こんにちは、行政書士の三澤です!

「農地転用の許可を取った後、テナントの都合で建物の配置を変えることになった」
「許可を受けた会社が事業を続けられなくなった。別の会社が引き継いで、違う施設を建てたいと言っている」

開発事業者の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。

農地転用の許可は、申請書に記載した事業計画に対して与えられるものです。許可には「事業計画に従って事業の用に供すること」という条件が付いています(農地法関係事務処理要領(以下「事務処理要領」)第4の1(6)ウ)。そのため、許可後に計画を勝手に変えることはできません。変更したい場合は、事業計画変更の承認を受ける必要があります。

この記事では、事務処理要領と、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)に沿って、次の点を解説します。

  • 事業計画変更承認が必要になる場面
  • 承認の要件
  • 手続きと必要書類

計画を勝手に変えるとどうなる?

許可後に、申請した事業計画と違う内容で工事をしたり、違う用途に使ったりすると、許可条件違反になります。許可条件に違反している者は、農地法第51条第1項第2号により、許可の取消し、条件の変更、工事の停止命令、原状回復命令などの処分の対象になりえます。

転用許可の指令書にも、事業計画(用途、施設の配置、着工・完工の時期、被害防除措置等を含む)に従って事業の用に供しないときはこうした処分があることが、注意事項として記載されます(事務処理要領 第4の1(6)オ)。

「建物の位置を少しずらしただけ」「用途を少し変えただけ」でも、許可の前提になった計画と違えば問題になりえます。変更が生じたら、工事の前に許可権者に相談するのが鉄則です。


事業計画変更承認の2つのパターン

事務処理要領は、事業計画の変更を次の2つの場面に分けて定めています。

パターン場面承認の要件
① 転用目的の達成が可能な場合計画を一部変更すれば、当初の転用目的を実現できる(配置・規模・工期の変更など)下記の④⑤⑥
② 許可目的の達成が困難な場合当初の目的の達成が困難で、転用目的そのものを変える、または別の事業者(承継者)が引き継ぐ下記の①〜⑥すべて

(事務処理要領 第4の7(3)エ・オ、愛知県ハンドブック 4 農地転用許可後の事業計画変更承認関係)


パターン①:転用目的の達成が可能な場合

許可権者が事業計画の変更を指導した事案や、転用事業者が「事業計画等を変更すれば転用目的を実現できる」として変更を希望する事案です。

この場合は、次の3つの要件をすべて満たせば承認されます(愛知県ハンドブック 4の2(1)、事務処理要領 第4の7(3)オ(ア))。

チェック:パターン①の承認要件
④ 変更後の転用事業が、その事業計画に従って実施されることが確実と認められること
⑤ 変更後の転用事業が周辺地域の農業等に及ぼす影響が、変更前と同程度又はそれ以下であること
⑥ 変更後の転用事業が、農地法の許可基準により許可相当と認められること

「変更後の計画でも、改めて許可を申請したら許可が出る内容か」が問われる、と考えるとイメージしやすいでしょう。

工事の遅れと事業計画の変更

工事が大幅に遅れていると、許可権者から事業計画どおりに事業を行うよう指導・勧告を受けることがあります。ただし事務処理要領は、「許可申請書に記載された事業計画の変更を行えば、当初の転用目的を実現する見込みがあると認められるもの」については、勧告に代えて事業計画の変更の手続をとらせるよう指導することが適当としています(第4の7(3)イ(イ))。

工事の遅れや報告については「農地転用許可のあとにやること:工事進捗報告・完了報告と定期報告」をご覧ください。


パターン②:許可目的の達成が困難な場合

どんな場面か

許可後の促進措置(指導・勧告)を講じても、なお許可目的の達成が困難と認められる事案です。そのうえで、転用事業者が許可の目的の変更を希望するとき、または転用事業者に代わってその土地の転用を希望する者(承継者)があるときに、この手続きが使われます(愛知県ハンドブック 4の1)。

事務処理要領では、この手続きは、許可の取消し等の処分が困難又は不適当と認められる場合に用いるものと位置付けられています(第4の7(3)エ)。

承認の6要件

次のすべてに該当するときに承認されます(愛知県ハンドブック 4の1(1)、事務処理要領 第4の7(3)エ(ア))。

チェック:パターン②の承認要件
① 許可の取消し処分を行っても、その土地が旧所有者によって農地として効率的に利用されるとは認められないこと(転用事業者が借地で事業をしている場合は所有者)
② 許可目的の達成が困難になったことが、転用事業者の故意又は重大な過失によるものでないこと
③ 変更後の転用事業が、変更前と比べて同程度又はそれ以上の緊急性及び必要性があること
④ 変更後の転用事業が、事業計画に従って実施されることが確実であること
⑤ 変更後の転用事業が周辺地域の農業等に及ぼす影響が、変更前と同程度又はそれ以下であること
⑥ 変更後の転用事業が、農地法の許可基準により許可相当であること

