、今回の転勤直前における外国事業所での従事期間と合算して、通算で1年以上あるかどうかを判断できるということです。これは、日本と海外拠点との間で人材を柔軟に行き来させているグローバル企業にとって、実務上重要なポイントと言えます。
例えば、「海外の本店で半年間、技術・人文知識・国際業務相当の業務に従事した後、企業内転勤で半年間日本に勤務し、その後再び海外に戻って転勤の準備をする」というようなケースでも、それぞれの期間を合算して1年以上という要件を満たせる可能性があるということです。
要件2:日本人が従事する場合と同等額以上の報酬
もう一つの要件は、報酬に関するものです。申請人が日本国内で従事する業務について、日本人が同様の業務に従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることが求められます。これは、外国人労働者の受入れによって国内の賃金水準が不当に引き下げられることを防ぐための、在留資格審査における一般的な考え方に基づく要件です。
企業が申請前に確認しておくべきポイント
企業内転勤の在留資格による受入れを検討している企業は、次の点を事前に確認しておく必要があります。
- 転勤対象者の海外での職務内容が「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務かどうか:単純作業や現業的な業務のみに従事していた場合、この要件を満たさない可能性があります。
- 従事期間が継続して1年以上あるかどうか:過去の日本国内での企業内転勤勤務歴がある場合は、その期間も合算できることを踏まえて、通算での在職期間を正確に整理しておく必要があります。
- 日本国内での報酬水準が、同様の業務に従事する日本人社員と同等以上かどうか:給与テーブルの設計段階から、この要件を意識しておくことが望ましいでしょう。
まとめ
企業内転勤の在留資格を取得するためには、転勤直前に外国の事業所で技術・人文知識・国際業務に相当する業務に継続して1年以上従事していたこと、そして日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けることが要件となります。過去に企業内転勤の在留資格で日本の事業所に勤務していた期間がある場合は、その期間を合算して1年以上の要件を判断できる点も押さえておきたいポイントです。
海外グループ会社の社員を日本に転勤させる際の在留資格取得については、外国人材の在留手続に詳しい行政書士までお気軽にご相談ください。