※本記事は令和8年(2026年)5月18日時点の情報をもとに作成しています。
愛知県警察における届出書式や手続き詳細は、本記事執筆時点では未公開です。公開され次第、随時この記事に追記・更新します。

令和8年(2026年)6月1日、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(令和7年法律第75号)が施行されます。

愛知県内で金属スクラップの買取・回収を行っている業者の方にとって、すでに古物商許可や産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていても、この新法に基づく別途の届出が必要になる場合があります。

本記事では、新法の概要・対象範囲・事業者に課される義務・罰則を、法令の条文に沿って整理します。自社が届出対象かどうかの判断基準についても解説しますので、ご確認ください。

なぜ今、金属スクラップ買取への規制が強化されるのか

相次ぐ金属盗難と新法の制定

太陽光発電設備の送電ケーブル、公共施設の水道蛇口、橋の銘板など、銅をはじめとする金属製物品の盗難が全国で増加しています。盗まれた金属が不適切なルートで換金・流通してしまう実態が、こうした犯罪を下支えしているとされています。

この状況を受けて制定されたのが、「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」(令和7年法律第75号)です。同法第1条(目的)には、「特定金属製物品の窃取を防止するためには盗難特定金属製物品の処分を防止することが重要である」と明記されています。新法は、金属くずの買受業者を対象とした届出制度を新たに設け、本人確認・取引記録の作成・疑わしい取引の申告を義務付けることで、盗品の流通を防ぐことを目的としています。

令和7年10月1日施行:古物営業法施行規則の一部改正

新法の施行(令和8年6月1日)に先立ち、すでに令和7年(2025年)10月1日から、古物商にとって実務上の変更が生じています。「古物営業法施行規則」の一部改正により、下記の品目については取引金額が1万円未満であっても、本人確認(身分確認)と帳簿記載が義務付けられました。

  • 電線
  • グレーチング(金属製のものに限る)
  • エアコンディショナーの室外ユニット
  • 電気温水機器のヒートポンプ

これまで1万円未満の取引は、一部の例外品目を除いて確認・記載が免除されていました。今回の改正でその例外が金属類の一部に適用されなくなっています。少額取引だからといって身分確認を省略すると、古物営業法違反となりますので、現場の買取フロー・マニュアルの見直しが必要です。

廃棄物処理法の改正(スクラップヤード規制)も進行中

金属スクラップを取り扱う業者を取り巻く規制強化は、盗難対策だけではありません。令和8年(2026年)4月10日に閣議決定された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」では、金属やプラスチックのスクラップを保管・再生する事業場、いわゆるスクラップヤードに対する許可制の導入が盛り込まれています。

一部の不適切なスクラップヤードで騒音・悪臭・土壌汚染・火災などの問題が報告されたことを受け、都道府県知事の許可を義務付け、保管基準の遵守を求める方向で検討が進んでいます。改善命令・事業停止命令・罰則の適用も想定されています。

産廃・金属スクラップ業界に対して、盗難対策の観点(古物営業法規則改正・特定金属くず新法)と環境保全の観点(廃掃法改正)の両面から、複数の規制が同時進行していると理解しておく必要があります。

自社は届出対象か?「古物商許可・産廃許可がある」だけでは判断できない

新法が対象とする「特定金属くず」の定義

新法(盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律)において届出が必要とされるのは、「特定金属くず買受業」を営む者です。

「特定金属くず」は、同法第2条第3号で次のように定義されています。

「主として特定金属により構成されている金属くず(物品を製造する過程において生ずるもの及び古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第一項に規定する古物に該当するものを除く。)をいう。」(新法第2条第3号)

ここでいう「特定金属」とは、のほか、「犯罪の状況、当該金属の経済的価値その他の事情に鑑み、当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属として政令で定めるもの」(新法第2条第1号)とされています。具体的にどの金属が政令指定されるかは、今後の動向を確認する必要があります。

対象外となる2つの類型

定義の中に、「特定金属くず」から除外されるものが明記されています。

チェック
  1. 物品を製造する過程において生ずるもの(工場での製造工程で発生した端材・切削くずなど)
  2. 古物営業法第2条第1項に規定する「古物」に該当するもの

