こんにちは!愛知県を拠点に、企業の許認可・新規事業進出から資金調達までサポートしている、三澤行政書士事務所の三澤です。

「古物商許可を取ったし、あとはエクセルで売上を管理しておけばいいか」 「1万円未満の買取なら、本人確認も台帳記録も省略できるって聞いたけど……」

古物商として買取ビジネスをスタートする際、こうした認識を持ったまま営業を始める方が少なくありません。しかし残念ながら、どちらも重大なリスクを抱えた誤解です。

古物商には、取引のたびに「古物台帳(帳簿)」へ法定の項目を記録し、最終記載日から3年間保存しなければならないという、古物営業法上の厳格な義務が課されています。これは単なる売上管理ではなく、警察が盗品の流通ルートを追跡するための重要な捜査資料だからです。

「1万円未満なら記録免除」という原則は確かに存在します。ただし、本・CD・ゲームソフト・バイクなどは10円の取引でも記録必須という例外があります。さらに、近年多発する金属盗難への対策として、令和7年(2025年)10月1日からは「電線」「エアコン室外機」なども金額にかかわらず記録義務の対象となる法改正が施行されます。

この記事では、警察の立入検査をクリアするための「古物台帳の正しい書き方」、初心者が陥りがちな「1万円未満の罠」、そして最新の法改正まで、行政書士の視点から体系的に解説します。

1. 古物台帳に記録すべき「5つの必須項目」

古物台帳は、警察が盗品等の流通ルートを解明するための公的な記録です。そのため、何を記載するかは法律で明確に定められています。

古物営業法第16条は、古物を受け取ったとき(買取等)または引き渡したとき(販売等)に、その都度以下の5つの事項を帳簿または電磁的方法で記録することを義務付けています。

古物営業法第16条(記録すべき事項) 一 取引の年月日 二 古物の品目及び数量 三 古物の特徴 四 相手方の住所、氏名、職業及び年齢 五 本人確認の措置の区分(どの方法で確認したか)

「古物の特徴」は詳細に記録する

「品目」欄に「時計」「バッグ」と書くだけでは不十分です。万が一それが盗品であった場合に警察が特定できるよう、以下のような具体的な情報を可能な限り詳細に記載してください。

  • メーカー名・ブランド名・型番
  • 色・素材・サイズ
  • シリアルナンバー(製造番号)
  • 傷・刻印・汚れなど客観的な特徴(例:「持ち手に目立つ擦れ傷あり」「文字盤裏に〇〇のイニシャルの刻印あり」)

「相手方の情報」は氏名・住所だけでは不足

本人確認で取得する情報として、氏名・住所は当然ですが、「職業」と「年齢」も必ず確認して記録する必要があります。この2項目が漏れているケースが現場では非常に多いため、注意が必要です。

【実務上の注意点】エクセル管理(電磁的記録)を使う場合

最近は紙の帳簿ではなく、エクセルや専用の在庫管理システムでデータ管理する古物商が増えています。電磁的記録自体は法令上認められていますが、見落とされがちな要件があります。

古物営業法第18条第1項は、電磁的方法による記録の保存について次のように定めています。

古物営業法第18条第1項(抜粋) 「前二条の電磁的方法による記録を当該記録をした日から三年間営業所若しくは古物市場において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない。」

「直ちに書面に表示できる状態」とは、警察の立入検査の際にその場ですぐ印刷して提示できる環境が整っていることを意味します。

「データはクラウドに保存しているから大丈夫」と考えていても、実際の営業所のパソコンからアクセスできない、または営業所にプリンターがないという状態では、保存義務違反となります。データ管理を導入する際は、営業所ごとに印刷可能な環境(プリンターの設置等)を必ず整えることが条件です。

2. 「1万円未満は記録不要」の原則と、その落とし穴

古物を買い取るたびに身分証を確認し、詳細な特徴を台帳に記録することは、相当の手間がかかります。そこで古物営業法では、盗品混入のリスクが低いと考えられる少額取引について、本人確認義務と帳簿記録義務を免除する特例を設けています。

古物営業法第15条第2項第1号(抜粋) 「対価の総額が国家公安委員会規則で定める金額未満である取引をする場合(中略)には、同項に規定する措置(本人確認措置)をとることを要しない。」 ※第16条(帳簿等への記載等)においても同規定を準用。

古物営業法施行規則第16条第1項 「法第15条第2項第1号の国家公安委員会規則で定める金額は、1万円とする。」

つまり、買取金額が1万円未満であれば、原則として本人確認も台帳記録も不要というのが基本ルールです。

「1万円」は単価ではなく「取引の合計額」

よくある誤解が、「1個5,000円の商品を3個買い取ったが、1個当たりは1万円未満だから記録不要」という解釈です。しかし条文にある通り、基準となるのは「対価の総額」です。

