こんにちは、行政書士の三澤です!
「過積載や白トラで捕まるのは運送会社の話。うちには関係ない」——そう考えている経営者や担当者がいるなら、認識を改める必要があります。
令和7年(2025年)施行の貨物自動車運送事業法改正により、運送を依頼する側である荷主(元請け)も、法令違反を誘発した場合には行政処分の対象となりました。違反が確認されれば、国土交通大臣から「企業名が公表」される可能性があります。
本記事では、建設業・産廃業の現場に10年携わってきた行政書士の立場から、荷主規制の強化ポイントと、白トラ利用がもたらす経営リスクを条文ベースで解説します。
1. 今回の法改正で何が変わったのか
荷主も「当事者」として規制対象に
従来の貨物自動車運送事業法は、主にトラック事業者(運送会社)側の義務や罰則を定めたものでした。しかし令和7年法律第60号(「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」)の施行により、運送を委託する荷主側の責任が法律上明確に位置づけられました。
建設現場や産廃現場でよく見られるのが、一般貨物自動車運送事業の許可(緑ナンバー)を持たない業者——いわゆる「白トラ」——へのダンプ等の運搬委託です。コスト削減や長年の付き合いを理由に慣習的に続けているケースも少なくありませんが、改正法のもとでは「頼んだ側」にも明確な法的リスクが生じます。
2. 「企業名公表」という制裁の重さ
勧告+公表はセット
改正後の貨物自動車運送事業法では、荷主による違反原因行為(運送事業者の法令違反を誘発する行為)に対して、以下の流れで行政措置が取られます。
- 要請(附則第1条の2第2項・第3項) 国土交通大臣が荷主に対し、違反原因行為をやめるよう要請します。
- 勧告(附則第1条の2第4項) 要請後も違反原因行為が疑われる場合、国土交通大臣は当該荷主に「勧告」を行うことができます。
- 企業名の公表(附則第1条の2第5項) 同条第5項には、「国土交通大臣は、前項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする」と明記されています。勧告を行った場合、公表は義務であり、任意ではありません。
また、同法第65条(荷主への勧告)においても、運送事業者の違反行為が主として荷主の指示等に起因する場合に勧告が可能であり、同条第3項で同様に「公表するものとする」と規定されています。
企業名が行政により公表された場合、コンプライアンスを重視するゼネコンや取引先からの取引停止、入札参加資格の見直しなど、経営への影響は軽視できません。
3. 荷主に求められる「配慮義務」とは
白トラへの委託のような明確な違法行為だけでなく、正規の運送事業者(緑ナンバー)との日常的な取引の中にも、荷主側の法的リスクは存在します。
長時間の待機強要・条件不明確な発注は「違反原因行為」になりうる
貨物自動車運送事業法第64条(荷主の責務)は、次のように定めています。
「荷主(中略)は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない」
さらに同法第9条の4(適正な取引の確保)では、以下の行為が過積載・過労運転を誘発するものとして是正対象に挙げられています。
- 運送条件が不明確なまま引き受けさせること
- 運送直前・開始後に条件を変更すること
- 荷主都合による長時間の待機
- 運送契約に含まれない附帯作業(積み下ろし等)の無償要求
建設・産廃の現場では「準備が整っていないからトラックを待たせる」「運賃の範囲が曖昧なまま作業させる」といった慣行が残っているケースがありますが、これらは法律上、是正の対象です。
4. 公正取引委員会への通報ルートも存在する
附則第1条の2第1項では、荷主が違反原因行為をしている疑いがある場合、国土交通大臣が関係行政機関の長に対し当該荷主に関する情報を提供できると定めています。
さらに同条第7項では、荷主の行為が「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条第9項に規定する不公正な取引方法に該当すると疑うに足りる事実」を把握した場合、公正取引委員会に通知するものとすると明記されています。
悪質な運賃の買いたたきや不当な附帯業務の強要は、下請法・独占禁止法の問題にも波及しうることを、あらかじめ認識しておく必要があります。
5. まとめ|下請け管理の甘さが自社リスクに直結する
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 白トラへの委託 | 荷主として勧告・企業名公表の対象となりうる |
| 企業名公表 | 国土交通大臣による公表は「義務」。取引停止・信用失墜に直結 |
| 長時間待機・条件不明確な発注 | 「違反原因行為」として関係機関や公取委への通報ルートあり |
法的根拠のまとめ
- 貨物自動車運送事業法 附則第1条の2(違反原因行為への対処)
- 同法 第65条(荷主への勧告)
- 同法 第64条(荷主の責務)
- 同法 第9条の4(適正な取引の確保)
「運送会社の問題は運送会社に任せればよい」という時代は終わりました。自社が手配する物流が、適法な業者により適正な条件で行われているかを確認・管理することは、許認可の維持とコンプライアンスを守るうえで避けられない課題です。
関連記事|適法に運送を手配するための「第一種貨物利用運送事業」とは
自社でトラックを持たず、他社の緑ナンバー車を手配して有償で運送を請け負う場合、第一種貨物利用運送事業の登録が必要です。白トラ利用や無登録営業(いわゆる水屋行為)のリスクを避けて適正に業務を行うための登録要件・手続きについては、第4章の記事群で解説しています。
- 【第4章】第一種貨物利用運送事業の基礎知識と登録要件まとめ(公開準備中)
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三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)
行政書士
産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
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言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。
愛知県行政書士会所属|第24191550号