「相続した山あいの畑が、何十年も放置されて木が生い茂り、もう山と区別がつかない」
「登記簿の地目は『畑』のまま。固定資産税や、将来の売却のことを考えるとこのままでいいのか不安」

中山間地域の農地を相続された方から、このようなご相談をいただくことがあります。

農地法は、農地かどうかを登記簿ではなく土地の現況で判断します(現況主義)。そのため、長年放置されて森林のような状態になり、もう農地に戻すことが難しい土地は、農地法上の「農地」に当たらないと判断されることがあります。これが農業委員会の「非農地判断」です。

この記事では、国の通知(「農地法の運用について」、農林水産省経営局農地政策課長通知など)に沿って、次の点を解説します。

  • 非農地判断の基準
  • 判断された後の流れ(農地台帳からの除外、地目変更登記)
  • 青地(農用地区域)の土地の場合の注意点

非農地判断とは?─ 農業委員会が「現況」を客観的に判断する

利用状況調査から始まる

農業委員会は、毎年1回、区域内の農地の利用状況を調べる利用状況調査を行わなければなりません(農地法第30条第1項)。国の運用通知は、この調査を「毎年8月頃に実施すること」としています(「農地法の運用について」第3の1(1))。

この調査で、耕作されていない農地は大きく2つに分けられます。

区分状態その後の扱い
遊休農地草刈り・耕起・抜根・整地などで耕作できる状態に戻せる(または基盤整備などで農業利用が見込める)利用意向調査・勧告などの遊休農地の措置へ
再生利用が困難な農地森林の様相を呈するなど、農業上の利用の増進が見込まれない「農地に該当しない」旨の判断(非農地判断)へ

運用通知は、再生利用が困難な農地があった場合、「調査後直ちに、第4の(4)の規定に基づいて『農地』に該当しない旨判断を行うこと」としています(「農地法の運用について」第3の1(3)ウ)。

遊休農地の措置については、「「農地の利用意向調査」が届いたら?遊休農地の勧告で固定資産税が上がる仕組み」で詳しく解説しています。

非農地と判断される基準

判断基準は、「農地法の運用について」第4(4)に定められています。

農地として利用するには一定水準以上の物理的条件整備が必要な土地(人力又は農業用機械では耕起、整地ができない土地)であって、農業的利用を図るための条件整備(基盤整備事業の実施等)が計画されていない土地について、次のいずれかに該当するものは、農地に該当しないものとし、これ以外のものは農地に該当するものとする。
ア その土地が森林の様相を呈しているなど農地に復元するための物理的な条件整備が著しく困難な場合
イ ア以外の場合であって、その土地の周囲の状況からみて、その土地を農地として復元しても継続して利用することができないと見込まれる場合
(「農地法の運用について」第4(4))

整理すると、次の3つの条件がそろうと、非農地と判断されます。

  1. 人力や農業用機械では耕起・整地ができない(一定以上の物理的な条件整備が必要)
  2. 基盤整備事業などの条件整備が計画されていない
  3. 森林の様相を呈するなど復元が著しく困難、または周囲の状況から復元しても継続利用が見込めない

2の「計画されていない」について、国の通知(「農地に該当しない土地の農地台帳からの除外について」平成30年3月12日 29経営第3242号 農林水産省経営局農地政策課長通知)は、具体的な計画がない場合に加えて、市町村の農業振興地域整備計画で基盤整備等の対象地として定められていない場合も含むとしています。そして「これらの計画の位置付けがない場合は、農地として再生される可能性がないものとなる」と説明しています。

所有者の意向で決まるものではない

ここはよくある誤解です。平成30年の上記通知は、「所有者の意向によらず一方的に非農地判断を行うことに対する懸念」という現場の意見に対して、次のとおり国の考え方を示しています。

非農地判断は所有者等の意向で判断するものではなく、農業委員会が土地の現況を客観的に判断するものとしている。(「農地に該当しない土地の農地台帳からの除外について」別紙1)

つまり、所有者が「非農地にしてほしい」と申し出たから判断されるわけでも、「農地のままにしておきたい」と言えば判断されないわけでもありません。あくまで現地の状態で決まります。


