こんにちは!行政書士の三澤です。
「経営業務の管理責任者(経管)や専任技術者(専技)の”常勤性”って、具体的にどうやって証明するの?」「他社の役員も兼ねているんだけど、問題ないよね?」「テレワークでも常勤として認められるの?」
建設業許可を取得しようとするとき、こうした疑問を抱える事業者様は少なくありません。そして実は、この「常勤性の証明」こそが、許可申請の中で最も審査が厳しく、最も失敗しやすいポイントです。
「社会保険さえ入っていれば大丈夫だろう」「名前を借りるだけなら問題ない」——そんな認識のまま申請窓口に向かうと、書類と実態の矛盾を突かれ、虚偽申請として一発不許可になるリスクがあります。これは決して他人事ではありません。
さらに、常勤性の審査ルールは近年大きく変化しています。たとえば、令和7年(2025年)12月2日以降、健康保険証による常勤性の確認が原則廃止となることをご存知でしょうか。「保険証のコピーを出せばOK」という情報はすでに古く、これからは「健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書」などの代替書類を正しく準備しなければ、申請窓口で受け付けてもらえません。
また愛知県には、通勤距離が片道2時間以上の場合に特別な審査が行われるといった独自の運用ルールもあります。テレワークの容認や社会保険の加入義務化など、法改正と実務の変化を的確に把握していなければ、安全に許可を取得することはできません。
本記事では、「常勤性」の基本要件から愛知県特有の審査ポイント、最新の法改正への対応、そして実務で陥りがちな落とし穴まで、現場を知り尽くした行政書士が体系的に解説します。この記事が、確実に許可を取得するための実践的なガイドとしてお役に立てれば幸いです。
そもそも「常勤性」とは何か——建設業許可における基本要件
建設業許可を取得するには複数の要件をクリアする必要がありますが、「ヒト」に関する要件は中でも特に審査が厳しい部分です。
許可を取得するためには、営業所ごとに「経営管理の責任者」と「工事の技術的な責任者」を配置しなければなりません。そして、この両者に共通して求められる絶対条件が「常勤性(専任性)」です。
役員名簿に名前が載っている、あるいは形式上雇用されているというだけでは不十分です。原則として、休日等を除く所定の就業時間中、継続的にその職務に従事している実態がなければ「常勤」とは認められません。
経営業務の管理責任者(常勤役員等)と専任技術者の役割
建設業法では、営業所に以下の2つの役割を担う人物を置くことが義務付けられています。
- 経営業務の管理責任者(常勤役員等) 建設業の経営業務を総合的に管理した経験を持つ人物です。令和2年(2020年)の建設業法改正により、法令上の名称は「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)」となりましたが、実務では旧来の「経管(けいかん)」という呼称も広く使われています。この役割を担う人物には「常勤」であることが必須です。
- 専任技術者(営業所技術者等) 建設工事に関する請負契約の適正な締結とその履行を確保するため、営業所に常勤して専らその職務に従事する技術者です(いわゆる「専技(せんぎ)」)。一定の国家資格または実務経験が求められます。
なぜ「常勤」でなければならないのか
建設業は契約金額が大きく、工事の品質や安全性が社会に与える影響も大きい業種です。そのため建設業法は、見積もりや契約、技術的な判断といった重要な業務を、責任ある立場の人間が常に管理できる体制を求めています。
「週に一度しか出社しない役員」や「名前だけ貸している技術者」で許可が通るようでは、トラブルが起きたときの責任の所在が曖昧になり、手抜き工事や下請け業者への未払いといった問題に発展しかねません。いわゆる「名義貸し」を厳しく排除し、請負契約の適正な締結と履行を確保するために、実態の伴う常勤性・専任性が強く求められているのです。
「経管」と「専技」は一人で兼任できるか
多くの中小企業・個人事業主の方からよく受ける質問に「経管と専技は別々の人を用意しなければなりませんか?」というものがあります。
結論から言えば、同一人物が「常勤役員等(経管)」と「専任技術者(専技)」を兼任することは可能です。
