元請から「再下請負通知書と作業員名簿を出してください」と言われて、書き方に迷ったことはありませんか。
施工体制台帳は元請が作るものですが、その材料になるのは下請業者が出す再下請負通知書です。つまり、下請側にも建設業法上の義務があります。
この記事では、下請業者の立場から、再下請負通知書と作業員名簿の書き方を解説します。外国人技能者を現場に入れている会社向けに、記載欄の扱いも整理します。
※元請が作る施工体制台帳の全体像は「施工体制台帳・施工体系図の作り方」、作業員名簿の制度的な位置づけは「【愛知県版】建設キャリアアップシステム(CCUS)導入のメリット」もあわせてご覧ください。
1. 下請業者に義務が生じるとき
「施工体制台帳の作成等について(通知)」二では、施工体制台帳が作成される工事の下請負人には、次の義務があると説明しています。
- 注文者(元請など)から「施工体制台帳を作成する工事である」旨の書面通知を受けた場合や、現場にその旨の掲示がある場合で、
- 請け負った工事を他の建設業を営む者に再下請したときは、
次の2つを行わなければなりません。
- 再下請した相手に対し、元請の商号、再下請負通知が必要な旨、提出場所を記載した書面を通知する(建設業法施行規則第14条の4第2項)
- 元請(作成建設業者)に対し、再下請負通知書を提出する(建設業法第24条の8第2項)
ここでいう「建設業を営む者」には、建設業の許可を受けていない業者も含まれます(同通知 一(2)の文例)。
2. 再下請負通知書の記載事項
再下請負通知書には、次の事項を記載します(建設業法施行規則第14条の4第1項)。
① 自社(再下請負通知人)について
- 商号または名称、住所
- 建設業者であれば許可番号
② 自社が請け負った工事について
- 工事の名称
- 注文者の商号または名称
- 注文者と下請契約を結んだ年月日
③ 自社が再下請した相手とその工事について
- 商号・住所、許可番号と許可業種
- 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況
- 工事の名称・内容・工期、契約年月日
- 監督員・現場代理人を置く場合の氏名など
- 主任技術者の氏名・資格・専任かどうか
- 専門技術者を置く場合の氏名など
- 工事に従事する者に関する事項(作業員名簿の事項)
- 一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事の状況
3. 添付書類と金額の扱い
再下請負通知書には、再下請の相手と結んだ契約書(建設業法第19条の書面)の写しを添付します(建設業法施行規則第14条の4第3項)。
民間工事では、請負代金の額の部分を除いたものでかまいません。一方、公共工事では、請負代金の額の部分も記載されていなければなりません(同項。同通知 二(3)③)。
4. 提出のタイミングと方法
- 再下請をした後、遅滞なく作成して元請に提出します(建設業法施行規則第14条の4第2項)
- 再下請するたびに提出が必要です
- 記載事項や添付書類に変更があったときは、遅滞なく、変更年月日を付記して変更後の内容を追加し、提出します(同通知 二(3)④)
- 提出先は、元請から通知された場所や現場の掲示に従い、直接元請に提出するのが原則です。やむを得ない場合は、直接の注文者を経由して提出してもかまいません(同通知 二(3)⑤)
- 元請の承諾を得れば、電子メールなどで提出することもできます(同通知 二(3)⑥)
5. 作業員名簿の書き方
5-1. 記載する事項
作業員名簿(工事に従事する者に関する事項)には、次の事項を記載します(建設業法施行規則第14条の2第1項第2号チ・第4号チ)。
- 氏名、生年月日、年齢
- 職種
- 医療保険・年金保険・雇用保険の加入等の状況
- 建設業退職金共済制度などの被共済者かどうか
- 安全衛生に関する教育を受けているときは、その内容
- 建設工事に関する知識・技術・技能の資格
通知では、次のような考え方が示されています(同通知 一(6)①リ)。
- 資材納入、調査業務、運搬業務など、建設工事にあたらない業務に従事する者は、必ずしも記載する必要はない
- 「安全衛生に関する教育」は、雇入時教育、職長教育、特別教育などの受講状況を記載する(例:雇入時教育、職長教育、建設用リフトの運転の業務に係る特別教育)
- 「資格」は、登録基幹技能者や各種検定の資格を記載する(例:登録○○基幹技能者、○級○○施工管理技士)。ただし、本人が希望しない場合は記載を求めない任意の項目
5-2. 社会保険欄の記入例
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの別紙3「作業員名簿の例」では、社会保険欄の書き方が次のように示されています。
