こんにちは、行政書士の三澤です。

施工体制台帳と施工体系図の作成義務があることは知っていても、「実際にどうやって作ればいいのか」「どの書類を添付するのか」「いつまで保管するのか」まで正確に把握している方は多くありません。

この記事では、国土交通省の「施工体制台帳の作成等について(通知)」と建設業法施行規則に沿って、施工体制台帳の作り方を実務目線で解説します。

※特定建設業者が負う義務の全体像は、特定建設業許可を取得するには?の記事で解説しています。


1. 作成が必要な工事

区分作成が必要になるとき根拠
公共工事発注者から直接請け負った公共工事で下請契約を締結したとき(金額を問わない)公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)第15条第1項
民間工事発注者から直接請け負った特定建設業者が締結した下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になるとき建設業法第24条の8第1項、建設業法施行令第7条の4

公共工事の受注者は、特定建設業者であるかどうかにかかわらず、下請金額にかかわらず作成が必要です(監理技術者制度運用マニュアル 五(1))。

金額についての注記
「施工体制台帳の作成等について(通知)」(最終改正 令和4年12月28日)の本文には、民間工事の基準額として「4,500万円(建築一式工事にあっては7,000万円)」と記載されています。これは令和7年2月1日に施行された建設業法施行令の改正前の金額です。現行の建設業法施行令第7条の4では5,000万円(建築一式工事は8,000万円)とされており、建設業法令遵守ガイドライン(第12版)や国土交通省の令和7年12月16日の通知もこの金額で記載しています。記事作成時点では5,000万円/8,000万円が基準ですが、実際に判断する際は最新の法令をご確認ください。

基準額に満たない民間工事でも、適正な施工の確保のため、規則に準拠して施工体制台帳を作成することが望ましいとされています(同通知 三)。


2. 作成の流れ

ステップ1:受注前に外注計画を立てる

通知では、特に民間工事では、監理技術者の設置や施工体制台帳の作成の要否を的確に判断できるよう、受注前に下請に施工させる範囲と下請代金額のおおむねの計画を立てておくことが望ましいとしています(同通知 一(1))。

ステップ2:下請に通知し、現場に掲示する

作成が必要になったら、遅滞なく、下請負人に次の事項を書面で通知し、同じ内容を工事現場の見やすい場所に掲示しなければなりません(建設業法施行規則第14条の3第1項)。

  • 作成建設業者(台帳を作る元請)の商号または名称
  • 再下請をしたときは再下請負通知をしなければならない旨
  • 再下請負通知書を提出すべき場所

通知には文例も示されています。下請の承諾を得れば、電子メールなどで通知することもできます(同条第2項)。

ステップ3:再下請負通知書を集める

下請から提出される再下請負通知書や、自ら把握した情報をもとに台帳を作ります。下請に速やかに提出するよう指導するとともに、元請自らも必要な情報の把握に努めることとされています(同通知 一(3))。

ステップ4:台帳を編成する

台帳は、元請が自ら記載しても、所定の事項が書かれた書面や再下請負通知書を束ねる形でもかまいません。ただし、下請負人ごとに、施工の分担関係が分かるようにしなければなりません(同通知 一(4))。

通知では、A社(元請)→B社・C社(一次)→Ba社・Bb社(二次)→Bba社・Bbb社(三次)…という体制の例で、A社の事項→B社→B社の下請→…→C社→C社の下請、という順に整理する方法が示されています。1冊にまとめるのが望ましいですが、関係が分かれば分冊でもかまいません。


3. 主な記載事項

建設業法施行規則第14条の2第1項で定められている主な記載事項は次のとおりです。

作成建設業者(元請)について

  • 許可を受けて営む建設業の種類(特定・一般の別も)
  • 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況

元請が請け負った工事について

  • 工事の名称・内容・工期
  • 発注者との契約日、発注者の名称・住所、契約した営業所
  • 監督員・現場代理人を置く場合はその氏名と権限等の通知事項
  • 主任技術者・監理技術者の氏名、資格、専任かどうか
  • 監理技術者補佐を置く場合はその氏名と資格
  • 専門技術者を置く場合はその氏名・担当工事・資格
  • 工事に従事する者の氏名・生年月日・職種・社会保険の加入状況・建退共の被共済者かどうか・安全衛生教育・資格(いわゆる作業員名簿)
  • 一号特定技能外国人・外国人技能実習生の従事の状況

