こんにちは、行政書士の三澤です!
「80㎡を超える解体工事を受注したが、リサイクル法の届出以外に何が必要か」
「下請契約書に記載が必要な項目があると聞いたが、具体的に何を書けばいいのか」——。
愛知県で解体・リフォーム工事に携わる建設業者様から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(以下、建設リサイクル法)の遵守は、解体工事を請け負う上で絶対に外せない義務です。ところが、実務の現場ではこの法律単体で完結することはほぼありません。工事着手7日前までの事前届出と並行して、解体工事業登録の取得・維持、そして令和2年に義務化が強化されたフロン排出抑制法(フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律)に基づく事前調査・書面説明という、複数の法規制が同時に課せられているからです。
これらのうち一つでも見落とすと、行政指導や罰則のリスクを負うだけでなく、発注者(施主)との信頼関係を損ない、今後の受注に支障をきたす恐れがあります。
本記事では、産業廃棄物・建設業界に10年以上携わってきた行政書士が、建設リサイクル法の対象基準から、契約時に義務付けられている「4つの記載事項」、さらに実務でとくに見落とされがちなフロン法との一体的な運用方法まで、順を追って解説します。経営者様・現場担当者様がコンプライアンスを盤石にし、本業の「現場」に集中できるよう、ぜひ最後までお読みください。
1. 建設リサイクル法とは?——対象となる工事の規模基準
建設リサイクル法は、コンクリート・木材・アスファルト等の特定建設資材が用いられた建物の解体や新築工事に際して、現場での「分別解体」と「再資源化(リサイクル)」を義務付ける法律です。すべての工事が対象になるわけではなく、工事の種別ごとに「床面積」や「請負代金」による規模基準が設けられています。
まずは自社が請け負う工事がこの法律の対象となるかどうかを、以下の基準で確認してください。
建築物に関する工事の対象基準
| 工事の種別 | 対象となる規模 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 床面積の合計が 80㎡以上 |
| 建築物の新築・増築工事 | 床面積の合計が 500㎡以上 |
| 建築物の修繕・模様替等(リフォーム等) | 請負代金の額が 1億円以上 |
解体・新築・増築については金額ではなく「床面積」で判定される点が実務上のポイントです。リフォーム等の場合のみ請負代金で判定されます。
建築物以外の工作物に関する工事の対象基準
擁壁・看板・駐車場・土木設備などの工作物については、床面積という概念がないため「請負代金」で判定します。
| 工事の種別 | 対象となる規模 |
|---|---|
| 土木工作物などの解体・新築工事 | 請負代金の額が 500万円以上 |
契約を分割しても金額・面積は「合算」されます
ご相談の中で「工期や契約を2つに分ければ基準を下回るのでは?」というご質問を受けることがあります。しかし建設リサイクル法では、同一の業者が2つ以上の契約に分割して請け負った場合でも、正当な理由がない限りすべて1つの契約とみなして合算したうえで規模基準を適用すると定められています。届出逃れを目的とした不自然な契約分割は法律違反となるリスクが高く、厳に慎む必要があります。
また、自主施工(請負契約によらず自社で施工する場合)であっても、請負人に施工させた場合の「適正な請負代金相当額」で見積もって基準を判定しなければなりません。
2. 工事着手前の「事前届出」と契約書への記載義務
対象工事に該当する場合、工事着手前および契約締結時に、それぞれ法律上の義務が課されます。とりわけ契約書への追加記載事項については、通常の建設業法上の要件に加えて別途の義務が生じるため、書類不備が生じやすい箇所です。
工事着手の「7日前」までに事前届出を
対象建設工事を行う場合、発注者(または自主施工者)は、工事に着手する日の7日前までに、管轄の都道府県知事(愛知県の場合は愛知県知事または権限移譲を受けた各市町村長)に対し、分別解体等の計画について事前届出を行わなければなりません。(根拠法令:建設リサイクル法 第10条第1項)
