「道路工事の現場近くに、1年ほど工事ヤードを確保したい。隣の田んぼを借りられないか」
「造成工事の間だけ、重機と資材を置く場所として農地を使わせてもらいたい」

建設会社の方から、こうしたご相談をよくいただきます。

農地を工事期間中だけ別の用途に使い、終わったら農地に戻す。このような使い方を、実務では「一時転用」と呼びます。一時的とはいえ農地を農地以外の用途に使うので、農地転用の許可(農地法第4条・第5条)が必要です。そのうえで、一時転用には恒久的な転用とは違う独自のルールがあります。

この記事では、国の「農地法の運用について」(以下「運用通知」)と、愛知県の「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(以下「愛知県ハンドブック」)に沿って、次の点を解説します。

  • 一時転用の期間の考え方
  • 青地・第1種農地でも許可されうる条件
  • 権利関係の注意点(所有権は取得できない)
  • 原状回復(農地への復元)と、許可後の報告

一時転用とは?─ 「仮設工作物の設置その他の一時的な利用」

農地法には「一時転用」という言葉そのものは出てきません。条文では「仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため」の転用として規定されています(農地法第4条第6項第6号、農地法施行令第4条第1項第1号など)。

典型的なのは次のような使い方です。

  • 工事現場の工事ヤード、仮設の資材置場・重機置場
  • 工事用の仮設道路、現場事務所
  • 砂利・土砂の採取(掘削して採取後に埋め戻す)
  • イベント会場などの短期利用

砂利採取には特有の要件があるため、「砂利・土砂採取のための農地一時転用の要件」で別に解説しています。


一時転用の「期間」の考え方─ 必要最小限、目安は3年以内

「一時的な利用」の期間は必要最小限

運用通知は、農用地区域内の農地の一時転用について、期間の考え方を次のように示しています。

「一時的な利用」の期間は、当該一時的な利用の目的を達成することができる必要最小限の期間をいい、(中略)3年以内の期間であれば「一時的な利用」に該当すると判断される。(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a))

「3年まで使ってよい」ではなく、「目的を達成するのに必要な最小限の期間」である点がポイントです。工事期間が1年なら、復元期間を含めて1年余りの期間で申請するのが基本です。

申請書では「復元期間を含めて」記入する

愛知県ハンドブックの申請書記載要領では、事業の操業期間について次のように定めています(1 農地法第4・5条関係 3 転用計画(3))。

一時転用の場合は「○年○月○日から1年間」等と記入する。この期間には申請地を農地に復元する期間を含めること。

工事で使う期間+農地に戻す工事の期間の合計で申請します。復元工事の期間を入れ忘れると、「期限までに復元していない」として条件違反になりかねません。

イベント等の短期利用の特例

運用通知は、令和4年3月31日付けの農村振興局長通知(「農地の区画や形質を変更することなくイベント会場等として一時的に利用する場合の農地転用の取扱いについて」)に触れています。そして、農地を区画や形質を変更することなく短期間で利用し、終了後直ちに耕作できることが明らかな場合は、上記の一時的な利用の扱いによらないとしています(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c(a)ただし書)。具体的な取扱いは、農業委員会に確認してください。


青地・第1種農地でも許可されうる─ ただし条件あり

原則不許可の農地でも「一時転用」は例外になりうる

農用地区域内の農地(いわゆる青地)や第1種農地・甲種農地は、原則として転用が許可されません。ただし運用通知は、一時転用を例外的に許可できる場合として位置付けています。

青地の場合、次のすべてに当たることが必要です(運用通知 第2の1(1)ア(イ)c、農地法施行令第4条第1項第1号)。

  1. 仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するためのもの
  2. その利用の目的を達成するうえでその農地を使うことが必要と認められる(用地選定の任意性がない、つまり他の土地で代替できない、または代替を求めることが不適当)
  3. 農業振興地域整備計画の達成に支障を及ぼすおそれがない

