農振法と農地法の違いとは?農振除外の要件・手続きを行政書士がわかりやすく解説
農地法と農振法の違いや、農用地区域(青地)を転用するための「農振除外」手続きを行政書士が解説。 近年の法改正で追加された「地域計画」を含む6つの厳格な要件(農振法第13条)や、公告・縦覧と知事の同意を経る手続きの流れ、市町村での事前協議のポイントなどを網羅。 青地に家や工場を建てたい方は必見の実務ガイドです。
- 分野
- 農地転用
- 主な法令
- 農地法
- 公開日
- 2025年7月8日
- 更新日
- 2026年10月28日
目次
「自分の畑に家を建てようと思って役所に相談したら、『ここは青地だから転用できません』と言われてしまった……」
「農地転用の許可を取ればいいと思っていたのに、その前に『農振除外』という別の手続きが必要だと聞かされた」
農地の活用を考えるとき、このような戸惑いは珍しくありません。
日本の農地は「農地法」という法律だけでなく、地域によっては「農振法(農業振興地域の整備に関する法律)」というもう一つの強力な法律によって、二重に守られています。特に農振法に基づく「農用地区域(通称:青地)」に指定された土地は、将来にわたって農業のために確保すべき土地として位置づけられており、原則として農地転用が認められません。
この「青地」に住宅を建てたり、事業用地として活用したりするためには、農地転用の許可を受ける前に、まず農用地区域から対象の土地を除外する「農振除外(青地外し)」という極めて難易度の高い手続きを成功させる必要があります。
本記事では、「農地法と農振法のルールの違い」から、近年の法改正で追加された要件を含む「農振除外の6つの要件」、そして公告・縦覧や知事との協議を経る手続きの流れまでを、体系的に解説します。青地の活用にお悩みの方は、計画を動かすための正しい知識として、ぜひ最後までお読みください。
1. はじめに:農地活用の前提となる2つの法律
農地を転用しようと考えたとき、最初に立ちはだかるのが「農地法」と「農振法(農業振興地域の整備に関する法律)」という2つの法律です。名称は似ていますが、その役割は大きく異なります。まずこの違いを正確に理解することが、農地活用を進める上での第一歩となります。
農地法とは?——一筆ごとの農地を守る「現場監督」
農地法は、一言で言えば「一筆ごとの農地(点)を守るための法律」です。
農地法第1条(目的)は、農地を「現在及び将来における国民のための限られた資源」であり「地域における貴重な資源」と位置づけ、農地を農地以外のものに転用することを厳しく規制しています。
具体的には、自分の農地を自ら転用する場合は農地法第4条、他人の農地を取得または賃借して転用する場合は農地法第5条による都道府県知事等の許可が必要です。農地が個別に侵食されないよう目を光らせる、いわば「現場監督」のような役割を担っているのが農地法です。
農振法とは?——地域の土地利用を描く「設計図」
一方、農振法は「地域全体の農業のあり方(面)を定める法律」です。
農振法第1条(目的)は、「自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域」について必要な施策を計画的に推進し、「農業生産に必要な農用地等の確保及び農業の健全な発展を図る」ことを目的として掲げています。
つまり、市町村の広いエリアの中で「ここは農業を振興していく地域(農業振興地域)」であり、その中でも特に「ここは将来も優良な農地として守るべき区域(農用地区域=青地)」といったように、将来を見据えた土地利用の「設計図」を描く役割を担っています。
両法律に共通するゴール:食料安全保障
農地法が「個別の農地の権利移動・転用規制」を主眼とするのに対し、農振法は「地域全体の計画的な農業振興と優良農地の確保」を主眼としています。アプローチは異なりますが、両法律が目指す最終的なゴールは同一です。
農地法第1条・農振法第1条はともに、その究極の目的を「国民に対する食料の安定供給の確保」に資することと明記しています。近年、農地確保に関する規制が一層厳格化されている背景には、この「食料安全保障」という国家的課題が深く関係しています。
したがって農地活用を検討する際は、まず「面」を規制する農振法の計画(青地か白地か)を確認し、その上で「点」を規制する農地法の許可要件を検討するという視点が欠かせません。
2. 「農地法」と「農振法」の規制エリアと優先関係
農地法と農振法は、それぞれが規制する「エリア」の範囲が異なります。活用を検討している農地がどちらの規制を強く受けるのかを見極めることが、実務上の重要なポイントです。
農地法——日本全国すべての農地が対象