ポイントになる要件

①「許可を取り消しても農地に戻らない」
すでに造成が進んでいるなど、許可を取り消しても元の所有者が農地として使うとは考えにくい状況であることが前提です。

②「故意・重過失でない」
「最初から別の用途に使うつもりだった」ような場合は承認されません。経済情勢の変化、取引先の撤退など、事業者の責めに帰さない事情を説明する必要があります。

③「同程度以上の緊急性・必要性」
変更後の事業が、元の事業に比べて緊急性・必要性が劣るものであってはなりません。

承継者がいる場合は連署で願い出る

別の事業者が引き継ぐ場合は、転用事業者と承継者の連署で事業計画変更の願い出を行います(愛知県ハンドブック 4の1(1))。

改めて5条許可が必要になる場合

承認を受けた後、承継者がその土地の権利(所有権・賃借権等)を取得する必要がある場合は、改めて農地法第5条の許可申請手続を行います(愛知県ハンドブック 4の1(3)、事務処理要領 第4の7(3)エ(ウ))。

注意
「許可済みの土地だから、そのまま売買すればよい」とはなりません。事業計画変更の承認と、承継者への権利移転の5条許可の2段階が必要になる場合があります。


手続きと必要書類

提出先

事業計画変更承認願い(願出書)は、農業委員会を経由して都道府県知事(許可権者)に提出します。

添付書類(愛知県の様式)

  • チェック:主な添付書類
    1. 法人の場合は、定款・寄附行為又は法人の登記事項証明書(許可申請時から変更がなければ省略可)
    2. 土地の登記事項証明書
    3. 土地の地番を表示する図面
    4. 位置及び付近の状況を表示する図面(縮尺2,500分の1〜3,000分の1程度)
    5. 変更後の建物・施設の面積、配置、施設間の距離を表示する図面(縮尺100分の1〜500分の1程度)
    6. 変更後の事業に関して他法令の許可等を了しているときは、その旨を証する書面
    7. 水利権者・漁業権者・土地改良区等の同意書又は意見書の写し(変更前に同意等を得ている場合、変更後に新たに必要な場合)
    8. 変更前の事業計画に地方公共団体が財政補助等で関与している場合は、その地方公共団体の長の意見書
  • ※転用事業者が自ら転用目的の変更を申請する場合は、2〜4の添付は不要

事務処理要領では、このほか、転用事業者が旧所有者に対して雇用予約や施設の利用予約などの債務を負っている場合の取決め書・旧所有者の同意書や、関係地元民の意向とそれに対する申請者の見解なども添付書類に挙げられています(第4の7(3)エ(イ))。

審査と結果

許可権者は、申請書の内容を審査し、必要に応じて現地調査等を行ったうえで、承認・不承認を決定し、申請者と農業委員会に通知します(事務処理要領 第4の7(3)エ(イ)d)。


計画の「一部」をやめる場合は取消し願いとセットで

許可を受けた土地の一部を使わなくなり、その部分を農地に戻したい場合は、「取消し願い及び事業計画変更願い」を提出する方法があります(愛知県ハンドブック 9)。計画そのものを中止する場合の手続きは、「農地転用・3条許可を取り消したい(計画中止)ときの「取消し願い」」で解説しています。


まとめ

  • 転用許可は事業計画に対して与えられる。許可後の計画変更は、事業計画変更の承認が必要
  • 無断で変更すると許可条件違反として、取消し・原状回復命令等の対象になりうる
  • 目的達成が可能な場合(配置・規模等の変更):実施の確実性、周辺への影響が同程度以下、許可基準に適合の3要件
  • 目的達成が困難な場合(目的変更・承継者への引継ぎ):上記に加え、取り消しても農地に戻らない、故意・重過失でない、同程度以上の緊急性・必要性の6要件
  • 承継者が権利を取得する場合は、改めて5条許可が必要

事業計画の変更は、「どこまでが軽微で、どこからが承認の対象か」の判断が難しく、許可権者との事前協議が欠かせません。当事務所では、変更内容の整理から願出書の作成、関係者の同意書の取りまとめまでサポートします。


参考資料
・ 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第7項、第5条、第51条
・ 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)ウ・オ、第4の7(3)
・ 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)4 農地転用許可後の事業計画変更承認関係、9 農地法許可(受理)の願いによる取消関係