【古物商】法人で許可を取る際の注意点!役員全員が審査の対象になるって本当?
法人で古物商許可を取得する際の注意点を行政書士が徹底解説! 法人申請では代表者だけでなく「役員全員」が審査対象となり、一人でも欠格事由に該当すると許可は下りません。 定款のコピー提出時に求められる「原本証明」の書き方や、管理者を兼任する場合の誓約書のルールなど、警察署の窓口で差し戻しを防ぐ実務ノウハウを網羅しました。
- 分野
- 古物商
- 主な法令
- 古物営業法
- 公開日
- 2026年3月30日
- 更新日
- 2026年9月25日
目次
「会社を設立して、中古品の買取・販売ビジネスを始めたい」 「個人で古物商許可を持っているが、法人成りしたらどうなるの?」 「代表取締役の自分だけ審査されれば、法人の許可は下りるのでは?」
ビジネスを本格化させるため、株式会社や合同会社として古物商許可を取得したいとお考えの方は年々増えています。しかし、法人申請は個人事業主の申請とは別物です。書類の収集量も、審査の厳しさも、まったく次元が違います。
最大の理由は、古物営業法の規定により、法人申請では代表者一人ではなく「役員全員」が審査の対象になるという点にあります。役員のうち誰か一人でも欠格事由(過去の犯罪歴や復権未取得の破産など)に該当していれば、会社全体の許可が下りません。
さらに、定款コピーへの「原本証明」の記載方法や、役員が管理者を兼任する際の誓約書の枚数といった、警察署の窓口で差し戻しになりやすい細かな実務ルールも数多く存在します。
この記事では、書類上の注意点から「個人→法人成り」に潜む無許可営業のリスクまで、詳しく解説します。法人申請特有のルールをしっかり把握して、許可取得を目指しましょう。
1. 役員全員が審査の対象になる理由と「欠格事由」の連帯責任
個人申請と法人申請では、審査の射程がまったく異なる
個人事業主が申請する場合、警察が審査するのは「申請者本人」と「管理者」の2名のみです。ところが法人の場合、登記簿に名前が載っている役員全員が審査対象となります。取締役だけでなく、監査役も含めてです。
この根拠となるのが、古物営業法第4条(許可の基準・欠格事由)です。同条は「法人で、その役員のうちに欠格事由に該当する者があるもの」について許可を与えてはならないと定めており、役員一人の問題が法人全体の不許可につながる厳格な連帯責任が課されています。
代表取締役にまったく問題がなくても、取締役や監査役の中に特定の犯罪で罰金刑を受けた方や、自己破産後に復権を得ていない方が一人でもいれば、その法人は申請を受け付けてもらえません。事業計画の段階で、必ず役員全員の経歴を確認しておく必要があります。
役員全員分の書類収集という現実的なハードル
全員が審査対象となる以上、当然ながら全員分の公的書類を提出しなければなりません。古物営業法施行規則第1条の3第3項および愛知県警の申請案内によれば、法人申請では役員全員につき、以下の4種類の書類が必要です。
- 略歴書(最近5年間の略歴を記載したもの)
- 住民票の写し(本籍または国籍の記載があるもの)
- 身分証明書(本籍地の市区町村長が発行するもの)
- 誓約書(法人役員用・人的欠格事由に該当しない旨を誓約するもの)
役員が複数名いる場合、それぞれが異なる市区町村に住んでいたり、外国籍の役員がいる場合には、書類収集だけで相当な時間がかかります。許可申請のスケジュールを立てる際は、書類収集にかかる日数を最初から逆算しておくことが重要です。
2. 法人だからこそ必要な「定款」と「登記事項証明書」の正しい提出方法
なぜ法人独自の書類が求められるのか
個人申請では、身元確認のための書類(住民票・身分証明書など)を揃えれば基本的に事足ります。しかし法人申請では、その法人自体の実態を証明する書類として「定款」と「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」の提出が必須となります(古物営業法施行規則に基づく各都道府県警察の申請要領による)。
警察は、事業目的に「古物営業を行う旨」の記載があるかどうか、登記された役員と申請書の記載に相違がないかを厳格に確認します。目的欄に古物営業の記載がない場合は、定款変更が必要になることも少なくありません。
定款コピーには「原本証明」が必須——ただのコピーでは受理されない
ここで多くの方がつまずくのが、定款の「原本証明」の問題です。
登記事項証明書は法務局が発行した原本をそのまま提出すれば問題ありません。一方、定款は会社に保管されている原本をコピーして提出するのが通常ですが、ただコピー機で複写したものを持っていっても、警察署は受理しません。
愛知県警の「古物商許可申請に必要な書類等」には、以下のとおり明記されています。
※注1:定款は、コピーしたものの末尾に「以上、この写しは原本と相違ありません。令和〇年〇月〇日 代表取締役【代表者氏名】」等と記載したものを用意してください。
