こんにちは!愛知県を中心に、企業の許認可・事業拡大をサポートしている三澤行政書士事務所の三澤です。
「売上が伸びてきたので、もっと広い場所へ移転しよう」「新しいエリアに2号店をオープンしたい」——事業が順調に育っているからこそ生まれる、うれしい悩みですね。
しかし、ひとつだけ先に申し上げます。
古物商の「営業所に関する変更」は、引越しが終わってからの事後報告では、古物営業法違反になります。
税務署への届出や、通常の許認可変更とは異なり、古物商における営業所の移転・新設・名称変更には「変更予定日の3日前まで」という事前届出の義務が法律で厳格に定められています。しかも、この「3日前」という計算には、土日祝日を前倒しで考慮しなければならないという、見落としやすい実務上の注意点が潜んでいます。
この記事では、古物商が最も法令違反に陥りやすい「営業所の移転・新設」手続きについて、根拠条文を示しながら正確にお伝えします。他県へ移転する場合の実務的なポイント、複数店舗を展開している事業者が使える特例も含めて、行政書士の立場から丁寧に解説していきます。
1. 絶対に覚えてほしいルール——営業所の変更は「3日前まで」の事前届出
古物商として事業を拡大する中で、新店舗のオープン、有望な立地への移転、屋号の見直しなどは、経営上の大切な意思決定です。ところが、これらの「営業所に関する変更」は、古物営業法のルールにおいて事後報告が一切認められていないカテゴリーに属します。
警察の実務書『わかりやすい古物営業の実務』Q27では、新たに営業所を設ける際の手続きについて次のように解説されています。
Q:新たに営業所を設ける際の手続にはどのようなものがありますか。 A:古物営業を営んでいる方が新たに営業所を設ける場合は、変更の届出をすることで足りるとされています(法第7条第1項)。
「変更届でよい」——たったこれだけ読むと簡単に感じますが、この「法第7条第1項に基づく変更届」の提出期限こそが問題です。古物営業法施行規則は、変更予定日の3日前までに所轄の警察署へ届け出なければならないと定めています。
具体的には、以下のケースがすべて「3日前までの事前届出」の対象となります。
- 営業所を新設する(新たに店舗を増やす)
- 営業所の所在地を変更する(店舗を移転する)
- 営業所の名称を変更する(屋号を変える)
- 営業所を廃止する(閉店する)
法律は「変更予定日」を前提としている
「届出なのだから、変更後に出せばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、根拠条文を読むと、警察側もそれを想定していないことがわかります。
古物営業法施行規則第27条(公安委員会への報告事項)には、次のように記載されています。
古物営業法施行規則第27条(抜粋) 四 法第七条第一項又は第二項の規定による届出書の提出を受けた場合 五 変更年月日(法第七条第一項の規定による届出書の提出を受けた場合にあっては、変更予定年月日)
下線部をご覧ください。法第7条第1項に基づく営業所変更の届出を受けた場合、警察は「変更予定年月日」、すなわちこれから起きる変更の日付として処理することが前提になっています。「すでに移転しました」という事後の届出は、制度設計上、想定されていないのです。
店舗移転のときは、物件の契約・内装工事・引越し業者の手配と、やるべきことが一気に増えます。そのような状況でも、「警察への届出期限」をプロジェクトの最優先事項としてスケジュールに組み込んでおく必要があります。
2. 「3日前」の正しい数え方——「中3日を空ける」という意味を理解する
「変更の3日前まで届け出ればよい」とわかっていても、日数の数え方を誤って法令違反になるケースが後を絶ちません。
たとえば「10月5日に新店舗をオープンしたい。変更の3日前だから10月2日に届出を出せばOK」——この計算は誤りです。
「中3日」とは何か
警察の実務書『わかりやすい古物営業の実務』(Q26等)は、この「3日前」について、単に3日前に提出すればよいのではなく、「中3日を設けるという趣旨である」と解説しています。
「中3日を設ける」とは、提出日と変更予定日の間に、丸3日間(その日を含まない)が挟まっている状態を指します。
<計算例> 変更予定日が10月5日(火)の場合——
| 日付 | 区分 |
|---|---|
| 10月1日(金) | 届出の最終期限(この日までに提出) |
| 10月2日(土) | 中3日の1日目 |
