経営事項審査(経審)の点数と、発注者ごとの「主観点」を合わせて格付けが決まる仕組みは、「【愛知県版】公共工事受注に必須!「経営事項審査(経審)」の仕組みと実務の落とし穴」や「【愛知県版】公共工事入札制度の基礎知識!」で紹介しました。

この記事では、発注者の側が主観点をどのような考え方で設計しているのかを、国土交通省が地方公共団体向けに作成した「発注者別評価点の活用による資格審査マニュアル」から読み解きます。発注者の考え方を知ることで、自社がどこで評価されるのかが見えてきます。

資料についての注意
このマニュアルは、平成20年度から施行された経営事項審査の改正を踏まえて作成されたもので、事例として紹介されている点数や自治体の取扱いは作成当時のものです。実際の評価項目や配点は、各発注者の入札参加資格審査要綱などで必ず確認してください。


1. 発注者別評価点(主観点)とは

1-1. 客観点と主観点

マニュアルでは、公共工事の発注における企業評価の基準を、次の2つに分けています。

区分内容
経営事項審査の総合評定値(客観点)建設業法に基づき、公共工事を受注しようとする建設業者を共通の基準で評価する
発注者別評価点(いわゆる主観点)地域の実情を踏まえ、発注者が管轄する地域の工事成績や地域貢献などを発注者ごとに審査する

両者を合わせた「総合点」で、競争参加資格の審査(格付け)が行われます。

1-2. 「主観点」という呼び方について

マニュアルでは、「主観点」という呼称は発注者の恣意性が入り込んでいるという誤解を生むとの指摘があるとし、主観的事項の審査は厳格な基準で客観的・透明に行われているものだとして、「発注者別評価点(発注者点)」という呼称を推進するとしています。

1-3. 入札契約制度の中での位置づけ

マニュアルは、公共工事の受注までの流れを次のように整理しています。

  1. 建設業許可:建設業者として最低限求められる財政力・技術力の確認
  2. 経営事項審査:経営に関する客観的事項の審査
  3. 競争参加資格審査(発注者ごと):客観点と発注者別評価点で、発注標準(規模・工種などで市場をグループ分けしたもの)に適合する企業を仕分ける(格付け)
  4. 入札参加資格確認(工事ごと):格付けや実績などの要件
  5. 総合評価方式:技術提案などを求め、価格と品質が総合的に優れた調達を行う

2. 経審との役割分担

マニュアルでは、評価項目ごとに経審と発注者別評価点の役割を次のように説明しています。

項目経営事項審査発注者別評価点
財務状況主にカバー−
工事実績全国共通の基準で完成工事高などを量的に評価工事成績など、経審でカバーできない質的な評価
社会性防災活動への貢献など一部を評価地域貢献など、発注者の施策ニーズに応じてきめ細かく評価

発注者別評価点の評価項目は、経審の項目と重複してはいけないわけではなく、発注者が特定の項目を重視したい場合に、あえて重ねて評価することもあり得るとされています(例:技術職員数を双方で評価)。


3. 評価項目の例

マニュアルでは、評価項目を大きく「工事の内容に関する項目」と「社会性を評価する項目」に分け、工事成績を中心とした工事内容に関する項目に高いウエイトを置きつつ、政策ニーズに応じて社会性の項目をバランスよく盛り込むことが適切としています。

3-1. 工事の内容に関する評価項目

項目評価の例
工事成績自ら発注する工事の工事成績評定。未実施の場合は都道府県など他機関の成績や、自らの工事実績の活用も可能
技術力国家資格・民間資格の保有状況、技術者の雇用状況、優良工事表彰歴、VE提案の採用、CPDSの実施状況 など
安全対策安全対策を実施する団体への加入、COHSMS・OHSASの取得状況 など
その他優良工事表彰・優良業者表彰、ISO9001の取得 など

3-2. 社会性を評価する項目

マニュアルでは、積極的に評価すべき社会貢献の例として、次の項目を挙げています。

  1. 災害発生時の緊急対応への協力(防災協定の締結など)
  2. 建設業団体への加入
  3. 除雪関係作業
  4. 建設重機の保有
  5. 市区町村内の営業所の所在、市区町村民の雇用
  6. ボランティア活動

