こんにちは、行政書士の三澤です!
「後継者がいないので、会社を第三者に譲渡したい」 「M&Aを活用して、一気に事業を多角化・拡大したい」
そう考えている経営者の方に、ぜひ知っていただきたい補助金があります。
2026年(令和8年)から「事業承継・M&A補助金」として刷新されたこの制度は、承継前の磨き上げからM&A成立後の経営統合(PMI)、さらには廃業・再チャレンジまでを一気通貫で支援する、非常にスケールの大きな補助金です。
ただし、一点だけ先にお伝えしておきます。
「M&Aの仲介手数料が補助されるなら、業者に丸投げしてお得に会社を買えばいい」——そう考えているとしたら、それは大きな危険をはらんでいます。
国の「M&A支援機関登録制度」に登録されていない業者を使えば委託費は全額補助対象外になり、形式だけのM&Aは審査で容赦なく弾かれ、安易な賃上げ目標の未達は他補助金への18ヶ月間の減点ペナルティにつながります。これらのルールは、悪質なM&A業者が積極的には教えてくれない「実務の壁」です。
この記事では、最新の補助額とスケジュールをわかりやすく整理したうえで、行政書士として申請前に必ず知っておくべき3つの実務的落とし穴を解説します。
1. 名称変更!2026年「事業承継・M&A補助金」の全体像と4つの支援枠
後継者不足と経営者の高齢化が深刻な社会課題となる中、これまで「事業承継・引継ぎ補助金」として運用されてきた支援制度が、令和7年度(令和6年度補正予算)から「事業承継・M&A補助金」へと名称を変え、大幅に拡充されました。
これまでの制度との違い
従来の制度との最大の違いは、「点」の支援から「線」の支援へと進化した点です。
以前は「M&A時の仲介手数料を補助する」という単発的な支援にとどまっていましたが、2026年度からは事業承継のライフサイクル全体——承継前の企業価値向上、M&Aの実行、成立後の経営統合、そして廃業・再出発——を切れ目なくカバーする4つの支援枠が整備されました。
【4つの支援枠の概要】自社はどの枠を使うべきか
| 枠 | 対象フェーズ | 主な用途 |
|---|---|---|
| ① 事業承継促進枠 | 承継「前」 | 磨き上げのための設備更新・DX投資など |
| ② 専門家活用枠 | M&A「中」 | FA・仲介手数料、DD費用など |
| ③ PMI推進枠 | M&A「後」 | 経営統合の専門家費用・設備投資など |
| ④ 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業・再出発 | 解体費・原状回復費・在庫廃棄費など |
各枠の詳細は以下の通りです。
① 事業承継促進枠(承継前の「磨き上げ」支援) 今後5年以内に親族内または従業員への事業承継を予定している事業者が対象です。老朽設備の更新やDX推進、新商品開発など、企業価値を高めるための投資費用を支援します。
② 専門家活用枠(M&A時の仲介・FA費用の支援) M&Aによって経営資源を譲渡(売り手)または譲受(買い手)する事業者が対象です。FA(フィナンシャル・アドバイザー)や仲介会社への成功報酬・着手金などが補助対象となります。今年度は買い手向けのデュー・ディリジェンス(DD)費用の補助が拡充されたほか、「100億企業特例(最大2,000万円)」が新設されています。
③ PMI推進枠(M&A後の「経営統合」支援) M&A成立後に経営統合(PMI: Post Merger Integration)を進める買い手企業が対象です。財務・人事制度の統合にかかる専門家費用(PMI専門家活用類型)と、生産ライン再編・システム統合に向けた設備投資(事業統合投資類型)の2つの類型があります。
④ 廃業・再チャレンジ枠(新たな挑戦への支援) 事業承継やM&Aに伴い既存事業を廃業し、新たな事業活動へ再挑戦する事業者が対象です。事業所の解体費・原状回復費・在庫廃棄費などが補助対象となります。①〜③の枠との併用申請が可能で、併用することで本来の補助上限額に最大300万円が上乗せされます。
2. 【一覧】2026年の補助額・補助率・申請スケジュール
補助される金額や特例措置は、活用する枠ごとに異なります。最新の内容(第14次公募)を以下にまとめました。
各枠の補助上限額と特例措置
① 事業承継促進枠
- 補助上限額:800万円(一定の賃上げを実施する場合は最大1,000万円)
- 補助率:1/2(小規模事業者等は2/3)
② 専門家活用枠
- 基本の補助上限額:600万円
- 【特例】DD費用拡充: デュー・ディリジェンスを実施する場合は200万円上乗せされ、最大800万円
- 【特例】100億企業特例(買い手支援のみ): 将来的に売上高100億円を目指す企業(「100億宣言」等の要件あり)は補助上限が最大2,000万円に引き上げ
③ PMI推進枠
- PMI専門家活用類型:最大150万円(補助率 1/2)
- 事業統合投資類型:800万円(一定の賃上げを実施する場合は最大1,000万円)
④ 廃業・再チャレンジ枠
- 単独申請の場合:最大300万円
- ①〜③の枠と併用する場合:各枠の上限額に最大300万円が上乗せ
2026年(第14次公募)のスケジュール