| 10月3日(日) | 中3日の2日目 |
| 10月4日(月) | 中3日の3日目 |
| 10月5日(火) | 変更予定日(新店舗オープン) |
「10月2日に出せば3日前では?」と思って警察署へ持参しても、「中2日しか空いていないため期限を過ぎています」と指導されることになります。
土日・祝日は「前倒し」が絶対条件
さらに重要な落とし穴が「土曜・日曜・祝日」の存在です。警察署の生活安全課は平日しか開いていません。
仮に届出の最終期限が土曜日に当たった場合、「では月曜日に出せばいい」という判断は誤りです。月曜日に提出した時点では、変更予定日まで「中3日」を確保できなくなってしまいます。期限が休日にかかる場合は、必ず前の平日(金曜日など)に前倒しして提出しなければなりません。
「引越し作業で忙しくて1日遅れた」「期限が日曜日だったから月曜の朝に出せば大丈夫だと思った」——こうしたちょっとした判断ミスが、容赦なく古物営業法違反という結果を招きます。
営業所の移転・新設を予定しているときは、この「中3日ルール+土日祝の前倒し」を正確に計算した上で、余裕を持ったスケジュールを組んでください。
3. 他県への移転・新設——法改正で「届出だけ」になったが油断禁物
事業が成長すると、「現在の県から、より市場規模の大きい他県へ主たる営業所を移したい」「隣の県に新たな営業所を開きたい」というケースも生まれます。
以前の古物営業法では、都道府県ごとに公安委員会の許可が独立していたため、他県への出店には「その県での新規許可取得」が必要でした。これが企業の全国展開における大きな障壁となっていました。
しかし、法改正によってこの負担が大幅に軽減されています。警察の実務書『わかりやすい古物営業の実務』「古物営業法の改正について」には、次のように記されています。
「1つの都道府県公安委員会の許可を受けていれば、他の都道府県に新たに営業所等を設ける場合に届出のみとして許可を不要とする措置を講じてほしいという要望(中略)を受け、平成30年4月に古物営業法が改正され、令和2年4月1日から全面施行されました。」
この改正により、現在はいずれかの都道府県で古物商許可を取得していれば、他県への営業所の移転・新設も変更届の提出だけで対応できるようになっています。
「届出だけ」という安心感が危険を招く
この法改正は事業者にとって大きなメリットですが、同時に新たな落とし穴を生んでいます。「届出だけでいい」という認識が先行するあまり、「変更予定日の3日前までに事前届出をしなければならない」という期限管理を忘れてしまうケースが多く見受けられます。
他県への進出では、現地の物件契約・内装工事・スタッフ採用など、国内移転以上に奔走する事項が多くなります。その忙しさの中で届出期限を見落とし、いざオープンという段階になって「事前届出義務違反」を問われる——こうした事態は珍しくありません。県をまたぐ移転・新設であっても、厳格な期限管理は絶対に欠かせないことを覚えておいてください。
4. 複数店舗がある場合に使える「届出窓口の一元化」特例
複数の営業所を展開している事業者では、A店の名称変更・B店の移転・C店の管理者変更が同時期に重なることも珍しくありません。
原則として、変更届は「その営業所の所在地を管轄する警察署」に提出しなければなりません。店舗ごとにそれぞれの警察署へ出向くとなれば、経営者や法務担当者にとって膨大な時間と労力のロスになります。
しかし、古物営業法施行規則には、こうした負担を合理的に軽減するための特例が設けられています。
古物営業法施行規則第5条第3項(抜粋) 「法第七条第一項の規定により公安委員会に届出書を提出する場合(中略)においては、その営業所又は古物市場(二以上の営業所又は二以上の古物市場を有する者にあっては、当該営業所又は古物市場のうちいずれか一の営業所又は古物市場)の所在地の所轄警察署長を経由して、当該変更の日から3日前までに、1通の届出書を提出しなければならない。」 ※事後届出(第5条第6項)においても同趣旨の規定あり。
カッコ書きの部分がポイントです。複数の営業所を持つ場合、「いずれか1か所」の管轄警察署を選んで、そこで全店舗分の変更届を一括して提出(経由)することができます。
たとえば愛知県内に名古屋・豊田・岡崎の3店舗を展開している法人が、各店舗で同時期に変更手続きを行う場合、3つの警察署を個別に回る必要はありません。最も来署しやすい「名古屋店の管轄警察署」に全店舗分をまとめて提出するだけで、適法に手続きを完了させることができます。
