1. 「有害使用済機器の適正な保管等に関する制度」とは?

「有害使用済機器の適正な保管等に関する制度」は、平成29年の廃棄物処理法改正により創設された制度です。本来の用途での使用が終了した家電製品などが「雑品スクラップ」として不適切に保管され、ヤードでの火災や有害物質の流出が社会問題化したことを背景に、一定の機器を「有害使用済機器」と位置づけ、その保管や処分を業として行う者に届出と基準の遵守を義務付けるものです。

対象となる「有害使用済機器」32品目

廃棄物処理法第17条の2第1項において、「有害使用済機器」とは「使用を終了し、収集された機器(廃棄物を除く)のうち、その一部が原材料として相当程度の価値を有し、かつ、適正でない保管または処分が行われた場合に人の健康または生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるもの」と定義されています。

具体的には、廃棄物処理法施行令第16条の2により、以下の32品目が指定されています。

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  1. 家電リサイクル法対象の4品目:エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
  2. 小型家電リサイクル法対象の28品目:扇風機、電子レンジ、パソコン、携帯電話など
行政書士の実務ポイント

【業務用機器の取扱い】

法令上は「一般消費者が通常生活の用に供する機器およびこれと同様の構造を有するもの」が対象です。明らかに業務用と判別できる大型のパッケージエアコンや業務用冷蔵庫は対象外ですが、事務所で使われていた壁掛けのルームエアコンなど、家庭用と同等の構造を持つ機器は業務用途であっても有害使用済機器に該当します。

「廃棄物」と「有害使用済機器」の判断の分かれ目

有害使用済機器の定義には「(廃棄物を除く)」とある通り、まずその機器が「廃棄物」に該当するかどうかの判断が重要です。廃棄物に該当する場合は、廃棄物処理法に基づく処理基準や処理業の許可が別途必要となります。

廃棄物に該当するかどうかは、物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無および占有者の意思等を総合的に判断します。雨ざらしの野外保管など、再使用の目的に適さない取扱いがなされている場合は廃棄物と判断される可能性が高くなります。

行政書士の実務ポイント

スクラップヤードの実務で迷いやすいケース:

1. 破壊された機器や部品の取扱い
外形上もとの機器と判別できる状態であれば有害使用済機器に該当します。一方、機器を解体して内蔵ハードディスクや基板などの「部品単体」となったものや、破砕処理等を経て鉄くずやアルミくずなどになったものは該当しません。

2. 雑品スクラップと混ざっている場合
有害使用済機器の対象品目が金属スクラップ等と混ざっている場合、まず混合物全体が廃棄物と判断されるかどうかが問われます。廃棄物とは判断されない有価物の混合物であっても、有害使用済機器が含まれている場合は本制度の対象となります。

2. 届出が必要な事業者と除外規定

有害使用済機器の保管や処分を行う場合でも、すべてのケースで届出が必要になるわけではありません。

届出が必要な事業者

廃棄物処理法第17条の2第1項により、「有害使用済機器の保管または処分を業として行おうとする者」は、あらかじめ都道府県知事(政令市・中核市の場合は市長)に届け出なければなりません。

「業として行う」とは、営利目的の有無にかかわらず、同種の行為を反復継続して遂行することを指します。スクラップヤード業者が金属スクラップとして回収した使用済機器を、選別や解体等のために自社のヤードで保管・処分する行為は当然に「業として行う」ことに該当します。

届出が不要となる除外規定

1. 事業場の敷地面積が100㎡を超えない場合(規則第13条の2第5号)

【重要ポイント】 ここでいう100㎡とは「有害使用済機器を保管するスペースの面積」ではなく、「事業場(ヤード)全体の敷地面積」を指します(愛知県「有害使用済機器の適正な保管等に関する制度について」より)。機器を置く場所がわずか10㎡であっても、ヤード全体の敷地が100㎡を超えていれば届出義務が発生します。

2. 本来の業務に付随して一時的に保管のみを行う場合(規則第13条の2第6号)

家電販売店が下取り品を他のリサイクル業者へ引き渡すまでの間だけ一時保管するケースなどが該当します。

3. すでに廃棄物処理法等の許可等を受けている業者(規則第13条の2第1号)

以下のような許可等を持つ業者は届出が免除されます。

  • 一般廃棄物収集運搬業者(積替保管を含む許可に限る)
  • 一般廃棄物処分業者
  • 産業廃棄物収集運搬業者(積替保管を含む許可に限る)
  • 産業廃棄物処分業者
  • 家電リサイクル法や小型家電リサイクル法の認定業者 など
行政書士の実務ポイント

