こんにちは、行政書士の三澤です!

「うちの資材置き場は広いから、そのまま運送業の車庫として登録できるはずだ」 「今の事務所に運行管理者のデスクを置けば、営業所として認められるだろう」

愛知県で運送業(一般貨物自動車運送事業)への参入を検討されている建設業者様から、このようなご相談をよくいただきます。

しかし、結論を先に申し上げます。運送業の「場所(施設・設備)」に関する要件は、建設業のそれとは比較にならないほど厳格です。

緑ナンバーの取得には、単に広い土地や事務所があれば良いというわけではありません。貨物自動車運送事業法に基づき、営業所の立地が都市計画法等に抵触していないか、車庫前面の道路幅員が大型トラックの通行に適しているか、ドライバーのための休憩・睡眠施設が適切に整備されているか——これらの細かなハードルをすべてクリアする必要があります。

特に建設業者様が既存の敷地を転用する場合、「建設業の資材置き場」と「運送業の車庫」を物理的にどう区分けし、必要な面積を証明するかという点が、許可取得の成否を左右する重要なポイントとなります。

本記事では、緑ナンバー取得に不可欠な「車両・営業所・車庫」の3大要件を、法令の根拠とともに詳しく解説します。物件を契約してから「許可が下りなかった」という取り返しのつかない事態を防ぐための、実践的なチェックマニュアルとしてご活用ください。

緑ナンバー取得における「物・場所」の要件とは

一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可を取得して適法に運送事業を開始するためには、単にトラックを数台用意するだけでは足りません。事業を安定的に継続し、輸送の安全を確保するための確固たる基盤が求められます。

その根拠となるのが、貨物自動車運送事業法第6条第2号の許可基準です。同法では、「事業用自動車の数、自動車車庫の規模その他の国土交通省令で定める事項に関し、その事業を継続して遂行するために適切な計画を有するものであること」と明確に規定されています。

さらに、この「国土交通省令で定める事項」を具体化したものが、貨物自動車運送事業法施行規則第3条の5です。同規則では、審査の対象となる事項として以下の4点を定めています。

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  1.  事業用自動車の種別ごとの数
  2.  自動車車庫の規模
  3.  営業所の規模
  4.  前各号に掲げるもののほか、事業を継続して遂行するために必要な事項

適法に運送事業をスタートするためには、これらの法令に基づき、事業の基盤となる「物(車両)」と「場所(営業所・車庫)」の要件を過不足なく満たし、適切な計画として証明しなければなりません。

①「原則5台以上」の事業用自動車の確保(物の要件)

「物」の要件として、まずクリアしなければならないのが車両台数のハードルです。

貨物自動車運送事業法施行規則第3条の5第1号において「事業用自動車の種別ごとの数」が審査基準とされており、その具体的な運用基準として、一般貨物自動車運送事業を開始するには、営業所ごとに原則として「5台以上」の事業用自動車を確保することが求められます。

建設業や産廃業の事業者であれば、自社の資材や残土を運ぶために「自家用ダンプ(白ナンバー)」をすでに複数台お持ちのケースも多いでしょう。運送業を始めるにあたって、すべてを新車で揃える必要はなく、こうした既存の自社車両を運送事業用に転用して「5台以上」の要件を満たすことは可能です。

ただし、既存車両を転用する場合には、車検証上の用途を「自家用」から「事業用」へ変更する手続きが必要です。また、車両の構造によっては事業用への用途変更が認められないケースもあります。自社の保有車両が要件を満たせるかどうか、事前に車検証の記載内容(用途・車体の形状など)を必ず確認しておきましょう。

②「営業所」と「休憩・睡眠施設」の基準

緑ナンバーを取得するにあたり、事務作業を行う場所というだけでなく、輸送の安全を管理するための拠点として「営業所」を設置する必要があります。貨物自動車運送事業法施行規則第3条の5第3号では「営業所の規模」が審査の対象として明確に掲げられています。

土地・建物の使用権限と他法令の適法性

営業所として使用する建物は、事業を継続して遂行するために適切な規模を有していることが必要です。自己所有・賃貸借を問わず、確実な使用権限を有していることを契約書や登記簿等で証明しなければなりません。

特に建設業者様が既存のプレハブ事務所等を転用される場合に注意が必要なのが、都市計画法・農地法・建築基準法などの関連法令に適合した適法な建物であるかという点です。

たとえば、市街化調整区域内に建てられた事務所や、農地を無断転用した土地上にある建物は、原則として運送業の営業所として登録することができません。許可審査においては、他法令に抵触する違法建築物でないことの確認が厳格に行われます。

乗務員のための「休憩・睡眠施設」の設置義務

見落とされがちですが、営業所に付随して必ず確保しなければならないのが「休憩・睡眠施設」です。

貨物自動車運送事業輸送安全規則第3条第3項では、貨物自動車運送事業者は「乗務員等が有効に利用することができるように、休憩に必要な施設を整備し、及び乗務員等に睡眠を与える必要がある場合にあっては睡眠に必要な施設を整備し、並びにこれらの施設を適切に管理し、及び保守しなければならない」と厳格に義務付けられています。

この施設は、原則として営業所または自動車車庫に併設される必要があります。「パイプ椅子を数脚置いた一角」では認められません。国土交通省の通達「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」では、以下のような施設は「有効に利用できる施設に該当しない例」として明示されています。

