「親の代に、許可を取らずに畑を砂利敷きの駐車場にしていたことが分かった」
「農業委員会から、『無断転用なので是正してください』という通知が届いた」
「購入を検討している土地が、実は無断転用された農地らしい」

このような無断転用(違反転用)に関するご相談は、決して少なくありません。

農地を許可なく農地以外のものにすることは、農地法第4条・第5条に違反します。当サイトの「【初心者向け】農地法とは?罰則まで行政書士がわかりやすく解説」では罰則を中心にご紹介しました。この記事では、違反が見つかった後に実際にどのような手続きで是正が進むのかに焦点を当てます。

国の「農地法の運用について」(以下「運用通知」)と「農地法関係事務処理要領」(以下「事務処理要領」)に沿って、次の点を解説します。

  • 違反転用が発覚してから処分までの流れ
  • 令和6年改正で新設された「公表」制度
  • 事後に許可を受ける「追認許可」の考え方

違反転用とは?─ 処分の対象になる人

農地法第51条第1項は、都道府県知事等が、次の者(違反転用者等)に対して、許可の取消し、条件の変更、工事の停止、原状回復その他違反を是正するため必要な措置を命ずることができると定めています。

  1. 第4条第1項・第5条第1項に違反した者(無許可で転用した人)、またはその一般承継人
  2. 許可に付した条件に違反している者
  3. 1・2の者から工事を請け負った者やその下請人
  4. 偽りその他不正の手段により許可を受けた者

運用通知は、2の「許可に付した条件に違反している者」について、許可を受けた者の一般承継人(相続人など)は含まれるが、特定承継人(土地を買った人など)は含まれないと解しています(運用通知 第2の7(2)イ)。

罰則もある

無許可の転用や、原状回復命令への違反には罰則があります。

違反罰則
4条・5条許可を受けずに転用した3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(農地法第64条第1号)
51条の命令に違反した同上(同第3号)
法人の場合(上記のうち4条・5条関係、命令違反)1億円以下の罰金(同第67条第1号)

事務処理要領は、違反転用者等が指導に従わない場合、検察官又は司法警察員への告発を検討するとしています(事務処理要領 第4の7(1)イ(イ))。


発覚から処分までの流れ

ステップ1:農業委員会による把握・報告

運用通知は、農業委員会に対し、日ごろから農地パトロールを行い、違反転用に関する情報収集体制を整えるよう求めています(運用通知 第2の7(1)イ)。

農業委員会は、違反転用を知ったときは速やかに事情を調査し、都道府県知事等に報告書を提出します(事務処理要領 第4の7(1)ア(ア))。必要があれば、第51条による命令などの措置を講ずるよう要請することもできます(農地法第52条の4)。

ステップ2:是正指導

報告を受けた都道府県知事等は、必要に応じて人工衛星等による調査や実地調査を行い、違反転用者等に対し、期限を定めて是正するよう指導します(事務処理要領 第4の7(1)イ(ア)a)。

ステップ3:書面による勧告

指導に応じない場合は、工事その他の行為の停止等を書面で勧告します(同b)。

ステップ4:処分・命令(聴聞・弁明の手続を経て)

勧告に従わない場合は、農地法第51条第1項による処分又は命令が検討されます。処分・命令をしようとする場合は、行政手続法に基づく聴聞又は弁明の手続が取られます(同c)。

処分・命令の内容は、次の事情を総合的に考慮して決められます(事務処理要領 第4の7(1)イ(ウ)、運用通知 第2の7(2)ア)。

  • 違反転用に係る土地の現況、周辺の土地利用の状況
  • 転用後にその土地に関して形成された法律関係
  • 転得者が、不正に許可を受けた者から事情を知って取得したか
  • 過去に違反転用をしたことがあるか
  • 是正勧告に従わないと思われるか

運用通知は、農用地区域(青地)内の土地については、一般的に「特に必要がある」と認められる(=処分・命令を行う)と解されるとしています(運用通知 第2の7(2)ア)。事務処理要領も、青地の場合は、特段の事情がない限り処分・命令を行うことが適当としています。

処分書・命令書は、配達証明郵便で送付することが適当とされています。

ステップ5:履行の確認・督促

命令を受けた違反転用者等が履行を完了したときは、農業委員会を経由して書面で届け出るよう指導されます。履行が遅れている場合は、理由と履行状況の報告を求められ、文書で督促されます(事務処理要領 第4の7(1)ア(エ)〜(カ)、ウ)。


【令和6年改正】命令に従わない場合の「公表」

新設された公表制度

令和6年の農地法改正で、原状回復等の命令に従わない者を公表できる仕組みが設けられました。

都道府県知事等は、第1項の規定により原状回復等の措置を講ずべきことを命ぜられた違反転用者等が、当該命令に係る期限までに正当な理由がなくて当該命令に従わなかつたときは、その旨及び当該命令に係る土地の地番その他必要な事項を公表することができる。(農地法第51条第3項)

公表の内容・方法

事務処理要領は、公表について次のように定めています(第4の7(1)イ(オ))。

  • 公表する事項:命令に従わなかった旨、違反転用に関係する土地の所在等、違反転用の内容、命令の内容、命令を受けた者の氏名(法人は名称と代表者名)
  • 方法:ホームページや公報等
  • 公表した場合は、違反転用者等と農業委員会に連絡。開発許可がされた土地なら、開発許可権者にも連絡