【注意点】 これらの許可業者であっても、無条件で届出が免除されるわけではありません。愛知県の制度案内でも明記の通り、「当該許可等に係る事業場と同一敷地内で、保管・処分または再生の事業を行う場合」に限られます。産廃処分の許可を取っているA工場とは別に、産廃許可のないBヤードを設けて有害使用済機器を保管する場合は、Bヤードについて本制度の届出が必要となります。

3. 【愛知県版】届出に必要な書類と手続き

最大の難関は「他法令チェック」

廃棄物処理法施行規則第13条の3第2項に基づき、届出には以下の書類の添付が義務付けられています。

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  • 事業計画の概要を記載した書類
  • 事業場の平面図および付近の見取図
  • 施設の構造を明らかにする図面(平面図、立面図、断面図、構造図、設計計算書など)
  • 土地・建物の使用権原を証する書類(登記事項証明書や賃貸借契約書等)
  • 定款・登記事項証明書、住民票の写し等

これらに加え、愛知県独自の高いハードルとなるのが「有害使用済機器保管等の届出に係る他法令チェック票」の提出です(愛知県「届出を行うにあたっての注意事項」より)。

このチェック票は、ヤードを設置する場所が他の法令の規制に違反していないかを事業者自らが関係各課へ出向き確認・協議した結果を記載して提出するものです。具体的には以下の適合性を証明する必要があります。

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  • 建築基準法(第51条等に基づく特殊建築物の許可の要否、建築確認の取得状況など)
  • 都市計画法(第29条等に基づく開発行為の許可の要否など)
  • 農地法(ヤードが農地である場合の農地転用許可の要否)
  • その他(砂防法、河川法、宅地造成等規制法など)
行政書士の実務ポイント

【重要ポイント】 愛知県内に多い「市街化調整区域」の土地にヤードを設置しようとする場合、都市計画法上の厳しい制限を受けます。プレハブの事務所や屋根付きの施設を設けるだけでも建築基準法の確認が必要になるケースが多々あります。「自分の土地だから何をやってもいいだろう」と見切り発車で施設を作ってしまうと、後から他法令違反を指摘され、施設の撤去を命じられるリスクがあります。

愛知県内の管轄窓口

届出先は事業場の所在地によって異なります。

  • 東三河総局 環境保全課:豊川市、蒲郡市、田原市
  • 東三河総局 新城設楽振興事務所:新城市、設楽町など
  • 尾張県民事務所 廃棄物対策課:一宮市、瀬戸市、春日井市、小牧市など
  • 尾張県民事務所 海部県民センター:津島市、弥富市、あま市など
  • 尾張県民事務所 知多県民センター:半田市、東海市、知多市など
  • 西三河県民事務所 廃棄物対策課:碧南市、刈谷市、安城市、西尾市など
  • 西三河県民事務所 豊田加茂環境保全課:みよし市

名古屋市・豊橋市・岡崎市・豊田市にヤードを設置する場合は、愛知県の窓口ではなく各市の廃棄物担当課へ直接届出を行う必要があります。自治体によっては県とは異なる独自の指導要綱や追加の添付書類・事前協議の義務を設けているケースもあります。

4. 届出後に遵守すべき「保管基準」と「処分・再生基準」

届出を行った事業者は、廃棄物処理法施行令第16条の3および同法施行規則第13条の5から第13条の7で定められた基準を遵守して事業を運営しなければなりません。

保管場所の構造要件

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  • 囲いの設置(規則第13条の5第1項第1号) 保管場所の周囲には囲いを設ける必要があります。有害使用済機器が囲いに直接寄り掛かるような置き方をする場合は、その荷重に対して構造耐力上安全な強固な囲いでなければなりません。
  • 掲示板の設置(規則第13条の5第1項第2号) 外部から見やすい箇所に、氏名や名称、有害使用済機器の保管場所である旨、管理責任者の連絡先などを記載した掲示板(縦・横それぞれ60cm以上)を設置する義務があります。
  • 保管高さの制限(規則第13条の5第2項等) 屋外で容器を用いずに保管する場合、規則で定められた算定方法に基づく高さ制限(最大でも5m以下等)が適用されます。囲いの高さを超えて機器を山積みにすることは明確な法令違反です。

環境保全対策と帳簿の作成・保存義務

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  • 地下浸透や火災の防止措置(令第16条の3第1項第1号等) 有害使用済機器からの油や有害液体の流出・地下浸透を防ぐため、必要に応じて底面をコンクリート敷きにするなどの措置が求められます。対象機器に含まれるリチウムイオン電池等の発火が原因となるヤード火災が愛知県内でも後を絶ちません。電池の適切な取り外しや他の可燃物と距離を置いた保管など、実効性のある火災防止策が行政指導の大きなポイントになります。
  • 帳簿の備え付けと5年間の保存義務(法第17条の2第3項準用、規則第13条の8・9) 事業場ごとに帳簿を備え付けなければなりません。毎月末までに「前月中の有害使用済機器の品目ごとの受入量、処分(再生を含む)量、搬出量等」を正確に記載し、1年ごとに閉鎖した上で、閉鎖後5年間保存することが義務付けられています。
行政書士の実務ポイント

