こんにちは!愛知県を拠点に、建設業者様の許認可申請を専門的にサポートしている、三澤行政書士事務所の三澤です。

「来月から三重県で大きな現場が入ったので、大臣許可を取っておかないといけないかな……」

「岐阜県にも新しい営業所を出したいけれど、今の愛知県知事許可のままでいいのだろうか?」

事業が順調に拡大し、愛知県外へと商圏を広げていく過程で、こうしたご相談を当事務所は数多く受けてきました。そしてその際、非常に多くの事業者様が同じ誤解をされています。

「他県で工事をするなら大臣許可が必要」——これは間違いです。

建設業許可は、知事許可であれ大臣許可であれ、施工できるエリアに地理的な制限は一切ありません。愛知県知事許可のみの業者様でも、北海道から沖縄まで、全国どこでも工事を請け負うことができます。

大臣許可と知事許可を分けるのは、「営業所をどの都道府県に設けているか」という一点のみです。愛知県と他県(岐阜県や三重県など)の双方に「建設業の営業所」を置いて営業活動を行う場合に、はじめて国土交通大臣許可が必要となります。

そして、すでに愛知県知事許可をお持ちの業者様が県外に営業所を新設する場合は、単なる変更届では済みません。「許可換え新規」と呼ばれる、ゼロからの許可申請に相当するハードルの高い手続きが求められます。申請先も愛知県庁ではなく「国土交通省 中部地方整備局」に変わるため、これまでの感覚で進めると思わぬ落とし穴にはまることがあります。

本記事では、愛知県で多数の建設業許可申請をサポートしてきた専門家の立場から、一般建設業における「大臣許可」の取得要件、知事許可との明確な違い、そして「許可換え新規」の実務的な手続きまでを体系的に解説します。県外への事業展開を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

1. 「大臣許可」と「知事許可」——何が違うのか?

営業所の所在地が、許可行政庁を決める

大臣許可と知事許可の違いは、会社の規模でも資本金の額でもありません。「建設業の営業所を設ける都道府県が、1つか複数かどうか」によって決まります。これは建設業法第3条第1項に明確に規定されている事項です。

  • 知事許可(例:愛知県知事許可):1つの都道府県内のみに営業所を設けて建設業を営む場合
  • 大臣許可(国土交通大臣許可):2つ以上の都道府県にまたがって営業所を設けて建設業を営む場合

具体的に申し上げると、本店が名古屋市にあり、豊田市や一宮市など愛知県内にのみ営業所を展開している場合は「愛知県知事許可」で足ります。一方、名古屋市の本店に加えて岐阜市や津市など県外にも営業所を設けるとなれば、「国土交通大臣許可」が必要になります。

ここで「営業所」の定義についても正確に押さえておきましょう。単なる作業員の詰所や連絡事務所は、ここでいう「営業所」には該当しません。建設業許可上の「営業所」とは、常時建設工事の請負契約を締結する事務所、すなわち見積もりや入札、契約締結といった実質的な営業行為を行う拠点のことを指します。

施工エリアの制限はない——よくある誤解を解く

「愛知県知事許可しか持っていないので、他県での工事はできませんよね?」

行政書士として相談業務を行っていると、これは本当によく受けるご質問です。結論を明確に申し上げると、許可行政庁がどこであるかにかかわらず、建設工事の施工場所に制限はありません。愛知県知事許可のみの事業者様であっても、日本全国どこでも工事を行うことができます。

許可行政庁の違いは、あくまで「申請や届出をどこに出すか」という事務上の区分に過ぎないのです。

なお、念のため付け加えておくと、軽微な工事であっても、許可を受けていない業種について、届出をしている営業所以外の場所で営業活動(契約締結など)を行うことは認められていません。施工場所の制限はなくとも、この点については注意が必要です。

2. 「一般建設業」と「特定建設業」——どちらが必要か?

建設業許可にはもう一つ、重要な区分があります。「一般建設業」と「特定建設業」です。これも会社の売上規模や資本金で決まるわけではありません。元請として受注した工事で、下請業者に発注する金額の総額によって区分が決まります。

下請金額の上限を超えると「特定」が必要になる

分岐点となるのは、「元請として受注した1件の工事について、下請に発注する代金の合計がいくらになるか」という点です。建設業法第3条第1項第2号および同法施行令第2条の規定により、以下の金額以上を下請に出す場合は特定建設業の許可が必要となります。

  • 建築一式工事の場合:下請代金の総額が 8,000万円以上
  • 建築一式工事以外の場合:下請代金の総額が 5,000万円以上

逆に言えば、元請であっても上記金額未満の下請発注にとどまる場合、あるいは自社が一貫して下請として営業する場合は、請負金額の大小にかかわらず一般建設業の許可で問題ありません。

