「湿田で作業しにくいので、土を入れてかさ上げしたい。農地転用の許可は必要?」
「建設会社から、『残土を無料で入れて田んぼを畑にしてあげる』という話が来ている。受けても大丈夫?」

農業者や農地の所有者の方から、こうしたご相談をいただきます。

農地に土を入れる盛土やかさ上げは、「農地をよりよくする工事」なのか、「農地を農地以外のものにする行為(転用)」なのかで、扱いがまったく変わります。また、近年は不適切な盛土への社会的な関心も高まっています。安易に残土を受け入れると、思わぬトラブルに巻き込まれかねません。

この記事では、国の通知と、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)に沿って、次の点を解説します。

  • 盛土をしても農地のままとなる場合
  • 農地改良届の要件と手続き
  • 青地(農用地区域)での開発許可の扱い

国の考え方:盛土をしても「耕作できる状態」なら農地

令和5年12月の通知で明確化

農林水産省は、令和5年12月25日付けの事務連絡「農地に盛土等の行為を行った場合の農地法等の取扱いについて」で、盛土をした農地の扱いを明確にしました。

「農地」とは、耕作の目的に供される土地のことをいい、(中略)「その土地の現況によって判断する」と規定しており、農地に盛土等の行為を行った場合であっても、引き続き耕作の目的に供される土地は、農地に該当します。(農地に盛土等の行為を行った場合の農地法等の取扱いについて)

この通知のきっかけは、令和5年の地方分権改革に関する提案です。宮城県などが「施設園芸のために耕作用の土を1m程度盛り土して栽培する土地は農地か」という点の明確化を求め、国は「耕作用の土を1メートル程度盛り土して農作物の栽培を行っている土地は、農地です」と回答しました(令和5年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項 管理番号61)。

その結果、「令和5年の地方からの提案等に関する対応方針」(令和5年12月22日閣議決定)に、次の内容が盛り込まれています。

農地については、盛土等の行為を行った場合であっても、耕作可能な状態を保ったまま農作物を栽培している土地は、農地に該当することを明確化し、地方公共団体に令和5年度中に通知する。

ポイントは「耕作可能な状態を保ったまま栽培している」こと

チェック:盛土後も農地とされるための考え方

  • 盛土をした後も、引き続き耕作の目的に供されていること
  • 耕作可能な状態が保たれていること(耕作に適した土であること)
  • 実際に農作物を栽培していること

逆にいえば、盛土をした結果、耕作に適さない状態になったり、栽培されずに土の置き場になっているような場合は、農地とはいえません。その場合は、無断で農地を農地以外のものにした(違反転用)と判断されるおそれがあります。


「農地改良」と「転用」の線引き─ 愛知県の農地改良届

では、実務上どこまでが「農地をよくする工事(農地改良)」として認められるのでしょうか。愛知県では、「農地改良の取扱指針」(平成15年11月19日 15農振344 愛知県農林水産部長)に基づき、農地改良届という手続きを定めています(愛知県ハンドブック 10 農地改良届関係)。

農地改良の定義(3つの要件すべてを満たすこと)

愛知県ハンドブックは、農地改良を「農地の生産力を増強する目的で行われるもの」とし、次の要件をすべて満たすものとしています。

No.要件
1農地所有者又は耕作者の意思により行うもの(請負による場合も含む)
2耕作に適する土(廃棄物処理法上の廃棄物を除く)を用いて埋立て・盛土する行為、又は土壌を掘削(原則60cm以内)して、環境汚染がなく作物の生育に支障のない土壌・堆肥等を投入する行為
3耕作に支障がない時期(主作物の収穫後から作付けの間)に、短期間(3か月以内)で行うもの

そして、次の一文が付いています。

なお、上記要件に該当しないものは農地法の規定による手続きを行うこと。(愛知県ハンドブック 10 第1)

3か月を超える工事、深い掘削、建設残土など耕作に適さない土の搬入などは、農地改良ではなく、農地転用(一時転用を含む)の手続きが必要になります。一時転用については「工事ヤード・仮設資材置場としての農地の一時転用」で解説しています。

手続きの流れ

  1. 事業実施前に、農地改良届出書(別紙様式1)と添付書類を農業委員会に提出
  2. 工事を実施(3か月以内)
  3. 事業が完了したら、速やかに事業完了届出書(別紙様式2)を提出(現況写真を添付)

提出部数は、届出書・完了届とも1部です。

添付書類

No.書類備考
①位置図土地に不案内な人でもたどり着ける程度
②土砂搬入・排出経路図位置図に記入してもよい
③造成計画概略図、配水計画概略図造成方法・配水方法を示す
④産業廃棄物で埋立てしない旨の誓約書届出者と請負業者の連名で作成
⑤所有者の同意書借りている人(耕作者)が行う場合
⑥土地改良区の協議済書土地改良事業の受益地の場合