違反転用の土地は非農地判断されない

注意したいのが、無断で転用した土地です。運用通知は、判断の手続きとして次のように定めています。

対象地が法第4条第1項若しくは第5条第1項の規定に違反すると認められる場合又は法第4条第1項若しくは第5条第1項の許可に付された条件に違反すると認められる場合は、農地に該当するか否かの判断を行わないものとすること。(「農地法の運用について」第4(3)イ)

許可を受けずに資材置場や駐車場にした土地は、「もう農地ではない」状態であっても、非農地判断の対象にはなりません。違反転用是正の手続きの対象になります(同 第4(5))。

「山林化した」ことと「人為的に農地以外にした」ことは、まったく別の扱いになる点に注意してください。


非農地判断の後の流れ

① 農地台帳からの除外と、所有者等への通知

非農地と判断した場合、農業委員会は次の対応を行います。

対象地について、直ちに農地台帳の整理等を行うこと。また、当該対象地の所有者等及び都道府県、市町村、法務局等の関係機関に対してその旨を通知する(所在が分からない所有者等に対してはこの限りではない。)こと。(「農地法の運用について」第4(3)ウ)

所有者には「非農地と判断した」旨の通知が届きます。

国は、この事務をきちんと進めるよう何度も通知を出しています。「非農地判断の徹底について」(令和3年4月1日 2経営第3505号 農林水産省経営局農地政策課長通知)では、農地利用最適化推進委員・農業委員が3人以上で利用状況調査を実施し、再生利用が困難と判断された場合は、地目変更登記の有無にかかわらず、調査後直ちに非農地として農地台帳から除外するとしています。

また同通知は、境界が確定していなくても、複数の筆で森林の様相を目視で確認できれば、非農地判断をしてまとめて農地台帳から除外できるとしています(その際は現況写真を撮影・保存)。

② 地目変更登記─ 所有者の申請が原則

非農地判断がされても、登記簿の地目が自動的に変わるわけではありません。地目変更登記は、不動産登記法第37条に基づき所有者が申請するのが原則です。

ところが、令和3年の上記通知は、非農地の通知を受けた所有者が地目変更登記を申請していない事例が多いと指摘しています。

③ 市町村長の申出による「職権での地目変更登記」

そこで活用されているのが、地方税法第381条第7項に基づく仕組みです。

一部の市町村では、市町村の農業委員会及び固定資産課税部局と法務局とが連携し、農業委員会が非農地とした土地について、地方税法第381条第7項の規定に基づき、市町村長が職権で一括して法務局に地目変更の申出を行い、法務局が地目変更登記を行っている。(「非農地判断の徹底について」2)

これを受けて、法務省も「地方税法第381条第7項の申出に基づく登記官の職権による地目の変更の登記の取扱いについて」(令和3年6月11日 法務省民二第839号)を出しています。その中で、所有者による申請を期待できない場合に登記官の職権で地目変更登記を行うことは、「表示に関する登記の制度趣旨に合致する」と整理されています。

さらに「非農地判断した土地の地目変更登記の申出について」(令和3年6月11日 3経営第882号)では、農業委員会が所有者に非農地判断を通知する際、市町村長が登記所へ地目変更の申出を行う旨も通知するよう努めることとされています。

ポイント
非農地の通知に「市町村長が地目変更の申出を行う」旨が書かれていれば、所有者が自分で登記申請をしなくても、職権で地目が変更される可能性があります。ただし、この運用を行うかどうかは市町村と法務局の協議によるため、すべての市町村で実施されているわけではありません。通知の内容をよく確認し、不明な点は農業委員会に問い合わせましょう。


青地(農用地区域)の土地の場合─ 非農地になっても自由に開発できるとは限らない

農用地区域内でも非農地判断は行われる

「青地の土地は農業振興のために守るべき土地だから、非農地判断はできない」という意見に対しても、国は考え方を示しています。

農用地区域内の農地であっても非農地判断され得ることを前提に、その場合の留意事項が規定されているところであり、農用地区域内であっても非農地判断は行うものである。(「農地に該当しない土地の農地台帳からの除外について」別紙1)