3の「支障を及ぼす場合」について、運用通知は次のような例を挙げています。

  • 転用の時期・位置からみて、計画に位置付けられた土地改良事業等の施行の妨げとなる場合
  • 農地転用許可ができない工場・住宅団地等の建設のための地質調査を目的とする一時転用

後者は、「本体は許可できないのに、その準備だけ一時転用で認める」ことはしない、という趣旨です。

第1種農地・甲種農地でも、仮設工作物の設置その他の一時的な利用で、その農地を使うことが必要と認められるものは、例外として許可できるとされています(運用通知 第2の1(1)イ(イ)b、ウ(イ)b)。

地域計画の区域内でも一時転用は可能な場合がある

市町村の地域計画の区域内にある農地の転用では、地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないかも審査されます(農地法施行規則第47条の3、運用通知 第2の1(2)ウ)。地域計画制度は令和7年4月1日から本格的に運用が始まっています(愛知県ハンドブック 第八版はしがき)。

ただし運用通知は、一時的な利用のための転用で、利用後にその土地が地域計画に位置付けられた担い手の耕作に供されることが確実と認められるときは、支障に当たらないと解されるとしています(運用通知 第2の1(2)ウ(イ))。


権利関係の注意点─ 一時転用のための「所有権取得」は許可されない

他人の農地を一時転用する場合は農地法第5条の許可になります。ここで大切なルールがあります。

仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため所有権を取得しようとする場合には、許可をすることができないこと(農地法第5条第2項第6号、運用通知 第2の4(1))

愛知県ハンドブックでも「一時転用では『所有権の移転』は認められない」と明記されています。一時転用で他人の農地を使う場合は、賃借権や使用貸借による権利を設定する形で申請します。「工事の間だけなら、いっそ買ってしまおう」という計画は許可されません。

賃借人がいる農地の場合

その農地を耕作者が借りている場合は、耕作者の同意(賃貸借の解約等)が必要です。一時転用であっても、転用行為の妨げとなる権利を有する者の同意がなければ許可されません(農地法第4条第6項第3号、運用通知 第2の1(2)ア(イ))。農地の賃貸借の解約については「貸している農地を返してもらうには?賃貸借の解約許可(農地法18条)」をご覧ください。


最重要:原状回復(農地への復元)の確実性

復元が確実でなければ許可されない

一時転用には、恒久転用にはない独自の一般基準があります。

仮設工作物の設置その他の一時的な利用に供するため農地を農地以外のものにしようとする場合において、その利用に供された後にその土地が耕作の目的に供されることが確実と認められないとき。(農地法第4条第6項第6号)

運用通知は、「耕作の目的に供されること」とは「一時的な利用に供された後、速やかに農地として利用することができる状態に回復されること」をいうとしています(運用通知 第2の1(2)エ)。

農地復元誓約書

この確実性を示すための書類が農地復元誓約書です。愛知県ハンドブックには、次の2種類の様式例が掲載されています。

様式対象
農地復元誓約書(3,000㎡を超え、土地の掘削を伴うもの)大規模な掘削・盛土を伴う事案
農地復元誓約書(3,000㎡以下のもの又は土地の掘削を伴わないもの)一般的な工事ヤード等

工事ヤードなど掘削を伴わない一般的な一時転用の様式例(3,000㎡以下等)には、次のような事項が盛り込まれています。

  • 転用事業者(賃借人)と土地所有者の連名
  • 工期と、そのうちの復元期間
  • 復元の方法:整地の基準高さ、表土の剥ぎ取り・温存、埋め戻しに山土等の良質土を使い、建設廃材などの廃棄物を混入しないこと 等
  • 工事担当者:復元は転用事業者の費用負担で行い、万一行わない場合は土地所有者の責任で復元する
  • 復元費用の額(総事業費のうちいくらか)
  • 農業生産の減退に対する補償

