社会保険への加入は、建設業許可の要件になっています。自社の許可要件としての社会保険については「【愛知県版】建設業許可の「社会保険加入要件」を行政書士が解説!」で解説しました。
この記事では立場を変えて、元請が下請企業や作業員の社会保険加入をどうやって確認し、どう指導するかという実務の手順を、国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」に沿って解説します。
1. 元請に求められる役割
下請指導ガイドライン第2(1)では、元請企業は請け負った工事全般について下請より広い責任と権限を持つため、下請企業の体質改善にも相応の役割を担うことが求められるとしています。
指導の対象は、元請と直接契約している下請に限らず、その工事に従事するすべての下請企業です。ただし、元請がすべてを直接指導する必要はなく、直接の下請に指示・協力させて元請が統括する方法も可能です。直接の下請が指導を怠った場合や、規模などから明らかに実施が難しい場合は、元請が直接指導する必要があります。
建設労働者の雇用の改善等に関する法律第8条第2項でも、元方事業主は関係請負人に対し、雇用保険などの適正な管理について助言・指導などの援助を行うよう努めることとされています。
2. 下請企業を選ぶときの確認
2-1. 未加入の企業は選定しない
下請指導ガイドライン第2(3)では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の全部または一部について、適用除外でないのに未加入である建設企業は、下請企業として選定しない取扱いを徹底すべきとしています。
2-2. 確認の方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| CCUSで確認(推奨) | 登録時に社会保険の加入証明書類が確認されているため、CCUSを活用して確認する。CCUSに登録している企業の選定が推奨され、登録内容を常に最新にするよう促す |
| CCUSを使わない場合 | 保険料の領収済通知書などのコピーを提示させる、厚生労働省の労働保険適用事業場検索サイトや日本年金機構の厚生年金・健康保険適用事業所検索システムで適用状況を確認する など |
国土交通省の通知「下請契約及び下請代金支払の適正化並びに施工管理の徹底等について」(令和7年12月16日)では、次のようにも求めています。
- 建設業許可業者については、社会保険加入が許可要件であることを踏まえ、建設業許可を適切に取得していることを確認する
- 許可を持たない業者についても、登録時に社会保険加入確認を行っているCCUSに登録している事業者を選定する
- 元請による確認・指導は、CCUSの登録情報の活用を原則とする
3. 再下請負通知書での確認
施工体制台帳の作成が必要な工事では、下請から提出される再下請負通知書に「健康保険等の加入状況」欄があります(建設業法施行規則第14条の4)。下請指導ガイドライン第2(4)では、この欄で下請企業の加入を確認し、未加入があれば選定時と同様に指導することとしています。
4. 作業員名簿のチェック基準
4-1. 3つのチェックポイント
下請指導ガイドライン第2(5)では、元請は新規入場者の受入れに際し、作業員名簿の社会保険欄を確認し、次の場合は下請に適切な保険への加入を指導することとしています。
- 全部または一部の保険の欄が空欄になっている作業員
- 法人に所属する作業員で、健康保険欄が「国民健康保険」、または年金欄が「国民年金」となっている者
- 5人以上の作業員が記載された個人事業所の名簿で、健康保険欄が「国民健康保険」、または年金欄が「国民年金」となっている作業員
4-2. 適用除外などの例外
次のような場合は、適切な保険に加入しているものとされます(同第2(5))。
- 法人や5人以上の常用労働者を雇用する個人事業所に所属していても、臨時に使用され1か月以内で日々雇用される者などは、健康保険・厚生年金保険の適用除外
- 健康保険の適用除外の承認を受けて国民健康保険組合に加入し、厚生年金の適用を受けている者
4-3. 確認の方法
作業員の保険加入状況の確認は、CCUSの登録情報を活用し、閲覧画面などで作業員名簿を確認することが原則です。この場合は証明書類の添付は不要です。
CCUSを使わない場合は、資格情報のお知らせや資格確認書のコピー、マイナポータルの被保険者資格情報の印刷物、標準報酬決定通知書、雇用保険被保険者証のコピーなど(確認に必要な事項以外は黒塗り)を提示させるなど、真正性を確保する措置を講じます。
5. 確認できない作業員は「原則入場不可」
上記の方法で保険加入状況が確認できない作業員は、適切な保険に加入していることを確認できないと判断され、元請は特段の理由がない限り現場入場を認めない取扱いを徹底すべきとされています(同第2(5))。
5-1. 「特段の理由」とは
入場を認める「特段の理由」は、次のような場合に限定すべきとされています。
- 伝統建築の修繕など、未加入の作業員が工事に必要な特殊な技能を持っており、入場を認めなければ施工が困難になる場合
- 社会保険への加入手続き中であるなど、今後確実に加入が見込まれる場合
- 災害時などの緊急対応の工事で、円滑な施工に著しい支障が生じるおそれがある場合
特段の理由で入場を認めた場合でも、元請は下請に加入指導を続け、必要に応じて指導記録を保存し、再三の指導に応じない場合はその作業員の入場を認めない取扱いとすべきとされています。
6. 協力会社への日頃の指導
下請指導ガイドライン第2(2)では、協力会社組織に対して、次のような長期的な取組みを求めています。
- 協力会社の社会保険加入状況を定期的に把握する
- 協力会社組織を通じて周知啓発や加入勧奨を行う
- 未加入が判明したら、早期の加入手続きを指導する
- 実態は雇用労働者なのに一人親方として名簿に記載している、4人以下の適用除外として名簿を出す個人事業主が実際は5人以上を雇用している、など不自然な取扱いがある協力会社も、事実確認のうえ指導する
- 協力会社から再下請企業にも同様の取組みをするよう指導する
7. 法定福利費の確保
社会保険料は、建設業者が義務的に負担する法定福利費で、見積書に内訳を記載すべき「不可欠な経費」とされています(建設業法施行規則第13条の12)。
下請指導ガイドライン第2(8)では、元請は見積条件を示す際に、材料費等記載見積書を提出するよう明示しなければならないとし、提出された見積書を尊重して契約を結ぶこと、法定福利費を請負金額に適切に反映することを求めています。
法定福利費を一方的に削って契約すると、不当に低い請負代金の禁止(建設業法第19条の3)に違反するおそれがあります(建設業法令遵守ガイドライン第12版 14-2章)。
8. まとめ
- 元請は、工事に従事するすべての下請企業と作業員の社会保険加入を確認・指導する
- 下請選定時はCCUSを原則に確認し、未加入企業は選定しない
- 作業員名簿の「空欄」「法人なのに国保・国民年金」「5人以上の個人事業所で国保・国民年金」をチェックする
- 確認できない作業員は、特段の理由がない限り現場入場を認めない
- 見積段階から法定福利費を確保する
「下請の社会保険確認のフローを整えたい」「作業員名簿のチェック体制を作りたい」という元請企業様は、お気軽に当事務所へご相談ください。
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