「国道沿いの田んぼにコンビニを出店したい。周りは一面の水田だけど、許可は取れる?」
「インターチェンジの近くに物流倉庫を建てたい。農地転用の見通しを知りたい」
店舗開発や物流施設の用地担当の方から、こうしたご相談をいただきます。
幹線道路沿いの農地は、ほ場整備が済んだ第1種農地であることも多く、原則として転用は認められません。ただし、国の「農地法の運用について」(以下「運用通知」)は、特別の立地条件を必要とする施設として、幹線道路の沿道やインターチェンジ周辺に設置する流通業務施設、休憩所、給油所などを、第1種農地でも例外的に許可できるものとしています。
この記事では、次の点を解説します。
- 沿道施設の例外が認められる区域と施設
- コンビニが「休憩所に類する施設」として扱われる条件
- 既存施設の拡張の例外
- 事業計画書で押さえるべき点
立地基準(農地区分)の全体像は「【法人・設計会社向け】農地法第5条許可とは?審査の壁」「【法人事業者向け】市街化区域と市街化調整区域の違いと手続き」もあわせてご覧ください。
第1種農地の例外:「特別の立地条件を必要とする」施設
運用通知は、第1種農地の転用を例外的に許可できる場合として、特別の立地条件を必要とする事業を挙げています(第2の1(1)イ(イ)e、農地法施行令第4条第1項第2号ハ、農地法施行規則第35条)。
| 号 | 対象 |
|---|---|
| (a) | 調査研究(その土地を使うことが必要なもの) |
| (b) | 土石その他の資源の採取 |
| (c) | 水産動植物の養殖用施設など |
| (d) | 流通業務施設、休憩所、給油所その他これらに類する施設で、一定の区域内に設置されるもの |
| (e) | 既存の施設の拡張(拡張部分が既存敷地の2分の1以下) |
| (f) | 第1種農地の許可等に係る事業に欠くことのできない通路、橋、電線路、水路など |
この記事では、沿道・インターチェンジ周辺の施設を扱う(d)と、(e)の既存施設の拡張を中心に解説します。
(d) 沿道施設が認められる「区域」
対象となる区域は2種類
(d)の施設は、次のいずれかの区域内に設置されるものに限られます(運用通知 第2の1(1)イ(イ)e(d))。
- ⅰ 一般国道又は都道府県道の沿道の区域
- ⅱ 高速自動車国道その他の自動車のみの交通の用に供する道路(高架の道路など、自動車が沿道へ出入りできない構造のものに限る)の出入口の周囲おおむね300メートル以内の区域
ⅱの「出入口」とは、いわゆるインターチェンジをいうとされています。
市町村道の沿道は対象外である点に注意してください。「交通量の多い市道沿い」であっても、この例外は使えません。
対象となる施設
| 施設 | 内容・運用通知の説明 |
|---|---|
| 流通業務施設 | 物流倉庫、配送センターなど |
| 休憩所 | 自動車の運転者が休憩のため利用できる施設で、駐車場及びトイレを備え、休憩のための座席等を有する空間を施設内部に備えているもの(宿泊施設を除く)。駐車場とトイレだけの施設は「休憩所」に該当しない |
| 給油所 | ガソリンスタンド |
| これらに類する施設 | 車両の通行上必要な施設として、自動車修理工場、食堂等 |
(運用通知 第2の1(1)イ(イ)e(d))
コンビニエンスストアはどう扱われる?
コンビニは「休憩所」そのものではありません。ただし運用通知は、一定の条件のもとで「これらに類する施設」として扱ってよいとしています。
コンビニエンスストア及びその駐車場については、主要な道路の沿道において周辺に自動車の運転者が休憩のため利用することができる施設が少ない場合には、駐車場及びトイレを備え、休憩のための座席等を有する空間を備えているコンビニエンスストア及びその駐車場が自動車の運転者の休憩所と同様の役割を果たしていることを踏まえ、当該施設は、「これらに類する施設」に該当するものとして取り扱って差し支えない。(運用通知 第2の1(1)イ(イ)e(d))
整理すると、コンビニが対象となるための条件は次のとおりです。
- 一般国道・都道府県道の沿道(またはIC周辺300m以内)であること
- 主要な道路の沿道で、周辺に運転者が休憩できる施設が少ないこと
- 駐車場を備えていること
- トイレを備えていること
- 休憩のための座席等(イートインスペース等)を有する空間を備えていること
イートインスペースのない店舗や、周辺にすでに休憩施設が多い場所では、この扱いを受けられない可能性があります。出店計画の段階で、店舗の仕様(座席の有無)と周辺の休憩施設の状況を確認しておきましょう。
なお、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)の申請書記載要領では、施設の概要の記入方法について、通常は「建築物」か「工作物」のどちらかだが、コンビニエンスストア等は建築物と工作物の両方に記入する場合もあるとされています(建物=店舗、工作物=駐車場)。
(e) 既存施設の拡張
すでに沿道で営業している店舗や工場の隣接農地に拡張する場合は、(e)の既存施設の拡張の例外が使える場合があります。
既存の施設の拡張(拡張に係る部分の敷地の面積が既存の施設の敷地の面積の2分の1を超えないものに限る。)
「既存の施設の拡張」とは、既存の施設の機能の維持・拡充等のため、既存の施設に隣接する土地に施設を整備することをいう。(運用通知 第2の1(1)イ(イ)e(e))
- 既存施設に隣接する土地であること
- 目的が既存施設の機能の維持・拡充であること
- 拡張部分の敷地面積が既存敷地の2分の1以下であること