| 欄 | 書き方 |
|---|---|
| 健康保険 | 健康保険の名称(健康保険組合、協会けんぽ、建設国保、国民健康保険など)を記載。保険者番号や被保険者等記号・番号は記載しない。後期高齢者であるなどで国民健康保険の適用除外の場合は「適用除外」 |
| 年金保険 | 年金保険の名称(厚生年金、国民年金など)を記載。基礎年金番号は記載しない。各年金の受給者は「受給者」 |
| 雇用保険 | 被保険者番号の下4けたを記載。日雇労働被保険者は「日雇保険」、事業主であるなどで適用除外の場合は「適用除外」 |
同じ例では、退職金共済制度への加入について「建退共・中退共・その他・無」を記載する欄も設けられています。
5-3. 社会保険欄のチェックポイント
「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」第2(5)では、元請が作業員名簿の社会保険欄を確認し、次の場合は下請に適切な保険への加入を指導することとしています。
- 全部または一部の保険欄が空欄の作業員
- 法人に所属しているのに、健康保険欄が「国民健康保険」、または年金欄が「国民年金」となっている作業員
- 5人以上の作業員が記載された個人事業所の名簿で、健康保険欄が「国民健康保険」、または年金欄が「国民年金」となっている作業員
なお、臨時に使用され1か月以内で日々雇用される者などの適用除外や、承認を受けて国民健康保険組合に加入し厚生年金の適用を受けている者などの例外もあります(同ガイドライン第2(5))。
5-4. 個人情報の取扱い
作業員名簿に記載する被保険者番号などは個人情報にあたります。同ガイドライン第3(3)では、下請企業が作業員名簿を元請に提出する際は、利用目的(保険加入状況を元請に確認させること)を示したうえで、あらかじめ作業員の同意を得る必要があるとしています。
6. 外国人技能者の「従事の状況」欄
6-1. 何を書くのか
施工体制台帳と再下請負通知書には、一号特定技能外国人と外国人技能実習生の従事の状況を記載する欄があります(建設業法施行規則第14条の2第1項第2号リ・第4号リ、第14条の4第1項第3号)。
「施工体制台帳の作成等について(通知)」一(6)①ヌでは、この欄(通知では「一号特定技能外国人、外国人技能実習生及び外国人建設就労者の従事の状況」)には、その工事現場に従事するこれらの者の「有無」を記載するとしています。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの別紙(再下請負通知書・施工体制台帳の作成例)でも、「外国人技能実習生の従事の状況(有無)」「一号特定技能外国人の従事の状況(有無)」の欄が設けられています。
6-2. CCUSとの関係
「情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針」では、一号特定技能外国人などはCCUSへの登録が義務付けられており、施工体制台帳などの書類作成にあたりCCUSの情報を活用することが有効だとしています。
6-3. 本記事の範囲外の事項
施工体制台帳・再下請負通知書に関して、資料で明記されているのは上記の「従事の有無を記載する」という点です。在留資格の要件、受入れの手続き、受入れ企業の義務などは、建設業法の施工体制台帳の制度とは別の制度に関わるため、本記事の範囲外とします。
7. 一人親方との関係の書き方
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインでは、施工体制台帳、再下請負通知書、作業員名簿は、一人親方との関係を正しく認識したうえで記載する必要があるとしています(第3(2))。一人親方として請負契約を結んでいるため雇用保険に加入していない作業員がいる場合、元請から一人親方との関係を記載した再下請負通知書と請負契約書の提出を求められることがあります(第2(9))。
一人親方の扱いについては「一人親方に工事を発注するときの注意点」の記事で解説しています。
8. まとめ
- 施工体制台帳が作られる工事で再下請をした下請は、元請に再下請負通知書を提出し、再下請先にも通知する
- 再下請先の許可・保険加入状況・技術者・作業員名簿などを記載し、契約書の写しを添付する(民間工事は金額部分を除いてよい)
- 作業員名簿の社会保険欄は、元請のチェックの対象になる
- 一号特定技能外国人・技能実習生は、「従事の有無」を記載する
「再下請負通知書の書き方が分からない」「元請から求められる書類を社内で整えたい」という下請業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。