「農地転用の許可が下りたので、あとは工事をするだけですよね?」

許可が出た直後のお客様から、よくこう聞かれます。実は、農地転用の手続きは許可で終わりではありません。許可には必ず条件が付いていて、工事が終わるまで(場合によっては終わった後も)報告を続ける必要があります。

さらに、令和6年の農地法改正で、この「条件を付けること」が法律上の義務になりました。報告を怠ったり、計画どおりに事業を進めなかったりした場合の処分がしやすくなる方向に、制度が変わっています。

この記事では、農地法、国の「農地法関係事務処理要領」(以下「事務処理要領」)、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)に沿って、次の点を解説します。

  • 転用許可に付く条件
  • 進捗報告・完了報告のタイミングと書き方
  • 報告を怠ったり工事が遅れたりしたときのリスク

法改正で「条件を付けること」が義務になった

改正前と改正後

農林水産省の改正法の説明資料は、改正の内容を次のように整理しています(農林水産省「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律について」令和6年7月、p.5)。

内容
従来転用許可は条件を付けてすることができる。事務処理要領の運用として条件を付けていた
改正後転用許可は、転用行為が完了するまでの間、実施状況について報告することその他の必要な条件を付けてしなければならない

現在の農地法第4条第7項は、次のように定めています(5条許可にも準用)。

第1項の許可は、申請に係る農地を農地以外のものにする行為が完了するまでの間において当該行為の実施状況について農業委員会を経由して都道府県知事等に報告することその他の必要な条件を付けてしなければならない。(農地法第4条第7項)

改正の背景

同資料は、改正の背景となった課題として次の点を挙げています。

  • 営農型太陽光発電等において不適切な事案が見受けられるところ、定期報告を行わない、事業目的どおり事業を行っていないなどの場合は、許可条件違反を厳しく問う必要。
  • 農地法第51条の違反転用(許可条件違反)に係る処分を行った場合は訴訟リスクもあるところ、条件を付けることが義務化されておらず、また、付ける条件の内容が法令上明記されていないことから当該処分を講じにくい。

そのうえで、改正後は「指導や違反転用に係る処分がしやすくなる」と整理されています。「報告は形式的なもの」という時代ではなくなったと考えておきましょう。


転用許可に付く3つの基本条件

事務処理要領は、転用許可に付ける必要な条件として、次の3つを示しています(第4の1(6)ウ)。

チェック:転用許可の基本条件
1. 申請書に記載された事業計画に従って事業の用に供すること
2. 許可に係る工事が完了するまでの間、許可の日から3か月後及びその後1年ごとに工事の進捗状況を、また、工事が完了したときはその旨を、それぞれ農業委員会を経由して遅滞なく報告すること
3. (一時転用の場合)申請書に記載された工事の完了の日までに農地に復元すること

許可指令書には、「事業計画に従って事業の用に供しないときは、農地法第51条第1項の規定により許可を取り消し、条件を変更し、工事の停止を命じ、原状回復の措置等を命ずることがある」旨の注意事項も記載されます(事務処理要領 第4の1(6)オ)。


報告のタイミングと対象─ 愛知県の例

愛知県ハンドブックは、報告の対象とタイミングを具体的に定めています(3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係)。

工事完了報告(様式1)

区分対象期限添付
永久転用 全ての案件(無断転用の追認許可を除く)工事完了日の翌日から2週間以内 現況写真
一時転用全ての案件農地への復元完了日の翌日から2週間以内現況写真(3,000㎡超の粘土・砂利採取等の掘削案件は覆土の断面写真も)

工事進捗状況報告(様式2)

区分対象タイミング
永久転用転用面積が1,000㎡以上の案件(1つの計画を複数の申請に分けた場合は合計面積) 許可から3か月後、その後1年ごと(3か月後、15か月後、27か月後…)
一時転用全ての案件許可から3か月後、その後1年ごと(復元完了まで)

ポイント
・ 永久転用で1,000㎡未満なら、愛知県の運用では進捗報告は不要で、完了報告のみ
・ 一時転用は面積にかかわらず進捗報告が必要
・ 報告書は、許可を受けた土地のある農業委員会を経由して提出する

報告の対象や様式は都道府県・市町村によって異なることがあるため、許可書の条件と地元の農業委員会の案内を確認してください。


報告書の書き方(愛知県の様式から)

完了報告書(様式1)の記載事項

  • 許可年月日・許可番号
  • 転用許可地の所在(複数筆は「○番始め○筆」)
  • 転用目的(「住宅」「内科医院」「駐車場」など)
  • 転用面積(農地・採草放牧地・その他)
  • 工事完了年月日
  • 申請地の現況(配置図・写真を添付)

進捗状況報告書(様式2)の記載事項

  • 許可後何回目の報告か
  • 建設計画(申請時の着工予定・完了予定)
  • 工事進捗状況(「造成中」「造成完了」「建物建築中」など)と進捗率(未着手0%〜完成100%)
  • 遅延理由(計画より遅れている場合)
  • 今後の見通し
  • 申請地の現況写真

