「現場で事故が起きてしまった。建設業許可に影響するのだろうか」「元請との取引で建設業法違反を指摘された。どんな処分があり得るのか」——こうした場面で、まず知っておきたいのが監督処分の仕組みです。

許可を受ける段階の「誠実性」や「欠格要件」については、「建設業許可に必要な「誠実性」とは?」「建設業許可の「欠格要件」とは?」で解説しました。この記事では、許可を受けた後に問題が起きた場合の処分の仕組みを、建設業法と国土交通省のFAQに沿って解説します。


1. 監督処分と行政指導

「建設業法の各基本事項や法令違反に関するよくあるご質問」No.23では、建設業法違反に抵触すると、各許可行政庁が事案の詳細を確認したうえで、次のような対応を検討するとしています。

区分内容
監督処分指示処分、営業停止処分、許可取消処分
行政指導指導、助言、勧告

監督処分は、各許可行政庁が定める監督処分基準に基づいて検討されます。国土交通大臣許可業者については、「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」が公表されています。知事許可業者の基準は、各都道府県に確認する必要があります(FAQ No.26)。


2. 指示処分(建設業法第28条第1項)

許可行政庁は、許可を受けた建設業者が次のいずれかに該当する場合などに、必要な指示をすることができます。

  1. 工事を適切に施工しなかったため公衆に危害を及ぼしたとき、またはそのおそれが大きいとき
  2. 請負契約に関し不誠実な行為をしたとき
  3. 建設業者(法人の場合はその法人・役員等)や政令で定める使用人が、業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当と認められるとき
  4. 一括下請負の禁止(第22条第1項・第2項)や、特定専門工事での再下請の禁止(第26条の3第9項)に違反したとき
  5. 主任技術者・監理技術者が施工の管理について著しく不適当で、変更が公益上必要と認められるとき
  6. 無許可業者と下請契約を結んだとき(軽微な工事を超えるもの)
  7. 特定建設業者以外と、下請代金が特定建設業の基準額以上となる下請契約を結んだとき
  8. 情を知って、営業停止中・営業禁止中の者と、その停止・禁止の範囲の下請契約を結んだとき
  9. 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の一定の規定に違反したとき

このほか、建設業法の規定に違反した場合にも指示の対象となります。ただし、第19条の3第1項(不当に低い請負代金)、第19条の4(購入強制)、第24条の3第1項(下請代金の支払)、第24条の4(検査・引渡し)、第24条の5(不利益取扱い)、第24条の6第3項・第4項(特定建設業者の手形・支払期日)は、この指示の根拠となる規定からは除かれています。これらは、独占禁止法違反にも該当する場合に公正取引委員会への措置請求(第42条)などで対応する仕組みです。


3. 営業停止処分(建設業法第28条第3項)

許可行政庁は、建設業者が第28条第1項の各号に該当するとき、または指示に従わないときは、1年以内の期間を定めて、営業の全部または一部の停止を命ずることができます。

他の都道府県で営業している場合、その区域内の営業に関して、営業地の都道府県知事が指示や営業停止をすることもあります(第28条第4項・第5項)。

営業停止期間中にできること・できないことは、「営業停止期間中にできること・できないこと」の記事で詳しく解説しています。


4. 許可取消処分(建設業法第29条)

4-1. 取り消さなければならない場合(第29条第1項)

次の場合は、許可行政庁は許可を取り消さなければなりません。

  • 経営業務の管理体制や営業所技術者等の基準を満たさなくなった場合
  • 欠格要件に該当するに至った場合
  • 許可換えが必要なのに新たな許可を受けない場合
  • 許可を受けてから1年以内に営業を開始せず、または引き続いて1年以上営業を休止した場合
  • 廃業などの届出事由(第12条各号)に該当するに至った場合
  • 不正の手段で許可(更新を含む)や承継の認可を受けた場合
  • 第28条第1項の各号に該当し情状が特に重い場合、または営業停止処分に違反した場合

4-2. 所在不明の場合(第29条の2)