届出書の記入例から見るポイント

愛知県ハンドブックの記入例では、次のような内容が記載されています。

  • 農地改良を必要とする理由:「届出地にイチゴのハウスを設置するため」
  • 工事の内容:施工業者、埋立土の種類(山土など)、埋立土の採取場所(どこの山から採るか)、改良の種類(湿田のかさ上げ、田畑転換など)
  • 被害防除措置:「隣接する水田及び水路との境界には鉄筋コンクリートによる土留めを設け、土砂の流出や崩壊を防除します」
  • 作物作付計画の概要:ハウスイチゴ 1,200㎡

どこから、どんな土を、どうやって運び込むかを具体的に示すことが求められています。


「無料で残土を入れてあげる」話には要注意

冒頭のご相談のように、建設業者などから「残土を入れて農地を良くしてあげる」と持ちかけられるケースがあります。

国の「農地法の運用について」は、違反転用の防止について、産業廃棄物等の投棄による違反転用に触れています。そして、都道府県等の環境担当部局や地元警察との連携により、早期発見・早期是正に努めるよう求めています(「農地法の運用について」第2の7(1)ア(エ))。

地主さんが確認すべきポイント

  • 入れる土は耕作に適した土か(建設廃材、がれき、汚泥などが混じっていないか)
  • 土の発生場所・搬入経路が明らかになっているか
  • 工期は短期間か(何か月も土が積まれたままになっていないか)
  • 工事後、実際に耕作できる状態になり、栽培を続けられるか
  • 農業委員会に届出(農地改良届など)が出されているか

農地改良の名目で耕作に適さない土砂が大量に持ち込まれ、農地として使えなくなれば、それは違反転用の問題になります。自分の土地で起きたことである以上、所有者として是正への対応に関わらざるを得なくなります。違反転用への対応については「無断転用が見つかったら?追認許可・原状回復命令・行政代執行・公表の流れ」をご覧ください。


青地(農用地区域)での盛土─ 農振法の「開発行為」に注意

盛土は農振法の「土地の形質の変更」に当たる

農地法とは別に、農用地区域(青地)では農振法の開発行為の制限がかかります。

「農業振興地域制度に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)は、開発行為のうち「土地の形質の変更」の例として、切土、掘削、盛土、物件の集積等により土地の物理的形状を変更する行為を挙げています(ガイドライン 第19の1(6))。農用地区域内で開発行為をする場合は、原則として都道府県知事等の許可が必要です(農振法第15条の2第1項)。

ただし、用途を変えずに耕作を続けるなら許可不要

令和5年12月の通知は、この点についても次のように整理しています。

農用地区域内の農地において盛土を行う行為は、原則として、「農業振興地域制度に関するガイドライン」第19の1のとおり、「土地の形質の変更」に該当する行為となり、農業振興地域の整備に関する法律第15条の2第1項の規定により都道府県知事等の許可を受ける必要があります。ただし、当該行為後においても、その土地の用途が変更されず、引き続き耕作の目的に供される土地である場合は、農業振興地域の整備に関する法律施行規則第36条第2号ロの規定により当該許可が不要となります。(農地に盛土等の行為を行った場合の農地法等の取扱いについて)

農振法施行規則第36条第2号ロは、「現に農用地利用計画において指定した用途に供されている土地において行う行為で、その土地の用途の変更を伴わないもの」を許可不要としています。ガイドラインも、「現に水田として利用されている土地において行う、田畑転換を行うための暗きょの設置、盛土等の行為」がこれに含まれるとしています(ガイドライン 第19の3(5)②)。

ケース農振法の開発許可
青地の農地で、耕作を続けるための盛土(用途は農地のまま)不要(規則36条2号ロ)
青地で、盛土して農地以外の用途に使う必要(農地法の転用許可を受けた場合は、その目的に沿った行為なら不要:農振法15条の2第1項3号)

まとめ

  • 盛土をしても、耕作可能な状態を保ったまま農作物を栽培している土地は農地(令和5年12月25日 国の通知)
  • 愛知県では、所有者・耕作者の意思、耕作に適する土(廃棄物不可)、掘削60cm以内、収穫後から作付けまでの3か月以内の工事を「農地改良」とし、事前の農地改良届と完了届を求めている
  • 要件を外れる盛土は、農地転用(一時転用を含む)の手続きが必要
  • 「無料で残土を入れる」話は要注意。耕作できなくなれば違反転用
  • 青地の盛土も、用途を変えず耕作を続けるなら農振法の開発許可は不要

盛土やかさ上げは、農地の条件をよくする有効な手段である一方で、手続きを誤ると違反転用や周辺とのトラブルにつながります。当事務所では、計画内容が農地改良の範囲に収まるかの確認、届出書類の作成、必要な場合の転用許可申請までサポートします。


参考資料

  • 農地法(令和7年6月1日施行版)第2条第1項、第4条、第51条
  • 農林水産省 事務連絡「農地に盛土等の行為を行った場合の農地法等の取扱いについて」(令和5年12月25日)
  • 令和5年 地方分権改革に関する提案募集 提案事項(管理番号61)、令和5年の地方からの提案等に関する対応方針(令和5年12月22日閣議決定)
  • 「農地法の運用について」の制定について 第2の7
  • 農業振興地域の整備に関する法律(令和7年6月1日施行版)第15条の2、同法施行規則第36条
  • 農業振興地域制度に関するガイドライン 第19
  • 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)10 農地改良届関係