「自分の畑の一角に農機具を入れる倉庫を建てたい。これも農地転用になるの?」
「牛舎を増築したい。規模が小さければ許可は要らないと聞いたけど本当?」

農業を営む方から、こうしたご相談をよくいただきます。

農地に建物を建てることは、原則として農地転用です(農地法第4条第1項)。ただし、耕作者が自分の農地に設ける小規模な農業用施設については、2アール(200㎡)未満であれば転用許可が不要になる例外があります。

一方で、「2アール未満ならどんな建物でもよい」わけではありません。対象になる人・施設・土地には条件があります。条件を外れると、無断転用として扱われるおそれもあります。

この記事では、農地法施行規則と国の「農地法の運用について」(以下「運用通知」)に沿って、次の点を解説します。

  • 2アール未満の例外が使える条件
  • 対象となる施設・ならない施設
  • 地域計画に関する新しい特例
  • 許可不要を確認してもらう手続き
  • 青地の場合の注意点

原則:農業用施設でも「農地転用」に当たる

農業用倉庫や畜舎は、農業のための施設です。それでも、その敷地は「耕作の目的に供される土地」ではなくなります。そのため、農業用施設を建てることも原則として農地転用になり、農地法第4条の許可が必要です(他人の農地に建てる場合は第5条)。

ただし、農地法第4条第1項第8号は「その他農林水産省令で定める場合」を許可不要としています。これを受けた農地法施行規則第29条に、農業用施設に関する例外が定められています。


例外①:2アール未満の農業用施設(農地法施行規則第29条第1号)

条文

耕作の事業を行う者がその農地をその者の耕作の事業に供する他の農地の保全若しくは利用の増進のため又はその農地(2アール未満のものに限る。)をその者の農作物の育成若しくは養畜の事業のための農業用施設に供する場合(農地法施行規則第29条第1号)

この号には、実は2つの場面が含まれています。

場面面積要件例
① 他の農地の保全・利用の増進のための施設面積要件なしため池、排水路、土留工、防風林、防護柵、かんがい排水施設、農道 等
② 農作物の育成・養畜の事業のための農業用施設 2アール未満畜舎、温室、種苗貯蔵施設、農機具収納施設、農業用倉庫 等

運用通知の説明

運用通知は、この例外を次のように説明しています(第2の1(1)イ(イ)c)。

耕作の事業を行う者がその農地をその者の耕作又は養畜の事業のための農業用施設(農業生産活動に必要不可欠となる畜舎、温室、種苗貯蔵施設、農機具収納施設、農業用倉庫等に限る。)の用に供する場合であって、当該農業用施設の規模が2アール未満であるときには、農地転用の許可を要しないこととしている。この場合において、駐車場、トイレ、更衣室、事務所等であって耕作又は養畜の事業のために必要不可欠なものについても、その規模が2アール未満であれば、農地転用の許可を要しないものに含まれる。

2アール未満の例外が使える条件

条文と運用通知から、条件を整理すると次のとおりです。

  • 1. 耕作の事業を行う者(現に農業を営んでいる人)であること
  • 2. 自分の農地に設けること(「その農地」=耕作の事業を行う者の農地)
  • 3. 自分の耕作・養畜の事業のための施設であること
  • 4. 農業生産活動に必要不可欠な施設であること(畜舎、温室、種苗貯蔵施設、農機具収納施設、農業用倉庫など)
  • 5. 規模が2アール(200㎡)未満であること

対象になるもの・ならないもの

対象になりうる注意が必要・対象外になりうる
農機具庫、農業用倉庫農業と関係のない物置・ガレージ
畜舎、温室(ビニールハウス等)自宅の駐車場
種苗貯蔵施設 住居(農家住宅も含む)
耕作・養畜に必要不可欠な駐車場・トイレ・更衣室・事務所農産物の加工場・直売所・農家レストラン(別の許可基準で判断)

「農業用倉庫」の名目でも、実際には一般の物置や資材置場として使うのであれば、この例外には当たりません。

よくある誤解

注意①:「他人の農地」には使えない
規則第29条は、自分の農地を転用する第4条の例外です。他人の農地を借りて農業用倉庫を建てる場合(5条の場面)には、この2アール未満の例外は定められていません(5条の例外を定める農地法施行規則第53条を参照)。

注意②:「農家でない人」は使えない
「耕作の事業を行う者」が要件なので、農業を営んでいない人が「将来農業をするための倉庫」を建てる場合は対象外です。

注意③:複数の施設を計画しているなら全体像を相談
倉庫や畜舎を複数建てる予定がある場合、2アール未満かどうかの判断のしかたを自己判断するのは危険です。全体の計画を示して、農業委員会に事前に相談しましょう。


例外②:地域計画に位置付けられた認定農業者の農業用施設(規則第29条第4号)

市町村が作る地域計画(農業経営基盤強化促進法第19条)に関連した例外もあります。

市町村が農業経営基盤強化促進法第19条第1項に規定する地域計画に、同条第2項第4号の措置として認定農業者が設置しようとする農業用施設を記載する場合(当該農業用施設を設置することにより、周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずるおそれがないことを市町村又は農業委員会が認めた場合(中略)に限る。)(農地法施行規則第29条第4号・要旨)

市町村が地域計画に、認定農業者が設置する農業用施設を記載した場合です。周辺の営農条件への支障がないことを市町村または農業委員会が認めていれば、面積にかかわらず転用許可が不要になりえます。5条の場面にも同様の規定があります(農地法施行規則第53条第4号)。