このほか、建設産業政策の観点から、企業連携(合併・会社分割・営業譲渡)や新分野進出を評価することや、付随的なものとして雇用対策(障害者雇用など)、環境対策(ISO14001、エコアクション21など)を評価することも考えられるとしています。ただし、こうした項目に過度な配点をしないよう留意すべきとされています。


4. 減点される「不正行為」

マニュアルでは、奨励すべき行為に加点することが基本だが、次のような不正行為は競争参加者の誠実性が疑われる行為として、マイナス評価することが考えられるとしています。

  • 指名停止など公共工事発注者による処分
  • 建設業法や労働基準法などの法令違反(監督処分を含む)
  • 税の滞納 など

ただし、既に処分を受けていることから、過度に長期間遡ってマイナス評価することは望ましくないともしています。

審査対象から除外される「不良不適格業者」

さらに、次のような業者は、そもそも競争参加資格審査の対象から除外することも可能とされています。

  • 工事を粗雑にした、入札の公正な執行を妨げた、正当な理由なく契約を履行しなかった などに該当する者
  • 市町村税などに未納がある者
  • 一定の企業経営の関係者に暴力団などとの関わりが認められる者
  • 会社更生・民事再生の申立て後、開始決定前の者
  • 申請書類の重要な事項に虚偽の記載をした者

5. 提出書類の例

マニュアルでは、評価対象の事実を客観的に確認できる書類の提出を求めることが重要として、次のような例を挙げています(経審で審査済の事項などは省略を検討するよう求めています)。

区分書類の例
基本入札参加資格審査申請書、総合評定値通知書の写し
工事成績発注者からの成績評定通知書の写し
工事実績自ら発注した工事は契約書の写し。他の発注者の工事はCORINSで確認可能
技術力技術職員名簿、優良工事表彰の表彰状の写しと技術者の雇用を証明する書類、他発注者のVE提案の証明書、CPDSの学習履歴の証明書
安全対策建設業労働災害防止協会の加入証明書の写し、COHSMS・OHSASの証明書の写し
その他ISO9000シリーズの登録証・付属書の写し
社会貢献防災協定の協定書の写し(団体で参加している場合は団体の証明書など)、防災活動の実績を確認できる契約書・写真・新聞記事・証明書類 など

日頃から、防災活動の記録や表彰状、協定書などを保管しておくことが、申請時の証明につながります。


6. 審査の時期と有効期間

マニュアルでは、発注者別評価点の有効期間は、実績などの現状を的確に反映しつつ事務の煩雑さを避ける観点から、2年程度が適当としています。その場合、工事成績や経審の結果が2年間反映されないため、審査体制に余裕があれば毎年度または随時更新することも考えられるとしています。

審査の客観性・透明性を確保するため、学識経験者などの第三者をメンバーとする入札参加資格審査会の承認を得ることや、入札監視委員会などの第三者機関の意見を反映することが望ましいともされています。


7. 客観点と主観点のウエイト

マニュアルでは、当時の都道府県の事例として、総合点に占める発注者別評価点の割合は10%以下から50%以下まで幅があると紹介しています。そのうえで、ウエイトは発注者ごとに検証して適切に設定すべきとしています。


8. 建設業者として取り組めること

マニュアルの考え方からは、次のような取組みが評価につながりやすいことが分かります。

  • 工事成績を高める:評価の中心は工事成績
  • 技術者の資格取得・継続学習:資格、CPDS、表彰歴
  • 安全への取組み:安全団体への加入、マネジメントシステム
  • 地域への貢献:防災協定、災害時の活動、地元雇用
  • 法令遵守:監督処分や指名停止、税の滞納はマイナス評価

9. まとめ

  • 格付けは、経審の客観点と発注者別評価点(主観点)の合計で行われる
  • 主観点は、工事成績を中心に、技術力・安全対策・地域貢献などを発注者ごとに評価する
  • 監督処分・指名停止・税の滞納などはマイナス評価の対象
  • 防災活動の実績や表彰状など、証明書類を日頃から保管しておく
  • 具体的な項目・配点は、各発注者の審査要綱で確認する

「入札参加資格の申請で、主観点の加点項目を漏れなく申請したい」「経審と主観点を踏まえて格付けアップを目指したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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