農地法は、日本全国にあるすべての「農地(耕作の目的に供される土地)」および「採草放牧地」を対象としています(農地法第2条第1項)。市街地にある農地も、山間部にある農地も例外なく対象となり、転用する場合は農地法第4条(自己転用)または第5条(権利移動を伴う転用)の規制を受けます。
農振法——特定の地域内に限定された法律と3つの区域
農振法は、都道府県知事が指定する「農業振興地域」(農振法第6条第1項)の内部でのみ効力を持ちます。農業振興地域の中は、さらに市町村が定める農業振興地域整備計画(農用地利用計画)によって以下のように区分されます(農振法第8条第2項第1号)。
- 農用地区域(青地):今後とも農業上の利用を確保すべき優良農地。農業インフラが整備された土地が多く、転用は極めて厳しく制限されます。
- 農用地区域外(白地):農業振興地域内ではあるものの、青地には指定されていない土地。青地に比べて転用のハードルは下がります。
- 農業振興地域外:農振法の規制を受けない地域。
なぜ「農振法」の手続きが先なのか——「原則不許可」ルール
農地が農振法上の「農用地区域(青地)」に指定されている場合、農地法による転用許可の前に農振法の手続きを完了させなければなりません。
その理由は明確です。農地法第4条第6項第1号イ(自己転用)および同法第5条第2項第1号イ(権利移動を伴う転用)において、「農用地区域内にある農地」の転用は、ごく一部の例外を除き「許可することができない」と明確に定められているからです。青地のままでは、農地法の許可申請をいくら丁寧に準備しても、許可を受けることはできないのです。
農地活用の正しいステップ:①農振除外 → ②農地転用許可
青地を農地以外の用途で活用するには、まず市町村に対して「この土地を農用地区域(青地)から外してほしい」と申し出て、農業振興地域整備計画を変更してもらう必要があります。これが「農用地利用計画の変更」——通称「農振除外」です(農振法第13条第2項)。
農振除外によって対象の土地が「白地」となって初めて、農地法に基づく転用許可(第4条・第5条)を受けられるようになります。「①農振除外 → ②農地転用許可」という順番を頭に入れておくことが、スムーズな手続きへの近道です。
【比較表】農地法と農振法の違い
| 項目 | 農地法 | 農振法 |
|---|---|---|
| 目的 | 農地(点)の権利移動・転用を規制し、優良農地を守る | 農業振興地域(面)を指定し、地域の農業振興を計画的に図る |
| 規制対象エリア | 日本全国すべての農地 | 都道府県知事が指定した農業振興地域内 |
| 主な申請先 | 農業委員会・都道府県知事等 | 市町村(農政担当課) |
| 主な手続き | 農地転用許可(第4条・第5条) | 農振除外(農用地利用計画の変更) |
| 手続きの順番 | ② 農振除外の後に許可 | ① 青地の場合は最優先で対応が必要 |
3. 「農振除外」とは?青地を白地にするための行政手続き
前章で触れたとおり、農振法上の「農用地区域(青地)」に指定された農地は、原則として農地転用が認められません。青地に住宅や事業用施設を建てるためには、転用許可の前に、その土地を青地から除外する手続きが必要です。
農振除外が厳格である理由——農用地利用計画の尊重
この手続きの正式名称は「農用地利用計画の変更」といいます(農振法第13条第2項)。市町村は地域農業の振興のために農業振興地域整備計画を定め、将来も農業に利用すべき土地を農用地区域(青地)として指定しています(農振法第8条第2項第1号)。農振除外とは、この行政計画を変更し、特定の土地を農用地区域から除いてもらう手続きにほかなりません。
農振除外がこれほど厳格な理由は、国と地方公共団体が、市町村の定めた農用地利用計画を尊重して、農用地区域内の土地の農業上の利用が確保されるよう努めなければならないとされているからです(農振法第1条の2第3項)。個々の事情で青地が次々と潰されれば、地域農業の生産基盤は崩壊します。だからこそ農振法第13条第2項は、除外を認めるための要件を極めて厳しく定めており、それらをすべて満たす場合に限り除外が可能と規定しているのです。
4. 農振除外の6つの要件(農振法第13条第2項各号)
農振除外が認められるためには、以下の6つの要件をすべてクリアしなければなりません。
特に重要なのは、近年の法改正によって「地域計画」に関する要件(第2号)が新設され、従来の5要件から「6要件」へとハードルが上がっている点です。古い情報をもとに「5つの要件」と誤解されているケースも散見されますので、最新の法令に基づく正確な理解が不可欠です。
要件① 必要性および非代替性(他の土地では代用できないこと) 根拠法令:農振法第13条第2項第1号
