こんにちは!愛知県の行政書士 三澤です!
太陽光発電所の建設に取り組まれている事業者の皆様から、日々さまざまなご相談をいただきます。農地転用(農地法第5条許可)の手続きや補助金申請のご依頼をお受けする中で、ほぼ必ずといっていいほど浮かび上がるのが「初期費用・設備資金をいかにスムーズに調達するか」という問題です。
土地の確保や行政手続きと並び、資金計画は事業の根幹を左右します。そして今、その資金調達に新しい潮流が生まれています。それが「グリーンファイナンス」です。
環境省「令和7年度版 グリーンファイナンス事例集」の公表
2026年3月末、環境省は「令和7年度版 グリーンファイナンスによる資金調達等事例集」を公表しました。
グリーンファイナンスとは、脱炭素や環境課題の解決につながる事業に限定して資金を調達する仕組みの総称です。具体的には「グリーンローン(借入)」や「グリーンボンド(債券発行)」などの手法が含まれます。
なぜ国がここまで力を入れるのか。背景には明確な数字があります。日本は「2050年ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)」および「2030年度の温室効果ガス46%削減」という国家目標を掲げており、その達成には今後10年で150兆円規模の投資が必要とされています。国の財政だけではとても賄いきれない額であり、民間資金を環境分野に大量に呼び込む仕組みこそがグリーンファイナンスの本質です。今回の事例集は、そのノウハウと実績を広く共有するために公表されました。
太陽光発電はグリーンプロジェクトの「ど真ん中」
「環境への配慮と言われても、中小の太陽光事業者には関係ないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。しかし、環境省の資料においてグリーンファイナンスの対象となる「個別グリーンプロジェクト」の筆頭に挙げられているのは、まさに再生可能エネルギー事業です。
今回の事例集でも、東急不動産ホールディングス株式会社がグリーンボンドおよびグリーンローンを活用し、その調達資金をリエネ行方太陽光発電所をはじめとする複数の太陽光発電所の設備投資に充てている事例が紹介されています。
かつては大企業が主な担い手でしたが、国と金融機関の強力な後押しにより、今後は中小企業においても「太陽光発電所の建設資金=グリーンファイナンスで調達する」という流れが確実に広がっていきます。
金利優遇だけじゃない!グリーンファイナンス活用のメリット
再生可能エネルギー事業において、わざわざ「グリーンファイナンス」という枠組みを使う理由は何でしょうか。一言で言えば、通常の事業融資にはない「直接的なコスト削減」と「企業価値の向上」という2つの大きな優位性があるからです。
目標を達成するほど金利が下がる「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」
環境省の資料で特に注目されている手法が「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」です。
通常の融資では、金利は企業の財務状況や担保価値によって固定されます。一方、SLLでは事業者が事前に設定したサステナビリティ目標(SPTs:例えば「〇年までにCO2排出量を〇%削減する」など)の達成状況に応じて、貸出金利などの融資条件が優遇される仕組みになっています(環境省「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン」参照)。
つまり、太陽光発電所の新設によって自社の再エネ利用比率を高める事業計画を立て、それをSPTsとして設定すれば、「環境に良い事業を進めるほど、資金調達コストも下がる」というインセンティブが得られます。事業の成長と金利負担の軽減が同時に実現できる、非常に合理的な仕組みです。
対外的なPR効果と取引先・採用面での優位性
金利優遇に加えて、実務上見逃せないのが対外的なPR効果です。今回の環境省事例集には、グリーンファイナンスの枠組みを活用した中小企業の生の声が掲載されています。
- 「ISOの取組みと連携させ、脱炭素推進の一環として位置づけられた」
- 「環境への取組みをPRすることで、環境意識の高い学生や優秀な人材の獲得につなげたい」
- 「自社の環境取組のPR強化に直結した」
現在、大企業を中心にサプライチェーン全体での脱炭素化を要求する動きが加速しています。グリーンファイナンスを通じて「環境配慮型企業」としての客観的な評価を得ることは、大手取引先からの信頼獲得や、優秀な人材の採用において、目に見える差別化要因になります。
農地転用(農地法第5条許可)の手続きでは、農業委員会や地域住民から事業への理解を得ることが重要なステップになります。
その際、「環境省のガイドラインに適合したグリーンファイナンスの認定を受けた、地域・環境貢献度の高い事業である」と客観的に示せることは、事業の信頼性を裏付ける強力な根拠になります。
