こんにちは、行政書士の三澤です!
「以前、別の事業で行政処分を受けたことがある。それでも建設業許可は取れるだろうか?」
「新しく迎えた役員の経歴に少し不安がある。許可の審査に響かないか心配だ……」
建設業許可の取得を目指す経営者様から、こうした「過去の経歴やトラブル」に関するご相談をよくいただきます。
許可取得には「経営業務の管理責任者」や「専任技術者」「財産的基礎(500万円以上)」といった要件を満たすことが必要ですが、実はそれらと同じかそれ以上に厳しく審査されるのが、「人」に関する要件です。
建設業法は、不正な請負契約によるトラブルを防ぐため、申請者(役員や個人事業主本人など)が「誠実性」を有していることを必須条件として定めています(建設業法第7条第3号)。さらに、過去に一定の法令違反がある場合には「欠格要件」(建設業法第8条)に該当し、問答無用で許可が拒否されます。
この「誠実性」と「欠格要件」は混同されがちですが、法律上の意味合いも審査のポイントもまったく異なります。
本記事では、建設業法が定める「誠実性」の範囲と具体的な不許可ケース、そして混同されやすい「欠格要件」との違いについて、行政書士の立場から詳しく解説します。申請前のセルフチェックとして、ぜひ最後までお読みください。
建設業法が定める「誠実性」とは(法第7条第3号)
建設業許可の基準を定めた建設業法第7条第3号では、「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」と規定されています。
ここでいう「不正な行為」と「不誠実な行為」は、審査上それぞれ明確に定義されています。
「不正な行為」とは
請負契約の締結や履行の場面で行われる、詐欺・脅迫・横領・文書偽造といった法律に違反する行為を指します。契約の過程で犯罪行為に相当する悪質な違法行為がこれにあたります。
「不誠実な行為」とは
工事内容・工期・天災等による損害負担などについて、請負契約の取り決めに違反する行為を指します。たとえば、約束した工事内容を守らない、正当な理由なく工期を大幅に遅延させる、損害負担の合意を無視してトラブルを起こす、といった行為がこれにあたります。
誰の「誠実性」が審査されるのか
誠実性の審査は、会社や個人事業主本人だけを対象としているわけではありません。建設業法第7条第3号では、「法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が(中略)おそれが明らかな者でないこと」と明示されており、経営に携わる主要なメンバー全員が審査対象となります。
法人の場合
以下の全員が審査の対象です。
- 法人そのもの
- 役員等: 取締役・業務執行社員・執行役など。なお、取締役会の決議を経て代表取締役等から具体的な業務執行権限を委譲された執行役員等は「これらに準ずる者」として含まれます(監査役・会計参与は原則対象外)。
- 政令で定める使用人(令第3条の使用人): 本店以外の支店・営業所の代表者(支店長・営業所長)や支配人が対象です。請負契約の締結権限を持つ重要なポジションのため、役員と同等の誠実性が求められます。
個人事業主の場合
以下の者が審査対象となります。
- 個人事業主本人
- 政令で定める使用人(令第3条の使用人): 支店長・営業所長・商業登記された支配人を置いている場合は、その者も対象です。
- 法定代理人: 申請者本人が未成年者であり、営業に関して成年者と同一の行為能力を持たない場合は、親権者等の法定代理人も対象となります。
「誠実性がない」と判断される具体的なケース
誠実性の審査は、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」等に基づいて行われます。以下のいずれかに該当する場合、「誠実性を満たさない(=許可基準に抵触する)」と判断される可能性が非常に高くなります。
ケース①:宅建業法・建築士法などで免許取消処分を受けた場合(最終処分から5年以内)
建設業以外の関連事業での違反歴も審査の対象です。ガイドラインでは、「建築士法や宅地建物取引業法などの規定により不正又は不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分の日から5年を経過しない者である場合は、原則としてこの基準を満たさない」と明記されています。他業種であっても、5年以内に悪質な契約・法律違反で免許を取り消された経歴がある場合は要注意です。
ケース②:すでに建設業を営んでいる場合
現在すでに許可を受けて建設業を行っている場合は、「過去に不正な行為をした事実が確知された場合、又は他業法での取消処分を受けて5年未満である場合を除き、この基準を満たすものとして取り扱う」とされています。特段のトラブルなく適法に営業を続けている実績があれば、基本的には誠実性ありと評価されます。
申請前のセルフチェックリスト
- 請負契約の内容(工期・金額・責任の所在等)を遵守しているか
- 建築士や宅建業など、他の免許等で過去5年以内に取消処分を受けていないか
