こんにちは、行政書士の三澤です!
農地の上に太陽光パネルを設置し、農業と発電を同時に行う「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)」。近年、売電収入による農業経営の下支えや自家消費電力の確保を目的として急速に普及が進んでいますが、いま、その制度は大きな岐路に立っています。
農林水産省では「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」を立ち上げ、令和8年(2026年)4月の第6回検討会においてついに新制度の具体的な枠組みが示されました。その内容は、新規参入者・既存事業者の双方にとって、これまでとは次元の異なる厳しさです。
本記事では、検討会での議論の経緯を丁寧に追いながら、「これから何が変わるのか」「既存の事業者は何をすべきか」について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
営農型太陽光発電をめぐる”不都合な実態”
農林水産省の調査によると、令和5(2023)年度末までの累計で、営農型太陽光発電設備を設置するための農地の一時転用許可件数は6,137件、設備下部の農地面積は1,361.6haに達しています。数字だけ見れば順調な普及に思えますが、その裏に深刻な問題が潜んでいます。
稼働中の設備のうち、24%にあたる1,221件で「下部農地での営農に支障がある」と報告されており、しかもその割合は前年度からさらに悪化しています。問題の原因を掘り下げると、台風などの災害に起因するものはわずか7%に過ぎず、全体の71%が「営農者の栽培管理の不適切さによる単収減少・生育不良」、すなわち農業者側の管理姿勢に問題があるケースでした。
要するに、「発電事業のついでに、体裁だけ農業をやっている」事案が制度全体の信頼を損ない続けているのです。
規制強化の流れと「検討会」立ち上げの背景
こうした実態を重く見た国は、段階的に規制の網を強化してきました。
令和6(2024)年4月には、それまで通知ベースで運用されていた一時転用許可の基準が「農地法施行規則」に格上げされ法定化されました。具体的な運用ルールを定めたガイドラインも同時に整備され、悪質な違反事業者に対しては、FIT/FIP制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)に基づく交付金の一時停止という踏み込んだ措置も既に発動されています。
ただし、規制を強化するだけでは、農業の課題解決に誠実に取り組もうとする優良な事業者の意欲まで削いでしまいかねません。そこで国が着手したのが、「望ましい取組とは何か」を明確に定義し、優良事業者を積極的に推進するための指標づくりです。
この目的のもと、農林水産省において「望ましい営農型太陽光発電に関する検討会」が設置されました。
「望ましい営農型太陽光発電」の4つの論点
第1回から第5回にわたる検討会では、「品目」「生産性」「生産者」「地域共生」という4つの柱を軸に議論が積み重ねられてきました。その集大成として、令和8年(2026年)1月の第5回検討会において「望ましい営農型太陽光発電の考え方(案)」が具体的に示されました。以下、各論点を整理します。
① 設備の構造要件——農業機械の利用を大前提に
設備設計の大原則は、「農業機械が支障なく使えること」です。
現行の「農地法施行規則」および運用ガイドラインでは、最低地上高2m未満の設備は不許可事由と定められています。しかし今後の望ましい基準案では、これが大幅に引き上げられます。具体的には、「ほ場からの最低地上高が概ね3m以上、かつ支柱の間隔が概ね4m以上」であることが求められます。これは、より大型の農業機械の使用を念頭に置いた、実質的な設計要件の抜本的な強化です。
また、作物の生育に直結する遮光率(日射量)についても、これまでは明確な数値基準が存在しませんでした。水稲をはじめとする各品目の知見の蓄積を踏まえ、今後は「設備の遮光率が30%未満(または日射量の減少が20%未満)であること」が明確な指標として設定される方向です。
② 栽培品目と生産者の要件——「形だけの農業」の完全排除
食料安全保障の観点から、営農型太陽光発電で栽培する品目は食用作物が中心に位置づけられます。具体的には、「地域で一般的に栽培され、一般的な販売ルートが確立している品目」であることが条件となります。とりわけ、一定の遮光環境下でも必要な単収を確保しやすい「米・麦・大豆」が推奨品目として挙げられています。
生産者(営農者)に求められる要件も、これまでとは大きく変わります。単に「農業を行う」と計画書に記載するだけでは足りません。次の2点を満たすことにより、「業としての農業の継続性・実績」が求められます。
- 地域計画において、10年後の農業を担う者として位置づけられていること