【重要ポイント】 行政の立入検査が入った際、真っ先に提出を求められるのがこの帳簿です。帳簿を適当に管理していると、今後の許可制への移行の際に、過去の遵法姿勢(コンプライアンス)を疑われる致命的なマイナス要因となります。

5. 【最新動向】2026年4月閣議決定——「届出」から「許可制」へ移行

2026年4月10日、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。

現在の「有害使用済機器保管等届出制度」は廃止されます。これに代わり、使用済金属・プラスチック物品の保管や再生を業として行う者は、新たに「要適正保管使用済金属・プラスチック物品保管業」または「要適正再生使用済金属・プラスチック物品再生業」として、都道府県知事の許可を受けなければならなくなります。

施行は「公布の日から2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

許可取得には厳格な審査がある

単に書類を出せば済む「届出」とは異なり、許可を得るためには申請者自身に事業を継続して行うに足りる「経理的基礎(財務状況)」や「技術的基礎」を有していることが審査されます。

愛知県の産業廃棄物処理業の審査基準に照らすと、以下のような項目が確認される可能性があります。

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  • 直前3年の各事業年度における経常利益金額等の平均額が0以上であること
  • 直前事業年度における経常利益金額等が0以上であること
  • 直前事業年度において債務超過でないこと

債務超過の状態や自己資本比率が極めて低い場合は、中小企業診断士や公認会計士が作成した「経営診断書(今後5年間の収支計画)」の提出が必須となり、審査が難航します。

6. なぜ「今」届出をしておくべきなのか

「数年後に許可制に変わるなら、許可制になってから対応すればいい」と考える事業者様もいるかもしれません。しかし、その考えには重大なリスクがあります。

無届による罰則と将来の許可取得への影響

現在の「有害使用済機器保管等届出」を行わずに事業を行った場合、廃棄物処理法第17条の2第1項違反として、同法第30条第6号に基づき「30万円以下の罰金」に処される可能性があります。

さらに、無届ヤードで不適正な保管を行い、行政からの改善命令・措置命令に従わなかった場合は、「5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれの併科」という重い罰則の対象となります(法第25条第1項第5号)。

最も重大なリスク:欠格要件への該当

今後のヤード運営は「要適正保管使用済金属・プラスチック物品保管業」等の許可制に移行します。この新たな許可制度では、廃棄物処理業の許可と同様に厳しい「欠格要件」が規定されます(法案概要 第24条の7第5項第2号等)。

生活環境の保全を目的とする法令に違反して罰金以上の刑に処せられた場合などは、欠格要件に直結します。

行政書士の実務ポイント

現在、無届のまま運営を続ける
 ↓
行政の立入検査で法令違反が問われる
 ↓
罰金刑が確定
 ↓
欠格要件に該当(5年間)
 ↓
新法のヤード許可が取れない
産廃許可も取れない
 ↓
事実上の廃業

「新法が始まってから考えればいい」という判断が、事業存続の命取りになるリスクがあります。

今のうちに届出を済ませることの意味

将来の許可制では、施設の構造(汚水浸透防止のための底面被覆、油分離装置の設置、法定の高さの囲いなど)が厳格に審査されます。

現在の「届出」の段階で他法令チェックをクリアし、法定の保管基準を満たした適法なヤードを作り上げておくことが、将来の許可制への最大の備えとなります。今のうちに届出を受理され、適法に操業し、正確な帳簿をつけているという実績が、将来の許可審査をスムーズに進める土台になります。

「届出」は単なる現在の義務ではなく、「将来の厳しい許可審査のための事前準備」と捉えるべきです。

有害使用済機器の届出、出していますか?

金属スクラップヤードを運営している事業者様へ、一つだけ確認してください。

「有害使用済機器の保管等届出」を提出していますか?

古物商の許可を持っていても、廃家電等を扱うヤードには別途この届出が必要です。届出義務があるにもかかわらず出していない場合、現時点で罰則リスクがあります。そして前述の通り、新法施行前に摘発されると5年間ヤード許可が取れなくなります。

届出が必要かどうか、現在の状況が適法かどうか、まずはご確認ください。

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「自社のヤードが届出の対象になるかわからない」「市街化調整区域だがどうすれば適法化できるか」「許可制になる前に今のうちに手続きを済ませておきたい」という方は、まずは現状をお知らせください。

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行政書士報酬は許可取得・申請完了後のお支払いです。実費以外の着手金は不要です。