転用することが本当に必要かつ適当であり、「農用地区域(青地)以外の土地をもって代えることが困難である」と認められる必要があります。「自分の土地だから」「取得費用が安いから」といった理由では認められません。具体的な転用計画と、他の土地では目的が達成できないという必然性を、客観的な資料によって立証することが求められます。
要件② 【新設】地域計画の達成に支障を及ぼさないこと 根拠法令:農振法第13条第2項第2号
農業経営基盤強化促進法に基づく「地域計画」——地域農業の将来像や農用地の効率的な利用に関する目標地図等を定めた計画——の達成に支障を及ぼすおそれがないと認められる必要があります。たとえば、目標地図において将来の担い手が利用することが位置づけられている農地の除外は、計画の達成に支障があるとして認められません。
要件③ 農用地の集団化や農作業の効率化等に支障を及ぼさないこと 根拠法令:農振法第13条第2項第3号
除外によって青地が分断され「虫食い」状態になることで、周囲の農用地の集団化や大型機械を使った農作業の効率化など、土地の農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないことが求められます。集団的な優良農地のまさに中央部を除外するような計画は、認められません。
要件④ 担い手への利用集積に支障を及ぼさないこと 根拠法令:農振法第13条第2項第4号
認定農業者や認定新規就農者など、効率的かつ安定的な農業経営を行う担い手への農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがないことが必要です。担い手が現在利用している、あるいは利用集積が見込まれる農地を転用目的で除外することは、原則として認められません。
要件⑤ 土地改良施設(用排水路等)の機能に支障を及ぼさないこと 根拠法令:農振法第13条第2項第5号
除外後の建物建設等によって、周囲の農業用用排水路・ため池・農道などの機能に支障を及ぼすおそれがないことが必要です。土砂の流出や汚濁水の流入など、周辺の営農環境への悪影響を防ぐための確実な対策が求められます。
要件⑥ 土地改良事業等の完了から8年以上経過していること 根拠法令:農振法第13条第2項第6号、農振法施行令第9条
除外しようとする土地が、国が行う、または国の補助を受けて行う土地改良事業等(区画整理や農業用用排水施設の新設・変更など)の施行区域内にある場合(農振法施行規則第4条の3)、その工事が完了した年度の翌年度の初日から起算して8年を経過していなければなりません。公共投資で整備した農地は、その効用を確保する観点から、一定期間は除外が制限されているのです。
5. 農振除外の手続きの流れと期間の目安
農振除外(農用地利用計画の変更)は、個人の許可申請ではなく、「市町村が定める行政計画そのものの変更」という重大な手続きです。法令で定められた厳格なプロセスを経る必要があり、完了まで長期間を要します。
① 事前相談(市町村農政担当課・農業委員会等)
いきなり書類を提出するのではなく、まず対象の土地が本当に青地(農用地区域)であるかを確認した上で、6つの要件をクリアできる見込みがあるかについて、市町村農政担当窓口や農業委員会と入念に事前協議を行います。この段階での調整が、その後の手続きの成否を大きく左右します。
② 農振除外の申出(書類提出)
事前相談で除外の見込みが立ったら、市町村に「農振除外の申出」を行います。申出の方法や受付の時期は、申出先の市町村に確かめてください。
③ 市町村内での審査・都道府県への事前の相談
申出を受けた市町村は申出の内容を審査し、必要に応じて都道府県と事前の相談(事前協議)を行います。計画の変更には、農振法の規定に基づき、都道府県知事に協議してその同意を得なければなりません(農振法第13条第4項において準用する第8条第4項)が、この正式な協議(本協議)は、次の④の縦覧と異議の申出の期間が過ぎた後でなければできません(同第11条第8項)。
④ 公告・縦覧・異議の申出の期間
知事の同意の見通しが立つと、市町村は計画変更の案を公告し、おおむね30日間にわたり公衆の縦覧に供します(農振法第13条第4項において準用する第11条第1項)。さらに、縦覧期間満了の日の翌日から起算して15日以内に、農用地区域内の土地の所有者など、その土地に権利を持つ人は異議を申し出ることができます(同第11条第3項)。このように、広く住民等の意見を聴取する手続きが法律で義務付けられています。
⑤ 知事の同意・計画変更の公告
異議の申出がない(あるいは異議の決定などが済んだ)場合、市町村は都道府県知事に協議してその同意を得たうえで計画を変更し、遅滞なく公告します(農振法第13条第4項において準用する第11条第8項・第8条第4項・第12条第1項)。これにより、対象の土地が正式に青地から「白地」へと変わり、農振除外が完了します。