実務上、この点についてよくご質問を受ける事項を2点補足しておきます。

① 材料費の取り扱い 元請業者が下請業者に支給する材料等の価格は、下請代金の算定に含めません(建設業許可事務ガイドライン)。下請契約上の純粋な代金のみで判断する点をご確認ください。

② 孫請(二次下請以下)への再発注 特定建設業の許可が求められるのは、発注者から直接工事を請け負う元請業者のみです。一次下請業者が二次下請業者へ工事を再発注する場合には、この金額制限は適用されません。一次下請の立場であれば、一般建設業の許可のまま再発注が可能です。

自社が今後どのような元請工事を手がけていくかを見据えて、一般か特定かを選択することが重要です。

3. 一般建設業の大臣許可を取得するための5つの要件

建設業許可の取得には、大臣許可・知事許可のいずれを問わず、建設業法等に定められた次の5要件をすべて満たすことが求められます。

① 経営業務の管理を適正に行うに足りる能力(経営体制)

【根拠法令:建設業法第7条第1号、同法施行規則第7条第1号】

建設業の経営には、資金繰りや資材調達、技術者の配置管理など、他の業種には見られない固有のノウハウが必要です。そのため、経営を適正に管理できる体制が整っていることが要件とされています。

具体的には、常勤の役員等のうち1名が、建設業に関して5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有する者(またはこれに準ずる者)であることが原則です。

② 営業所ごとの専任技術者の配置

【根拠法令:建設業法第7条第2号】

建設工事の適正な施工を担保するため、すべての営業所ごとに、取得しようとする業種に対応した専任技術者を常勤で配置しなければなりません。

一般建設業の場合、以下のいずれかの要件を満たす人材が必要です。

  • 指定学科修了者:高校・大学等の指定学科を卒業し、高卒では5年以上、大卒では3年以上の実務経験を有する者
  • 実務経験者:申請業種に関して10年以上の実務経験を有する者
  • 有資格者:2級施工管理技士などの国家資格を保有する者(国土交通大臣が同等以上と認定した者を含む)

③ 誠実性

【根拠法令:建設業法第7条第3号】

法人・その役員等、または個人事業主・支配人などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。「不正な行為」とは詐欺・脅迫・横領等の法律違反を指し、「不誠実な行為」とは工事内容や工期について請負契約に違反する行為を指します。

④ 財産的基礎(一般建設業の場合)

【根拠法令:建設業法第7条第4号】

建設工事は着工前から資材の手配などに資金を要します。そのため、請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用が求められます。一般建設業では、以下のいずれかを満たせば要件を充足します。

  1. 直前の決算において自己資本が500万円以上あること
  2. 500万円以上の資金調達能力を有すること(金融機関の預金残高証明書等による証明)
  3. 申請直前の過去5年間、許可を受けて継続して建設業を営んだ実績があること

なお、特定建設業の場合は下請業者保護の観点から、「資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上」など、より厳格な財産的要件(建設業法第15条第3号)が課されます。

⑤ 欠格要件への非該当と社会保険への加入

【根拠法令:建設業法第8条、同法施行規則第7条第2号】

欠格要件について

申請者やその役員等が、建設業法第8条に列挙された欠格要件のいずれかに該当する場合は、許可を受けることができません。主なものとして以下が挙げられます。

  • 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者
  • 禁錮以上の刑に処せられ、刑の執行終了(または執行を受けることがなくなった日)から5年を経過していない者
  • 暴力団員、またはその構成員でなくなった日から5年を経過していない者

社会保険への加入(※特に重要)

令和2年(2020年)10月の法改正により、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適切な加入が、許可取得・更新の絶対要件となりました。適用事業所でありながら未加入の場合、許可の取得も更新もできません。この点は特にご注意ください。

4. 愛知県の企業が大臣許可を申請する際の手続きと注意点

申請先は「国土交通省 中部地方整備局」

愛知県知事許可の申請窓口は、愛知県庁(都市総務課 建設業・不動産業室)や各地域の建設事務所(尾張建設事務所、西三河建設事務所など)でした。しかし、大臣許可の申請については窓口が大きく変わります。

愛知県に主たる営業所を置きながら他県にも営業所を設ける場合、申請・相談窓口は愛知県庁ではなく国土交通省 中部地方整備局となります。

  • 申請・相談窓口:国土交通省 中部地方整備局 建政部 建設産業課
  • 所在地:愛知県名古屋市中区三の丸2丁目5番1号(名古屋合同庁舎第2号館)
  • 電話番号:052-953-8572

