こんにちは!愛知県を拠点に、建設業者様・産廃業者様の事業拡大と、太陽光発電事業に伴う農地転用手続きをサポートしている行政書士の三澤です。

令和8年(2026年)3月31日、環境省から「太陽光発電における自然環境配慮の手引き」が正式に公表されました。

当事務所に農地転用(農地法第5条許可)のご依頼をいただく太陽光事業者の皆さまにとって、この手引きは他人事ではありません。むしろ、皆さまの案件こそが、この手引きの中心的な対象です。

従来、「環境規制」といえば大規模なメガソーラーの話でした。出力4万kW(40MW)以上を「第一種事業」、3万kW(30MW)以上を「第二種事業」として、環境影響評価法(環境アセスメント法)に基づく厳格な評価手続が義務づけられてきたからです。

しかし今回の手引きは、そうした法律・条例の対象から外れる「小・中規模の太陽光発電事業」を正面から射程に捉えています。農地を転用して野立てのパネルを設置する。そうした日常的な案件のほとんどが、この手引きの対象に入ります。

なぜ今、小規模案件にまで「環境配慮」が求められるのか

背景にあるのは、全国各地で相次ぐ太陽光発電の乱開発問題です。土砂流出・濁水の発生・景観破壊・生活環境への悪影響が社会問題化し、地域住民との対立から工事着工前に事業が中止に追い込まれるケースも現実に起きています。

この状況を受け、環境省は今回の手引きを「発電事業者等による自主的な自然環境配慮の取組の実践を促す」ことを目的として策定しました。

行政書士の実務ポイント

パブリックコメントが映す「世間の本音」

手引きの策定過程では、のべ86件のパブリックコメント(意見募集への回答)が寄せられました。その内容は、決して穏やかなものではありませんでした。

  • 「深刻な被害が発生している現状において、自主的な取組に留まる内容では不十分。義務化・法規制化への早期移行を強く要望する」
  • 「チェックシートの提出を各種許認可の要件と紐づけ、違反して重大な損害を与えた事業者には認定取消しを含むペナルティを課す方針を明記すべき
  • 「平気で違反して森林破壊を進める業者には、逮捕・懲役・罰金に加え、今後二度と同事業に関われないほどの罰則を設けるべき」

法的拘束力や罰則が現時点では設けられていないのは事実です。しかし、上記のような声が社会から噴出しているのが現実であり、政府も関係法令の適切な運用と不適切な取組への厳格対応を既に進めています。

「単なるガイドラインだから様子を見よう」という姿勢は、事業の継続そのものにかかわるリスクを招きかねません。この手引きは社会的圧力の集約と理解すべきものです。

対象となる案件――農地転用(5条許可)の野立て案件がまさに該当

環境省の公表資料では、本手引きの対象を次のように定義しています。

「環境影響評価法及び環境影響評価条例の対象とならない規模で、アスファルトやコンクリート等による既設の人工被覆地以外の土地や、水面に設置されるもの」

整理すると、以下の2つの条件をともに満たす案件が対象です。

① 環境アセスメント法・条例の対象外である「小・中規模案件」

環境影響評価法では、出力4万kW(40MW)以上が「第一種事業」、3万kW(30MW)以上が「第二種事業」として法的な評価手続の義務対象となります。本手引きはそれ以下の規模、すなわち高圧・低圧を問わず、法の網の目から外れるすべての太陽光事業を対象としています。なお、動物・植物・生態系への配慮についてはおおむね出力50kW以上の設備が主な対象とされていますが、50kW未満の設備についても可能な範囲での取組が求められています。

② 自然の土の上に設置する「非人工被覆地への設置案件」

屋根・屋上・既存のアスファルト舗装地(駐車場等)への設置は対象外です。農地・山林など、地面が自然の土のままである場所への設置案件がこの手引きに該当します。

つまり、農地法第5条の許可(転用目的での権利移動)を取得して、農地や山林などにパネルを設置する野立て案件は、この手引きの正面から対象です。

なお、農地の上で農業を継続しながらパネルを設置する「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」については農林水産省の別途ガイドブックが用意されており、本手引きの対象外とされています。

事業段階ごとの環境リスクと対策―実務で押さえるべき3つのポイント

農地法第5条の農地転用許可では、主に「立地基準(農地区分)」と「一般基準(周辺農地への影響・事業確実性など)」が審査されます。しかし、転用許可が下りたことは、環境上のリスクが解消されたことを意味しません。

今回の手引きは、立地選定から設計・施工・運用・撤去に至る各事業段階における具体的な対策を示しています。実務上、特に重要な3点を解説します。

① 立地選定・事前確認―土地を取得する前の「環境スクリーニング」が事業の命運を分ける

最も避けるべき事態は何か。それは、「土地を購入し転用申請の準備を整えた段階で、希少な動植物の生息が判明し、地域住民や自然保護団体の反対によって事業が頓挫する」というシナリオです。

このリスクを回避するために、手引きは事業の初期段階における環境情報の確認を強く推奨しています。具体的には、環境省が提供する次のデータベースの活用です。

  • 環境アセスメントデータベース(EADAS)
  • 生物多様性「見える化」マップ

これらを用いて、候補地およびその周辺に重要な動植物の生息・生育地や貴重な生態系が存在しないかを事前に確認します。

もし公開データや行政との事前相談において候補地に重要な自然環境の存在が示唆された場合には、地域の自然環境に精通した専門家(有識者・コンサルタント等)へ相談し、対策の要否を検討しなければなりません。