特に「転用事業者が復元しなければ、土地所有者の責任で復元する」という条項は、農地を貸す地主さんにとって重い意味があります。貸す側も、事業者の信用や復元費用の確保について、事前にしっかり確認しておくことが大切です。

表土の扱いが復元の質を左右する

工事ヤードとして使うと、重機の走行で土が締め固められたり、砕石が混ざったりします。愛知県ハンドブックの様式例では、地表の作土を別に剥ぎ取って温存し、復元時に表土として戻す方法が示されています。「砕石を撤去して終わり」ではなく、耕作できる土の状態に戻すことが求められます。


申請書類のポイント

愛知県ハンドブックのチェックリストから、一時転用で特に必要となる書類を抜き出すと次のとおりです。

書類ポイント
利用計画図建物を伴わない転用の場合
取水・排水系統図建物を伴わない場合は排水のみでよい
農地復元誓約書一時転用の場合
土地所有者の同意書所有権以外の権原に基づく申請の場合
事業計画書一時転用の場合(申請書で詳細を書けない場合など)
資力及び信用を証する書面復元費用も含めた資金計画を示す
土地改良区の意見書土地改良事業の受益地の場合

また、公共工事などで他法令の許認可や行政庁との協議が必要な場合は、その状況も審査されます(農地法施行規則第47条第2号の2など)。


許可後:一時転用は「全件」進捗報告が必要

許可には、事業計画に従って事業の用に供すること、工事の進捗状況・完了の報告、そして申請書に記載された工事の完了の日までに農地に復元することという条件が付けられます(農地法関係事務処理要領 第4の1(6)ウ)。

愛知県ハンドブックでは、許可後の報告について次のとおり定めています(3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係)。

報告恒久転用一時転用
工事進捗状況報告1,000㎡以上の案件のみすべての案件(面積を問わない)
報告のタイミング許可から3か月後、その後1年ごと許可から3か月後、その後1年ごと(復元完了まで)
工事完了報告工事完了の翌日から2週間以内農地への復元完了の翌日から2週間以内(現況写真を添付)

恒久転用なら1,000㎡未満の案件は進捗報告が不要ですが、一時転用は小さな案件でも進捗報告が必要です。完了報告も「工事完了」ではなく「農地への復元完了」の時点で行います。

許可後の報告全般については「農地転用許可のあとにやること:工事進捗報告・完了報告と定期報告」で解説しています。


まとめ

  • 工事ヤード・仮設資材置場などの一時的な利用にも農地転用許可が必要
  • 期間は目的達成に必要な最小限(青地の場合、3年以内が目安)。申請期間には復元期間を含める
  • 青地・第1種農地でも、必要性があり計画に支障がなければ例外的に許可されうる
  • 一時転用のための所有権取得は不可。賃借権等で申請する
  • 農地復元誓約書で復元の方法・費用・責任を明確にする。事業者が復元しないときは地主の責任になる
  • 許可後は面積にかかわらず進捗報告、復元完了後2週間以内に完了報告

一時転用は、工期に合わせたスケジュール管理と、地主さんとの復元条件の調整が肝心です。当事務所では、工事計画に合わせた申請期間の設定、復元計画・誓約書の作成、許可後の報告まで一貫してサポートします。

「工事の間だけ、この農地を使いたい」まずはご相談ください。


参考資料

  • 農地法(令和7年6月1日施行版)第4条第6項・第7項、第5条第2項
  • 農地法施行規則(令和7年7月28日施行版)第47条、第47条の3
  • 「農地法の運用について」の制定について 第2の1・4
  • 農地法関係事務処理要領の制定について 第4の1(6)
  • 愛知県農業水産局農政部農業振興課「農地法関係許可申請等取扱ハンドブック(第八版)」(令和7年3月)1 農地法第4・5条関係、農地復元誓約書記入例、3 農地転用許可後の工事完了報告及び工事進捗状況報告関係、参考資料「農地転用許可申請チェックリスト」