こんにちは、行政書士の三澤です!
「昔、ちょっとしたトラブルで罰金刑を受けたことがある。許可申請に響くだろうか」
「新しく役員に迎える予定の人物に、過去の行政処分歴があるかもしれない……」
建設業許可の取得を検討されるとき、多くの経営者様が心の中に抱えながらも、なかなか表立って相談しにくいのが「欠格要件(けっかくようけん)」の問題です。
建設業法第8条は、「許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するとき」は許可をしてはならない、と定めています。その要件は全部で14項目。一つでも該当すれば、どれほど豊富な施工実績や財務基盤があっても、許可は絶対に下りません。
さらに厳しいのは、「知らなかった」「うっかりしていた」という事情が、審査上まったく考慮されない点です。
注意が必要なのは、登記簿上の取締役だけではありません。顧問、相談役、そして5%以上の議決権を持つ株主まで、審査の網はあなたの会社の想像以上に広く張られています。もし該当事実を隠して申請すれば、それは「虚偽申請」として認定され、以後5年間は許可申請の機会そのものが閉ざされます。事業の根幹を揺るがすペナルティです。
本記事では、建設業法務の案件を数多く手がけてきた行政書士が、欠格要件14項目の全体像から、見落としやすいポイント、そして「該当してしまった場合」の現実的な対処法まで、丁寧に解説します。「うちは本当に大丈夫か」と少しでも不安がよぎる経営者様は、ぜひ最後までお読みください。
1. 建設業許可における「欠格要件」とは(建設業法第8条)
建設業許可を取得・更新するためには、財産的要件や経営管理体制だけでなく、「欠格要件に該当しないこと」を証明しなければなりません。まずは法令の構造と、審査対象となる人物の範囲を整理します。
1-1. なぜこれほど厳しい要件が定められているのか
建設業法第8条の柱書は次のように定めています。
「許可を受けようとする者が次の各号のいずれか(中略)に該当するとき、又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない。」
建設業は道路・橋梁・住宅など、人々の暮らしと社会インフラを直接支える産業です。法令遵守の意識に問題がある者や反社会的勢力が業界に参入することを防ぎ、発注者と公共の安全を守るために、これだけ厳格な基準が設けられています。
そして同条柱書が示す通り、欠格事由に「該当していること自体」だけでなく、「虚偽の記載をして申請すること」もまた不許可事由です。過去の経歴は、たとえ不利な内容であっても、正確に申告することが法的に求められています。
1-2. 「役員等」の範囲は想像以上に広い(顧問・相談役・5%株主も対象)
欠格要件の審査で最も多い見落としが、「誰が審査対象になるか」の誤解です。
建設業法第8条第12号・第13号は、法人の場合は「役員等」および「政令で定める使用人」、個人事業主の場合は「政令で定める使用人」のうち一人でも欠格要件に該当する者がいれば、申請者全体が不許可となると定めています。「自分は大丈夫だから会社として問題ない」とはならないのです。
ここでいう「役員等」は、登記簿上の取締役に限りません。建設業法第5条第3号の定義に基づき、役職名のいかんを問わず、取締役と同等以上の支配力を有すると認められる者が幅広く含まれます。具体的には以下の人物が対象です。
- 株式会社の取締役、持分会社の業務執行社員、執行役(指名委員会等設置会社)
- 各種組合等の理事その他これらに準ずる者
- 取締役会等から具体的な権限委譲を受けた執行役員
- 相談役・顧問
- 総株主の議決権の5%以上を有する株主(個人)
- 出資総額の5%以上に相当する出資をしている者(個人)
さらに「政令で定める使用人」(建設業法施行令第3条)とは、支配人のほか、支店長・営業所長を指します。
「名前だけ借りている役員」「会社に大きな影響力を持つ顧問」「支店を仕切る支店長」——これらの人物に過去のトラブルがある場合、それが不許可の直接原因になり得ます。申請準備では、関係者全員の経歴を丁寧に確認することが不可欠です。
2. 欠格要件14項目チェックリスト(建設業法第8条第1号〜第14号)
建設業法第8条は、第1号から第14号まで14の欠格要件を列挙しています。ご自身や役員等が以下のいずれかに該当していないか、確認してください。
2-1. 破産・判断能力に関する要件
個人の経済状況や意思能力に関わる要件です。
- □ 破産手続開始の決定を受けて、復権を得ない者(建設業法第8条第1号) 破産していても、免責許可の確定等により「復権」を得ていれば申請可能です。
- □ 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者(建設業法第8条第10号) 成年被後見人・被保佐人であっても一律に排除されるわけではありません。医師の診断書等によって必要な認知・判断・意思疎通ができると認められれば、欠格要件には該当しません。