ただし、兼任が認められるのは「同一企業の同一営業所内(原則として本社・本店等)」に限られます。本社で経管を務める人が同じ本社の専技も兼ねることはできますが、「本社で経管を務めながら、支店の専技を兼ねる」といった、物理的に常勤が不可能な離れた営業所間での兼任は認められません。
人材が限られた小規模事業者では、社長(事業主)ご自身が経管と専技の両要件を満たし、一人二役で許可を取得するケースも多くあります。
【重要】実務に直結する最新の法改正と運用変更
「常勤性」を考える上で、特にお伝えしておかなければならないのが最新の法改正と運用の変更です。インターネット上には古い情報がそのまま残っていることも多く、過去の認識のまま手続きを進めると思わぬトラブルを招きます。現在の審査では、以下の3つの変更点が実務に直接影響しています。
①【必須要件】社会保険の加入義務化——未加入では許可が下りません
令和2年(2020年)10月の建設業法改正により、「適正な社会保険への加入」が許可の必須要件となりました。改正以前は、未加入でも指導を受けるだけで許可が取得できるケースがありましたが、現在はそうではありません。
ここでいう社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つを指します。法人であれば原則としてすべての事業所で健康保険と厚生年金への加入義務があり、加入義務があるにもかかわらず未加入の状態では、その他の要件をすべて満たしていても申請を受け付けてもらえません。
「国民健康保険でカバーできないか」といった旧来の発想はすでに通用しません。未加入の法人様は、まず加入手続きを完了させることが大前提となります。
②【最新動向】ICTを活用したテレワークの容認
「常勤とは毎日必ず営業所に出社することだ」と思われがちですが、働き方の多様化に対応し、現在はICTを活用したテレワーク(在宅勤務)も「常勤」「専任」として認められるようになっています。
具体的には、メールやWeb会議システムなどのICT機器を活用し、営業所で勤務するのと同等の業務を遂行できる環境にあり、かつ所定の就業時間中に常時連絡が取れる状態であれば、テレワークでの常勤が認められます。
ただし、「常識上、通勤が不可能な遠隔地でのテレワーク」は認められません。緊急時に現場や営業所へ駆けつけることができない距離にある場合(例:沖縄在住の方が北海道の営業所の専任技術者としてテレワーク勤務する、といったケース)は、専任性を満たさないと判断されます。
③【令和7年12月以降】健康保険証による常勤性確認の原則廃止
これから許可取得や各種手続きを目指す事業者様が最も注意すべき変更が、令和7年(2025年)12月2日以降の健康保険被保険者証の新規発行終了に伴う、常勤性確認書類の変更です。
これまで常勤性を証明する最も手軽な書類は「会社名が記載された健康保険証」でしたが、愛知県では令和7年12月2日以降に仮受付が行われる申請については、健康保険証は原則として常勤性の確認書類として使用できなくなります(※令和7年12月1日以前に仮受付が完了しており、有効期限内の記載がある保険証を除く)。
代替書類として最も優先されるのが、「健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し」等です。このルール変更を知らずに従来通りの準備を進めると、申請窓口で「常勤性の証明ができない」と差し戻されることになります。
愛知県特有の審査ポイント——ローカルルールを正確に把握する
「常勤性」という要件自体は建設業法に基づく全国共通のルールですが、具体的な審査・確認の運用は各都道府県の裁量に委ねられている部分があります。愛知県は特に、客観的な証明資料を重視し、実態を厳格に確認する傾向があります。
「形式」ではなく「実態」を重視する愛知県の審査姿勢
愛知県の審査で最も重視されるのは、「形式上どうなっているか」ではなく、「客観的な資料から見て、本当にその営業所に常勤していると言えるか」という実態です。
たとえば、社会保険に加入していれば無条件で認められるわけではありません。役員報酬が極端に低かったり、他法人での勤務実態が疑われたりする場合は、追加の証明資料や合理的な説明が求められます。書類上だけの「名ばかり経管」や「名義貸しの専技」を見逃さないよう、記載内容の整合性が徹底的にチェックされます。