この2点が対象外とされているため、取り扱う金属スクラップが「古物」かどうかの判断が、届出要否の分岐点になります。

「古物」と「特定金属くず」の境界線

古物営業法第2条第1項では、「古物」を次のように定義しています。

「一度使用された物品(中略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」(古物営業法第2条第1項)

愛知県警察の解説によれば、ここでいう「使用」とは、「その物本来の目的にしたがってこれを使うこと」(例:自動車であれば運行に使用すること)を指します。

つまり、買い取った物品がそのままの形で、または修理(幾分の手入れ)をして、本来の用途で再利用・転売できる状態であれば「古物」として扱えます。この場合は古物商許可の範囲内の取引となり、新法の届出は不要です。

一方、実務上よく見られる被覆を剥がした銅線や、解体・切断されて元の形をとどめていない金属の塊などは、本来の用途で使用できる「物品(古物)」ではなく、金属素材としての「くず」と判断されます。この場合、「古物」の除外規定は適用されず、新法上の「特定金属くず」に該当することになります。

古物商許可や産廃許可をすでにお持ちであっても、取り扱い品目がこの区分に当たる場合、令和8年6月1日以降は「特定金属くず買受業」の届出なしに買取を継続することはできません。

どちらに該当するかは、品目ごとに具体的な状態・取引態様を踏まえて判断する必要があります。

「特定金属くず買受業」の届出と、事業者に課される4つの義務

公安委員会への届出(既存業者への経過措置:3か月)

特定金属くず買受業を営む場合、営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県公安委員会(愛知県の場合は愛知県公安委員会)への届出が必要です。窓口は管轄の警察署になることが想定されます。

「特定金属くず買受業を営もうとする者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所(特定金属くずの買受けを行う営業所をいう。(中略))ごとに、氏名又は名称、住所、営業所の所在地その他国家公安委員会規則で定める事項を、当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)に届け出なければならない。」(新法第3条第1項)

施行日(令和8年6月1日)の時点で、すでに特定金属くず買受業を営んでいる事業者には、3か月間の経過措置が設けられています。

「この法律の施行の際現に特定金属くず買受業を営んでいる者は、この法律の施行の日から起算して三月を経過する日までの間は、引き続き当該特定金属くず買受業を営むことができる。」(新法附則第2条第1項)

すでに対象業務を行っている場合、令和8年9月1日ごろまでに届出を完了させる必要があります。

なお、本記事執筆時点(令和8年5月18日)において、愛知県警察が公表する届出書式や具体的な手続き詳細は確認できていません。詳細が公開され次第、この記事に追記します。情報が入り次第お伝えしますので、本記事のご確認をお勧めします。

届出後に守るべき4つの義務

届出が完了した後も、日常の業務において以下の義務を継続して履行する必要があります。

① 氏名・届出番号等の表示義務(ウェブサイトへの掲載も含む)

「第三条第一項の規定による届出をした者は、(中略)営業所ごとに、公衆の見やすい場所に、その氏名又は名称、届出をした公安委員会の名称及び届出番号等(次項において「氏名等」という。)を表示しなければならない。」(新法第5条第1項) 「(前略)電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(中略)により公衆の閲覧に供しなければならない。」(新法第5条第2項)

営業所内の掲示だけでなく、自社ウェブサイトへの届出番号等の掲載も義務付けられています。

② 本人確認義務

「特定金属くず買受業を営む者は、特定金属くずの買受けを行おうとするときは、国家公安委員会規則で定める方法により、買受けの相手方の本人特定事項(中略)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。」(新法第7条第1項)

法人の担当者が持ち込んだ場合は、法人の確認に加えて担当者個人の本人確認も必要になる場合があります。

③ 取引記録の作成・3年間保存義務

「特定金属くず買受業を営む者は、本人確認記録を、当該本人確認に係る買受けの行われた日から三年間保存しなければならない。」(新法第8条第2項) 「特定金属くず買受業を営む者は、取引記録を、当該取引に係る買受けの行われた日から三年間保存しなければならない。」(新法第9条第2項)