【期間の目安】 法定の縦覧(公告の日からおおむね30日間)と異議の申出の期間(縦覧期間満了の日の翌日から15日以内)だけでも、公告から約45日かかります。これに市町村の審査や、必要に応じて行う都道府県との事前の相談、知事の同意が加わるため、申出から完了までには長い期間がかかります。期間の目安は市町村によって違うので、申出先の市町村に確かめてください。
6. こんなケースで農振除外が必要になります(代表的な具体例)
対象の農地が「農用地区域(青地)」に指定されている場合、農地法第4条第6項第1号イ(自己転用)および同法第5条第2項第1号イ(権利移動を伴う転用)により農地転用は原則として不許可となります。以下のようなケースでは、原則として事前に農振除外の手続きが必要です。
■ 青地に住宅を建てたい場合(分家住宅・自己住宅など)
農家の子息が独立して家を建てる(分家住宅)場合や、ご自身の住宅を建てる場合であっても、予定地が青地であれば農振除外が先決です。この場合、「どうしてもその場所でなければならない理由」と「他の土地(実家敷地・近隣の白地・既存宅地など)では代用できないこと(非代替性)」を、客観的な資料によって厳しく証明しなければなりません。
■ 工場・倉庫・駐車場などの事業用地として活用したい場合
新工場や倉庫の建設、資材置き場・従業員駐車場としての利用など、事業用途の農振除外も、6つの要件に照らして審査されます。建物の規模、事業の必要性、周辺営農環境への影響(排水等)に加え、都市計画法など他法令の許可見込みも重要な判断材料となります。
■ 太陽光発電設備(非営農型)を設置したい場合
農地を転用して野立ての太陽光発電設備(非営農型)を設置するケースです。青地であれば、ほかの用途と同じく先に農振除外が必要になり、農振法第13条第2項第1号の「必要性・非代替性」をはじめとする6つの要件をすべて満たさなければなりません。
7. まとめ
- 農地法は全国の農地が対象です。農振法は都道府県知事が指定する農業振興地域が対象で、その中で市町村が農用地区域(青地)を定めます
- 青地の農地は、ごく一部の例外を除き転用の許可を受けられません(農地法第4条第6項第1号イ・第5条第2項第1号イ)。先に農振除外(農用地利用計画の変更)が必要です
- 農振除外は、地域計画の達成に支障がないことを含む6つの要件をすべて満たす場合に限られます(農振法第13条第2項)
- 土地改良事業等の施行区域内の土地は、工事が完了した年度の翌年度の初日から起算して8年を経過していることが要件です(農振法施行令第9条)
- 手続きは、事前相談 → 申出 → 市町村の審査(必要に応じて都道府県と事前の相談)→ 公告・縦覧(おおむね30日間)と異議の申出の期間(15日以内) → 知事の同意 → 公告の順に進みます
- 申出の方法・受付の時期・期間の目安は、申出先の市町村に確かめてください
出典と確認日
次の資料にもとづいて書き、2026年10月28日に資料と照らして内容を確かめました。
- 農地法
- 農業振興地域の整備に関する法律
- 農業振興地域の整備に関する法律施行令
- 農業振興地域の整備に関する法律施行規則
- 農業経営基盤強化促進法
- 食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律についてp.1・2・4
- 農業振興地域制度に関するガイドライン第11の4の(1)(p.20)、第16の2の(3)(p.55〜59)
制度は改正されることがあります。最新の内容は、各資料の発行元でご確認ください。
同じ分野の記事
- 【建設・運送業者向け】資材置場・駐車場として農地を転用するには?必要面積の根拠と審査のポイントを行政書士が解説
- 【発電事業者向け】農地に野立て太陽光発電を設置するには?農地転用の要件・必要書類と「第1種農地の壁」を行政書士が解説
- 農家レストラン・直売所・加工場を農地に建てるには?第1種農地でも転用が認められる例外と要件を行政書士が解説
- 【開発事業者必見】農地転用の「決済金」と「土地改良区の意見書」|想定外のコストと着工遅延を防ぐ実務ポイント
- 自分の農地に家を建てるには?農地法第4条(自己転用)の許可基準と手続きを行政書士が解説
- 開発事業者必見|登記地目が「非農地」でも農地法の対象?「現況主義」の実務リスクと対処法を行政書士が解説
- 農地転用で必要になる土地改良区の「地区除外」手続きと決済金・特別徴収金を行政書士が解説
- 【企業向け】農地法第3条許可とは?一般法人の農業参入(農地借入)の手続きと要件を行政書士が解説