「正当な理由」の例

公表の要件である「正当な理由」について、事務処理要領は次の例を挙げています。

原状回復等の措置を講ずるため、その工事等に係る契約を事業者との間で行っているものの、事業者の都合(資材不足、人員不足等)で期限までに工事が間に合わなかった場合など(事務処理要領 第4の7(1)イ(オ))

命令に従う意思をもって具体的に動いていることが分かる状況であれば、正当な理由として考慮される可能性があります。命令を受けたら、放置せず、是正の段取りを記録に残しながら進めることが大切です。

公表の狙い

農林水産省の改正法説明資料は、公表の効果として次の点を挙げています(令和6年7月、p.5)。

  • 違反者が命令を履行すること
  • 違反転用地の第三者への権利移動の防止
  • 規定があることによる違反転用そのものの抑止

行政代執行と費用の徴収

都道府県知事等が自ら原状回復を行う場合

農地法第51条第4項は、次のような場合に、都道府県知事等が自ら原状回復等の措置を行う(行政代執行)ことができると定めています。運用通知は、各号の具体例を次のように示しています(運用通知 第2の7(3))。

  • 違反転用者等を確知できないとき(例:土地所有者に無断で転用され、所有者に確認しても違反者が分からない、違反業者がすでに実態のない会社になっている)
  • 緊急に原状回復を行う必要があるとき(例:建設残土が撤去されず、台風等で流出して周辺の営農条件に著しい支障が生ずるおそれがある)
  • 命令を受けた者が履行しないとき など

費用は違反者から徴収される

代執行に要した費用は、違反転用者等から徴収されます。行政代執行法の規定を準用し、実際に要した費用の額と納付期日を定めた文書で納付が命じられます。期日までに納付されない場合は、国税滞納処分の例により徴収することができます(運用通知 第2の7(4)、農地法第51条第6項)。

違反者の所在が不明な場合でも、公示送達で財産を差し押さえ、公売して費用に充てることができるとされています。


「追認許可」─ 事後に許可を受けて適法化する

事後の許可申請は可能

すでに転用してしまった土地について、事後に4条・5条の許可を申請することがあります。実務上「追認許可」と呼ばれるものです。

愛知県では、無断転用の場合の申請について、次のように記載しています。

  • 事業の操業期間の欄には、申請地の利用の状況が申請内容のとおりとなった日を記入する
  • この場合、許可の効力は許可日からであり、転用時にさかのぼらない(将来に向かって適法化)
  • 工事計画の欄は、実際に転用行為を行った期間を記入する
  • 添付書類として始末書が必要(チェックリスト25)
  • 転用行為完了後の工事完了報告は不要(すでに転用行為を終えている追認許可案件は除く)
  • 追認許可処分は、願いによる取消しの対象にならない

ただし、許可されるとは限らない

ここで大切なのは、運用通知の次の一文です。

違反転用に係る農地について、仮に法第4条第1項又は第5条第1項の許可の申請が行われれば当該許可をすることができるような場合であっても上記と同様の取扱いとなり、原状回復を求める必要性について検討を行う必要があることに変わりはないことに留意すること。(運用通知 第2の7(1)ア(ウ))

つまり、「許可基準を満たしているから、事後に申請すれば済む」とは限りません。原状回復を求めるかどうかは別に検討される、というのが国の考え方です。特に青地や第1種農地など本来許可されない農地は、原状回復を求められる可能性が高いと考えておくべきです。


違反転用地は「非農地証明」も受けられない

「もう何年も駐車場として使っているから、非農地として扱ってもらえないか」というご相談もあります。

しかし運用通知は、農業委員会が農地に該当するかどうかを判断する際、対象地が4条・5条に違反すると認められる場合は、農地に該当するか否かの判断を行わないとしています(運用通知 第4(3)イ)。違反転用是正のための手続きに進むことになります(同(5))。

愛知県の現況証明の基準でも、第51条の処分の対象となった土地について、処分を受けた者による願出は証明の対象外とされています(愛知県ハンドブック 6 現況証明関係)。また、駐車場や資材置場は原則として現況証明の対象になりません。

現況証明については「家が建っている「登記は田・畑」の土地の現況証明の取り方」をご覧ください。


違反転用地を「買う」側の注意点

  • 許可条件違反の処分は特定承継人に及ばないと解されている(運用通知 第2の7(2)イ)一方で、処分の判断では「転用後に形成された法律関係」「転得者が事情を知って取得したか」が考慮される
  • 令和6年改正の公表制度は、違反転用地の第三者への権利移動を防ぐことを狙いの一つにしている

「安く買えるから」と違反転用地に手を出すのは大きなリスクです。購入前に、農地法上の許可の有無、農業委員会での扱いを必ず確認しましょう。


まとめ

  • 違反転用は、農業委員会の把握 → 是正指導 → 書面勧告 → 聴聞・弁明 → 処分・命令の流れで是正が進む
  • 無許可転用・命令違反には3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)
  • 令和6年改正で、原状回復命令に正当な理由なく従わない者の氏名・地番等を公表できるようになった
  • 違反者が不明な場合や緊急時は行政代執行。費用は違反者から国税滞納処分の例で徴収
  • 事後の許可(追認許可)は将来に向かって適法化するものだが、許可基準を満たしていても原状回復を求められることがある
  • 違反転用地は非農地判断・現況証明の対象外

参考資料

  • 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条、第5条、第51条、第52条の4、第64条、第67条
  • 「農地法の運用について」の制定について 第2の7、第4
  • 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の7(1)(2)
  • 農林水産省経営局・農村振興局「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律について」(令和6年7月)
  • 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)1 農地法第4・5条関係、3 工事完了報告関係、6 現況証明関係、9 取消関係、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」