土地の取得前・転用申請前の「環境スクリーニング」が、今後の事業戦略における最重要ステップになりつつあります。

② 設計・施工――「回避・低減・代償」の優先順位(ミティゲーション・ヒエラルキー)

環境への影響を検討する際、手引きが採用しているのは国際的な原則である「ミティゲーション・ヒエラルキー(緩和の優先序列)」です。

優先順位対策具体例
第1回避(最優先)重要な動植物の生息・生育地がある箇所を事業区域から除外する
第2低減地形改変(切土・盛土)を最小化する設計。コンクリート基礎に代えて早期植生回復が見込まれる杭基礎工法を採用する。パネル下の植物生育を促す高架台の設置など
第3代償(最終手段)回避・低減が困難な場合に、ビオトープ(生物生息空間)の造成や希少な動植物の移植・移設を行う

また施工段階では、動植物の繁殖期・越冬期といった「生物季節」への配慮が求められます。たとえば希少猛禽類の繁殖期には営巣地付近での立入りを控える、あるいは工事を一定期間休止するといった生物季節を考慮した施工計画の策定が必要です。

③ 運用・撤去―モニタリングと原状回復、そして法的義務との接続

運用・管理段階においては、施設内の緑地・水面等の自然環境の状態を把握するための定期的なモニタリングが求められます。代償措置(ビオトープ造成・移植等)を実施した場合は、その効果確認のためのモニタリングは特に不可欠です。

事業終了後の撤去段階については、設備の撤去にとどまらず開発前の状態に戻す「原状回復」が記載されています。

この点に関しては、既に法的義務が課されていることも確認が必要です。「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」第15条の6第1項に基づき、10kW以上のすべての太陽光発電設備を対象に、廃棄等費用を担保するための外部積立制度(廃棄費用積立)が2022年4月より義務化されています。

今回の手引きが求める「適切な原状回復と廃棄」は、こうした法令による規制強化の方向性と完全に一致しています。事業の「出口戦略(撤去・廃棄)」まで視野に入れた資金計画と環境対応が、今や事業者に不可欠な要素となっています。

【要注意】「チェックシート」の公表が、融資・電力販売・FIT認定を左右する

今回の手引きには、事業者が自然環境への配慮事項をどの程度実践しているかを客観的に示すための「チェックシート」が別紙として付属しています。

「法的義務でないなら、適当に対応すればいい」という発想は非常に危険です。環境省は、このチェックシートの取り扱いについて次のように明記しています。

「太陽光発電設備の設置に向けて地域関係者と調整する際や、自然環境に配慮した取組について投融資者や電力の需要家に報告する際などに広くご利用ください。記入済みのチェックシートは、事業の透明性を確保する観点から公表することが奨励される。

この一文が示す実務上のリスクは、大きく2つです。

① 投融資(ファイナンス)・電力販売への直接的な影響

近年、金融機関はESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)の基準を急速に厳格化しています。また、電力の需要家企業もネットゼロ目標やネイチャーポジティブ(自然再興)の達成を掲げ、単なる再エネではなく「自然と共生した再エネ」を強く求めるようになっています。

チェックシートを適切に作成・公表できない事業者は、「環境リスクが高い」として金融機関から融資を断られる、あるいは需要家から「環境破壊リスクのある電力は調達できない」として電力購入契約を拒否されるリスクと直面します。

② 再エネ特措法に基づく「指導・命令・認定取消し」のリスク

今回の手引きは、FIT/FIP制度における事業計画認定の要件ともなっている「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」の補遺(補足資料)として位置づけられています。

事業計画の認定基準・ガイドラインへの違反が認められた場合、「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(再エネ特措法)」に基づく以下の行政対応が想定されます。

  • 第12条:指導及び助言
  • 第13条:改善命令
  • 第15条認定の取消し(最重大)

「あくまで自主的な手引き」とされながらも、FIT/FIPの認定制度と実質的に強く連動しており、不適切な対応は発電事業の存続そのものを揺るがしかねません。

まとめ―農地転用許可だけでは「事業の完成」ではない時代へ

「農地法第4条・第5条に基づく農地転用許可さえ下りれば、太陽光発電所が建てられる」という時代は、実質的に終わっています。

社会から信頼される太陽光発電事業として認められ、金融機関からの融資を獲得し、安定した売電収益を確保し続けるためには、次の両輪が不可欠です。

  • 農地法等による開発許認可の確実なクリア
  • 事業の初期段階からの徹底した環境リスクのスクリーニングとコンプライアンス対応

当事務所では、農地転用(農地法第5条許可等)の申請サポートをはじめ、環境省データベース(EADAS等)を活用した事前スクリーニングの確認、コンプライアンス体制の構築支援まで、行政書士の専門性を活かした総合的な事業化サポートを提供しています。

  • 「取得を検討している農地があるが、環境リスクの確認はどうすればいいか」
  • 「今回の環境省の手引きに沿って、どのように事業を進めればよいか不安だ」

こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひお早めにご相談ください。事業者の皆さまの適正かつ円滑なプロジェクト推進を、行政書士として全力でサポートいたします。

本記事は令和8年(2026年)3月時点の情報に基づいています。法令・ガイドラインの内容は改正される場合があります。最新の情報については、所管行政機関の公表資料を必ずご確認ください。

2026年03月31日
「太陽光発電における自然環境配慮の手引き」の公表及び意見募集(パブリックコメント)の結果について

環境省HPより

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