- □ 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が欠格要件に該当する者(建設業法第8条第11号)
2-2. 過去の行政処分に関する要件
建設業法等の違反により、過去に重い行政処分を受けた場合の要件です。
- □ 建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(建設業法第8条第2号)
- □ 許可取消処分を免れるため、処分の通知日から処分日までの間に廃業の届出を行い、その届出の日から5年を経過しない者(建設業法第8条第3号) いわゆる「駆け込み廃業」が対象です。
- □ 上記「駆け込み廃業」の届出があった法人において、通知日の前60日以内に役員等または政令で定める使用人であった者で、届出の日から5年を経過しない者(建設業法第8条第4号)
- □ 営業の停止を命じられ、その停止期間が経過していない者(建設業法第8条第5号)
- □ 営業を禁止され、その禁止期間が経過していない者(建設業法第8条第6号)
2-3. 刑罰に関する要件
「罰金を払えば終わり」という認識は危険です。刑の内容によっては欠格要件に該当します。
- □ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行が終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(建設業法第8条第7号) 罪名を問いません。執行猶予期間中も該当します。
- □ 特定の法令違反または刑法上の特定犯罪により罰金刑に処せられ、その刑の執行が終わり等してから5年を経過しない者(建設業法第8条第8号) 単純な交通違反(反則金・罰金)は対象外ですが、以下の法令・罪名による罰金刑は対象になります。
- 建設業関連法令:建設業法、建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法など
- 労働関係法令:労働基準法、労働安全衛生法など
- 暴力団関係:暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律
- 刑法上の特定犯罪:傷害罪、現場助勢罪、暴行罪、凶器準備集合及び結集罪、脅迫罪、背任罪
- 暴力行為等処罰に関する法律
2-4. 反社会的勢力に関する要件
建設業界への暴力団等の参入を排除するための要件です。
- □ 暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(建設業法第8条第9号) 「組を辞めた」だけでは即座に許可を受けられません。脱退後5年が経過するまでは欠格要件に該当します。
- □ 暴力団員等がその事業活動を支配する者(建設業法第8条第14号)
2-5. 役員・使用人等の連帯責任に関する要件
法人・個人事業主が申請する場合に、関係者の状況が会社全体の可否に直結する規定です。
- □ 法人であって、その役員等や政令で定める使用人のうちに、上記の欠格要件に該当する者が一人でもいるもの(建設業法第8条第12号)
- □ 個人事業主であって、政令で定める使用人のうちに、上記の欠格要件に該当する者が一人でもいるもの(建設業法第8条第13号)
3. 専門家が警告する「よくある見落としポイント」3選
書類審査は非常に厳格で、細部まで確認されます。実務相談でよく目にする誤解と、絶対に避けるべき注意点を整理します。
3-1. 「昔のケンカで払った罰金は黙っていていいか」→ NG です
「数年前に揉め事があって罰金を払ったが、もう終わったことだから申告しなくていいだろう」
このような自己判断による申告漏れは、後から深刻な問題に発展するケースが少なくありません。
建設業法第8条第8号が対象とする罰金刑には、刑法の傷害罪・暴行罪・脅迫罪・背任罪、および暴力行為等処罰法違反が含まれています。交通違反の反則金・罰金は対象外ですが、上記に該当する罰金刑から5年が経過していない場合、許可は下りません。そしてこれを隠して申請すれば、次に述べる虚偽申請として、さらに重い制裁を受けることになります。
3-2. 「役員じゃない支店長」も審査対象になる
「取締役は全員クリーンだから問題ない」と思っていても、支店長や営業所長に問題がある場合も不許可となります。
建設業法第8条第12号・第13号は、「政令で定める使用人」(建設業法施行令第3条)にも欠格要件を適用しています。支配人・支店長・営業所長がその対象です。さらに、登記簿に名前のない顧問・相談役や、総株主の議決権の5%以上を保有する個人株主であっても、実質的な支配力があると判断されれば審査の対象となります。
申請前には、こうした広い範囲の関係者全員の経歴を確認することが欠かせません。
3-3. 虚偽申請は「発覚後」が最も怖い
