自社トラックなしで運送事業?建設業が知るべき「第一種貨物利用運送事業」の仕組みとメリット
自社でトラックやドライバーを抱えずに運送ビジネスに参入できる「第一種貨物利用運送事業」の仕組みを、建設・産廃業者向けに行政書士が解説。高額な車両維持費ゼロで協力会社への手配を合法的な収益に変えるメリットと、無登録営業の法的リスクを分かりやすくまとめました。
- 分野
- 運送・物流
- 主な法令
- 貨物自動車運送事業法
- 公開日
- 2026年5月11日
- 更新日
- 2026年9月25日
目次
「協力会社のネットワークを活かして運送手配も収益にしたい。でも、緑ナンバーを取るにはトラック5台・ドライバーの雇用管理……ハードルが高すぎる」
建設業や産廃業の経営者の中には、こうした悩みを抱える方もいます。
確かに、自社で車両とドライバーを抱える一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の参入要件は厳しく、初期投資・労務管理・2024年問題への対応など、リスクが一度に重なります。
しかし、1台もトラックを持たず、ドライバーも雇わずに運送業務を事業化できる制度があります。それが「第一種貨物利用運送事業」です。
本記事では、この制度の法的な仕組みと、建設・元請け業者にとってのメリットを整理します。あわせて、「単なる手配業務だから」と無登録のまま運賃を受け取ることの法的リスクについても確認しておきましょう。
「第一種貨物利用運送事業」とはどのような制度か
自社トラックを使わずに運送を手配するビジネスモデル
「利用運送」とは、自らトラックを運転して荷物を運ぶのではなく、荷主から運送の依頼を受け、実際の輸送を別の運送業者(実運送事業者)に委託するビジネスモデルです。
法的な定義としては、貨物利用運送事業法第2条第1項において「運送事業者の行う運送(実運送に係るものに限る。)を利用してする貨物の運送」と規定されています。
ここで利用する「運送事業者」とは、同法第2条第5項に定める「貨物自動車運送事業者(一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業を経営する者)」、すなわち適法な緑ナンバーのトラック業者です。
そして同法第2条第7項により、これら実運送事業者の運送を利用し、「他人の需要に応じ、有償で、利用運送を行う事業」のうち、集配を伴う一貫輸送(第二種)以外のものが「第一種貨物利用運送事業」と定義されます。
建設業で言い換えると、「元請けとして荷主から運賃を受け取り、重機・資材の実際の運搬は下請けの緑ナンバー業者へ委託し、その差額を利益とする」という形態がこれに当たります。
有償で手配を行うには「国土交通大臣の登録」が必要
他社のトラックを使うとはいえ、荷主との間で運送契約を結び、運送責任を負って有償で手配を行う以上、それは運送事業です。
貨物利用運送事業法第3条第1項は、「第一種貨物利用運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない」と定めています。
「元請けとしての好意による手配」「自社工事のついでだから」という解釈で、無登録のまま荷主から運賃を収受し、下請け業者に運送を委託して利益を得る行為は「無登録運送事業」とみなされる可能性があります。
自社のネットワークを活かした運送手配を正式な収益源とするには、事前に登録を受けることが前提です。
建設業・元請け業者が登録を受けるメリット
車両・ドライバーを抱えるリスクを負わずに済む
一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)を取得する場合、貨物自動車運送事業法第3条に基づく許可が必要です。許可要件は厳格で、事業用車両・車庫の確保に加え、同法第15条に基づく過労運転防止等の労務管理、第16条に基づく運行管理者の選任義務など、固定費と管理負担が一度にのしかかります。
第一種貨物利用運送事業であれば、実際の運送は実運送事業者が担うため、トラックの購入・維持費用は不要です。また、ドライバーを自社で直接雇用しないため、厳格な労働時間規制への対応という労務管理リスクも負いません。
経営資源(人・モノ・金)の投入を最小限に抑えながら、物流ビジネスへ参入できるのが最大の特徴です。
日常的な「運搬手配」を適法な収益源に変えられる
建設業や産廃業の現場では、「自社工事のついでに、荷主から頼まれて他現場への資材運搬を手配する」というケースが珍しくありません。
これまで付随業務や好意として行っていたこうした手配も、貨物利用運送事業法第3条第1項に基づく登録を受けることで、荷主から受け取る運賃と実運送業者へ支払う運賃の差益(マージン)を、適法な収益として計上できるようになります。
また、物流業界のコンプライアンス要件は年々厳しくなっています。令和7年法律第60号「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」では、違法な「白トラ(無許可営業)」への委託を行った荷主等に対する規制が新たに整備されました。荷主側の責任が問われる場面が増えるなかで、登録済みの「第一種貨物利用運送事業者」であることは、大手ゼネコンや排出事業者(荷主)との取引において、コンプライアンス面での信頼を示す根拠になります。
建設業・元請け業者が長年かけて築いてきた「緑ナンバー業者との協力関係」は、利用運送においてそのまま事業基盤になります。新たな設備投資なしに既存ネットワークを活用できるという点で、第一種貨物利用運送事業は建設業者にとって参入障壁が低く、実益につながりやすい選択肢といえます。
次のステップ:登録要件を確認する
「自社も運送手配を事業化したい」と考えた場合、次に確認すべきは「具体的にどのような要件を満たせば登録を受けられるのか」という点です。
貨物利用運送事業法第6条第1項第7号および同法施行規則第7条等に基づき、「純資産(基準資産額)が300万円以上であること」といった財産的基礎の基準や、適切な営業所の確保など、いくつかの要件をクリアする必要があります。
登録に向けて準備すべき具体的な要件は、以下の詳細記事で解説しています。
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