愛知県ハンドブックのチェックリストでは、既存施設を拡張する場合、既存施設配置図の添付が求められています。
甲種農地・第2種農地・一団の農地の場合
甲種農地
甲種農地(市街化調整区域内の特に良好な農地)でも、上記(a)〜(e)に該当するものは例外になりえます(運用通知 第2の1(1)ウ(イ)d)。
第2種農地
第2種農地は「周辺の他の土地で目的を達成できる場合は不許可」が原則です。運用通知は、第1種農地の例外のうち特別の立地条件を必要とする施設(e)などについて、「申請に係る農地に代えて周辺の他の土地を供することによっては当該申請に係る事業の目的を達成することができると認められない」ものだから第2種農地でも許可できる、と整理しています(運用通知 第2の1(1)オ(イ)b なお書き)。
隣接地と一体で使う場合の面積割合
沿道の非農地(宅地など)と隣の農地を一体として同一事業に使う場合は、次の例外もあります(運用通知 第2の1(1)イ(イ)f)。
申請に係る農地をこれに隣接する土地と一体として同一の事業の目的に供するために行うものであって、当該事業の目的を達成する上で当該農地を供することが必要であると認められるもの。ただし、事業の目的に供すべき土地の面積に占める第1種農地の面積の割合が3分の1を超えず、かつ、甲種農地の面積の割合が5分の1を超えないもの
一般基準・他法令との関係
立地基準の例外に当たっても、一般基準を満たす必要があります(農地法第4条第6項第3号〜第6号、運用通知 第2の1(2))。沿道店舗で特に問われるのは次の点です。
- 資力・信用:残高証明書、融資証明書などで資金計画を裏付ける
- 他法令の許認可の見込み:市街化調整区域の開発許可など。事務処理要領は、農地転用許可と開発許可を調整のうえ同時に行うことが望ましいとしている(農地法関係事務処理要領 第4の1(6)イ)
- 面積の適正:店舗・駐車場・通路の配置から必要面積を説明する
- 周辺への影響:集団的な農地を蚕食・分断しないか、雨水・汚水の排水で周辺農地や水路に支障が出ないか(運用通知 第2の1(2)イ)
- 地域計画の区域内なら、その達成に支障がないか
「造成して売るだけ」は不可という点にも注意が必要です。事業者が自ら施設を建てずに土地を造成して第三者に売る計画は、原則として許可されません(運用通知 第2の1(2)ア(ク))。店舗を運営する事業者自身、または建設が確実な形での申請が必要です。
開発許可との同時申請については「設計・開発事業者向け|農地転用と開発許可の「同時申請」実務」で解説しています。
事業計画書の書き方─ 愛知県ハンドブックの給油所の例
愛知県ハンドブックには、国道沿いの給油所を想定した事業計画書の記入例が掲載されています。特に参考になるのは、「申請地を選んだ事由(代替地がない理由を含め土地選定の詳細な理由)」の書き方です。
国道○○号線沿いの区域で、○○市○○町付近への進出を計画しており、3カ所で土地選定を行いました。その結果、○○市○○町字××100番では耕作者の営農継続の意欲があること、○○市○○町字△△50番は担い手農家の営農に支障があることから、周辺農業に及ぼす影響の比較的少ない申請地を選定しました。また、申請地は、国道○○号線と県道○○線の交差点に位置し、交通の要衝にあることからガソリンスタンドを営業するには適しています。(愛知県ハンドブック 事業計画書記入例(一般転用)・要旨)
実務上のポイント
- 複数の候補地を比較し、なぜその場所なのかを説明する
- 比較の軸に「周辺農業への影響」(営農継続の意向、担い手への支障)を入れる
- 事業上の必要性(交通量、交差点の位置など)も具体的に示す
- 雨水・汚水の排水計画(浄化槽、油水分離槽など)、造成の土量も記載する
記入例ではほかに、法人の概要(設立年月日、資本金、従業員数、売上高)、既存施設の状況、保有車両なども記載されています。
まとめ
- 一般国道・都道府県道の沿道、IC出入口の周囲おおむね300m以内に設置する流通業務施設・休憩所・給油所等は、第1種農地でも例外的に許可されうる
- 市町村道の沿道は対象外
- 「休憩所」は駐車場・トイレ・休憩のための座席等が必要。駐車場とトイレだけでは該当しない
- コンビニは、周辺に休憩施設が少なく、駐車場・トイレ・休憩用の座席等を備えていれば、休憩所に類する施設として扱える
- 既存施設の拡張は、隣接地で、拡張部分が既存敷地の2分の1以下
- 一般基準、開発許可、地域計画との関係もあわせて確認する
沿道の出店計画は、農地区分、道路の種類、店舗の仕様、開発許可など、複数の要素を早い段階で突き合わせることが大切です。当事務所では、候補地の調査から事業計画書の作成、開発許可担当部局との調整までサポートします。
「この国道沿いの農地に出店できる?」候補地の段階からご相談ください。
参考資料
- 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第6項、第5条第2項
- 農地法施行規則(令和7年7月28日施行版)第35条、第36条
- 「農地法の運用について」の制定について 第2の1(1)イ・ウ・オ、第2の1(2)
- 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)イ
- 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)1 農地法第4・5条関係、事業計画書記入例(一般転用)、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」