なお、発注者から直接工事を請け負う元請業者様は、契約締結前に発注者へ対して届出事項(建築物の構造・特定建設資材の種類・工程の概要など)を記載した書面を交付し、説明する義務も負っています。(根拠法令:建設リサイクル法 第12条第1項)
【重要】請負契約書に必ず記載すべき「4つの事項」
実務上、最も多くの業者様が見落としているのがこの点です。
対象建設工事の請負契約を締結する際は、発注者と元請業者間の契約(元請契約)はもちろん、元請業者と下請業者間の契約(下請契約)においても、建設業法第19条第1項所定の通常の記載事項に加えて、以下の4事項を書面に明記し、署名または記名押印のうえ相互に交付しなければなりません。(根拠法令:建設リサイクル法 第13条第1項、特定建設資材に係る分別解体等に関する省令 第4条)
追加で記載が義務付けられている4事項:
- 分別解体等の方法
- 解体工事に要する費用
- 再資源化等をするための施設の名称及び所在地
- 再資源化等に要する費用
「○○工事一式」という記載はNGです
見積書や契約書に「解体工事一式」として請負代金をまとめて記載してしまうケースが実務上よく見受けられます。しかし上記の通り、「解体工事に要する費用」と「再資源化等に要する費用」はそれぞれ分けて明記することが法律上の義務です。一式表記でこれらの費用が不明確な場合、建設リサイクル法違反となるだけでなく、下請代金の適正な設定を求める建設業法違反を疑われるリスクも生じます。
自社の請負契約書や下請業者に交付する注文書の雛型に、これら4項目の記載欄が設けられているか、今一度ご確認ください。
3. 解体工事業登録と建設業許可——必要な許認可を正しく把握する
解体工事を請け負う場合、工事の規模や請負金額に応じて必要な許認可が異なります。「500万円未満なら建設業許可は不要だから大丈夫」という認識は、解体工事においては通用しません。建設業法と建設リサイクル法の両方のルールを正しく理解する必要があります。
請負金額が500万円未満の小規模工事でも「解体工事業登録」は必須
建設業法では、1件の請負代金が500万円未満の工事(建築一式工事の場合は1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事)を「軽微な建設工事」と定め、これのみを請け負う場合は建設業許可を不要としています。
しかし、解体工事については例外です。建設リサイクル法では、請負金額の多寡にかかわらず、解体工事業を営もうとする者は、営業区域を管轄する都道府県知事の「解体工事業登録」を受けなければならないと定められています。(根拠法令:建設リサイクル法 第21条第1項)
たとえばブロック塀の撤去や小規模な家屋の解体といった工事でも、無登録で請け負えば、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑事罰の対象となります。
建設業許可を持つ業者様が注意すべき「通知書の提出」
以下の建設業許可のいずれかを受けている業者様は、改めて解体工事業登録を受ける必要はありません。
- 土木工事業(土木一式工事)
- 建築工事業(建築一式工事)
- 解体工事業
ただし、ここに実務上の落とし穴があります。現在「解体工事業登録」を受けて営業中の業者様が、事業拡大などによって新たに上記いずれかの建設業許可を取得した場合、許可の取得により解体工事業登録は効力を失います。この際、愛知県等の登録行政庁に対して「通知書(様式第3)」を提出する手続きが必要となります。
許可を取得した後、登録行政庁への通知を見落としたまま放置しているケースが少なくありません。自社の許認可状況が変わった際は、速やかに手続きを確認してください。
「とび・土工・コンクリート工事業」では解体工事はできません
平成28年(2016年)の建設業法改正により「解体工事業」が独立した業種として新設され、旧来の「とび・土工工事業」から分離されました。経過措置はすでに終了しているため、現在「とび・土工・コンクリート工事業」の許可しか保有していない業者様が500万円以上の解体工事を元請・下請として請け負うことはできません。また500万円未満の解体工事についても、別途「解体工事業登録」が必要です。自社の許可通知書を改めてご確認ください。