通勤距離の現実性——片道2時間以上は厳格審査の対象
愛知県の審査で特に引っかかりやすいのが「通勤距離の現実性」です。
愛知県の手引には、「住所(居所)が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離(通勤時間がおおむね片道2時間以上)にあり、社会通念上通勤不可能なものについては、通勤確認のできる資料を求めることがある」と明記されています。
つまり、住民票上の住所や実際の居所が営業所から片道2時間以上離れている場合、「本当に毎日通勤しているのか」という疑義が生じます。この場合、口頭での説明だけでは不十分であり、通勤定期券の写しやETCカードの利用記録など、通勤の実態を客観的に裏付ける資料の提出が求められます。
「住民票の住所だけ愛知県の実家に移しておけば大丈夫だろう」という安易な考えは通用しません。遠方に居所のある方を常勤役員等や専任技術者として申請する場合は、通勤の実態をどう証明するかを事前にしっかりと準備しておく必要があります。
常勤性を証明する必要書類まとめ(愛知県・最新版)
常勤性の証明に必要な書類は、申請者の立場によって異なります。愛知県における最新の運用ルールに基づき、必要書類と実務上の注意点を整理してご紹介します。
立場別の基本書類
これまでは「会社名が記載された健康保険被保険者証のコピー」が最もシンプルな証明書類でした。有効期限内かつ会社名の記載があるものであれば、現時点でも一定の証明書類として利用できますが、前述の通り令和7年12月2日以降はこれが使えなくなります。
社会保険への加入を前提として、立場ごとに必要な書類の組み合わせは以下の通りです。
- 法人役員の場合:健康保険・厚生年金保険への加入状況が確認できる書類(標準報酬決定通知書など)+ 役員としての登記が確認できる登記事項証明書等
- 法人従業員の場合:健康保険・厚生年金保険への加入状況が確認できる書類+ 雇用保険被保険者証および資格取得等確認通知書(写し)等
- 個人事業主本人の場合:所得税確定申告書(第一表・収支内訳書または青色申告決算書等一式)の控え、市区町村発行の所得証明書など
【住民票は原則不要です】
少し前の情報には「住民票の原本が必要」とあるものもありますが、現在の愛知県の申請では、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)による確認が原則となっているため、住民票の添付は不要です。ただし、外国人住民の方や、住民票の住所と実際の居所が異なる場合は、本人確認書類や居所を証明する資料(公共料金の請求書など)の別途提出が必要となります。
令和7年12月以降の代替書類と優先順位
本記事で最も強調したい変更点が、令和7年(2025年)12月2日以降に適用される健康保険証の廃止に伴うルール変更です。
愛知県では、同日以降に申請を行う場合、常勤性の確認書類として以下の①から順に確認し、最初に該当する直近の資料を提出することとされています。
<代替書類の優先順位(愛知県ルール)>
① 健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し (70歳以上の方や建設国保等加入者の場合は、別途指定の代替書類あり)
② 住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)の写し
③ 所得証明書(市区町村発行)+ 源泉徴収票の写し
④ 雇用保険被保険者証の写し+ 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書の写し (被保険者区分が「1」のものに限る)
これまで「保険証のコピーを取るだけ」で済んでいた手続きが、今後は「標準報酬決定通知書などの公的通知書を日常的に管理・保管しておく」ことが前提となります。申請直前に「書類が見当たらない」と慌てることがないよう、会社として日頃から適切に保管しておくことが、スムーズな許可取得の第一歩です。
実務でよく起きる「常勤性」の落とし穴と特殊ケース
