こんにちは、行政書士の三澤です!
令和7年(2025年)の貨物自動車運送事業法改正から、御社の下請け運送の手配フローは対応できていますか?
建設業・産廃業の現場で、こんなケースは珍しくありません。
「いつもの運送会社A社に頼んだら、A社がB社(孫請け)に丸投げしていた」
以前なら「荷物が届けばそれでいい」で済んでいた話です。しかし今は違います。このケースが明確な法令違反のリスクを伴うようになりました。
国が多重下請け構造の排除を目的に、1.5トン以上の貨物を下請けに委託する場合、元請け業者に「実運送体制管理簿」の作成を義務付けたのです。「最終的に誰が運んだか(実運送事業者)」を記録し、1年間保存しなければなりません。
本記事では、産廃業界で10年の現場経験を持つ行政書士が、管理簿の正しい記載方法と、情報を末端まで届けるための通知ルール(リレーとアンサー)の実務を解説します。
実運送体制管理簿とは何か
多重下請け構造の「見える化」が目的
物流業界では、荷主から運送を請け負った元請業者が、下請け・孫請けと段階的に委託する多重下請け構造が常態化してきました。この構造が、末端の実運送事業者の運賃低下と長時間労働を招く温床となってきたのは事実です。
こうした問題を是正するため、令和7年施行の改正貨物自動車運送事業法により、「実運送体制管理簿」の作成義務が新たに導入されました。
根拠条文は、貨物自動車運送事業法第24条の5第1項です。概要を引用します。
「一般貨物自動車運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用したときは、(中略)実運送体制管理簿を作成し、これを営業所に備え置かなければならない」
つまり、荷主から直接受けた運送を、自社トラックではなく他の運送会社に委託した場合、元請業者には管理簿の作成義務が発生するということです。
対象は「1.5トン以上」の貨物のみ
ただし、すべての荷物が対象になるわけではありません。
貨物自動車運送事業法第24条の5第1項では、「その運送に係る貨物の重量が国土交通省令で定める重量以上であるものに限る」と規定されています。その「国土交通省令で定める重量」について、貨物自動車運送事業法施行規則第13条の13は明確にこう定めています。
「国土交通省令で定める重量は、一・五トンとする」
したがって、1回の運送契約で荷主から引き受けた貨物が1.5トン以上であり、かつそれを下請けに委託して運ばせる場合に限って、管理簿の作成義務が発生します。軽貨物など少量の運送はこの義務の対象外です。
「運送完了から1年間」の保存義務
作成した管理簿は、監査等での確認に備えて保存しておく義務があります。
貨物自動車運送事業法第24条の5第1項では、作成した管理簿(電磁的記録を含む)について、「その引き受けた貨物の運送が完了した日から一年間、これを営業所に備え置かなければならない」と規定しています。
紙のファイルでも電子データでも構いません。ただし、いずれの方法であっても「運送完了から1年間、営業所で速やかに提示できる状態」にしておくことが求められます。
管理簿の記載事項と通知義務(リレーとアンサー)
管理簿に書くべき3つの事項
貨物自動車運送事業法第24条の5第1項各号によれば、管理簿に記載すべき事項は以下の3つです。
- 実運送を行う事業者の名称(商号または名称)(第1号)
- 貨物の内容および運送区間(第2号)
- 請負階層(何次下請けにあたるか。真荷主との契約後に締結された運送契約の数)(第3号)
この中で、現場で最も難しいのが「末端の実運送事業者の名称を元請けが把握すること」です。多重下請け構造の中では、元請けが直接知り得ないケースがほとんどです。そのため、法律は情報伝達の仕組みそのものを義務化しています。
配車担当者が押さえるべき「通知ルール」
貨物自動車運送事業法第24条の5は、元請けから実運送事業者まで情報が届く仕組みとして、「リレー(下方向の通知)」と「アンサー(上方向の通知)」を義務化しています。
【リレー:元請けから下請けへ】
元請事業者は、下請けに運送を委託する際、同法第24条の5第3項に基づき、以下の「元請連絡事項」を下請け業者に通知しなければなりません。
- 自社(元請け)の連絡先
- 真荷主の商号または名称
さらに、下請けが孫請けへ再委託する場合(中間事業者)も、同法第24条の5第4項に基づき、受け取った元請連絡事項と自らの請負階層を次の委託先へ伝達する義務があります。これが「リレー」の仕組みです。
【アンサー:実運送事業者から元請けへ】
最終的に実際の運送を担う末端の運送事業者は、同法第24条の5第5項に基づき、リレーで届いた連絡先を使って、元請事業者へ直接「自社の名称・運送区間・請負階層」を通知(アンサー)する義務があります。
元請業者は、このアンサーを受け取って初めて管理簿を完成させることができます。
まとめ:現場の配車フローを今すぐ点検を
今回の法改正で求められていることを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 1.5トン以上の貨物を下請けに委託する元請業者 |
| 義務の内容 | 実運送体制管理簿の作成 |
| 保存期間 | 運送完了日から1年間(営業所に備え置き) |
| 記載事項 | 実運送事業者の名称・貨物内容と区間・請負階層 |
| 通知ルール | リレー(元請け→下請けへ連絡先等を通知)とアンサー(実運送事業者→元請けへ直接通知) |
「荷物が届けばいい」という感覚のまま下請け手配を続けていると、管理簿の未作成・保存義務違反として行政指導・監査の対象になりかねません。
建設業・産廃業を営む事業者であっても、利用運送の登録を持って元請けとして配車手配を行う以上、この管理簿の作成と通知ルールの周知徹底は不可欠なコンプライアンス対応です。
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今回の法改正では、実運送体制管理簿の作成義務と並行して、運送委託時の「書面の相互交付」も厳格に義務付けられています。基本運賃・附帯業務の対価など書面への記載事項、および実務負担を軽減する電子交付の手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
- [【令和7年法改正】下請け運送への委託で必須!「書面交付義務」の記載事項と電子交付のやり方]
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三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
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言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号