資金調達の枠組みが、行政手続きの後押しにもなる——これがグリーンファイナンスの見えにくい、しかし実質的な効果です。
要注意!「借りて終わり」ではないグリーンファイナンスのハードル
ここまで読んで、「ぜひ活用してみたい」と感じた方も多いはずです。しかし、行政手続きの専門家として、事業者の皆様に必ずお伝えしなければならないことがあります。
グリーンファイナンスは、お金を借りて終わりの制度ではありません。
環境省公表の「令和7年度版 グリーンファイナンスによる資金調達等事例集」および関連ガイドラインを精読すると、実務上クリアすべき2つの大きな壁が存在することが見えてきます。
準備に3〜4ヶ月?「フレームワーク策定」と「外部レビュー」の壁
通常の融資であれば、決算書や事業計画書を提出して審査を待てばよいのですが、グリーンローン(GL)やSLLによる資金調達では、準備期間として「約3〜4ヶ月」を見込む必要があります。その理由は、主に以下の2つの特別な手続きが求められるからです。
① フレームワーク(枠組み)の策定 調達資金の使途、環境改善効果の測定方法、KPIや目標(SPTs)の設定など、国際的な原則(グリーンローン原則等)に適合した「フレームワーク」と詳細な事業計画書を作成しなければなりません。
② 外部レビュー(第三者評価)の取得 策定した計画や目標が「客観的かつ野心的な環境改善につながるものか」について、監査法人や環境コンサルタントといった独立した外部機関によるレビュー(セカンド・パーティ・オピニオン等)の取得が強く推奨・要求されています。
先行事例として紹介されている東急不動産ホールディングスや西日本鉄道でさえ、初回の枠組み構築にあたって「第三者評価の費用が高い」「フレームワーク策定に一定の負荷がある」「外部評価機関からの質疑対応が負担だった」という声を挙げています。大企業でも苦労するこの手続きは、中小企業にとって決して小さな壁ではありません。
毎年の義務「インパクト・レポーティング(環境改善効果の報告)」
もう一つ重要なのが、資金調達・発電所建設「後」の継続的な義務です。
環境省のガイドラインでは、調達資金がすべて充当されるまで、少なくとも年に一度は「インパクト・レポーティング(環境改善効果の報告)」を更新することが求められています。具体的には、以下の項目を含む年次報告書の開示が必要です。
- グリーン資金が充当されている各プロジェクトのリストと概要
- 充当された資金の額
- 期待されるインパクト(太陽光発電の場合は、年間発電量やCO2排出削減量など)
さらに、SLLを利用して金利優遇等を受ける場合には、この毎年の目標(SPTs)達成状況の報告に対して、独立した外部機関による検証を毎年受けることが義務付けられています。
農地法第5条に基づく農地転用許可の手続きにおいても、農業委員会や都道府県知事は「事業の確実性」、すなわち資金計画の妥当性を厳格に審査します。
グリーンファイナンスの審査でも同様に「事業計画の根拠」や「目標の信頼性」が問われるため、農地転用のための事業計画と、グリーンファイナンスのためのフレームワーク策定は、別々に進めるのではなく最初から「一体として構築する」ことが、最も確実かつ効率的な進め方です。
また、毎年のインパクト・レポーティングは、行政手続きや書類作成を日常的に行う行政書士に委ねることで、本業への負担を大幅に軽減することができます。
中小企業への朗報!自治体主導の仕組みでコスト・手間を大幅削減
グリーンファイナンス活用の最大の壁は「フレームワーク策定の手間」と「外部レビュー(第三者評価)の費用」です。通常のSLL等では、外部レビュー費用だけで1件あたり200〜300万円に上ることも珍しくありません。多くの中小企業にとって、これは現実的な金額ではありません。
しかし、ここに朗報があります。環境省の最新資料が大きく取り上げているのが、このコストと手間の壁を取り払う「自治体主導のフレームワーク」の広がりです。
第三者評価費用が実質ゼロに?長野県・京都府の先行事例
事例①:京都府「京都ゼロカーボン・フレームワーク」
京都府は地域金融機関と連携した金利優遇スキームを構築しています。通常は個々の事業者が取得しなければならない外部評価を、京都府条例に基づく「特定事業者制度」*を準用することで省略できる仕組みです。これにより、通常200〜300万円かかる外部レビュー等の組成手数料が*実質0円となり、すでに149件(令和7年8月末時点)もの融資実績を上げています。
事例②:長野県「信州SLL(脱炭素型)活用促進制度」
長野県では、「長野県地球温暖化対策条例」に基づく「事業活動温暖化対策計画書制度」を活用したスキームを構築しています。長野県がスキーム全体に対する第三者評価を事前に取得しているため、事業者はこの計画書制度に参画し、温室効果ガス排出量の削減目標(年平均5%以上など)を設定するだけで、個別の第三者評価費用(数百万円)を負担することなく国際原則に適合したローンを利用できます。
皆さまの事業エリアでも使えるか?