常勤性の証明は形式的な書類の提出だけでは足りず、実際の勤務実態を示す必要があります。しかし現場では誤解が生じやすく、要件を満たさないまま申請して「不許可」の危機に直面するケースも少なくありません。ここでは、よくある落とし穴と特殊な働き方の判断基準を解説します。
他社役員との兼務——曜日ごとの勤務区分もNG
最も注意が必要なのが他社との兼務です。「名前だけの役員だから大丈夫」と思われがちですが、他法人の常勤役員を兼任している場合や、他に個人事業を行っている場合は、「他の営業等について専任に近い状態にある」とみなされ、原則として常勤性が否定されます。
特によくある誤解として、「月・水・金はA社、火・木はB社に出勤する」といった曜日ごとの勤務区分を設けるケースがあります。しかし建設業における常勤性は「所定の就業時間中、毎日その職務に従事していること」が前提であるため、このような勤務形態では常勤と認められません。
例外的に他社との兼務が認められるのは、「他社が建設業とは無関係であり、申請会社の営業時間中は常に申請会社の業務に従事できる状態であること」を客観的に証明できる、非常に限定的なケースのみです。
出向社員を経管・専技にする場合の注意点
「親会社や関連会社からの出向社員を経管や専技にすることはできるか」というご相談もよくいただきます。
結論として、出向社員であっても、申請営業所での常勤性・専任性が確認できれば配置は可能です。ただし、通常の書類に加え、以下の資料によって実態を証明する必要があります。
- 出向契約書等(該当者・出向元・出向先・出向期間が明確に確認できるもの)の写し
- 出向元の健康保険証(有効期限内のもの)等
「形式的な出向ではなく、出向先(申請会社)の営業所で実際に日常業務に従事している」という実態を示せれば問題ありません。なお、営業所に配置する技術者(主任技術者・監理技術者)については、企業集団等の特例を除き、原則として出向社員の配置は認められていませんので、この点はご注意ください。
書類と実態の「矛盾」が疑いを招く
書類が一通り揃っていても、内容に「矛盾」があれば審査官から厳しい指摘を受けます。よくあるパターンを確認しておきましょう。
- 【矛盾の例①:通勤距離】 住民票の住所は愛知県内にあるものの、実際の居所が他県にあり営業所まで片道2時間以上かかる場合。「本当に毎日通勤しているのか」と疑われ、通勤定期券やETC利用履歴などの提出を求められます。
- 【矛盾の例②:役員報酬の額】 「常勤」の役員であるにもかかわらず、標準報酬月額が生活費として成立しないほど極端に低い場合。「他に収入源(本業)があるのではないか」と兼業を疑われる原因になります。
- 【矛盾の例③:社会保険未加入】 法人の役員として登記されているにもかかわらず社会保険に加入していない場合。これは矛盾というより法令違反(要件不備)であり、原則として許可は下りません。
審査では「書類の見た目」だけでなく、「実態との整合性」が厳しくチェックされます。見せかけの勤務実態を装った申請(いわゆる名義貸し)は、絶対に行ってはなりません。
まとめ——常勤性の審査は「実態」と「客観的資料」の整合性がすべて
ここまで、「常勤性」の基本要件から愛知県特有の厳格な審査ポイント、最新の法改正対応までを解説してきました。
お読みいただいてお分かりの通り、常勤性の審査は「名前を借りてくれば大丈夫」「社会保険に入っていれば問題ない」といった小手先の対策が通用するほど甘いものではありません。
行政は、通勤距離の現実性(愛知県の片道2時間ルールなど)、出向の事実、他社との兼務状況まで、あらゆる客観的資料を突き合わせて「本当にこの営業所で、毎日建設業の業務に専念しているのか」という実態を厳しく審査します。万が一、書類と実態に矛盾が生じて虚偽申請とみなされた場合は、一発不許可になるだけでなく、その後数年間にわたって許可を取得できなくなるという重大なペナルティが課されます。
さらに、令和7年(2025年)12月以降の健康保険証による証明の原則廃止や、テレワークへの対応など、常勤性をめぐるルールは現在進行形で複雑化しています。古いネット情報を頼りに自社で判断することは、リスクが高いと言わざるを得ません。
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三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号