ただし、農用地区域からは原則として除外されない

一方で、非農地判断された青地の土地が、そのまま農用地区域から外れるわけではありません。「農業振興地域制度に関するガイドライン」第16の2(1)①ウは、次のいずれにも該当する場合を除き、農用地区域に残置しておくことが適当としています。

  • a 農業振興地域整備計画の達成のための一体的な土地利用に支障を及ぼすおそれがない
  • b 除外(除外後の開発行為を含む)しても周辺の農業生産に悪影響を及ぼすおそれがない(周辺の土地改良施設の機能に支障がない、周辺の農用地で土砂の流出・崩壊等の災害を発生させるおそれがない)

農用地区域に残った場合について、平成30年の通知は次のように明記しています。

農用地区域から除外されなかった場合は、非農地判断された土地であっても、農振法第15条の2に基づく開発行為の制限の対象となることから、すべからく開発行為が可能となるものではない。

つまり、「非農地になった=自由に家を建てたり造成したりできる」ではありません。青地に残っている限り、宅地造成などには農振法の開発許可が必要です。農振法の開発行為の許可については、「青地(農用地区域)に農業用施設を建てる方法」もあわせてご覧ください。


「現況証明(非農地証明)」との違い

似た手続きに、所有者の願出によって農業委員会が「農地ではない」ことを証明する現況証明があります。整理すると次のとおりです。

項目非農地判断現況証明(非農地証明)
きっかけ農業委員会の利用状況調査所有者の願出
主な対象森林化など再生利用が困難な荒廃農地長年宅地などとして利用されている土地など
基準「農地法の運用について」第4(4)各都道府県・市町村の基準(例:愛知県は20年以上の継続利用など)
その後農地台帳から除外、所有者等へ通知証明書を交付

愛知県ハンドブックの現況証明の基準では、雑草・雑木が生い茂った「藪」や耕作放棄地は農地として扱われ、証明の対象になりません。一方、国の非農地判断は「森林の様相を呈している」かどうかなどを見ます。両者は制度も基準も違うので、手元の土地がどちらに当たるのかを見極めることが大切です。現況証明については「家が建っている「登記は田・畑」の土地の現況証明の取り方」で解説しています。


相続人としてできること・注意点

  • 非農地の通知が届いたら:通知の内容(農地台帳からの除外、市町村長による地目変更の申出の有無)を確認する。自分で地目変更登記が必要かどうかは、農業委員会・法務局に確認
  • まだ判断されていないが山林化している土地:非農地判断は現況で行われるため、農業委員会に状況を相談してみる価値はある(判断するかどうかは農業委員会が客観的に決める)
  • 青地の土地:非農地になっても農用地区域に残る場合がある。開発・売却を考えているなら、農振の扱いまで確認する
  • 過去に人為的に造成した土地:非農地判断の対象外。違反転用の是正の問題になる

まとめ

  • 森林の様相を呈するなど再生利用が困難な農地は、農業委員会が非農地判断を行い、農地台帳から除外する
  • 判断は所有者の意向ではなく、現況を客観的に見て行われる
  • 違反転用の土地は非農地判断の対象外
  • 地目変更登記は所有者申請が原則だが、市町村長の申出による職権の地目変更の仕組みもある
  • 青地の土地は非農地判断後も農用地区域に残る場合があり、その場合は農振法の開発許可が必要

相続した「山になった畑」の扱いは、非農地判断、現況証明、農振の除外、地目変更登記と、関係する制度が多く複雑です。当事務所では、土地の状況を確認したうえで、どの手続きが適切かを一緒に整理します。

「この土地、まだ農地なの?」まずはご相談ください。


参考資料

  • 農地法(令和7年6月1日施行版)第2条第1項、第30条、第52条の2
  • 「農地法の運用について」の制定について 第3の1、第4
  • 農地に該当しない土地の農地台帳からの除外について(平成30年3月12日 29経営第3242号 農林水産省経営局農地政策課長通知)
  • 非農地判断の徹底について(令和3年4月1日 2経営第3505号 農林水産省経営局農地政策課長通知)
  • 非農地判断した土地の地目変更登記の申出について(令和3年6月11日 3経営第882号 農林水産省経営局農地政策課長通知)、別紙2 法務省民二第839号
  • 農業振興地域制度に関するガイドライン 第16