- 法人本体だけでなく、役員・営業所長などの主要メンバーに上記の該当者はいないか
「誠実性」と間違えやすい「欠格要件(法第8条)」
インターネット上で「誠実性がない」として紹介されているケースの中には、実は建設業法第8条が定める「欠格要件」に該当するものが多く含まれています。欠格要件は、一つでも当てはまれば問答無用で許可が拒否・取消となる、より厳しいルールです。
欠格要件①:申請書類への「虚偽記載」
建設業法第8条本文では、「許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、許可をしてはならない」と定められています。経歴や事実をごまかして申請することは、絶対に許されません。
欠格要件②:暴力団関係者の関与
法第8条第9号・第14号では、暴力団員またはその離脱から5年を経過しない者、あるいは暴力団員等が事業活動を支配する者は、欠格要件として許可を受けられないと定めています。
欠格要件③:過去の許可取消・一定の法令違反による刑事罰
過去に建設業許可を取り消されてから5年を経過していない場合(法第8条第2号)、禁錮以上の刑を受けて執行終了から5年を経過しない者(同第7号)も欠格要件です。また、「一定の法令違反」による罰金刑も対象となり(同第8号)、建設業法違反のほか、労働基準法(第5条:強制労働の禁止等)や建築基準法などの重大な違反による罰金刑も含まれます。
「誠実性」の審査と「欠格要件」の審査は、根拠条文も判断基準もまったく異なります。自社の経歴がどちらに抵触しうるのか、あるいはいずれにも抵触しないのかを正確に見極めることが、許可取得への第一歩です。
許可取得に向けて、事前にできる対策
「過去に違反があったかもしれない」「役員に該当者がいないか不安だ」という場合でも、状況を正確に把握し、適切に対処することで許可取得の道が開けることがあります。
対策①:役員・使用人の経歴・処分歴を社内で正確に把握する
誠実性・欠格要件の審査対象は、法人や代表者だけではありません。役員等や「令第3条の使用人(支店長・営業所長等)」も含まれます。申請準備の段階で、経営に携わる全メンバーの過去の経歴、他業法(宅建業法・建築士法等)での免許取消処分歴、労働基準法等での罰金刑の有無を社内でヒアリング・把握しておくことが不可欠です。
実際の申請では、対象者全員の「身分証明書(本籍地の市区町村が発行)」や「登記されていないことの証明書(法務局が発行)」の提出が義務付けられており、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない者等への該当有無が厳格にチェックされます。
対策②:事実を隠さず、正確に記載する(虚偽記載の絶対防止)
過去に違反歴がある場合にもっともやってはいけないのが、事実を隠して申請することです。
愛知県の許可事務ガイドラインや手引きでは、役員等の略歴書の「賞罰の内容」欄について、「具体的な記載がない場合に行政処分等の事実が確認され、当該事実が法第8条に該当する場合には、原則として『虚偽申請』として取り扱う」と明確に定めています。
「昔のことだからバレないだろう」「書かなくてもいい法令違反だと思っていた」という安易な自己判断は、許可が下りないだけでなく、虚偽申請として扱われ、その後5年間は新たな許可申請すらできなくなるという致命的なリスクを招きます。
まとめ:「知らなかった」は通じない。不安があれば必ず専門家へ
建設業許可における「誠実性(法第7条第3号)」と「欠格要件(法第8条)」の違い、そして審査対象となる人物の範囲について解説してきました。
実務上、もっとも深刻なのは「欠格要件に該当する事実(過去の罰金刑など)を会社側が把握していない」まま申請してしまうケースです。単なる確認漏れであっても「虚偽記載」とみなされ、許可が下りないうえ、その後5年間は新規申請もできなくなるという取り返しのつかない事態を招きます。
- 「自社役員の経歴が要件に触れないか心配だ」
- 「欠格要件に該当するかもしれないが、どう対処すればよいか知りたい」
こうした不安を抱えている経営者様は、自己判断で申請書を提出せず、建設業許可専門の行政書士にまず事前相談されることを強くお勧めします。
過去の処分歴が「誠実性がない」と判断されるのか、「欠格要件」に抵触するのか、それとも「5年が経過しているため問題ない」のか――この見極めは高度に専門的な判断を要します。リスクを正確に評価したうえで、貴社が最短・適法のルートで許可を取得できるよう、全力でサポートいたします。
申請前に、一度確認してください。
「昔のことだからバレないだろう」という判断が、虚偽申請として5年間の許可取得禁止につながるケースがあります。
誠実性・欠格要件のどちらに該当するか、それとも問題ないかの判断は専門的です。
過去の処分歴や役員の経歴に不安がある場合、自己判断で申請する前に一度ご相談ください。
三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号
