「農地の地主さんから、田んぼの下の砂利を採取してほしいという話がある」
「採取後はきちんと埋め戻して農地に戻すつもり。農地法の手続きはどうなる?」
砂利採取業者の方や、砂利採取の話を持ちかけられた地主さんから、こうしたご相談をいただくことがあります。
農地の下にある砂利や土砂を掘って採取し、その後に埋め戻して農地に戻す。このような事業は、農地の一時転用として農地転用の許可(農地法第4条・第5条)が必要です。さらに砂利採取の一時転用には、一般の一時転用よりも厳しい特有の要件が課されています。掘った後に確実に農地に戻らなければ、優良な農地が失われてしまうからです。
この記事では、国の「農地法の運用について」(以下「運用通知」)・「農地法関係事務に係る処理基準」(以下「処理基準」)と、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)に沿って、次の点を解説します。
- 砂利採取の一時転用に特有の要件
- 復元計画の書き方
- 許可後の報告
一時転用の基本的なルール(期間、所有権取得の禁止、青地での扱いなど)は「工事ヤード・仮設資材置場としての農地の一時転用」で解説しています。あわせてご覧ください。
砂利採取は「一時転用」として許可を受ける
砂利採取は、採取期間中は農地として使えず、採取後に埋め戻して農地に復元する事業です。そのため、恒久的な転用ではなく一時転用として扱われます。
一時転用には、恒久転用にはない次の基準があります。
仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため農地を農地以外のものにしようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき(は許可できない)。(農地法第4条第6項第6号)
また、他人の農地で採取する場合は5条許可になります。一時的な利用のために所有権を取得することは許可されないため(農地法第5条第2項第6号)、地主から土地を借りる形で申請します。
砂利採取に特有の要件─ 2つの要件をすべて満たすこと
運用通知・処理基準は、砂利の採取を目的とする一時転用について、次のⅰ・ⅱの両方を満たす必要があるとしています(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a)、処理基準 第6の1)。第1種農地・甲種農地での一時転用にも同じ要件がかかります(運用通知 第2の1(1)イ(イ)b)。
要件ⅰ:復元を担保する措置(どちらか一方)
砂利採取業者が砂利の採取後直ちに採取跡地の埋戻し及び廃土の処理を行うことにより、転用期間内に確実に当該農地を復元することを担保するため、次のいずれかの措置が講じられていること。(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a)ⅰ)
措置(i):業者団体との連名の採取計画・共同責任
砂利採取法第16条の規定により都道府県知事の認可を受けた採取計画が、当該砂利採取業者と砂利採取業者で構成する法人格を有する団体(その連合会を含む。)との連名で策定されており、かつ、当該砂利採取業者及び当該団体が採取跡地の埋戻し及び農地の復元について共同責任を負っていること。
砂利採取法に基づく採取計画の認可を受け、その計画が業者団体(法人格のある組合等)との連名になっていること、さらに業者と団体が埋戻し・復元について共同責任を負っていることが必要です。
措置(ii):地主・業者・保証人の三者契約
措置(i)によらない場合は、農地の所有者、砂利採取業者、保証人(埋戻しと農地の復元の履行を保証する資力・信用を有する者)の三者間の契約で、次の事項をすべて定める必要があります。
チェック:三者契約に定めるべき事項
- 砂利採取業者が採取計画に従って埋戻し・復元を行わないときは、保証人が業者に代わってこれらを行うこと
- 砂利採取業者が適当な第三者機関に、埋戻し・復元を担保するのに必要な金額の金銭等を預託すること
- 保証人が業者に代わって埋戻し・復元を行ったときは、2の預託金をその費用に充当できること
(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a)ⅰ(ⅱ)、処理基準 第6の1)
つまり、「業者が逃げても、保証人が必ず農地に戻し、その費用は預託金でまかなう」仕組みを、あらかじめ契約で作っておくことが求められます。愛知県ハンドブックの「農地転用許可申請チェックリスト」でも、砂利採取の一時転用の場合は「原状回復担保措置」の書類が必要とされています。
要件ⅱ:復元計画の適当性と土地改良事業との調整
砂利採取業者の農地の復元に関する計画が、当該農地及び周辺の農地の農業上の効率的な利用を確保する見地からみて適当であると認められるものであること。また、当該農地について土地改良法第2条第2項に規定する土地改良事業の施行が計画されている場合においては、当該土地改良事業の計画と農地の復元に関する計画との調整が行われていること。(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a)ⅱ)
復元後の農地が周辺の農地と一体的に効率よく使える状態になる計画かどうかが見られます。また、その地域でほ場整備などの土地改良事業が計画されている場合は、その計画との調整が必要です。
復元計画の書き方─ 愛知県ハンドブックの「農地復元誓約書」
愛知県ハンドブックには、「農地復元誓約書(3,000㎡を超え、土地の掘削を伴うもの)」の様式例が掲載されています。砂利採取のような大規模な掘削案件で使う様式で、一般の一時転用よりもかなり詳しい内容が求められます。
1 復元計画の内容
| 項目 | 記載例(愛知県ハンドブックの例) |
|---|---|
| 復元後の用途 | 畑 5,000㎡(ゴボウ等の根菜類を栽培する) |
| 復元工事の内容・方法 | ・採掘後の埋め戻しは山土等の良質土を使用し、建設廃材、網下土砂などの廃棄物は混入しない |
| ・耕作土は採掘前と同じ厚さ(例:2m程度)で覆土 | |