過去の経歴に不安があるからといって、略歴書の賞罰欄に事実と異なる記載をしたり、意図的に情報を隠すことは絶対に避けてください。
建設業法第8条柱書は、「許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない」と明確に定めています。
仮に虚偽申請で許可が下りたとしても、後から発覚すれば「不正の手段により許可を受けた」として許可が取り消されます(建設業法第29条第1項第7号)。さらに、虚偽申請をした者には「6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性もあります(建設業法第50条第1項第1号)。
「黙っていれば分からないだろう」という判断が、事業の存続を脅かす最大のリスクです。少しでも不安な点があれば、まず専門家にご相談ください。
4. 欠格要件に該当した場合の対処法
欠格要件に該当することが判明した場合、すぐに許可申請を諦める必要はありません。法令の構造を正確に理解した上で、適切な対処法を選択することが重要です。
4-1. 基本は「5年の経過」または「復権」を待つ
欠格要件の多くは永続的なものではなく、一定の条件が整えば解消されます。
- 5年の経過を待つケース:
過去の行政処分(建設業法第8条第2号等)、禁錮以上の刑(同第7号)、特定法令違反による罰金刑(同第8号)、暴力団員の経歴(同第9号)などは、処分・刑の執行終了・脱退から5年が経過した時点で欠格要件から外れ、申請が可能になります。 - 復権を待つケース:
「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」(建設業法第8条第1号)に該当する場合は、免責許可の決定確定等により「復権」を得た時点で解消されます。5年待つ必要はありません。 - 心身の状態が回復したケース:
「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者」(建設業法第8条第10号)も、状態が回復し、医師の診断書等によって必要な認知・判断・意思疎通ができると認められれば申請可能です。
4-2. 該当者を「経営から完全に退かせる」ことで申請できるケース
法人として申請する場合、役員等に欠格該当者が一人いるだけで不許可となります(建設業法第8条第12号)。そのため、当該人物が役員等を退任し、会社の経営から実質的に離れることで、会社としての欠格要件を解消し、申請が可能になります。支店長等(政令で定める使用人)が該当する場合も、その役職から退くことで対処できます。
ここで絶対に避けなければならないのが、「肩書だけを変える」偽装退任です。
建設業法第5条第3号は、「役員等」の定義に「その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、取締役と同等以上の支配力を有すると認められる者」を含めています。役員を退任して「顧問」や「従業員」に名称を変えたとしても、実質的に経営に関与・影響を及ぼしていると判断されれば、引き続き審査対象とみなされます。
このような実態を伴わない退任は「虚偽申請」(建設業法第8条柱書)とみなされるリスクが高く、発覚した場合のペナルティは冒頭で述べた通り極めて重大です。対処するなら、経営からの完全かつ実質的な離脱が求められます。
5. まとめ:「グレーゾーン」は必ず専門家に確認を
建設業法第8条に定められた欠格要件14項目と、その審査対象となる「役員等」の広い範囲について解説してきました。
欠格要件は、一見すると単純に見えて、実際には非常に複雑な判断を要します。同じ「罰金」という言葉でも、交通違反の反則金は問題なく、特定の刑法犯罪や建設業関連法令違反による罰金刑は即アウトです。また、役員個人に問題がなくても、その人物がかつて役員を務めていた法人が許可取消処分を受けていた場合、連鎖的に影響が及ぶケースもあります。
「昔のことだから大丈夫だろう」「名前だけ役員から外せば通るだろう」
こうした自己判断が、建設業者にとって最も危険な判断です。虚偽申請が発覚した瞬間、許可取得への道は最低でも5年間、完全に閉ざされます。
少しでも不安な点があれば、自己判断で申請を進める前に、一度専門家にご相談ください。過去の経歴を一つひとつ整理しながら、「いつ、どのような形で申請するのが最も安全か」「体制をどう整えれば許可が取れるのか」を、現場の実務を知る行政書士として、貴社と一緒に考えます。
グレーな点は、自己判断しないでください。
「昔の罰金は交通違反じゃないかもしれない」「顧問に退いた前役員がいる」「5%以上の株主の経歴を確認していない」——一つでも当てはまるなら、申請前に必ず確認が必要です。
虚偽申請と判断されれば5年間許可が取れなくなります。
まず現状を話してください。
三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号