つまり、コピーした定款の末尾に、代表取締役による原本証明の文言を記入し、法人の代表者印(実印)を押印するという手順が必要なのです。また実務上、定款が複数ページにわたる場合は、ページの継ぎ目に代表者印で契印(割印)を押すことを求められるケースもあります。
この「お作法」を知らずに窓口へ行くと、「原本証明がないので出直してください」とその場で差し戻されます。法人の定款をコピーして提出する際は、必ずこの手順を守ってください。
3. 役員が「管理者」を兼任する場合——誓約書は2枚必要
管理者とは何か
古物商を営む法人は、各営業所に1名の「管理者」を選任しなければなりません(古物営業法第13条第1項)。管理者は、その営業所における古物営業の適正実施に責任を持つ役職です。
法人設立間もないケースでは、代表取締役などの役員が管理者を兼任することが多く、それ自体は法令上まったく問題ありません。
同一人物でも、誓約書は「2種類」別々に提出する
ところが、ここに多くの方がはまる落とし穴があります。役員が管理者を兼任している場合、「自分は一人なのだから誓約書も1枚でいい」と判断してしまうケースです。これは誤りで、必ず差し戻しになります。
古物営業法施行規則第1条の3第3項では、法人役員に関する書類(第2号)と管理者に関する書類(第3号)が別々の号に規定されています。
愛知県警の申請案内にも次のとおり明記されています。
※注3:法人の許可申請の場合において、代表者や役員の中に営業所の管理者を兼ねる方がいる場合は、その方については、法人用と管理者用の2種類の誓約書を記載して提出してください。
この理由は、法人役員として誓約すべき欠格事由(古物営業法第4条関係)と、管理者として誓約すべき欠格事由(古物営業法第13条第2項関係)とでは、対象となる条文と要件が法律上異なるためです。兼任している場合でも、「法人役員としての誓約書」と「管理者としての誓約書」の2枚を別々に作成・署名して提出しなければなりません。
書類が1枚不足しているだけでも申請は受理されません。細かなルールですが、確実に押さえておきましょう。
4. 個人事業主からの「法人成り」——そのままでは無許可営業になる
「自分が社長だから個人の許可でもいい」は完全な誤り
古物商許可は、あくまで「特定の個人」または「特定の法人」という人格に対して与えられるものです。個人として取得した許可は、その本人が設立した会社には引き継がれません。
代表取締役と個人事業主が同一人物であっても、法律上「個人」と「法人」はまったく別の権利主体として扱われます。
愛知県警が公表している「違反行為の要点」にも、冒頭でこう明記されています。
- 個人で許可を取得された方が法人経営に移行するときは、自身が代表者であっても、新たに法人として許可を取得しなければなりません。
個人の許可証を法人のビジネスにそのまま使い続けることは「無許可営業」に該当し、古物営業法第31条第1号により「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰の対象となります。「知らなかった」では済まされない、非常に危険なリスクです。
法人成り時に行うべき「2つの手続き」と、その正しいタイミング
個人事業主から法人成りする際には、以下の2つの手続きが必要です。
- 法人としての新規古物商許可申請(古物営業法第3条)
- 個人の許可証の返納(廃業届)(古物営業法第8条第1項第1号)
ここで重要なのが手続きのタイミングです。法人の許可申請を出しても、許可が下りるまでには標準処理期間として約40日かかります。
もし法人設立と同時に個人の許可を返納してしまうと、許可が下りるまでの約1か月半のあいだ、古物営業が一切できない「空白期間」が生じてしまいます。これはビジネス上、大きな損失です。
正しい進め方は次のとおりです。
- まず個人事業主として営業を適法に継続しながら、並行して法人の新規許可申請を進める
- 法人の許可が正式に下り、「法人として営業できる状態」が整ったことを確認してから、個人の廃業届(許可証の返納)を提出する
このスケジュール管理を徹底することで、ビジネスを1日も止めることなく、適法に法人成りへ移行することができます。
5. まとめ
ここまでお読みいただき、法人での古物商許可がいかに細かな実務ルールに満ちているか、お分かりいただけたかと思います。
役員の数に比例して公的書類の収集は膨大になり、一人でも欠格事由があれば会社全体の申請が却下される。定款の原本証明の作法を誤れば即差し戻し。管理者を兼任する役員の誓約書が1枚不足しただけでも受理されない。そして法人成りのタイミングを誤れば、刑事罰を問われかねない無許可営業状態に陥ってしまいます。
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