| ・耕作土の下に「中床」として60cm以上の砂混じり粘土・山ズリを使い、転圧等をして、農業機械が沈下しないようにする | |
| ・必要に応じて土地所有者と復元工事の内容を協議 | |
| 復元工事着手の予定時期 | 具体的な日付 |
農地復元図の添付も求められています。
2 復元に使用する土砂等の種類・数量
土砂の層ごとに、入手場所・方法、内容、土量、価格を記載します。
| 層 | 例 |
|---|---|
| 耕作土 | 申請地の表土を開発前に剥土し、表土置場で保存したうえで覆土(無償) |
| 中床 | 土砂採取場から購入する山ズリ・粘土 |
| 埋戻し | 山土、公共工事等の残土(発生場所・搬出業者・入手時期を明記) |
様式例には、次の注記があります。
- 土砂の搬入路を明記したルート図
- 公共工事等の残土を埋戻しに使う場合は、その入手時期
- 売買契約がある場合は契約書(発生場所・種別・数量・単価などを明記)
- 土量計算書、縦横断面図
- 表土置場の位置を平面図等に図示
- 「再生資源の適正な活用に関する要綱」に基づく届出の対象となる土砂なら、その旨を明記
チェックリストでも、土石採取(一時転用)の場合は「造成計画図、縦横断図、土量計算書、搬出入図」が必要とされています。
誓約書は「転用事業者」と「土地所有者」の連名
様式例では、転用事業者が期限までに自らの責任で復元することを誓約します。あわせて、「万一、転用事業者が復元を行わない場合は、土地所有者の責任において復元する」ことも誓約します。
地主さんへの注意点
砂利採取の話を持ちかけられた地主さんは、この条項に注意してください。業者が復元しなかった場合、最終的に復元の責任を負うのは地主です。業者の実績や資力、保証人・預託金の中身をよく確認しましょう。埋め戻しに廃棄物が混入されないことの確認も重要です。
許可後の報告─ 覆土の「断面写真」が必要
愛知県ハンドブックでは、一時転用の許可後の報告を次のように定めています(3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係)。
| 報告 | 内容 |
|---|---|
| 工事進捗状況報告 | 農地への復元完了まで、許可から3か月後、その後1年ごとに、現況写真を添付して報告(一時転用は面積を問わず全件) |
| 工事完了報告 | 農地への復元を完了した日の翌日から2週間以内に、現況写真を添付して報告 |
| 3,000㎡を超える粘土・砂利採取等の掘削案件の追加事項 | 完了報告に、耕作土として覆土した断面を示す写真も添付 |
大規模な掘削案件では、「耕作土がきちんと戻されたか」を断面写真で確認する運用になっています。覆土工事の途中で断面を撮影しておくなど、写真の段取りも工程に組み込んでおきましょう。
国の事務処理要領でも、一時転用の許可には「申請書に記載された工事の完了の日までに農地に復元すること」という条件が付けられます(農地法関係事務処理要領 第4の1(6)ウ)。復元しなければ許可条件違反となり、農地法第51条の原状回復命令などの対象になりえます。
青地(農用地区域)での砂利採取の注意点
農用地区域内での砂利採取も、一時転用の要件(必要性、農業振興地域整備計画の達成に支障がないこと等)を満たせば、例外的に許可されうるとされています(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c)。
なお、農振法では「土、岩石又は砂利の採取」は土地の形質の変更(開発行為)に当たります(農業振興地域制度に関するガイドライン 第19の1)。ただし、農地法の転用許可を受けた土地を、その許可の目的に供するために行う行為であれば、農振法の開発許可は改めて必要ありません(農振法第15条の2第1項第3号)。逆に、許可の目的と違う行為をすれば、農振法の許可も必要になります(同ガイドライン 第19の3(1))。
補足:許可をめぐる紛争の窓口
農地転用の許可に関する処分に不服がある場合で、その理由が鉱業、採石業又は砂利採取業との調整に関するものであるときは、公害等調整委員会に裁定の申請をすることができます(農地法第53条第2項)。砂利採取業に関わる不服の窓口が特別に定められている点も、覚えておくとよいでしょう。
まとめ
- 農地での砂利・土砂採取は一時転用として許可が必要。所有権取得は不可
- 砂利採取には特有の要件:①業者団体との連名の採取計画・共同責任、または②地主・業者・保証人の三者契約(保証人による代行・預託金・費用充当)
- あわせて、復元計画の適当性と、土地改良事業計画との調整が必要
- 復元誓約書では、良質土・廃棄物不混入・耕作土の厚さ・中床など具体的な復元方法と土砂の入手計画を示す
- 3,000㎡超の掘削案件は、完了報告に覆土の断面写真が必要(愛知県)
- 業者が復元しなければ地主が復元責任を負う。契約前の確認が重要
砂利採取の一時転用は、農地法だけでなく、砂利採取法の採取計画、土地改良区との調整、残土の管理など、関係する手続きが多い案件です。当事務所では、復元計画・誓約書の作成、担保措置の整理、許可後の報告までサポートします。
「この農地で砂利採取をしたい」「砂利採取の話を持ちかけられた」まずはご相談ください。
参考資料
- 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第6項、第5条第2項、第51条、第53条第2項
- 「農地法の運用について」の制定について 第2の1(1)ア・イ
- 農地法関係事務に係る処理基準について 第6
- 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)ウ
- 農業振興地域の整備に関する法律(令和7年6月1日施行版)第15条の2
- 農業振興地域制度に関するガイドライン 第19
- 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)農地復元誓約書(3,000㎡を超え、土地の掘削を伴うもの)記入例、3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」