「現場代理人は置いているから丸投げにはならないよね?」「施主がOKと言えば一括で下請に出してもいいの?」——一括下請負(いわゆる丸投げ)は、その判断基準が分かりにくいテーマです。
一括下請負が禁止されていることや、一式工事の許可との関係については「建築一式工事で専門工事はできない——「一式=万能」という勘違いが招く、無許可営業と丸投げの罠」でも触れました。この記事では、国土交通省の通知「一括下請負の禁止について」(平成28年10月14日)に沿って、何をすれば「実質的に関与した」と言えるのかと、例外として認められる条件を詳しく解説します。
1. 建設業法第22条の内容
建設業法第22条は、次のように定めています。
- 建設業者は、請け負った建設工事を、いかなる方法をもってするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない(第1項)
- 建設業を営む者は、建設業者から、その建設業者が請け負った建設工事を一括して請け負ってはならない(第2項)
第2項の対象は「建設業を営む者」なので、許可を受けていない業者も対象になります(通知 一(3))。
「いかなる方法をもってするかを問わず」とは、契約を分割したり他人の名義を使ったりしても、実態が一括下請負であれば一切禁止するという意味です。また、仮に発注者が期待した以上の良い建物ができたとしても、発注者の信頼を裏切ることに変わりはないため違反になるとされています。
2. 一括下請負にあたる2つのパターン
元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与することなく、次のいずれかに該当する場合は、一括下請負になります(通知 二(1))。
- 請け負った工事の全部またはその主たる部分を、自らは施工せず、一括して他の業者に請け負わせる
- 請け負った工事の一部で、他の部分から独立して機能を発揮する工作物の工事を、自らは施工せず、一括して他の業者に請け負わせる
2-1. 典型的な事例
通知では、次のような具体例が挙げられています(通知 二(3)注1・注2)。
「主たる部分」を一括して下請に出す例
- 建物の電気配線改修工事で、電気工事のすべてを1社に下請させ、それに伴う内装仕上工事だけを元請が施工(または他社に下請)する
- 戸建住宅の新築工事で、建具工事以外のすべてを1社に下請させ、建具工事だけを元請が施工(または他社に下請)する
「独立して機能を発揮する部分」を一括して下請に出す例
- 戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうち1戸の工事を1社に下請させる
- 道路改修工事2kmを請け負い、施工技術上分割する特段の理由がないのに、そのうち500m分を1社に下請させる
一括下請負にあたるかどうかは、元請が請け負った工事1件ごとに判断し、1件の範囲は原則として請負契約単位で判断されます(通知 二(3))。
3. 「実質的に関与」とは何をすることか
「実質的に関与」とは、元請が自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいいます。通知では、その中身を立場ごとに具体的に示しています(通知 二(2))。
3-1. 発注者から直接請け負った建設業者(元請)
次の事項をすべて行う必要があります。
| 項目 | 行うべきこと |
|---|---|
| 施工計画の作成 | 工事全体の施工計画書等の作成、下請の施工要領書等の確認、設計変更等に応じた施工計画書等の修正 |
| 工程管理 | 工事全体の進捗確認、下請間の工程調整 |
| 品質管理 | 工事全体に関する下請からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認 |
| 安全管理 | 安全確保のための協議組織の設置・運営、作業場所の巡視など工事全体の労働安全衛生法に基づく措置 |
| 技術的指導 | 工事全体での主任技術者の配置等の法令遵守や職務遂行の確認、現場作業に係る実地の総括的技術指導 |
| その他 | 発注者等との協議・調整、下請からの協議事項への判断・対応、工事全体のコスト管理、近隣住民への説明 |
3-2. それ以外の建設業者(下請)
次の事項を主として行う必要があります。
| 項目 | 行うべきこと |
|---|---|
| 施工計画の作成 | 請け負った範囲の施工要領書等の作成、再下請の施工要領書等の確認、元請等の指示に応じた修正 |
| 工程管理 | 請け負った範囲の進捗確認 |
| 品質管理 | 請け負った範囲の立会確認(原則)、元請への施工報告 |
| 安全管理 | 協議組織への参加、現場巡回への協力など |
| 技術的指導 | 請け負った範囲の作業員の配置等の法令遵守、実地の技術指導 |
| その他 | 注文者との協議、再下請からの協議事項への判断・対応、元請等の判断を踏まえた現場調整、コスト管理、施工確保のための再下請調整 |
ただし、請け負った工事と同じ種類の工事を単一の業者に再下請する場合は、次の事項をすべて行う必要があります。
- 請け負った範囲の工事に関する、現場作業に係る実地の技術指導
- 自らが受注した工事の注文者との協議
- 再下請からの協議事項への判断・対応
3-3. 技術者を置いているだけでは不十分
通知では、単に現場に技術者を置いているだけでは、上記の事項を行ったことにはならないとしています。また、元請と直接的かつ恒常的な雇用関係にある適格な技術者が置かれていなければ、「実質的に関与」しているとはいえません(通知 二(2))。
4. 例外:民間工事での発注者の書面承諾
4-1. 例外が認められる条件
民間工事では、元請があらかじめ発注者から書面による承諾を得ていれば、一括下請負の禁止の例外となります(建設業法第22条第3項)。ただし、次の2つの工事は例外の対象外で、全面的に禁止です。
| 工事 | 根拠 |
|---|---|
| 共同住宅を新築する建設工事 | 建設業法第22条第3項、建設業法施行令第6条の4 |
| 公共工事(入契法の適用対象となる工事) | 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(通知 一(3)) |
発注者は、元請の承諾を得て、書面の代わりに電子メールなどで承諾を通知することもできます(建設業法第22条第4項)。
4-2. 承諾を得る際の注意点
通知では、次の点に注意するよう求めています(通知 三)。
- 承諾が必要なのは、建設工事の最初の注文者である「発注者」の承諾です
- 承諾は、一括下請負に付す前に書面で受けなければなりません
- 承諾を受けなければならないのは、一括して他人に請け負わせようとする元請負人です
- 下請が一括して再下請に出す場合も、発注者の書面承諾が必要です。その下請に注文した元請の承諾ではないことに注意が必要です
- 承諾を得て一括下請負に付した場合でも、元請は建設業法上の責任を果たす必要があり、工事現場に主任技術者または監理技術者を配置しなければなりません
5. 違反した場合の処分
- 一括下請負の禁止に違反した建設業者は、建設業法に基づく監督処分の対象となり(建設業法第28条第1項第4号)、行為の態様や情状を考えて、原則として営業停止処分が行われます(通知 四)
- 公共工事では、一括下請負と疑うに足りる事実があれば、発注者が許可行政庁などに通知し、連携して厳正に対処するとされています
- 一括下請負を行った建設業者は、工事を実質的に行っていないとされるため、経営事項審査の完成工事高にその工事の金額を含めることは認められません(通知 四)
6. まとめ
- 一括下請負は、元請が実質的に関与せず、工事の全部・主たる部分・独立した部分を一括して他社に請け負わせること
- 元請は施工計画・工程・品質・安全・技術的指導などを「すべて」、下請は「主として」行う必要がある
- 技術者を置いているだけでは実質的関与にならない
- 民間工事は発注者の事前の書面承諾で例外となるが、共同住宅の新築と公共工事は全面禁止
- 違反すると原則として営業停止処分、経審の完工高にも算入できない
「この発注形態は一括下請負にあたらないか」「発注者の承諾書をどう作ればよいか」といったご相談は、お気軽に当事務所へお寄せください。