「田んぼで米を作りながら、上で太陽光発電をしたい」
「営農型なら第1種農地でもできると聞いたけど、本当?」
営農型太陽光発電(いわゆるソーラーシェアリング)についてのご相談が増えています。
営農型太陽光発電は、農地に支柱を立てて上部にパネルを設置し、下の農地では営農を続けながら発電する仕組みです。支柱の部分について、農地転用の許可が必要になります。
以前は通知(ガイドライン)で運用されていた部分が大きかったのですが、現在は許可基準や添付書類が農地法施行規則に明記されています。また国は、不適切な事案への対応として、毎年の報告や既設の不適切な設備の再許可をしない方針を打ち出しています。
この記事では、農地法施行規則の条文を中心に、次の点を解説します。
- 営農型太陽光発電の定義
- 許可されない場合(許可要件)
- 申請時の添付書類
- 地域計画の区域内での扱い
- 許可後の報告義務
野立ての太陽光発電については「農地に野立て太陽光発電を設置する農地転用の要件と必要書類」で解説しています。
営農型太陽光発電とは?─ 法令上の定義
農地法施行規則第30条第2項は、営農型太陽光発電を次のように定義しています。
農地に簡易な構造で、かつ、容易に撤去できる支柱を立てて、一時的に農地を農地以外のものにし、上部空間に太陽光を電気に変換する設備(以下「営農型太陽光発電設備」という。)を設置し、営農を継続しながら発電を行うこと(農地法施行規則第30条第2項)
ポイントは次の3つです。
- 支柱は簡易な構造で、容易に撤去できるものであること
- 支柱部分を一時的に農地以外のものにする(一時転用)
- パネルの下で営農を継続すること
あくまで主役は営農で、発電は上部空間の活用という位置付けです。下の農地での営農がおろそかになれば、制度の前提が崩れます。
許可されない場合─ 農地法施行規則第47条第6号
営農型太陽光発電の転用許可の基準は、農地法施行規則第47条第6号(5条許可の場合は第57条第6号)に定められています。次のいずれかに当たる場合は、「申請に係る用途に供することが確実と認められない」として許可されません。
| No. | 許可されない場合(要旨) |
|---|---|
| イ | 下部の農地で栽培する農作物の単収が、同じ年産の市町村の平均的な単収と比べておおむね2割以上減少するおそれがある(市町村で栽培されていない作物や生産に時間を要する作物の場合は、申請時の栽培実績書等の単収が見込まれないおそれ)※遊休農地を利用する場合を除く |
| ロ | 遊休農地(農地法第32条第1項第1号)を利用する場合に、下部の農地の全部または一部で営農が行われる見込みがない |
| ハ | 設備の設置により、下部の農作物の品質を著しく劣化させるおそれがある |
| ニ | 都道府県知事等への毎年の栽培実績書・収支報告書が適切に提出されないおそれがある |
| ホ | パネルの角度・間隔等が、農作物の生育に必要な日照に影響を及ぼすおそれがある |
| ヘ | 支柱の高さが地上から2m以上あることなど、農業機械等を効率的に使えるなど、農作業を効率的に行える空間を確保する措置が講じられていない |
| ト | 系統に連系する場合に、電気事業者と連系に係る契約を締結する見込みがない |
| チ | 申請者が、農地法第51条第1項の原状回復等の措置を現に命じられている |
(農地法施行規則第47条第6号イ〜チ)
実務で特に重要な3点
① 単収の「2割減」基準
下の農地の収量が、地域の平均と比べておおむね2割以上減らないことが求められます。パネルで日陰ができる分、どの作物を選ぶか、パネルの配置をどうするかが事業の成否を分けます。
② 支柱の高さ2m以上と作業空間
トラクターやコンバインなど農業機械が効率よく入れる空間が必要です。「2m以上」は例示で、実際に使う機械に応じた高さと支柱間隔を考える必要があります。
③ 毎年の報告を確実に出せるか
報告を適切に出さないおそれがあること自体が不許可事由になっています(ニ)。誰が、どうやって毎年の実績を把握し、報告するのかという体制を最初から考えておくことが大切です。
申請時の添付書類─ 農地法施行規則第30条第2項
営農型の場合は、通常の転用許可申請の添付書類に加えて、次の書類が必要です(農地法施行規則第30条第2項、5条許可の場合は第57条の4第2項)。
- 営農型太陽光発電設備その他必要な設備の設計図
- 下部の農地における栽培計画、収支の見込み等を記載した営農に関する計画
- 設備の設置による営農への影響の見込みと、その根拠として次のいずれかを記載した書類
- イ 市町村内の生産量・品質のデータ
- ロ その作物について知見を有する者の意見
- ハ 申請に先行して下部の農地で耕作する者の栽培実績
※市町村内で栽培されていない作物や生産に時間を要する作物の場合は、ロの書類に加え、試験栽培の実績書またはその作物を栽培する理由書
- 設備を撤去する費用を設置者が負担することを証する書面
- 毎年、栽培実績書と収支報告書を都道府県知事等に提出することを誓約する書面
愛知県ハンドブックでも、「申請に係る事業が営農型太陽光発電を目的とする場合の法定添付書類」として挙げられています。様式については、令和6年3月25日付け5農振第2825号農村振興局長通知「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドラインの制定について」と、令和6年5月27日付け6農振第190号通知を参照するよう示されています(愛知県ハンドブック 添付書類一覧・チェックリスト28)。
「撤去費用の負担」は地主にとっても重要
4の撤去費用の負担は、特に地主から農地を借りて事業を行う場合に重要です。発電事業が終わったとき、支柱や架台を誰の費用で撤去するのかを、許可申請の段階で書面にしておくことが求められます。
地域計画の区域内での扱い─ 「協議の場」での合意
市町村の地域計画の区域内にある農地の転用は、地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがあれば許可されません(農地法施行規則第47条の3)。担い手が位置付けられた農地などが該当しうるため、営農型にとっても大きなハードルになります。