ポイント
規模の大きな畜舎や農業用倉庫を計画している認定農業者の方は、市町村の地域計画にその施設を位置付けてもらえるかを、市町村に相談してみる価値があります。なお、指定市町村や権限移譲を受けた市町村以外では、都道府県の意見を聴いた場合に限られるなどの条件があるため、手続きの詳細は市町村に確認してください。


許可不要でも「確認」を受けておくと安心

許可が不要な場合でも、後日「無断転用ではないか」と疑われないよう、農業委員会に確認を受けておく運用があります。

愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)には、「農地法第4・5条の許可届出以外に係る農地転用の確認」の手続きが掲載されています(5 確認関係。昭和57年3月15日 57農管118 愛知県農地林務部長通知に基づくもの)。

確認の手続き(愛知県の例)

  1. 確認を受けようとする者が、「確認願」(2部)を土地のある農業委員会に提出
  2. 農業委員会が現況を確認
  3. 次の要件に当たれば、確認願に奥書して確認書を交付
  4. 転用が農地法第4条第1項ただし書(または第5条第1項ただし書)に該当するものであること
  5. 現に転用がされていること

確認願には、「農地法第4条第1項第8号(農地法施行規則第29条第○号)に該当するものとして農地等の転用がなされたもの」であることを記載します。

添付書類(愛知県の例)

  • 土地の登記事項証明書
  • 現況図
  • 公図の写し(コピー可)
  • 配置図、見取図
  • 現況写真

愛知県の手続きは「現に転用がされている」ことを確認するものなので、施設を建てた後に確認を受ける形になっています。建てる前に、農業委員会に「この計画は許可不要に当たるか」を相談しておくことをおすすめします。確認の仕組みは都道府県・市町村によって異なりますので、地元の農業委員会に確認してください。


2アール以上、または例外に当たらない場合は許可申請

2アール以上の農業用施設や、例外の条件を満たさない場合は、4条・5条の許可申請が必要です。

農業用施設は、原則として転用できない第1種農地・甲種農地でも、例外的に許可されうる施設として位置付けられています。運用通知は、農業用施設として次のものを挙げています(第2の1(1)イ(イ)c(a)ⅰ)。

  • 農業用道路、農業用用排水路、防風林など、農地の保全・利用の増進に必要な施設
  • 畜舎、温室、植物工場、農産物集出荷施設、農産物貯蔵施設など
  • 堆肥舎、種苗貯蔵施設、農機具格納庫など
  • 農業廃棄物処理施設

耕作・養畜に必要不可欠な駐車場、トイレ、更衣室、事務所なども農業用施設に当たります(同ⅳ)。また、農業用施設に附帯して、一定の条件で自家消費用の太陽光発電設備を設ける場合も、農業用施設に該当するとされています(同ⅴ)。

愛知県ハンドブックの事業計画書記入例には、豚舎の拡張(900㎡)を想定した例が掲載されています。現在の飼育状況、規模拡大の理由、他の所有農地ではなく申請地を選んだ理由、農業従事者数、所有農地面積、家畜頭数、既存施設、大型農業機械の保有状況などを記載する形になっています(愛知県ハンドブック 事業計画書記入例(農業施設用))。

また、愛知県ハンドブックのチェックリストでは、農家住宅や農業用倉庫など都市計画法第29条第2項に該当する施設を設置する場合、農林漁業者証明(農地基本台帳)を添付書類としています。


青地(農用地区域)に建てる場合の注意点

農地法の転用許可が不要でも、農振法の規制は別に考える必要があります。

農用地区域(青地)内で建物を建てることは、農振法上の開発行為に当たり、原則として都道府県知事等の許可が必要です(農振法第15条の2第1項)。また、青地の土地は農用地利用計画で用途(農地、農業用施設用地など)が指定されています。建物を建てる場合は、指定された用途との関係が問題になります。

青地に農業用施設を建てる方法(用途区分の変更、開発許可の要否など)は、「青地(農用地区域)に農業用施設を建てる方法:用途区分の変更と開発行為の許可」で詳しく解説しています。


まとめ

  • 農業用施設を建てることも原則は農地転用
  • 耕作者が自分の農地に、自分の農業のため、必要不可欠な施設を2アール未満で設ける場合は、転用許可不要(農地法施行規則29条1号)
  • 必要不可欠な駐車場・トイレ・更衣室・事務所も2アール未満なら含まれる
  • 地域計画に記載された認定農業者の農業用施設は、面積にかかわらず許可不要となる特例がある(同29条4号)
  • 許可不要でも、農業委員会の確認を受けておくと安心(愛知県では「確認願」)
  • 青地では農振法の開発行為・用途区分の問題が別にある

「このくらいなら許可は要らないだろう」という自己判断で建ててしまい、後から無断転用を指摘されるケースは少なくありません。当事務所では、計画段階での許可要否の確認、農業委員会への相談、必要な場合の許可申請までサポートします。


参考資料
・ 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第1項、第5条第1項
・ 農地法施行規則(令和7年7月28日施行版)第29条、第53条
・ 「農地法の運用について」の制定について 第2の1(1)イ(イ)c
・ 農業振興地域の整備に関する法律(令和7年6月1日施行版)第15条の2
・ 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)5 農地法第4・5条の許可届出以外に係る農地転用の確認関係、事業計画書記入例、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」