実務解説書『わかりやすい古物営業の実務』Q51でも「1万円とは、古物商が行ったその現実の取引の対価の総額が1万円だという意味」と明記されています。1個5,000円の商品を1回の取引で3個(合計15,000円)買い取った場合は、合計額が1万円以上となるため本人確認と記録が必須です。

「1万円未満なら大丈夫」と安心してはいけない理由

ここに、古物営業法の摘発や行政処分で最も多くの事業者が見落とす「最大の罠」があります。

古物営業法第15条第2項第1号のカッコ書きには、次の一文が潜んでいます。

「特に前項に規定する措置をとる必要があるものとして国家公安委員会規則で定める古物に係る取引をする場合を除く」

つまり、「たとえ1万円未満でも、絶対に記録を免除しない品目」が別途指定されているのです。次の章で、この「例外品目」を詳しく解説します。

3. 1万円未満でも「記録必須」となる品目一覧

現行法で指定されている4ジャンル

古物営業法施行規則第16条第2項は、金額にかかわらず本人確認と帳簿記録が義務付けられる品目を次のように定めています。

古物営業法施行規則第16条第2項(抜粋) 「法第15条第2項第1号の国家公安委員会規則で定める古物は、次の各号に該当する古物とする。 一 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品(ねじ、ボルト、ナット、コードその他の汎用性の部分品を除く。)を含む。) 二 専ら家庭用コンピュータゲームに用いられるプログラムを記録した物 三 光学的方法により音又は影像を記録した物 四 書籍」

まとめると、以下の品目は10円・100円であっても、必ず本人確認と台帳記録が必要です。

品目具体例
オートバイ・原付(部品を含む)原付バイク、マフラー、エンジン部品 など
家庭用ゲームソフトプレイステーション・Switch用ソフト など
光学記録媒体CD・DVD・ブルーレイ など
書籍コミック・文庫・専門書 など

これらの品目は、未成年者を含む窃盗・万引きのターゲットになりやすく、少額であっても盗品が流通するリスクが高いと警察が判断しているためです。

【最新法改正】令和7年(2025年)10月1日から追加される品目

近年、銅線・グレーチング(側溝の金属製フタ)などの金属類が大量に盗まれる被害が社会問題化しています。これを受け、古物営業法施行規則が改正され、令和7年10月1日から「1万円未満でも記録必須」の例外品目に、以下の4品目が新たに追加されます。

愛知県警察「古物営業法施行規則の一部改正について(令和7年10月1日施行)」より 取引金額に関わらず、古物商が買受けを行う際の相手方の身分確認及び帳簿への記載が義務付けられる古物として、以下が追加されます。

  • エアコンディショナーの室外ユニット
  • 電気温水機器のヒートポンプ
  • 電線
  • グレーチング(金属製のものに限る)

スクラップ業者・不用品回収業者・家電買取事業者の方は特に注意が必要です。

令和7年10月1日以降は、電線や古いエアコン室外機の買取において、取引金額が1万円未満であっても本人確認と帳簿記録が義務付けられます。 「今まで1万円未満なら記録していなかったから」と古い運用を続けていると、ある日の立入検査で「帳簿記載義務違反」を指摘され、取り返しのつかない事態に陥りかねません。

4. 業務負担を正しく減らす「記録免除の特例」2つ

ここまで「厳しいルール」を解説しましたが、法律には業務負担を適切に軽減できる特例も設けられています。必要のない記録まで取って業務を圧迫しないよう、実務上よく活用される2つの特例をご紹介します。

特例①:自社で販売した商品の「買い戻し・下取り」

お客様に販売した商品を、同じお客様から後日買い戻す(下取りする)ケースです。この場合、本人確認および帳簿への記録義務が免除されます。

古物営業法第15条第2項第2号 「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受ける場合」(確認措置を要しない)

自分が売った相手から直接買い戻すのであれば、その間に別の盗品が混入するリスクが極めて低いため、このような免除規定が設けられています。

【実務上のポイント】「自己」とは法人全体(全営業所)を指します。 「A支店で販売したバッグをB支店で同じお客様から買い戻す」ような場合であっても、同一法人内での売却であることが確認できれば、確認・記録は不要です。

特例②:自動車を「販売(引き渡し)」する際の相手方情報の記録免除

古物台帳の記録義務は買取時だけでなく、販売(引き渡し)時にも発生します。美術品・時計・宝飾品・自動車・オートバイ等は、販売時にも帳簿への記録が義務付けられています。ただし「自動車」にのみ、特別な例外があります。