ただし運用通知は、支障に当たらない例として、次の場合を挙げています。
則第30条第2項本文に定める営農型太陽光発電について、「営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドラインの制定について」(令和6年3月25日付け5農振第2825号農林水産省農村振興局長通知)別添2の(2)のクの定めに基づき、協議の場で合意を得た土地の区域内において行うとき(「農地法の運用について」第2の1(2)ウ(イ)ⅲ)
地域計画を話し合う「協議の場」で合意を得た区域内で行う営農型であれば、地域計画の達成に支障を及ぼすものではないと整理されています。
愛知県ハンドブックでも、農業委員会の意見書の記載要領で、営農型の一時転用の場合は次の事項を記載するとしています(1 農地法第4・5条関係 意見書の記載要領)。
- 地域計画の区域外なら「地域計画の区域外」
- 区域内(または指定予定)なら、その旨と「協議の場の開催状況(○月○日開催(合意済)又は予定)」
- 協議の場の状況が分かる別紙様式(必要に応じて議事録等)を必ず添付(令和7年3月18日付け6農振第890号 愛知県農業振興課長通知)
実務上のポイント
地域計画の区域内で営農型を計画するなら、協議の場での合意形成が事実上の前提になります。地元の農業者・農業委員会・市町村との調整を、許可申請よりかなり前から始める必要があります。
許可後:毎年の報告と、転用許可の条件
毎年の栽培実績書・収支報告書
申請時に誓約したとおり、許可後は毎年、下部の農地で栽培する農作物の栽培実績書と収支報告書を都道府県知事等に提出します(農地法施行規則第30条第2項第5号・第47条第6号ニ)。
転用許可に付く条件
農地転用許可には、転用行為の完了までの実施状況の報告など、必要な条件を付けることが法律上義務付けられています(農地法第4条第7項)。一時転用として、許可から3か月後・その後1年ごとの進捗報告や、期限までに農地に復元することなどの条件も付けられます(農地法関係事務処理要領 第4の1(6)ウ)。
国が「営農型」に厳しくなっている背景
農林水産省の令和6年改正法の説明資料は、転用許可後の定期報告を法律上の条件として義務化した背景について、次のように記しています。
営農型太陽光発電等において不適切な事案が見受けられるところ、定期報告を行わない、事業目的どおり事業を行っていないなどの場合は、許可条件違反を厳しく問う必要。(農林水産省「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律について」令和6年7月、p.5)
また、法改正に先立つ「農地法制の見直しの方向性について」(令和5年12月14日 農林水産省経営局・農村振興局)では、次の方針が示されていました。
営農型太陽光発電について、許可基準・提出資料の規定を法令へ明記するとともに、農地法において、農地転用の許可に際し、定期報告を行う等の条件を付けることを義務化し、違反した場合は許可取消しにつながる仕組みを構築する。また、制度の目的・趣旨をガイドラインで明確化し、既設の不適切な営農型太陽光発電については、一時転用許可の再許可時に許可しない。(同 2②)
「下の営農がおろそかな設備は、次の再許可で認めない」という方針が明確に示されています。すでに営農型を運営している方も、下部の営農の状況と毎年の報告を改めて点検しておくことをおすすめします。
農地所有適格法人が営農型を行う場合
農地所有適格法人の要件の一つに「主たる事業が農業であること」があります。国の処理基準では、農業に関連する事業として、法人が転用許可を得て設置した営農型太陽光発電設備による電気の供給が含まれうることが整理されています(「農地法関係事務に係る処理基準について」の法第2条第3項(農地所有適格法人の要件)に関する部分)。法人で営農型に取り組む場合は、適格法人の要件との関係もあわせて確認しましょう。農地所有適格法人については「農地所有適格法人とは?設立の4要件と農地取得のステップ」をご覧ください。
まとめ
- 営農型太陽光発電は、簡易で撤去容易な支柱部分の一時転用。下で営農を継続することが前提
- 許可要件は農地法施行規則第47条第6号に明記:単収2割以上の減少がないこと、支柱の高さ2m以上等の作業空間、日照への配慮、毎年の報告の確実性など
- 添付書類には、設計図・営農計画・営農への影響の根拠・撤去費用負担の書面・毎年の報告の誓約書が必要
- 地域計画の区域内は、協議の場での合意を得た区域で行うことがポイント
- 国は不適切事案への対応を強化。既設の不適切な設備は再許可しない方針
営農型太陽光発電は、発電事業と農業経営の両方を長期にわたって成り立たせる計画が求められる案件です。当事務所では、許可要件の確認、営農計画・添付書類の整理、協議の場に向けた準備、許可後の報告までサポートします。
「ソーラーシェアリングを始めたい」「既設の設備の再許可が心配」まずはご相談ください。
参考資料
- 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第6項・第7項、第32条、第51条
- 農地法施行規則(令和7年7月28日施行版)第30条第2項、第47条第6号、第47条の3、第57条、第57条の4
- 「農地法の運用について」の制定について 第2の1(2)ウ
- 農地法関係事務に係る処理基準について
- 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)ウ
- 農林水産省経営局・農村振興局「農地法制の見直しの方向性について」(令和5年12月14日)
- 農林水産省経営局・農村振興局「食料の安定供給のための農地の確保及びその有効な利用を図るための農業振興地域の整備に関する法律等の一部を改正する法律について」(令和6年7月)
- 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)1 農地法第4・5条関係、添付書類一覧、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」