様式の注意書きには、「転用工事が許可申請書に記載された事業計画どおり進捗していない場合(遅延又は未着手の場合)は、遅延理由及び今後の見通しを詳細に記述すること」とあります。

実務上のポイント
遅れている場合こそ、理由と見通しを具体的に書きましょう。後述するとおり、遅延が続くと指導・勧告の対象になります。やむを得ない事情(他法令の許可が新たに必要になった、埋蔵文化財が見つかった、災害など)がある場合は、その事実を記録に残しておくことが重要です。

行政書士への委任

愛知県ハンドブックの委任状の記入例では、行政書士に委任する権限として「許可申請書の作成、申請、補正、取下げ、許可書の受領、許可後の進捗状況報告及び完了報告に関する権限」が挙げられています。許可後の報告まで含めて専門家に任せることもできます。


資材置場・駐車場は「完了後3年間、6か月ごと」の報告も

建築物を伴わない資材置場・駐車場等の恒久転用には、上記の基本条件に加えて、次の条件が付けられます。

工事の完了の報告があった日から3年間、6か月ごとに事業の実施状況を報告すること(事務処理要領 第4の1(6)エ(イ)a)

報告や現地確認で、事業計画と違う目的に使われていることが分かれば、農地法第51条第1項第4号(偽りその他不正の手段による許可)に当たるかどうかが確認され、処分が検討されます。詳しくは「資材置場・駐車場として農地を転用するときの審査ポイント」をご覧ください。

営農型太陽光発電では、これとは別に、毎年の栽培実績書・収支報告書の提出が求められます(「営農型太陽光発電の許可要件と毎年の報告義務」参照)。


報告を怠ったり、工事が遅れたりするとどうなる?

① 督促

許可権者は、進捗状況の報告が遅れている場合はその報告を、事業計画どおりに着手していない場合はその理由の報告を、文書で督促します(事務処理要領 第4の7(3)ア(ア))。督促後も報告がなければ、事情聴取や現地調査が行われます。

② 指導・勧告

次の場合は、事業計画どおり事業を行うよう文書で指導され、従わなければ「行わない場合には許可処分を取り消すことがある」旨の勧告を受けます(事務処理要領 第4の7(3)イ(ア))。

  • チェック:指導・勧告の対象となる遅れ
  • 事業計画の着手時期から3か月以上経っても着手していない
  • 事業期間の中間時点で、進捗が計画よりおおむね3割以上遅れている
  • 事業計画の完了時期から3か月以上経っても完了していない

ただし、事業計画を変更すれば当初の目的を実現できる見込みがある場合は、勧告に代えて事業計画の変更の手続をとるよう指導されることがあります。事業計画の変更については「農地転用許可後に事業計画・事業者を変更する「事業計画変更承認」の手続き」をご覧ください。

③ 新たな転用許可が受けにくくなる

勧告を受けた人が、事業計画の過半について工事を完了しない限り、新たに別の転用許可を申請しても、事業実施の確実性に乏しいとして許可しないことが望ましいとされています(事務処理要領 第4の7(3)ウ(ア))。ただし、他法令の許可が新たに必要になった場合、埋蔵文化財の発掘が必要になった場合、非常災害など、本人の責めに帰さない事情がある場合は別です。

「前の案件が止まっている事業者」は、次の案件の許可にも影響が出るという点は、開発事業者にとって大きなリスクです。

④ 許可の取消し・原状回復命令

勧告後も事業計画どおりに進まず、完了の見込みがないと認められるときは、農地法第51条第1項による許可の取消し等の処分が検討されます(事務処理要領 第4の7(3)ウ(イ))。

第51条第1項第2号は「許可に付した条件に違反している者」を処分の対象としています。許可を受けた人の相続人など一般承継人も含まれますが、土地を買った特定承継人は含まれないと解されています(「農地法の運用について」第2の7(2)イ)。


まとめ

  • 法改正で、転用許可には実施状況の報告などの条件を付けることが義務になった(農地法4条7項)
  • 基本条件は、事業計画どおりの利用、許可から3か月後・その後1年ごとの進捗報告、完了報告(一時転用は復元も)
  • 愛知県の運用では、完了報告は完了から2週間以内。進捗報告は永久転用なら1,000㎡以上、一時転用は全件
  • 資材置場等は、完了後3年間・6か月ごとの報告も必要
  • 報告の遅れや工事の遅延は、督促 → 指導 → 勧告 → 許可取消し等につながり、次の転用許可にも影響する

参考資料
・ 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第7項、第5条、第51条
・ 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)ウ・エ・オ、第4の7(3)
・ 「農地法の運用について」の制定について 第2の7
・ 農林水産省経営局・農村振興局「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律について」(令和6年7月)
・ 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係、委任状記入例