本人確認の内容・取引の期日・取引の内容について記録を作成し、3年間保存することが求められます。

④ 盗品の疑いがある場合の申告義務

「特定金属くず買受業を営む者は、取引の態様その他の事実に照らして、買受けに係る特定金属くずが盗難特定金属製物品に由来するものである疑いがあると認めたときは、直ちに、警察官にその旨を申告しなければならない。」(新法第10条)

疑わしい取引があれば、その場で警察に申告する義務があります。

無届営業・義務違反への罰則

届出を行わずに営業した場合は、無届営業として次の罰則が適用されます。

「第三条第一項の規定による届出をしないで特定金属くず買受業を営んだとき。(中略)六月以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(新法第23条第1号)

また、本人確認義務などへの違反を理由に公安委員会から営業停止命令(新法第12条)が発令された場合に、これに違反したときは、より重い罰則が適用されます。

「第十二条の規定による命令に違反したときは、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(新法第21条)

罰則は事業者だけでなく、経営者個人にも及ぶ可能性があります。

愛知県での手続きと、当事務所へのご相談について

届出先・手数料等の実務

愛知県において届出書類を提出する窓口は、営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課等)になることが想定されます。

なお、愛知県警察では令和6年(2024年)4月から、警察署の申請受付窓口でのキャッシュレス収納が開始されています。クレジットカード(Visa・MasterCard等)・コード決済(PayPay・d払い等)・交通系ICカード・電子マネーでの手数料納付が可能です。従来どおり愛知県収入証紙での納付も可能ですが、警察署内での販売時間が限られている場合がありますのでご注意ください。

届出書式・手続きの詳細については、記事執筆時点では確認できなかったため、愛知県警察からの正式な公表をもって本記事に追記します。

当事務所にご相談いただける内容

産廃処理業での10年以上の実務経験と、建設業・産廃許可・古物営業法を含む許認可業務の知識を組み合わせ、以下の点について対応しています。

当事務所にご相談いただける内容

「古物」か「特定金属くず」かの判断
取り扱い品目・取引態様のヒアリングをもとに、古物営業法と新法のどちらが適用されるかを整理します。判断の根拠となる法令条文・行政解釈を踏まえてご説明します。

届出書類の作成・提出代行
新法第3条第1項に基づく届出には「国家公安委員会規則で定める書類」の添付が必要です。住民票・登記事項証明書・誓約書等の収集・作成を代行し、警察署への提出を行います。

届出後の業務フロー整備のアドバイス
表示義務(新法第5条)・本人確認義務(第7条)・取引記録の保存(第8条・第9条)・申告義務(第10条)など、届出後に継続して守るべき義務について、現場の実態に合わせた社内ルールの整備をサポートします。

既存の古物商許可のメンテナンス
古物営業法では、届出事項に変更があった場合、変更の日から14日以内(登記事項証明書が必要な変更は20日以内)に警察署を経由した変更届が必要です。新法の届出と合わせて、既存許可の変更届・書換申請にも対応しています。

まとめ

「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律」に基づく「特定金属くず買受業」の届出制度は、令和8年(2026年)6月1日に施行されます。施行日時点ですでに対象業務を営んでいる場合は、同年9月1日ごろまでに届出を完了させる必要があります。

古物商許可・産業廃棄物処理業許可の有無にかかわらず、取り扱い品目が「特定金属くず」に該当する場合は別途届出が必要です。届出なしに営業を継続した場合、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります。

本記事執筆時点では愛知県警察の届出書式が未公開のため、詳細が確認でき次第この記事に追記します。

自社が届出対象かどうかの判断や手続きについては、三澤行政書士事務所へご相談ください。

本記事は令和8年(2026年)5月18日時点の法令情報をもとに作成しています。条文・ガイドラインの解釈は今後変更される場合があります。個別の事案については、必ず専門家へご確認ください。

三澤祐喜 行政書士

三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)

行政書士

産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。

愛知県行政書士会所属|第24191550号