法律の厳しい期限を確実に守りながら、こうした特例ルールを適切に活用して業務負担を最小化すること——これが、古物営業に精通した行政書士の腕の見せどころです。
5. 混同しやすい「事後届出でよいケース」と「書換申請が必要なケース」
ここまでで、営業所の移転・新設・名称変更には「変更予定日の3日前までの事前届出」が必要だと理解していただけたかと思います。最後に、他の変更手続きとの違いを整理しておきましょう。
役員・管理者変更などは「事後14日以内」
営業所に関する変更以外——役員の交代、管理者の変更、ホームページURLの追加など——については、古物営業法第7条第2項に基づき「事後届出」となります。
古物営業法施行規則第5条第6項(抜粋) 「法第七条第二項の規定により公安委員会に届出書を提出する場合(中略)においては、(中略)当該変更の日から14日(当該届出書に登記事項証明書を添付すべき場合にあっては、20日)以内に、1通の届出書を提出しなければならない。」
同じ「変更届」であっても、内容によって「3日前まで(事前)」か「14日以内(事後)」かが明確に分かれます。この区別を誤ると、意図せず法令違反になりかねません。
本店と店舗が同一の場合——「書換申請」も必要になる
店舗の移転が「店舗機能のみの引越し」であれば、3日前までの変更届だけで手続きは完了します。ところが、法人の本店(本社)と店舗が同じ住所に置かれている場合、話が変わります。
店舗の移転は、同時に「法人の本店所在地の移転」を意味します。この場合、古物商許可証に印字されている住所が変わるため、変更届に加えて「許可証の書換申請」が必要になります。
古物営業法第7条第5項 「古物商又は古物市場主は、第5条第1項第1号から第3号までに掲げる事項(氏名・名称、住所、代表者の氏名・住所、行商の有無)に変更があつたときは、公安委員会に、許可証の書換えを受けなければならない。」
具体的には、法務局での本店移転登記が完了した後、古い許可証を警察へ返納し、手数料(1,500円)を納付して新しい許可証への書換申請を行う必要があります。
「3日前に変更届を出したから手続きは完了した」と安心していると、後日の立入検査で「許可証の住所が旧住所のままです。書換申請義務違反です」と指導されるケースがあります。本店移転を伴う場合は、変更届と書換申請の両方が必要である点を忘れないでください。
まとめ
本記事でお伝えした内容を整理します。
① 事前届出の絶対ルール 営業所の新設・移転・名称変更・廃止は、事後報告ではなく、必ず「変更予定日の3日前まで」に届け出なければなりません(古物営業法第7条第1項・古物営業法施行規則第5条第3項)。
② 「中3日」と土日祝の前倒し計算 「3日前」とは提出日と変更予定日の間に丸3日間を空けることを意味します(中3日)。提出期限が土日・祝日に当たる場合は、前の平日に必ず前倒しして提出する必要があります。
③ 他県への進出も「3日前ルール」は同じ 令和2年4月の法改正により、他県への営業所移転・新設は変更届のみで可能になりましたが、「3日前の事前届出義務」は変わりません(古物営業法第7条第1項)。
④ 複数店舗は「一括届出」の特例を活用 二以上の営業所を持つ事業者は、いずれか1か所の管轄警察署で全店舗分の変更届を一括して提出できます(古物営業法施行規則第5条第3項)。
⑤ 本店移転を伴う場合は「書換申請」も必須 本店と店舗が同一住所の法人が移転する場合は、変更届に加えて許可証の書換申請が必要です(古物営業法第7条第5項、手数料1,500円)。
「新店舗のオープン日が決まっているが、いつまでに警察へ行けばよいか逆算できない」「他県への移転手続きが複雑で、自分で対応する時間がない」「複数店舗の変更届を、特例を使って一括でスムーズに処理してほしい」
こうしたお悩みは、ぜひ三澤行政書士事務所へご相談ください。当事務所は御社の「社外法務部」として、スケジュール逆算から必要書類の作成、警察署での窓口対応まで、ワンストップで対応いたします。経営者の皆様が安心して新店舗のオープン準備に集中できるよう、全力でサポートいたします。
面倒な古物商の許可申請や変更手続きはプロに丸投げ!
自社のビジネスに合わせた最適なスキーム構築から、複雑な法定書類の作成、警察署での面倒な手続きまで、行政書士がワンストップで代行いたします。
まずは「サポート内容と料金」をご確認いただき、お気軽にご相談ください!