営業所の所在地や建設業者の所在を確知できないときは、官報や公報で公告し、30日を経過しても申出がなければ、許可を取り消すことができます。


5. 「請負契約に関する不誠実な行為」とは

FAQ No.24では、建設業法第28条第1項第2号の「請負契約に関し不誠実な行為をしたとき」について、建設業者が故意または重過失により請負契約に違反し、かつ、社会通念上建設業者が持つべき誠実性を著しく欠くと判断されるものとし、具体例として次の4つを挙げています。

  1. 公共工事の入札における虚偽申請
  2. 主任技術者等の不設置等
  3. 粗雑工事等による重大な瑕疵
  4. 施工体制台帳の不作成

また、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)では、指値発注、一方的な赤伝処理、責任を明確にしないやり直し工事の費用の押し付け、工期変更に伴う増加費用の一方的な負担などについて、情状によっては第28条第1項第2号に該当するおそれがあるとしています(6章・8章・9章・3-3章)。


6. 他の法令違反でも処分される

6-1. 考え方

FAQ No.25では、建設業法以外の法令違反の場合も、起訴や確定判決などにより違反の事実が明白であることに加え、その違反の事実と態様が「建設業者として不適当であると認められるとき」に処分を行うとしています。処分となるかどうかは、違反の内容・程度、違反による結果、建設業の営業との関連の有無などを総合的に判断して決まります。

6-2. 労働安全衛生法違反の例

FAQ No.26では、国土交通大臣許可の場合について、次のように説明しています。

事案処分
労働安全衛生法により刑に処せられた場合指示処分
工事関係者に死亡者または3人以上の負傷者を生じさせたことにより、業務上過失致死罪等の刑に処せられた場合営業停止処分

知事許可業者については、各都道府県の基準を確認する必要があります。

6-3. 社会保険の未加入

建設業法令遵守ガイドライン(第12版)14-2章では、社会保険・労働保険の未加入業者は、情状によっては第28条第1項第3号(他の法令違反で建設業者として不適当)に該当するおそれがあるとしています。さらに、令和2年10月1日以降に許可を取得(更新を含む)した者が、許可取得後に未加入であることが発覚した場合は、第29条第1項第1号(許可の取消し)に該当するため十分注意が必要としています。


7. 一括下請負は原則として営業停止

国土交通省の通知「一括下請負の禁止について」では、一括下請負の禁止に違反した建設業者に対しては、行為の態様や情状などを考慮し、再発防止の観点から原則として営業停止処分が行われるとしています。詳しくは「一括下請負(丸投げ)の禁止と実質的な関与の判断基準」の記事をご覧ください。


8. 処分の公表と役員への影響

8-1. 公告・監督処分簿

営業停止処分や許可取消処分をしたときは、その旨が公告されます(建設業法第29条の5第1項)。また、指示処分や営業停止処分を受けた場合は、建設業者監督処分簿に登載され、公衆の閲覧に供されます(同条第2項〜第4項)。

国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」でも、建設業法に基づく行政処分を確認できます(愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答」A7-2)。

8-2. 営業の禁止

営業停止を命じる場合、法人であればその役員等や、処分の原因について相当の責任がある一定の使用人(処分前60日以内にその地位にあった者を含む)に対しても、停止期間と同じ期間、停止の範囲の営業を新たに開始すること(その営業を目的とする法人の役員になることを含む)が禁止されます(建設業法第29条の4第1項)。

不正の手段による許可取得や、情状が特に重い・営業停止違反による許可取消の場合は、5年間、新たな営業の開始が禁止されます(同条第2項)。


9. 処分前の手続き

許可の取消しに係る聴聞や、指示・営業停止などに係る弁明の機会の付与では、必要に応じて参考人の意見が聴かれます(建設業法第32条)。


10. まとめ

  • 監督処分には、指示処分・営業停止処分(1年以内)・許可取消処分がある
  • 「不誠実な行為」の例として、入札での虚偽申請、技術者の不設置、重大な瑕疵、施工体制台帳の不作成が挙げられている
  • 労働安全衛生法違反など他の法令違反でも、建設業者として不適当と認められれば処分される
  • 処分は公告され、監督処分簿で閲覧できる。役員等にも営業禁止が及ぶ

「処分を受けるおそれがあり、今後の対応を相談したい」「日頃のコンプライアンス体制を整えたい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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