- 栽培する品目について、50万円以上の生産・販売実績等を有していること
③ 地域との共生と利益還元
発電事業は、地域社会や周辺の農業環境と真に調和するものでなければなりません。
無秩序な設備設置による「虫食い状の乱開発」を未然に防ぐため、「土地改良事業の施行や農業経営の規模拡大等の施策の妨げになるおそれがないこと」が基準として明記されました。
さらに、発電による経済的恩恵が地域に還流される仕組みも必須要件となります。具体的には、「発電事業者から営農者等に対して、適正な利益還元(減収額等以上の水準)が行われること」が求められ、この内容を地域計画の協議の場等で合意を得ることが義務づけられる方向です。
第6回検討会(令和8年4月)——新制度の「枠組み」が明らかに
これまでの議論を踏まえ、令和8年(2026年)4月の第6回検討会において、新たな制度スキームの具体的な方向性が示されました。
この背景には、令和7年(2025年)12月23日に政府の「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」で決定された『大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ』があります。同パッケージの中で、「農業との両立が図られる望ましい取組を明確化し、地方公共団体等の関与のもと、地域活性化に資する形で推進する」という国の方針が明示されました。
農地法+農山漁村再エネ法の「二本立て」新スキームへ
これまで営農型太陽光発電の許認可の核心は、「農地法」に基づく一時転用許可の取得でした。しかし農地法単独では、事業が「地域と真に共生しているか」「利益が地域に還元されているか」といった点を許認可の段階で審査・担保することに限界がありました。
新制度案では、この課題を克服するために許認可の枠組みが抜本的に見直されます。具体的には、「農山漁村再生可能エネルギー法(農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律)」に基づく『設備整備計画』の認定を、農地の一時転用許可の必須要件として位置づける方向性が示されました。
これにより、事業者は「農地法の転用基準(遮光率・設備構造など)」をクリアするだけでなく、農山漁村再エネ法の基本方針に沿って、市町村や地域住民が参加する協議会での合意形成、そして適正な利益還元計画の策定が、法的に求められるようになります。
委員から示された積極的な視点——品目の拡大と自家消費の可能性
厳格化される新基準に対し、委員からは前向きな運用を求める意見も上がっています。
推奨品目が「米・麦・大豆」に限定されている点については、「さつまいもはキュアリングや倉庫での貯蔵に電気を使用するため、エネルギーの地産地消と熟成による高付加価値化を同時に実現できる」として、他品目への追加・拡大可能性に期待する声が寄せられました。
また、「農業は電力を自家利用することでエネルギーコストの低減とカーボンニュートラルを両立できる産業」との評価もあり、適切な仕組みを設けることで新たなビジネスモデルの創出につながるとの期待感も示されています。
さらに、遮光率の計算方法の明確化や、地域の合意形成プロセスの運用基準について具体的に定めるべきとの指摘もあり、国はこれらを踏まえた制度運用を行うことを確認しています。
新規参入者と既存事業者、それぞれへの影響
新規参入者——求められるのは「農業起点」の緻密な計画
これから新たに事業を開始する場合、農山漁村再エネ法に基づく基本方針に定められる「望ましい取組」の要件をすべて充足することが前提となります。主な要件は次の通りです。
| 要件区分 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 設備要件 | 最低地上高:概ね3m以上、支柱間隔:概ね4m以上、遮光率30%未満 |
| 生産者・品目要件 | 地域計画で10年後の農業担い手として位置づけられていること。栽培品目について50万円以上の生産・販売実績等を有すること |
| 地域共生要件 | 発電事業者から営農者等へ適正な利益還元が行われること(協議会等での合意形成が必要) |
これらの基準は、現行の「農地法施行規則」が定める水準を大幅に上回るものです。事業計画の段階から、農業と発電の確実な両立を見据えた専門的かつ緻密なスキーム構築が欠かせません。
既存事業者——「法の不遡及」に安堵するのは危険
すでに稼働している事業者については、「法の不遡及の原則」により、基本的には従前の許可基準(農地法省令等)が引き続き適用されます。ただし、「いまのままで問題ない」と安心するのは大きな誤りです。
国は既存事業者に対しても「最大限、厳格に対応する」と明言しており、以下のような強力な監視・執行体制が導入されます。
- 現地調査の対象拡大