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  • 乗務員等が実際に休憩・睡眠・仮眠を必要とする場所に設けられていない施設
  • 寝具等の必要な設備が整えられていない施設
  • 施設・寝具等が不潔な状態にある施設

乗務員の過労運転を防止するために「実質的な休息機能」を備えた施設を確保できるかどうかが、許可取得の重要なポイントとなります。

③「自動車車庫」の厳格な施設基準

トラックを停めておくための「自動車車庫」についても、単なる月極駐車場や空き地で良いというわけではありません。事業用自動車を安全に管理するための厳格な基準が法令で定められています。

全車両の収容と点検整備のための十分な面積

車庫の広さに関する基準は、貨物自動車運送事業法施行規則第14条第1号に規定されています。同規定では、車庫は「保有する全ての事業用自動車を収容し、かつ、当該事業用自動車の点検及び整備を適切に行うために十分な規模の自動車車庫を有すること」とされています。

つまり、申請するトラック(原則5台以上)の車両寸法をもとに、全車両が確実に駐車できる面積に加え、車両間および車両と車庫境界線との間に日常点検や整備を行うための十分な間隔(一般的に50cm以上等)を確保できる広さが求められます。申請時には、これらの寸法を正確に反映した平面図等の提出が必要です。

営業所への併設義務と前面道路の幅員制限

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【営業所への併設義務】

貨物自動車運送事業輸送安全規則第6条により、運送事業者は「事業用自動車の保管の用に供する自動車車庫を営業所に併設しなければならない」と義務付けられています。ただし、同条のただし書きにより、併設が困難な場合は「自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令」に規定する距離の範囲内に設ける例外規定も存在します。

【前面道路の幅員制限(車両制限令)】

実務上、最もつまずきやすいのが車庫の出入口に接する前面道路の幅員(道幅)の問題です。

車庫からトラックが出入りするためには、前面道路が道路法(車両制限令)に適合していなければなりません。車両制限令第5条および第6条では、市街地区域内か区域外か、一方通行か否か等の条件に応じて、通行する車両の幅に対する車道幅員の制限が設けられています。

行政書士の実務ポイント

許可申請時には、該当する前面道路の道路管理者(市役所等)から、対象車両が通行するのに十分な幅員があることを証明する「前面道路の幅員証明書」を取得して提出する必要があります。前面道路が狭く車両制限令に抵触する場合、その土地を車庫として登録することはできません。

【建設業者向け】資材置き場・重機保管庫との「兼用」は可能か?

建設業や産廃業の事業者様から、既存の資材置き場や重機保管庫、従業員用駐車場の一部を「運送業の車庫」として活用したいというご相談を多くいただきます。

同一敷地内での兼用自体は可能です。 しかし、審査をクリアするためには厳格なルールがあります。

物理的な「区画」と面積の証明が必須

貨物自動車運送事業法施行規則第14条第1号に基づき、車庫は「保有する全ての事業用自動車を収容し、かつ点検・整備を適切に行うために十分な規模」を確保していることを証明しなければなりません。

一つの敷地内に建設資材・重機・他事業の車両等が混在している場合、図面上だけで「ここを運送業の車庫として使います」と申告するだけでは要件を満たしているとは認められません。

行政書士の実務ポイント

実務上は、フェンス・ロープ・白線等によって、運送事業用自動車の専用スペースとそれ以外のスペースを物理的かつ視覚的に明確に区画する必要があります。そして、その区画された「緑ナンバー専用の車庫スペース」単独で、法令が求める全車両の収容面積および点検整備用の間隔を確保できていることを、求積図等を添えて証明しなければなりません。

まとめ|施設要件は「契約前」の事前調査が命

緑ナンバー取得における施設・設備の要件は、物理的な制約が多く、他の要件と比べて極めてシビアです。

「営業所」と「自動車車庫」については、貨物自動車運送事業法の基準だけでなく、都市計画法(用途地域の制限)・農地法・道路法(車両制限令に基づく前面道路の幅員)といった他法令にも抵触しない適法な物件であることが大前提となります。

「敷地が広いから大丈夫だろう」と見切り発車で土地を購入したり賃貸借契約を結んだりした後に法令違反が発覚した場合、許可が下りないだけでなく、投じた資金が無駄になるという取り返しのつかない事態を招きます。

自社の既存敷地が車庫として適法に利用できるかどうかの判断、または新たな物件の契約判断に迷われた際は、必ず物流関連法務を専門とする行政書士に事前相談されることをお勧めします。

【関連記事】緑ナンバー取得の「人」と「金」の要件

今回解説した「物・場所」の要件と並んで、建設業者・産廃業者が緑ナンバーを取得する際に大きなハードルとなるのが、運行管理者等の「人的要件」と、残高証明書等で証明が必要な「資金要件」です。

それぞれの詳細については下記の記事で解説していますので、併せてご確認ください。

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三澤祐喜 行政書士

三澤 祐喜|三澤行政書士事務所(愛知県)

行政書士

産廃処理業者に10年以上勤務した、おそらく日本でただ一人のバックグラウンドをもつ行政書士。
建設業・不動産業・運送業・廃棄物処理法・農地法——複雑に絡み合う法規制の現場にいたからこそ、他の事務所が手を引くほど複雑な案件に、私は静かに燃えます。
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言われた書類を作るだけの「代行屋」ではなく、絡み合った法務課題を根本から解きほぐす社外パートナーとして、愛知県の経営者様の隣に立ち続けます。

愛知県行政書士会所属|第24191550号