- 公募要領公開: 2026年1月30日
- 申請受付期間: 2026年2月27日 〜 4月3日
【重要】申請方法について 本補助金の申請は、電子申請システム「jGrants」のみでの受付となります。申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。アカウントの発行には数週間かかる場合があるため、申請期限ギリギリになって慌てないよう、今すぐ取得手続きを始めることをお勧めします。
※スケジュールは予告なく変更される場合があります。必ず最新の公式公募要領をご確認ください。
3. 行政書士が警告する「3つの実務的落とし穴」
事業承継・M&A補助金は、企業の存続をかけた重大な取引を支援するだけに、その審査基準とコンプライアンス要件は非常に厳格です。高額な手数料を目的とするM&A業者に丸投げしていると、取り返しのつかない失敗を招くことがあります。
法務・行政手続きの専門家として、申請前に必ず押さえていただきたい3つの落とし穴をお伝えします。
落とし穴① 未登録業者の利用で「委託費が全額対象外」になる
専門家活用枠においてFA業務やM&A仲介業務の費用(着手金・成功報酬等)を補助対象経費とするためには、国が定める「M&A支援機関登録制度」(中小企業庁所管)に登録されたFA・仲介業者が支援したものであることが絶対条件です。
この登録制度は、M&A市場の健全化と中小企業の保護を目的として創設されたものですが、登録されていない業者と契約した場合は、支払った仲介手数料が全額補助対象外となります。後から「知らなかった」では取り返しがつきません。
業者を選ぶ際は、必ず中小企業庁が公表している登録業者リストで事前確認を行ってください。
落とし穴② 「実質的なM&A」と認められなければ審査で除外される
本補助金の目的は「実質的な事業再編・事業統合」の支援です。そのため、形式上はM&Aの体裁を整えていても、以下のような実態を伴わない取引は「実質的な事業再編・事業統合が行われたとみなされない」として、原則補助対象外と判断されます。
- 親族間の事業承継に相当する場合
- グループ内の事業再編に相当する場合
- 事業譲渡を選択しているにもかかわらず、実態として不動産の売買のみにとどまる場合
「M&Aの形を作れば補助金がもらえる」という考えは通用しません。法務・財務の両面から実態が伴っているかが厳格に審査されます。特に「不動産のみの売買」の該当性は、事業価値の評価内容やDD報告書の記載内容まで含めて審査されるため、事前の整理が不可欠です。
落とし穴③ 安易な「賃上げ目標」が他補助金への18ヶ月ペナルティを招く
補助上限額の引き上げや審査での加点を狙って賃上げ加点要件を選択し採択された場合、事後報告で目標を達成できなければ非常に重いペナルティが課されます。
具体的には、目標未達が確認されてから18ヶ月の間、中小企業庁が所管する主要な他補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金等)への申請において大幅な減点を受けることになります(※天災等の正当な理由がある場合を除く)。
これは、M&A後の経営統合や設備投資といった、企業の成長に欠かせない投資計画全体に影響する連帯ペナルティです。M&A後の業績見通しが不確かなまま「とりあえず賃上げを約束しておこう」という判断は、経営の根幹を揺るがしかねません。
賃上げ加点の活用可否は、M&A後の事業計画の精度を十分に高めたうえで慎重に判断することが必要です。
4. M&Aに伴う「許認可の引き継ぎ」と安全な事業計画策定は当事務所へ
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
2026年の「事業承継・M&A補助金」は、最大2,000万円の特例を含む非常に強力な制度ですが、その一方で審査基準とコンプライアンス要件はきわめて厳格です。
そして、M&A・事業承継において実務上もっとも見落とされがちな落とし穴が、「許認可の引き継ぎ」の問題です。
建設業や産業廃棄物収集運搬業などの許認可事業において、株式譲渡や事業譲渡によってM&Aが成立したとしても、許認可は自動的に引き継がれません。 M&Aのスキーム(株式譲渡・事業譲渡・会社分割など)によっては、許認可の新規取得や変更届出が必要となり、対応を誤れば「許可のない状態で事業を継続してしまう」という法令違反リスクが生じます。
当事務所では、以下のようなご相談を承っています。
- 「検討中のM&Aが、補助金の対象として認められるか客観的に診断してほしい」
- 「M&A後、建設業許可や産廃収集運搬業の許可をどのように適法に引き継げばよいか分からない」
- 「悪質なブローカーに丸投げせず、自社の側に立って法務・補助金戦略を伴走してほしい」
建設・産廃・運送業に特化した三澤行政書士事務所は、M&Aに伴う許認可の承継・新規取得から、補助金の適法な申請・事後コンプライアンス管理まで、御社の「社外法務部」としてワンストップでサポートします。
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