こうした地域ぐるみの支援は、長野・京都にとどまりません。環境省の資料では大阪府においても同様のフレームワーク策定に向けた動きが紹介されており、名古屋銀行・常陽銀行・滋賀銀行など各地域の地方銀行が独自に中小企業向けのフレームワークを構築する動きも急速に広がっています。
「自分の事業エリアや取引のある金融機関で、こうした優遇制度が使えるのか?」——これは非常に重要な確認ポイントです。
農地転用を伴う太陽光発電所の建設計画を立てる際、事業地を管轄する自治体の環境条例や活用できる地方銀行のグリーンファイナンス枠組みを事前に調査し、それに適合する形で事業計画や書類を組み上げることが、初期コストを劇的に抑える鍵になります。
自治体の条例・制度調査と行政手続きへの落とし込みは、私たち行政書士の得意とするところです。情報収集の段階からしっかりサポートいたします。
農地転用・補助金申請とセットで考える|確実な事業計画の進め方
ここまでグリーンファイナンスのメリットと注意点を整理してきましたが、太陽光発電事業者の皆様にとって資金調達はゴールではなく、事業スタートのための第一歩に過ぎません。
実際の現場では、土地の確保(農地転用等)・資金調達・事業の実行を同時並行で進める必要があります。ここで重要なのが、各種手続きを「バラバラ」に進めるのではなく「一つの事業計画として統合して構築する」という視点です。
グリーンファイナンス審査と農地法第5条許可に共通する「事業の確実性」
当事務所が数多く手掛ける「農地法第5条に基づく農地転用許可」において、農業委員会や都道府県知事が最も厳格に審査するポイントの一つが「事業の確実性(資金計画の妥当性など)」です。
一方、環境省の「サステナビリティ・リンク・ローンガイドライン(2024年改定版)」によれば、グリーンファイナンスの調達準備においても、約3〜4ヶ月をかけて「事業計画の検討」や「KPI・SPTsの選定」が求められています。
つまり、金融機関が求める「環境改善効果を伴う緻密な事業計画」と、行政が求める「農地転用のための確実な事業・資金計画」は、本質的に表裏一体の関係にあります。これらを初期段階から一貫した計画として組み立てることで、審査の通過率を高め、スケジュール遅延のリスクを大幅に減らすことができます。
補助金との組み合わせで初期投資をさらに圧縮する
多額の初期費用がかかる太陽光発電所の建設では、グリーンファイナンスによる「融資(借入)」だけでなく、返済不要の「補助金・助成金」を組み合わせることが事業成功の重要な鍵です。
この点、環境省の事例集でも、京都府「京都ゼロカーボン・フレームワーク」の今後の展開として、金融機関と行政が連携し、脱炭素経営を目指す中小企業に対して省エネ・再エネ補助金等の情報もあわせて提供する方針が示されています。
当事務所では最新の環境・エネルギー関連補助金の動向を常に把握しており、事業計画に最適な補助金の選定から申請手続きまでをワンストップでご支援します。
面倒な「計画書」「レポーティング」作成は行政手続きのプロへ
グリーンファイナンスを調達し、事業が動き出した後も、事業者の義務は続きます。環境省のガイドラインでは、調達資金が充当されるまでの間(あるいは融資期間中)、少なくとも年1回は「インパクト・レポーティング(環境改善効果の報告)」と「SPTs達成状況の測定・レポーティング」を更新し、金融機関へ提出することが求められています。
また、前述の長野県の自治体主導フレームワークを利用する場合、「長野県地球温暖化対策条例」に基づく「事業活動温暖化対策計画書」の作成・提出が必須要件となります。
こうした専門的な書類の策定や毎年のレポーティング業務は、本業でご多忙な事業者様にとって決して小さくない負担です。許認可申請や行政向けの複雑な書類作成を日常業務とする行政書士だからこそ、この部分を安心してお任せいただけます。
まとめ|脱炭素化をビジネスチャンスに変え、事業を加速させるために
環境省の最新資料が示すのは、太陽光発電をはじめとする再エネ事業が「グリーンファイナンス」の主役として位置づけられ、国・自治体・地域金融機関が総力を挙げて中小企業の資金調達をバックアップしようとしているという現実です。
この流れに乗り遅れることは、資金調達コストの面でも、企業イメージの面でも、競合他社との差が開くリスクを意味します。
「グリーンファイナンスを活用してみたいが、何から手をつければいいか分からない」 「太陽光発電所の建設にあたり、農地転用・資金調達・補助金申請をまとめて相談したい」 「自分の事業エリアで使える自治体の制度や金融機関の枠組みを調べてほしい」
このようなお悩みをお持ちの事業者様は、ぜひ一度当事務所へご相談ください。行政手続きのプロフェッショナルとして、農地法・条例・ガイドラインを横断的に把握しながら、皆様の事業計画を「確実な実行」へと導くお手伝いをいたします。
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宅地の農地転用から、大規模な太陽光発電施設設置まで、プロジェクトを遅らせない最短ルートを構築します。