下請負人とその工事について

  • 商号・住所、許可番号と許可業種、社会保険の加入状況
  • 工事の名称・内容・工期、契約日、主任技術者の氏名・資格・専任かどうか、作業員名簿の事項など

通知では、工事の内容は具体的な内容が分かる工種の名称で書くこと、専任かどうかは実際に置かれている技術者について書くことなど、記載の考え方が詳しく示されています(同通知 一(6)①)。作業員の資格の欄は、本人が希望しない場合は記載を求めない任意の項目です。


4. 添付書類

施工体制台帳には、次の書類を添付します(建設業法施行規則第14条の2第2項)。

  1. 発注者との契約書と、下請契約書(建設業法第19条の書面)の写し
  2. 主任技術者・監理技術者の資格を証する書面と、雇用期間を限定せず雇用されていることを証する書面(専任の監理技術者は監理技術者資格者証の写し)
  3. 監理技術者補佐を置く場合は、その資格と雇用を証する書面
  4. 専門技術者を置く場合は、その資格と雇用を証する書面

民間工事では、作成建設業者が当事者でない下請契約(二次以下など)の契約書は、請負代金の額の部分を消したものでもかまいません。ただし、公共工事では、すべての下請契約について下請代金額が明記されていなければなりません(同通知 一(6)②)。

なお、法定事項を網羅していない注文伝票などは、ここでいう契約書類に該当しません。


5. 変更があったとき

記載事項や添付書類に変更があったときは、遅滞なく、変更年月日を付記して、既存の記載に加えて変更後の事項を記載し、変更後の書類を添付します(同通知 一(7))。


6. 施工体系図の作成と掲示

施工体系図は、施工体制台帳の「要約版」として樹状図などで作成し、工事現場の見やすい場所に掲示します(建設業法第24条の8第4項)。公共工事では、工事関係者が見やすい場所と公衆が見やすい場所の両方に掲示が必要です(同通知 一(8))。

  • 表示するのは、現に請け負った工事を施工している下請負人(契約上の工期を基準に判断)で足ります
  • 下請負人の表示が必要になったときまでに掲示し、変更があれば速やかに更新します
  • 見にくくならない限り、労働安全など他の目的の図面と兼ねてもかまいません
  • 一定の要件を満たせば、デジタルサイネージなどICT機器での掲示も可能です(監理技術者制度運用マニュアル 五(2))

7. 発注者への閲覧・提出

  • 民間工事:発注者から請求があったときは、施工体制台帳を閲覧させなければなりません(建設業法第24条の8第3項)
  • 公共工事:施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければなりません。ただし、発注者が情報通信技術で施工体制を確認できる措置を講じている場合は、提出は不要です(入契法第15条第2項。令和7年12月16日 国土交通省通知)

8. 備置き期間と帳簿への添付

施工体制台帳の備置きと施工体系図の掲示は、目的物を発注者に引き渡すまで行います(同通知 一(10))。

引渡し後は、台帳のうち技術者や下請負人に関する一定の部分を、建設業法第40条の3の帳簿に添付しなければなりません(建設業法施行規則第26条第2項第3号)。通知では、あらかじめ帳簿添付が必要な部分と他の部分を別紙に分けて作っておくと、添付がスムーズだとしています。

また、施工体系図は「営業に関する図書」として、引渡しから10年間の保存が必要です(同規則第26条第5項・第28条第2項)。


9. 電子化・CCUSの活用

施工体制台帳は、電子データで記録し、必要に応じて現場で表示・印刷できれば、紙に代えることができます(同規則第14条の2第3項・第4項)。国土交通省の令和7年12月16日の通知では、作業員名簿などの情報について、CCUSに登録し必要に応じて書面に出力できるようにすることで代替できるとして、CCUSの積極的な活用を求めています。


10. まとめ

  • 公共工事は下請契約があれば金額を問わず、民間工事は下請総額5,000万円(建築一式8,000万円)以上で作成義務
  • 下請への通知と現場掲示→再下請負通知書の収集→下請ごとに整理、の流れで作る
  • 契約書の写しや技術者の資格・雇用を証する書面を添付する
  • 引渡しまで備え置き、その後は一部を帳簿に添付し、施工体系図は10年保存

「施工体制台帳の様式や作り方を社内で統一したい」「下請から集める書類を整理したい」という事業者様は、お気軽に当事務所へご相談ください。

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