都道府県と国が連携して対応する現地調査の対象となる面積基準が、従来の「下部農地面積4ha超」から「2ha超」へと引き下げられます。これにより、中規模の施設にも国の監視の目が直接届くようになります。 - 衛星データ等を活用した違反の「見える化」
毎年の栽培実績報告に加え、国が衛星データ等を独自に活用して不適切な案件を捕捉し、自治体に対し「勧告・命令相当である」と通知する仕組みが新たに導入されます。 - 処分基準の明確化と再許可の厳格化
これまで自治体の裁量に委ねられがちだった処分の基準が明確に規定されます。「実績報告書の未提出」「是正指導への不対応」「2年以上継続して収量要件を大幅に下回る」といった場合は、明確に勧告・命令の対象となります。さらに、勧告を受けても所定期間内に改善が見られない場合、次回の農地一時転用の「再許可は不許可とする」という厳しい運用方針が徹底されます。 - 一時転用許可期間の短縮
撤去費用の確保状況等をより厳格に確認するため、再許可の期間自体を短縮する方針も打ち出されています。
行政書士からのアドバイス——今、事業者に求められること
ここまで見てきたように、営農型太陽光発電をめぐる制度は、単なる規制の小幅修正ではなく、制度の根幹に関わる構造転換を迎えています。最後に、今後の適正な事業運営に向けて行政書士の視点から特に注意すべき点をお伝えします。
① 事業の軸足を「発電」から「農業」へ
今後の制度が拠って立つ「農山漁村再生可能エネルギー法(農山漁村再エネ法)」の基本方針には、次の3つが基本理念として明記される予定です。
- 将来にわたって農地の食料生産基盤としての機能が維持され、食料安全保障の確保に資すること
- 農業者の所得向上や経営発展に資すること
- 地域と共生し、地域活性化に資すること
検討会でも、「発電事業を行う手段として農業に参入した者が多い」との厳しい指摘が委員から相次ぎました。「安価な農地を確保するためのダミーとしての農業」は、今後、完全に排除されることになります。事業の主軸を「持続可能な農業」に置き直す抜本的な見直しが必要です。
② 許認可の複雑化に対応できる体制を整える
今後の許認可プロセスでは、農地法に基づく一時転用許可に加え、農山漁村再エネ法に基づく「設備整備計画」の認定が必須要件となります。この認定を得るためには、書類を整えるだけでなく、以下の高度なプロセスを確実にクリアしなければなりません。
- 協議会等での合意形成: 市町村・設備整備者・農業者・地域住民等で構成される協議会、または地域計画の「協議の場」における合意を取得すること
- 詳細な利益還元・リスク管理計画の策定: 発電事業者から営農者への適正な利益還元(減収額等以上の水準)、撤去費用の確実な積立、第三者損害への補償(保険加入等)を含む実行可能な計画を立案すること
無計画な事業推進は、許可の不交付だけでなく、事業開始後におけるFIT/FIP交付金の一時停止といった深刻なペナルティに直結します。
ご相談はお早めに
ここまで解説してきた通り、営農型太陽光発電は「安易に農地で発電事業ができる時代」から、農林水産省が主導する「持続可能な農業と地域共生を厳格に求める時代」へと完全にシフトしました。
これから新規で事業を計画する法人様は、遮光率や支柱間隔といった厳しい設備要件をクリアするだけでなく、「農山漁村再エネ法」に基づく協議会での合意形成や、適正な利益還元計画といった、極めて高度な行政手続きと地域調整が求められます。
また、すでに稼働している既存事業者様も決して対岸の火事ではありません。衛星データまで駆使した監視網が敷かれ、改善が見られない場合は「次回の農地一時転用の再許可は下りない(不許可)」という非常にシビアな運用が徹底されます。許可が下りなければ、多額の撤去費用を抱えて事業から退場せざるを得なくなります。
「自社の計画が、新制度の要件を満たせるのか事前に診断してほしい」 「次回の更新(再許可)に向けて、今のうちに実績報告や計画の修正をプロに見直してほしい」
そのようなご不安や課題をお持ちの事業者様は、手続きが本格化して手遅れになる前に、当事務所へご相談ください。 愛知県の農地行政・開発法務に精通した行政書士が、最新の法改正トレンドを踏まえ、貴社の太陽光発電事業が将来にわたって適法に継続できるよう、専門的かつ強力なサポートを提供いたします。
本記事は令和8年(2026年)4月時点の情報を基に作成しています。制度の詳細は今後の省令・ガイドライン等により変更される場合があります。最新情報については農林水産省の公表資料をご確認ください。
三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
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言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号