古物営業法第16条第4号 「相手方(国家公安委員会規則で定める古物を引き渡した相手方を除く。)の住所、氏名、職業及び年齢」

古物営業法施行規則第18条第2項 「法第16条第4号の国家公安委員会規則で定める古物は、自動車である古物とする。」

この2つの条文を組み合わせると、「自動車を販売したときは、買主の住所・氏名・職業・年齢を古物台帳に記載しなくてよい」ということになります。

自動車には陸運局の厳格な登録制度(車検証等)があり、所有者の移転履歴が公的制度で追跡できるため、古物台帳への二重記録を不要とする趣旨です。

⚠️ 注意: 「販売した年月日」や「自動車の特徴(車台番号等)」の記録は引き続き必要です。免除されるのは「相手方(買主)の個人情報」のみです。

5. 「3年間の保存義務」とデータ消失への備え

古物台帳は書いて(入力して)終わりではありません。作成後の「保存」についても、法律で厳格なルールが定められています。

古物営業法第18条第1項 「古物商又は古物市場主は、前二条の帳簿等を最終の記載をした日から三年間営業所若しくは古物市場に備え付け、又は前二条の電磁的方法による記録を当該記録をした日から三年間営業所若しくは古物市場において直ちに書面に表示することができるようにして保存しておかなければならない。」

  • 紙の帳簿:最終記載日から3年間、営業所に備え付ける
  • 電磁的記録(データ):記録した日から3年間、営業所で「直ちに印刷できる状態」で保存する

「データが消えた」では済まされない

データ管理を導入する事業者が増える中、重大な落とし穴があります。ウイルス感染・ハードディスクのクラッシュ・誤ったファイルの上書きなどにより、3年経過前の台帳データが消失した場合、「消えてしまいました」と放置することは許されません。

古物営業法第18条第2項 「古物商又は古物市場主は、前二条の帳簿等又は電磁的方法による記録をき損し、若しくは亡失し、又はこれらが滅失したときは、直ちに営業所又は古物市場の所在地の所轄警察署長に届け出なければならない。」

実務解説書でも、「記録媒体のデータが強力な磁気等を受けて消滅した場合等」がこの「滅失」に該当するとされています。データが消えた場合は、直ちに所轄警察署長へ「古物台帳データが消滅した旨の届出」を行う義務があります。これを隠蔽して立入検査で発覚すれば、重大な法令違反となります。

データ管理を行う際は、定期的に外部メディア(外付けHDD・クラウド等)へバックアップを取り、原本とは別の安全な場所に保管する体制を整えることが不可欠です。

まとめ

古物台帳は「売上メモ」ではありません。盗品捜査という警察の重要な目的のために、厳格な記載ルールと3年間の保存義務が課された法定帳簿です。

  • 「1万円未満は記録不要」の原則には、本・ゲームソフト・CD・バイクなど記録必須の例外品目が存在する
  • 令和7年10月1日からは電線・エアコン室外機・ヒートポンプ・グレーチングも規制対象に追加される
  • エクセル管理の場合は「営業所でその場で印刷できる環境」が必須条件
  • データが消えた場合は「所轄警察署長への届出義務」が発生する

こうした複雑なルールを「なんとなく知っている」レベルで運用を続けると、警察の立入検査で営業停止・許可取り消しという致命的なペナルティを受けるリスクがあります。

「扱う商材が記録必須の例外品目に当たるか確認したい」 「自社のエクセル台帳フォーマットが法的要件を満たしているか不安だ」 「許可取得後の適法な運用ルールも含めて、顧問としてサポートしてほしい」

そのようなご要望をお持ちの経営者様は、ぜひ三澤行政書士事務所へお気軽にご相談ください。

当事務所は単なる許可申請の代行にとどまらず、最新の法令動向を常にキャッチアップしながら、御社のビジネスが「適法かつ安全」に回り続けるための仕組みづくりを伴走支援いたします。古物商の新規許可申請から、立入検査に動じない適法な運用スキームの構築まで、頼れる「社外法務部」として完全秘密厳守でワンストップ対応いたします。

面倒な古物商の許可申請や変更手続きはプロに丸投げ!

自社のビジネスに合わせた最適なスキーム構築から、複雑な法定書類の作成、警察署での面倒な手続きまで、行政書士がワンストップで代行いたします。
まずは「サポート内容と料金」をご確認いただき、お気軽にご相談ください!

三澤祐喜 行政書士

三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)

行政書士

産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
「他で断られた」「難しいと言われた」「複雑すぎて整理できない」——まず、ご連絡ください。
言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。

愛知県行政書士会所属|第24191550号