書類の審査主体が国の出先機関に移ることで、これまで愛知県のローカルルールで通用していた書類の書式や確認資料の取り扱いが、国の基準(建設業許可事務ガイドライン等)に基づく厳格なものに変わります。「愛知県でいつもやっている書き方」が通用しないケースも出てきますので、事前の確認が不可欠です。

新規申請には「登録免許税」が必要

【根拠法令:建設業法第10条、建設業法施行令第4条、登録免許税法別表第一】

大臣許可と知事許可では、申請時に納める費用の性質と金額が異なります。

新規で大臣許可を取得する場合、またはすでに知事許可を持っている事業者が「許可換え新規」を行う場合は、許可手数料ではなく登録免許税として15万円を国(税務署等)に納付する必要があります。

知事許可の新規申請手数料(9万円)とは異なる点にご注意ください。また、一般建設業と特定建設業の両方を同時に新規申請する場合は、それぞれ1件と数えられるため、15万円×2件=合計30万円の登録免許税が必要となります。

一方、すでに大臣許可を持っている事業者が5年ごとの更新や業種追加を行う場合は、登録免許税ではなく許可手数料として5万円(収入印紙による納付等)を納付します。

申請の区分によって「税金」を納めるのか「手数料」を納めるのかが変わり、納付方法も異なります。早めに資金を準備し、納付手順を確認しておきましょう。

5. 愛知県知事許可から大臣許可への「許可換え新規」手続き

「許可換え新規」とは何か

【根拠法令:建設業法第9条第1項第3号】

建設業法第9条第1項第3号は、「都道府県知事の許可を受けた者が二以上の都道府県の区域内に営業所を有することとなったとき」は、新たに国土交通大臣の許可を受けなければならないと規定しています。

つまり、愛知県知事許可を持つ事業者が他県に営業所を新設する場合、許可行政庁が「愛知県知事」から「国土交通大臣」に切り替わるため、改めて国土交通大臣に対する新規の許可申請が必要となります。これを実務上「許可換え新規」と呼びます。新たな大臣許可が下りた時点で、従前の愛知県知事許可は自動的にその効力を失います。

審査中に有効期限が切れても「空白期間」は生じない

【根拠法令:建設業法第9条第2項(同法第3条第4項の準用)】

「許可換え申請の審査中に、今の愛知県知事許可の有効期限(5年)が切れてしまったら、無許可状態になってしまうのでは?」——これは非常によく受けるご相談です。

この点はご安心ください。建設業法第9条第2項(同法第3条第4項の準用)により、従前の許可の有効期間満了日までに許可換え新規の申請を行っていた場合、満了日までに処分が下されなかったときも、従前の知事許可は引き続き有効であると定められています。適法に申請さえ完了していれば、審査が長引いても営業に支障が生じることはありません。

費用と審査の厳格化への備え

許可換えは「新規」申請として扱われるため、知事許可の更新手数料(5万円)ではなく、登録免許税として15万円(一般・特定の両方を申請する場合は30万円)を国へ納付する必要があります。

そして、最も備えていただきたいのが審査の厳格化です。行政書士としての実務経験から申し上げると、愛知県では問題なく受理されてきた書類の記載内容や確認資料が、中部地方整備局の審査では指摘を受けるケースは決して珍しくありません。

県外に新設する営業所における「建設業法施行令第3条に規定する使用人(営業所長等)」の要件確認や「専任技術者」の配置要件の証明も含め、知事許可の更新以上に余裕を持ったスケジュールと丁寧な事前準備が求められます。

まとめ:県外への事業拡大に伴う大臣許可申請は、ぜひご相談ください

本記事で解説してきた通り、大臣許可は「他県で工事をするため」ではなく、「他県に営業所を設けるため」に必要な許可です。この大前提をしっかりと押さえておくことが、許可の選択を誤らないための第一歩です。

すでに愛知県知事許可をお持ちの事業者様が県外に営業所を新設する場合は、「許可換え新規」の申請が必要であり、新しい営業所にも専任技術者や令第3条の使用人を常勤で配置し、その要件を厳格に証明しなければなりません。申請先が中部地方整備局に変わることで手続きの難度も上がり、自社で対応するには相当の時間と労力を要します。

「県外に営業所を出したいが、人員の要件をプロに確認してほしい」 「知事許可から大臣許可への許可換え申請を一括して任せたい」 「中部地方整備局への申請手続きを代行してほしい」

そのようなお悩みをお持ちの事業者様は、ぜひ三澤行政書士事務所の初回無料相談をご利用ください。複数営業所の要件確認から書類作成、中部地方整備局との折衝まで、ワンストップで対応いたします。貴社の「県外への事業拡大」という大切な一歩を、確かな法務サポートでお支えします。

三澤祐喜 行政書士

三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)

行政書士

産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。

愛知県行政書士会所属|第24191550号