4. 見落とし厳禁——建設リサイクル法と「フロン排出抑制法」の一体的な運用
建物の解体工事を行う際、建設リサイクル法と並んで必ず確認しなければならないのがフロン排出抑制法のルールです。この確認を怠ったまま解体に着手し、業務用エアコン等の配管を切断してフロンガスを大気中に放出してしまうと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い罰則の対象となります。
解体前に「第一種特定製品」の有無を確認する
建物の解体工事を発注者から直接請け負う元請業者(特定解体工事元請業者)は、工事着手前に対象建物に「第一種特定製品」(業務用エアコンディショナー・業務用冷蔵機器・業務用冷凍機器など)が設置されているかどうかを事前に確認する義務があります。
さらに、その確認結果を発注者に対して書面(交付年月日・発注者および元請業者の名称・解体工事の名称と場所・第一種特定製品の設置の有無等を記載したもの)で交付し、説明しなければなりません。(根拠法令:フロン排出抑制法 第42条第1項、特定解体工事書面記載事項省令 第2条)
事前確認書面は「3年間」の保存義務
元請業者が発注者に交付した事前確認書面(特定解体工事発注者への事前確認結果説明書)およびその写しは、交付した日から3年間、発注者および元請業者の双方が保存する義務を負います。(根拠法令:フロン排出抑制法 第42条第1項・第3項、特定解体工事書面記載事項省令 第3条)
建設リサイクル法との「対象規模」と「保存義務」の違いに要注意
建設リサイクル法第12条第1項でも、対象工事の元請業者から発注者に対する書面交付と事前説明が義務付けられています。現場調査や発注者への説明の手間を省くため、フロン排出抑制法に基づく事前確認・説明と、建設リサイクル法に基づく事前説明を一体的に実施することが実務では効率的です。
ただし、以下の2点の違いを必ず把握した上で運用してください。
① 対象となる工事規模の違い 建設リサイクル法は「床面積80㎡以上」などの一定規模以上の工事が対象です。一方、フロン排出抑制法の事前確認・説明は、規模の大小にかかわらず原則としてすべての解体工事に適用されます。
② 書面の保存義務の違い 建設リサイクル法上の説明書面に法定の保存義務はありませんが、フロン排出抑制法に基づく説明書面には3年間の保存義務があります。(根拠法令:フロン排出抑制法 第42条第1項・第3項)
まとめ:複合的な法令遵守を、プロと一緒に整備しませんか
本記事では、建設リサイクル法の基本ルールから、契約書への記載義務、解体工事業登録・建設業許可の関係、そしてフロン排出抑制法との一体的な実務対応まで、順を追って解説しました。
解体工事にまつわる法務は、「リサイクル法の届出を出せばそれで終わり」では決してありません。
- 500万円未満の工事でも、解体工事業登録は取得・維持されているか
- 建設業許可を新たに取得した際、登録行政庁への通知(様式第3)は提出済みか
- フロン法に基づく事前確認書面は、3年間適切に保存されているか
- 下請契約書に、4つの法定記載事項は明記されているか
これら複数の法規制を、現場を動かしながら漏れなく管理するのは、多忙な経営者様にとって相当な負担です。
当事務所は、書類を代わりに作成するだけの「代書屋」ではありません。産廃業界での10年以上の実務経験を活かし、建設リサイクル法・建設業法・廃棄物処理法・フロン排出抑制法が複雑に絡み合う御社の法務課題を、根本から整理するパートナーとして対応します。
「この工事、現在の体制で進めて法令違反にならないか不安だ」「面倒な届出や書面管理をプロに任せたい」とお考えの愛知県内の経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。御社のコンプライアンスを強固にし、本業である「現場」に専念できる体制を、共に築いてまいります。
その解体工事、複数の法律に対応できていますか?
建設リサイクル法の届出だけでは終わりません。
解体工事業登録の要否、契約書への4事項の記載、フロン法の事前確認書面の3年保存——一つでも漏れると法令違反になります。
「自社の体制で問題ないか」を一度確認させてください。
三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号