日本の企業では、新卒の入社時期が原則として4月とされていることが多く、留学生が秋に大学を卒業して就職の内定を得ても、実際に働き始めるのは翌年4月から、というケースが少なくありません。この「卒業から入社までの空白期間」をどう乗り切ればよいのか、悩む留学生は多いはずです。
在留資格「留学」は卒業によってその活動の前提を失うため、そのまま在留を続けることはできません。しかし、就職の内定を得ている方については、出入国在留管理庁が一定の要件のもとで「特定活動」への在留資格変更を認める運用を行っています。本記事では、出入国在留管理庁の「出入国審査・在留審査Q&A」Q43の内容をもとに、この制度の内容を解説します。
内定後の在留継続を認める制度趣旨
出入国在留管理庁のQ&Aでは、この制度の背景について次のように説明しています。
「留学生が在籍している教育機関を卒業した場合には、『留学』の在留資格に該当しないこととなり、在留期間を更新して我が国での在留を継続することは認められませんが、我が国では、企業への入社時期が通常4月とされていることが多いため、(中略)内定した企業から採用内定の事実が確認できる資料等の提出があり、かつ、採用後に当該企業で従事する活動が就労に係る在留資格に該当し、当該就労に係る在留資格に定める基準に適合している場合には、採用までの間(内定後1年以内であって卒業後1年6月を超えない期間に限る。)『特定活動』への在留資格変更を認め、引き続き在留を認めることとしています。」(出入国審査・在留審査Q&A Q43より)
つまり、この制度は「入社時期のずれ」という日本の雇用慣行に配慮した特例措置であり、内定を得ているにもかかわらず在留資格がないために帰国を余儀なくされる、という事態を避けるためのものです。
制度を利用するための主な要件
この特例を利用するためには、大きく次の2つの要件を満たす必要があります。
内定した企業から採用内定の事実が確認できる資料等の提出があること
内定通知書など、採用が内定していることを客観的に証明できる書類の提出が求められます。採用後に従事する活動が就労に係る在留資格に該当し、その基準に適合していること
内定先で実際に従事する予定の業務内容が、たとえば「技術・人文知識・国際業務」など就労が認められる在留資格に該当し、かつその在留資格に定められた基準(学歴要件など)を満たしている必要があります。単に内定を得ているだけでなく、内定先での業務内容が就労系の在留資格として認められる内容であることが前提となります。
認められる在留期間の限界
この「特定活動」への変更が認められる期間には、明確な上限が設けられています。
- 内定後1年以内
- かつ、卒業後1年6月を超えない期間
この2つの条件のいずれか早い方が上限となります。つまり、内定を得てから長期間漫然と在留を続けられるわけではなく、あくまで入社時期のずれを埋めるための一時的な措置であることを理解しておく必要があります。
手続きの進め方
この特例を利用したい場合は、卒業前後の早い段階で、住居地を管轄する地方出入国在留管理局等に相談し、必要書類を確認したうえで在留資格変更許可申請を行うことになります。内定通知書のほか、内定先企業の概要が分かる資料、従事する業務内容を確認できる資料などの提出を求められることが一般的です。
なお、「特定活動」への変更後は、在留カードに指定された活動内容の範囲でのみ活動が認められる点にも注意が必要です。この期間中にアルバイトなどの資格外活動を行いたい場合は、別途資格外活動許可の要否を確認する必要があります。
まとめ
留学生が卒業後、就職の内定を得ているものの入社時期が先である場合には、内定後1年以内かつ卒業後1年6月を超えない範囲で、「特定活動」への在留資格変更が認められる制度があります。これは、日本企業の入社時期が4月に集中しているという実情を踏まえた出入国在留管理庁の運用です。内定を得た留学生の方は、卒業スケジュールと内定先の入社時期を確認したうえで、早めに在留資格変更の準備を進めることをおすすめします。要件の該当性や必要書類の判断に迷う場合は、行政書士などの専門家に相談することも有効です。